転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

『カームクラン』防衛戦3

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 ヒュウウン!!

 魔導高射機関砲から放たれた魔弾は狙い通り、彼方にいる『ワイバーン』の群れ中心部へと吸い込まれていった。

 双眼鏡でその様子を観測していた技術者は満足げに頷いた。

「初弾よし!修正射には入らずこのまま効力射に移行する!一から三番の全砲台、撃てー!」

「「「発導機出力最大!効力射!発射!!」」」

 ゴオオオオ!!

 ドゥルルルルルルル!!

 三台の砲台に搭載された発導機が激しい音を立てて唸りながら、目を開けてられないほどの光を伴って魔弾の雨を『ワイバーン』へと撃ち込む。

 ビジュ!プシュッ!ビジュシュシュ!!

 その凄まじい量の魔弾による弾幕により、『ワイバーン』は次々と撃ち落とされていった。

「す・・すごいでござる」

「この砲台さえあれば、これからは冒険者達が『ワイバーン』を討伐する必要性も無くなるかもしれません!」

かもしれぬぞ」

 クウゼンの言う通り、急ごしらえで作られた魔導高射機関砲の砲身はマナによる劣化と高熱に耐えられなくなって赤熱し始めていた。

「まずい!射撃中止!発導機も停止してくれ!!」

 シュウウウウン・・・。

 赤熱した砲身を見て技術者が慌てて発導機を停止したが、その頃には既に砲身はドロドロに溶け始めていた。

「やはり、粗悪な普通鉄では高出力のマナに耐えられなかったようでこざるな」

「でも、お陰で『ワイバーン』を半分くらいは迎撃できました!」

 魔導高射機関砲で撃ち損ねた『ワイバーン』の群れは、いよいよ『カームクラン』上空へ迫ろうとしていた。

「次!いしゆみ隊!撃て!」

『ワイバーン』がいしゆみの射程に入ったのを確認したシゲノブはいしゆみを構える部隊に命令を飛ばした。

 シュシュシュシュ!!

 直後、いしゆみから放たれた数千にもなる大型の矢が真っ直ぐ『ワイバーン』の群れへと突き刺さる。

「グギャアアア!」

 それにより、複数本の矢が刺さった『ワイバーン』が次々と墜落していった。

「続いて魔導士一番から三番隊は広域防御魔導を!四番から六番隊は『ファイアーボール』を放て!」

 シゲノブが続け様に指示を飛ばすと、百人程の魔道士が同時に詠唱キャストを開始した。

「グギャアアア!!」

『ワイバーン』を迎撃しているいしゆみの射程に入ると言うことは、『ワイバーン』にとっても自身の火炎魔導の射程にいしゆみ隊や魔導士隊が入るということになる。

 キィィィ!ゴウウウ!!

『ワイバーン』はそれぞれ開口すると、口から火球を放ち始めた。

 ドガァァン!バァァン!!

 しかし、ワイバーンから放たれた火球は、魔導士達がギリギリ間に合うように展開した防御魔導の見えない壁によって防がれた。

 そして、遠くの詰所からその様子を見ていたミウは顔を顰めた。

「わらわから支給した魔導結晶を駆使しても防御魔導はそう長くは持たぬじゃろのぅ・・ハーティさん達の規格外な魔導を見慣れているが故にもどかしいのう。これでも連邦軍の中では選りすぐりの魔導士達なんじゃがの」

「「「ファイアーボール!!」」」

 ミウがぼやいている間も魔導士達が魔導による火球で攻撃するが、常人が放つ火球の威力では『ワイバーン』相手に有効とはならず、まだいしゆみの方が貫通力に優れる分マシといった感じであった。

 ミウはその様子を一瞥すると、側にいる護衛の高位神官に声をかけた。

「市民の避難はどうなっているのじゃ?」

「はい。緊急招集された冒険者や神官達によって市民は最寄りの神社や学園施設、軍の施設にそれぞれ避難完了しつつあります。避難施設には高位神官をそれぞれ配置して防御魔導に備えていますが、魔導結晶の備蓄は正直心許ないですね」

「そうかぇ・・・やはり『ワイバーン』の早期討伐が必要じゃのう」

 ミウはそう言いながら溜息を吐いた。



 ・・・・・・。



「そろそろ拙者達も出撃するでござるよ」

「はい!兄上!」

 ハンゾウとほむらは『ワイバーン』の接近に伴って、既に背中に大凧を背負って待機していた。

「クウゼンさん!」

「心得ている」

 ほむらに声をかけられたクウゼンは二人の大凧を気流に乗せるべく、『印』を結び始めた。

 バッバッバッ!シャララン・・。

「中級風属性魔導!『エアウィンド』!」

 ブワッ!

 そして、クウゼンが魔導を発動すると、激しい気流に乗って二人は舞い上がった。

「ふん!」

 まずハンゾウがその気流に乗って『ワイバーン』との距離を詰めると、手持ちの苦無を投擲した。

 プシュッ!プシュッ!

 ハンゾウの両手から投擲された八本の苦無は、吸い込まれるようにそれぞれ別の『ワイバーン』の頭部へと突き刺さった。

「ギュアアアア!!」

 いくら魔獣とは言え、生物である以上は頭部が急所であり、もれなく頭部から苦無を生やした『ワイバーン』達は次々と墜落していった。

「いきます!」

 ハンゾウと飛び立ったほむらは、ハンゾウよりも更に高く上昇すると、空中で自分が背負っていた大凧を外した。

 大凧を失ったほむらは『ワイバーン』に向かって自由落下しながら苦無を投擲すると、続いて腰に備えた二本の小太刀を抜いた。

 ビスッビスッ!!

 直後、ほむらの苦無により数匹の『ワイバーン』が墜落する。

「はぁぁぁ!」

 ズバシュ!

 そして、別の『ワイバーン』の首を小太刀で切り落とすと、胴体だけになったワイバーンを踏み台にして次の『ワイバーン』へと斬りかかった。

「はあ!やあ!」

 ズシュ!ズバッ!

「はっ!ほっ!っと!?うわっ!?」

 次々と『ワイバーン』を渡り歩いて曲芸のような空中戦を繰り広げていたほむらであったが、群れの切れ目に当たった為、一度の跳躍で足場に出来る『ワイバーン』に辿り着けなくなってそのまま落下し始めた。

 そのまま地面に衝突すれば潰れたトマトのようになるのは目に見えていたが、ほむらは至って冷静であった。

「ふふっ・・!」

 そして、ほむらは小太刀を再び納刀すると、不敵な笑みを浮かべながら最寄りの見張り櫓に向かって右手の握り拳を向けた。
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