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第四章 エルフの国リーフィア編
『女神同盟軍』2 〜イルティア王国視点〜
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「ハーティルティア様が神白銀を錬金するには大量の魔導銀が必要です。ですから、ハーティルティア様が戻られるまでに出来る限り取り寄せていたのです」
「最近、帝国でも大量の魔導銀を『アーティナイ連邦』から買い付けていた話というもありましたしね」
帝国の話がリリスから出てきたことにより、目を向けられていたフィオナがリリスへと視線を向けた。
リリスはハーティの為に魔導銀をかき集めていた際に、帝国が先回りして市場の魔導銀を買い占めていたことを根に持っていた。
「確かに、魔導具には魔導銀が必須ですものね。ですが、皆様がご存知のように、ハーティ様のお力添えで完成した人工女神の錬金にも必要なのですよ?」
「勿論、貴国に持ち込んだ『プラティウム・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』にも大量の魔導銀が使われておりますわ」
正確にはオルクス皇帝の命によってかなり前から帝国が新兵器開発のために魔導銀を世界中からかき集めていたのだが、フィオナはそれらをひっくるめて『女神』への貢献に役立てたと言い切った。
結果、帝国が集めた魔導銀がハーティの役に立ったのは事実なので、リリスは益々気に入らなかった。
(この女・・ハーティルティア様の事を崇拝していない所がいけ好かないですけど、魔導具や魔導についての知識といい、腹黒さやあざとさといい、なかなか頭脳が回りますね・・)
(どうやらマクスウェル殿下が想いをこじらせているハーティルティア様の事を良く思っていないようですが、私としては是非ともあの『色ボケ王子』をもらってやってほしいですね・・ハーティルティア様と添い遂げるのはこのリリスなのですから。・・いけませんね、妄想が滾ります!はぁはぁしそうです・・)
「なにか物言いたげなご様子ですが、いかがしました?聖女様?」
(はっ!?いけません!『聖女』ともあろう者が、つい邪な妄想を!!)
「いえ、そのことについては私からも感謝申し上げます」
リリスは脳内の素敵映像を消去すると、何事もなかったように答えた。
「残りの金や銅、鉄については『女神教』の信者の皆様に寄付を募りましょう。女神ハーティルティア様の手助けとなるのですから、きっと相当数が集まるはずです」
「本当ですの!?それはよかったですわ!帝国からはとりあえず持参品の地金を使いますわ!あとはお兄様にお願いして随時輸送してもらっていますしね!」
そして、綻んだ顔をしていたフィオナはスッと真面目な表情になった。
「ところで、まだわたくし、マクスウェル様のご質問に答えておりませんでしたね。先程の別の物については彼の方が詳しいので紹介致しますわ」
「『カツ』さん、こちらにいらしてくださる?」
「はい」
フィオナはドックの端で作業をしていたカツを呼び止めると、近くに来る様に促した。
カツは作業用の簡素なデールを身に纏っており、全身が若干薄汚れているようであった。
「こちらの方は『アーティナイ連邦』からお越しいただいた錬金魔導士の『カツ・クラマ』さんです」
カツはフィオナに紹介されると、素早く膝をついた。
「この度はお目にかかれて光栄でございます。わしは『カツ・クラマ』と申します。見ての通り、『ドワーフ』の血が混ざっております。国王陛下、並びに殿下と聖女様、そして総司祭様までお揃いで恐縮です」
「『カツ』殿、そこまでかしこまらなくて結構である。これからは余や他の者とも密に打ち合わせをする仲となる。いちいち跪かれてはものごとが進まぬからのう」
「ありがたき幸せ」
ジル国王の赦しを得たカツはすくっと立ち上がった。
「して、多種の貴金属が必要な理由について、そなたは知っているらしいな?」
「はい。実は、わしのご先祖様が錬金に成功した『魔導緋色金』を錬金するのに複数の貴金属が必要なのです」
「「「『魔導緋色金』?」」」
カツから放たれた聴き慣れない言葉に、イルティア王国の人達が一様に首を傾げた。
