転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

女神様、街を練り歩く

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 パアァァァ・・・。

 ハーティが髪飾りを外した瞬間に、桃色の髪は根本からマナによる光を放ちながら美しい白銀色に染まり、白銀色をした長いまつげに縁取られた大きな双眸は、金剛石のように光を反射する白銀色となった。

 そこに立つ一柱の存在は、正に至高であり唯一の女神であった。

 因みに、ユナはハーティが髪飾りに手をかけた段階で半ば条件反射で『最敬礼』を行なっていた。

「「「「・・・・」」」」

 その姿を見た者達は、皆一様に押し黙っていた。

「ど・・どうかな?」

 居た堪れなくなったハーティは何となくポーズを決めながら尋ねてみた。

 それに真っ先に答えたのはクラリスであった。

「いや!?絵面おかしいでしょ!」

「見た目は完全無敵の女神様なのに着ている服がズタボロだから、その姿を見た人が何事かと思うわよ!!」

 クラリスの言う通り、先程の戦いでハーティの衣類は所々が破れたズタボロ状態になっており、その見た目に対してあまりにもアンバランスであった。

「でしたら私は『プラタナ』に乗せてもらうので、ひとまずはこの『神聖魔導甲冑一型』を身につけてください」

「いいの?」

「はい、その方が皆が驚かなくて済むので・・」

「確かに『ズタボロの女神』なんて見たら『女神教』信者なら卒倒しかねないわ」

 そう言いながら、二アールは頷いた。

 そして、ユナから甲冑を受け取ったハーティはいそいそとそれを装着した。

 ガチャチャ・・。

「どうかな?」

 甲冑を装着し終えたハーティは再びポーズを決めた。

「なんか、もう・・・凄いとしか言いようがないわ」

 クラリスは思わずそう言わざるを得なかった。

『女神化』した状態で神白銀プラティウムの鎧を装着したハーティは、その全身から豪華さを伴った神々しさが溢れていた。

「ああ、素晴らしい!まさに至高の女神様に相応しいお姿です!」

 ユナはハーティの姿を手放しで賞賛した。

「ありがとう!じゃあ、とにかく今からギルドに行って今回の出来事をミウさんとギルドマスターに報告しに行きましょう!」

「え!?まさかそのまま行くつもり!?」

「当たり前よ。エメラダ達がいつ再来するか分からないのにのんびりしてはいられないわ!」

 クラリスの突っ込みにハーティはしれっと答えた。

「・・・街が大変なことになるわ」

「・・であるな」

 それを聞いた二アールとナラトスは目を掌で覆いながら呟いた。



 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。




 ガチャッガチャッ・・・。

 スタスタ・・。

 その後、拠点まで飛行して戻った一同は『カームクラン』の大通りをギルドに向かってぞろぞろと歩いていた。

 ザワザワ・・・。

「がはは!それで、今日は昼めし・・・」

「いらっしゃい!出来たての焼きそ・・・」

「あばばば!・・」

 バシッ!

