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最終章 決戦!『デスティウルス』編
聖斧レガリアとバハムスの想い 〜シエラ視点〜
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「綺麗・・・」
シエラは目の前に存在する『斧』を見て、思わず言葉を漏らした。
その『斧』は刃の部分である本体と柄の先に神白銀が使われており、持ち手部分は『聖樹』と思わしき木材が用いられていた。
神白銀部分には『聖剣ニーヴァルテ』や『聖杖エーテリア』と同じように、現在の言語体系とは異なる印影で刻まれた魔導式が複雑に入り組み、自然に放出されるマナによって美しい白銀色の光を放っていた。
「・・・・・」
シエラは、まるで吸い寄せられるように目の前の『斧』に近づくと、おそるおそる指先を伸ばした。
そして、シエラの指が『斧』に触れた瞬間・・。
パァァ!!!
「っ!?」
突然、シエラの視界が白銀色の光に染まった。
「っ!?な、なに!?」
シエラは突然のことで一瞬目が眩んでしまうが、程なくして視界も回復した。
しかし、回復した視界で周囲を見渡せば、そこは先ほど自分が立っていた凍てつく『霊峰』の中に存在する草原とは全く異なる場所になっていた。
というよりも、その場所はどこまでも果てしなく広がる白銀の空間が広がっているだけであり、空すら存在しない中でそれが地面なのか定かではないが、シエラの足下には水面の波紋のようなものが一歩動くごとに広がっていた。
「ここは・・・どこ!?」
シエラは訳が分からないままキョロキョロと周囲を見渡す。
「こっちだ」
その時、先ほどまで頭の中で聞こえていたものと同じ声がシエラの耳へ直接入ってきた。
「っ!」
シエラはすぐに声の方向へと振り返る。
すると、そこには先ほどまで存在しなかった一人の屈強な体格をした男性が立っていた。
その男は白銀の光を放つ艶やかな長髪をオールバックにしており、トーガのような服を身に纏った二十代後半程に見える風貌であった。
そして、その体格と立ち姿、向けられた鋭い眼差しを見れば、その男が相当な強さを持つ歴戦の武人なのだろうと誰の目から見ても容易に想像できた。
「待っていたぞ、『勇者シエラ』よ」
「っ!?どうして私の名前を!?貴方は一体何者なんですか!?」
シエラの質問に対して、男はニカッと微笑んだ。
「我は名を『バハムス』という。かつて『神界』では親愛なる主君・・・『ハーティルティア』様の側近であった者だ」
「っ!?ということは神ぞ・・・っは!?そうとも知らず大変失礼をっ・・・!?」
目の前の男が『神族』であると知ったシエラは直ぐさま『最敬礼』をしようとする。
「構わないぞ、そのままでいい」
しかし、それをバハムスが制止した。
「わかりました、バハムス様・・・ですが、どうして突然私の前に御姿を現されたのですか?」
シエラの質問にバハムスは『ふむ』と頷いた。
「まず、シエラよ・・君は今もあの『霊峰』にいるのだ。ここは、いわば我の『残滓』が遺した精神世界のようなものであるな」
「・・・『残滓』ですか?」
「うむ、我は君のいる世界で『黒竜』として転生した『神族』だったのだ」
「『黒竜』!?あの五千年以上生きるとされる伝説の・・・!?」
「・・そうだ。・・・だが、恥ずかしながら我は『邪神』に不覚を取ってしまって自我を失ったのだ。そして、親愛なる主君へその牙を向けてしまった・・」
「ハーティさん達に!?ハーティさん達は大丈夫なんですか!?」
シエラは、バハムスがハーティと戦っていたことを知ってひどく狼狽えた。
「もちろんだ。親愛なる主君とその仲間達はとても強かった。主君達は自我を失った我を正気に戻してくれたし、我を操った『邪神エメラダ』を討伐することもできた」
「よかった・・・」
シエラはバハムスの言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。
「しかし、既に『闇の力』にその肉体を蝕まれた我は、今君が立っているこの『霊峰』の頂で『失われた神界』へと還ったのだ」
「そんな・・・そんなことって」
バハムスの死を聞いたシエラは表情を曇らせた。
「・・・そう悲しむことはない。我は最期に探し求めていた親愛なる主君に会うことができた。それに、主君のもたらした新しい世界で五千年以上の年月を生きることができたのだ。だから、我の生については一片の悔いもない」
「だが、我の肉体がエーテルに還ろうとする中、何故か我の『残滓』がこの地に残ったのだ」
「それは、おそらく我がまだこの地で為すべきことがあるからなのだと、我は思ったのだ」
「だから、我は必死にこの世界へ向けて声を発した。すると、シエラ・・君に我の声が届いたのだ」
「つまり、君には記憶が残っていないのかもしれぬが、おそらく君もかつて『神界』に存在した『女神』の転生体なのだろう」
「君の、人間としては異常な程満ち溢れる『マナの滾り』は、おそらくその点が関係しているかもやしれん。とにかく、だからこそ君は私の声を聞くことが出来たと考えられるな」
「私が・・『女神』・・・」
「我は最期に親愛なる主君に道標を示したが、おそらく近いうちにこの世界は『邪神』による危機に晒されるであろう。我の予感がそう告げるのだ」
「だが、我は見ての通り君達の事を助けることはできないのだ」
「そんなっ!?」
「・・だからこそ、我は君達に親愛なる主君が生み出した、この愛すべき世界を託したいのだ」
「本来エーテルに還るはずの我が君に声を届けることが出来たのは、何かの運命やもしれん」
「だが・・・我の『残滓』も、そろそろこの世界には留まれなくなるだろう」
バハムスは、一瞬表情を曇らせると、再びしっかりとした眼差しでシエラを見つめた。
パァァァ!!