「はいですじゃ。『魔導緋色金』は素材としては有用性が少なかったので廃れて行ってしまった故、存在や錬金方法については『アーティナイ連邦』でも限られた人しか知らない素材なのです」
「ですが、魔導銀より遥かにマナ抵抗が少ないという素材の特性を聞いた帝国のクラリス博士が、魔導具の特にマナによる負荷が大きい部分への有用性を見出したのです」
「それによって、それが錬金できるわしが帝国に派遣されたのですが・・・帝国に着くや、クラリス博士のチームが此度の件で王国に行くという話をきいて、わしも王国まで来ることになったんです」
「・・それは大変であったな・・」
「『カームクラン』から『リスラム』まで帝国の『高速魔導外輪船』で一週間・・やっと船酔いから解放されたと思えば、次は『魔導車』でしたからなあ・・わしも、よもや『イルティア』の地まで辿り着くとは思いませんでした」
「ですが、思わぬ事で白銀の神殿に参拝するのが叶いまして嬉しく思います。極東の地からここまで辿り着いて聖地巡礼が叶ったのは信者の誉ですからね」
「カツ殿も敬虔な『女神教』信者であるか。それはよかったであるな」
それから、はにかんだカツは『ごほんっ』と咳払いをしてから真面目な顔になった。
「話を元に戻しますが、わしが錬金する『魔導緋色金』ですが・・『マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』の量産に用いようと思っています」
「なんと!あの帝国が持ってきた発導機をか!?」
「はい。実際、帝国では数機実用化に成功した知らせも入っています。流石に女神ハーティルティア様が錬金したものには遥かに劣りますが、それでも四千サイクラ程までの出力が見込めるでしょう」
「「「ザワザワ・・・」」」
カツの言葉を聞いて、王国の人間たちは騒然となった。
「もちろん、建造した発導機はこのナゴーブ型魔導外輪船に載せますが、『ヒヒイロカネ・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』を利用して、とある物も量産するつもりです」
「その・・『とある物』とは・・?」
ジル国王の質問を聞いて、王国側の誰もが息を呑んでカツの言葉を待った。
「わしらは『魔導緋色金』を利用して魔導機甲を量産しようとしておりますのじゃ!」
その言葉に、更なる驚きの声がドックに響き渡った。
「最近、帝国でも大量の魔導銀を『アーティナイ連邦』から買い付けていた話というもありましたしね」
帝国の話がリリスから出てきたことにより、目を向けられていたフィオナがリリスへと視線を向けた。
リリスはハーティの為に魔導銀をかき集めていた際に、帝国が先回りして市場の魔導銀を買い占めていたことを根に持っていた。
「確かに、魔導具には魔導銀が必須ですものね。ですが、皆様がご存知のように、ハーティ様のお力添えで完成した人工女神の錬金にも必要なのですよ?」
「勿論、貴国に持ち込んだ『プラティウム・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』にも大量の魔導銀が使われておりますわ」
正確にはオルクス皇帝の命によってかなり前から帝国が新兵器開発のために魔導銀を世界中からかき集めていたのだが、フィオナはそれらをひっくるめて『女神』への貢献に役立てたと言い切った。
結果、帝国が集めた魔導銀がハーティの役に立ったのは事実なので、リリスは益々気に入らなかった。
(この女・・ハーティルティア様の事を崇拝していない所がいけ好かないですけど、魔導具や魔導についての知識といい、腹黒さやあざとさといい、なかなか頭脳が回りますね・・)
(どうやらマクスウェル殿下が想いをこじらせているハーティルティア様の事を良く思っていないようですが、私としては是非ともあの『色ボケ王子』をもらってやってほしいですね・・ハーティルティア様と添い遂げるのはこのリリスなのですから。・・いけませんね、妄想が滾ります!はぁはぁしそうです・・)
「なにか物言いたげなご様子ですが、いかがしました?聖女様?」
(はっ!?いけません!『聖女』ともあろう者が、つい邪な妄想を!!)