「ヒヒヒィーン!」

 いつも大通りは人や馬車でごった返しているが、そこを堂々と歩くハーティを見た人々は漏れなく口をあんぐりと開けて絶句しながら、手に持つ物をポロポロと落としていた。

 道を走る馬車の御者も慌てて道の端に馬車を寄せようと手綱を操作した為、それを引いている馬まで嘶く始末であった。

 そして、人々は街道の端に次々と飛びのいて、訳もわからぬまま『最敬礼』や平伏をしていた。

 その中には最寄りの『女神ハーティルティア像』とハーティを見比べて視線が往復する者、感動で小刻みに震える者や咽び泣く者なども多数存在していた。

 ザワザワ・・・。

 そして、どこからともなく現れた『神社庁』と『女神教会』の神官やシスター、巫女たちが訓練されたような統率の取れた動きで雑踏整理を行い始めた。

「あのー・・」

 居た堪れなくなったハーティが口を開いた瞬間、神官達が周囲の人々に手で合図を送り、それを見た人々の騒ぎはスイッチを切ったかのように無くなった。

「・・・・・・」

 ジュウウ・・・。

 そして日頃賑やかな『カームクラン』の大通りは、屋台の鉄板の上でジュウジュウと焼きそばが焼ける音を残して静かになった。

「あの・・みなさん・・お気遣いなく」

「そりゃ、そんな髪をマナで光り輝かせながら女神がほいほい大通りを歩いていたら誰だって驚くわよ!」

「それはほら、こんな見た目だけどいつも通りに過ごしていたら、みんなそのうち見慣れて気にならなくなるでしょ?」

「あなた自分の立場理解してる!?イルティアの王や皇帝だって街中ほっつき歩いてたら驚くでしょうが!あなたはそれより上を行く『女神様』なのよ!」

「貴様こそ立場を理解しているのか!愚か者が!」

 クラリスがハーティに突っ込んでいると、近くにいた神官が青筋を浮かべながら彼女を怒鳴りつけてきた。

「あっ!いや、いいんですよ!クラリスはいつもですので・・」

「ははあっ!出過ぎた真似を失礼致しました!女神ハーティルティア様ぁ!」

 ハーティに声をかけられた神官は凄まじい速度で平伏すると、シャカシャカとその体制のまま街道の端まで後退した。

「器用ね・・」

 二アールはその神官を見て呆れていた。

 ジュウジュウ・・。

 そんな中、美味しそうに焼けている焼きそばがハーティの目に止まった。

「ごくり・・」

 ハーティは思わず喉を鳴らすと、その焼きそばが焼ける屋台に向かってまっすぐ歩き出した。

 その場にいる誰もが、屋台に向かって歩くハーティを目で追った。

「あの・・」

「はっ!?はひっ!?」

 そして、屋台の店主とみられる中年男性にハーティが声をかけると、その男は額から滝のように汗を流して応対した。

「そこの焼きそば・・五つもらえますか?」

「ひいっ!?ややや焼きそばですか!?」

 ハーティがおずおずと焼きそばを注文すると、屋台の店主は慌てふためき出した。

「あ・・へ・・?いや!?どうぞ!いくらでも!なんなら屋台ごとどうぞ!」

「いや、屋台はいりませんが・・私は焼きそば作れませんし」

「そんな問題じゃないわよ」

 クラリスの突っ込みは相変わらず安定していた。

 そしてハーティがズブズブと何もない空間に手を差し込んみ、収納魔導から革袋を取り出して代金を支払おうとすると、ユナがそれを制止した。

「ここは私が支払います。『女神教』信者が『女神様』から代金など受け取れないでしょう。寄付なら喜んでするでしょうが・・」

「ごめんね、ユナ」

 そしてユナは店主から焼きそば五人前を受け取ると全員に配った。

 そして、再び街道を進みながらハーティはその焼きそばを食べていた。

「ここの焼きそばはソースが効いてとっても美味しいわ!」

「いや、確かに美味しいけど・・絵面が酷すぎるわ」

 淡く発光する長髪を靡かせて『聖騎士』の鎧を身に纏いながら焼きそばを食べる『女神様』は誰が見てもシュールな絵であった。

 この姿が、後の時代における聖書にも『下々の民に対しても親しみを持つ女神像』として記されて語り継がれていくのはまた別の話である。

 やがて、焼きそばを食べ終えたハーティ達が冒険者ギルドの前に到着すると、どこからともなくやってきた神官達が『頂戴致します』と聞かなかったので、食べ終えたゴミを手渡した。

 因みに、ハーティが焼きそばを食べるのに使っていた竹を削り出して作られた箸は『女神教会』が神聖な品として厳重に保管する為に神聖イルティア王国の白銀の神殿プラチナ・パレスへと輸送される事になる。

 それは聖女リリスの指示によるものであった。

 そして、その後『白銀の剣』の一同はギルドの受付カウンターで業務をしている、以前にやりとりをした受付嬢の元へと向かった。

 その姿を見た広間にいる冒険者全員が大凡街道にいた人々と似たような状態になっていた。

「すみません、ギルドマスターを呼んでもらえますか?」

 そして、ハーティがその受付嬢に話しかけた瞬間・・。

「きゅう・・・」

 今回は言葉を発する暇もなく、彼女は椅子ごと転倒して気を失った。
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