「いえ、そのことについては私からも感謝申し上げます」
リリスは脳内の素敵映像を消去すると、何事もなかったように答えた。
「残りの金や銅、鉄については『女神教』の信者の皆様に寄付を募りましょう。女神ハーティルティア様の手助けとなるのですから、きっと相当数が集まるはずです」
「本当ですの!?それはよかったですわ!帝国からはとりあえず持参品の地金を使いますわ!あとはお兄様にお願いして随時輸送してもらっていますしね!」
そして、綻んだ顔をしていたフィオナはスッと真面目な表情になった。
「ところで、まだわたくし、マクスウェル様のご質問に答えておりませんでしたね。先程の別の物については彼の方が詳しいので紹介致しますわ」
「『カツ』さん、こちらにいらしてくださる?」
「はい」
フィオナはドックの端で作業をしていたカツを呼び止めると、近くに来る様に促した。
カツは作業用の簡素なデールを身に纏っており、全身が若干薄汚れているようであった。
「こちらの方は『アーティナイ連邦』からお越しいただいた錬金魔導士の『カツ・クラマ』さんです」
カツはフィオナに紹介されると、素早く膝をついた。
「この度はお目にかかれて光栄でございます。わしは『カツ・クラマ』と申します。見ての通り、『ドワーフ』の血が混ざっております。国王陛下、並びに殿下と聖女様、そして総司祭様までお揃いで恐縮です」
「『カツ』殿、そこまでかしこまらなくて結構である。これからは余や他の者とも密に打ち合わせをする仲となる。いちいち跪かれてはものごとが進まぬからのう」
「ありがたき幸せ」
ジル国王の赦しを得たカツはすくっと立ち上がった。
「して、多種の貴金属が必要な理由について、そなたは知っているらしいな?」
「はい。実は、わしのご先祖様が錬金に成功した『魔導緋色金』を錬金するのに複数の貴金属が必要なのです」
「「「『魔導緋色金』?」」」
カツから放たれた聴き慣れない言葉に、イルティア王国の人達が一様に首を傾げた。
「はいですじゃ。『魔導緋色金』は素材としては有用性が少なかったので廃れて行ってしまった故、存在や錬金方法については『アーティナイ連邦』でも限られた人しか知らない素材なのです」
「ですが、魔導銀より遥かにマナ抵抗が少ないという素材の特性を聞いた帝国のクラリス博士が、魔導具の特にマナによる負荷が大きい部分への有用性を見出したのです」
「それによって、それが錬金できるわしが帝国に派遣されたのですが・・・帝国に着くや、クラリス博士のチームが此度の件で王国に行くという話をきいて、わしも王国まで来ることになったんです」
「・・それは大変であったな・・」
「『カームクラン』から『リスラム』まで帝国の『高速魔導外輪船』で一週間・・やっと船酔いから解放されたと思えば、次は『魔導車』でしたからなあ・・わしも、よもや『イルティア』の地まで辿り着くとは思いませんでした」
「ですが、思わぬ事で白銀の神殿に参拝するのが叶いまして嬉しく思います。極東の地からここまで辿り着いて聖地巡礼が叶ったのは信者の誉ですからね」
「カツ殿も敬虔な『女神教』信者であるか。それはよかったであるな」
それから、はにかんだカツは『ごほんっ』と咳払いをしてから真面目な顔になった。
「話を元に戻しますが、わしが錬金する『魔導緋色金』ですが・・『マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』の量産に用いようと思っています」
「なんと!あの帝国が持ってきた発導機をか!?」
「はい。実際、帝国では数機実用化に成功した知らせも入っています。流石に女神ハーティルティア様が錬金したものには遥かに劣りますが、それでも四千サイクラ程までの出力が見込めるでしょう」
「「「ザワザワ・・・」」」
カツの言葉を聞いて、王国の人間たちは騒然となった。
「もちろん、建造した発導機はこのナゴーブ型魔導外輪船に載せますが、『ヒヒイロカネ・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』を利用して、とある物も量産するつもりです」
「その・・『とある物』とは・・?」
ジル国王の質問を聞いて、王国側の誰もが息を呑んでカツの言葉を待った。
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