そして、バハムスはその両手を前に出すと、突如光を伴って出現した一本の『斧』を携えた。
それは、シエラがバハムスと立っている空間にやってくる直前に触れたものと同じ『斧』であった。
「君が現実世界で触れたのは、この『聖斧レガリア』だ」
「これは、かつて『神界大戦』の時に『女神ハーティルティア』によって生み出され、数多の『邪神』を滅ぼした三つの『神器』のうちの一つ。そして、我の愛用していた『相棒』だ」
そう言いながら、バハムスはシエラに『聖斧レガリア』を手渡した。
「それを君に託そう」
シエラが手にした『聖斧レガリア』には、見た目以上の確かな『重み』が感じられた。
「我が君を認めたのだ。『聖斧レガリア』は必ず君に応えてくれるだろう」
「そして、親愛なる主君と共に、必ずこの世界を救ってくれ」
「バハムス様・・・」
バハムスはシエラを見て満足げに微笑むと、その手で優しく頭を撫でた。
同時に、バハムスの身体が白銀の光の粒子となって崩れ始めた。
「必ず頼むぞ・・・・『小さくも勇敢な勇者』よ・・・」
「っ!待ってください!バハムス様!まだ私は沢山聞きたいことがっ!」
しかし、シエラの言葉も空しく、バハムスは光の粒子となって消滅していった。
パァァァ!!
「っ!?」
そして、そのまま激しい光がシエラの視界を埋め尽くすと、意識は再び『霊峰』へと戻った。
「『聖斧レガリア』・・」
シエラが触れたときは地面に突き刺さっていた『聖斧レガリア』は、いつのまにかシエラの両手に握られていた。
そして、シエラが『神斧』の名を呼びながら、それを握る手の力を込めた、その瞬間・・。
パァァァァ!!!
シエラの身体から視認できるほどのマナが放出され、シエラの暗く艶やかな長髪が根元から白銀色に染まって行く。
やがて、毛並みの良い獣耳や尻尾、更には愛らしい双眸までもが美しい白銀色に染まって行った。
シエラは『聖斧レガリア』の刃に映り込む自身の顔を見て、目を見開いた。
「これが・・『女神』の力・・・!!」
そして、静かに瞼を閉じて呼吸を整えると、再びその双眸を力強く見開いた。
(バハムス様!!貴方様の想い・・確かに受け取りました!!)
(私、シエラは必ず貴方様の想いを叶えてみせます!!!!)
そう言いながら、シエラは『聖斧レガリア』を構えた。
シエラは目の前に存在する『斧』を見て、思わず言葉を漏らした。
その『斧』は刃の部分である本体と柄の先に神白銀が使われており、持ち手部分は『聖樹』と思わしき木材が用いられていた。
神白銀部分には『聖剣ニーヴァルテ』や『聖杖エーテリア』と同じように、現在の言語体系とは異なる印影で刻まれた魔導式が複雑に入り組み、自然に放出されるマナによって美しい白銀色の光を放っていた。
「・・・・・」
シエラは、まるで吸い寄せられるように目の前の『斧』に近づくと、おそるおそる指先を伸ばした。
そして、シエラの指が『斧』に触れた瞬間・・。
パァァ!!!
「っ!?」
突然、シエラの視界が白銀色の光に染まった。
「っ!?な、なに!?」
シエラは突然のことで一瞬目が眩んでしまうが、程なくして視界も回復した。
しかし、回復した視界で周囲を見渡せば、そこは先ほど自分が立っていた凍てつく『霊峰』の中に存在する草原とは全く異なる場所になっていた。
というよりも、その場所はどこまでも果てしなく広がる白銀の空間が広がっているだけであり、空すら存在しない中でそれが地面なのか定かではないが、シエラの足下には水面の波紋のようなものが一歩動くごとに広がっていた。
「ここは・・・どこ!?」
シエラは訳が分からないままキョロキョロと周囲を見渡す。
「こっちだ」
その時、先ほどまで頭の中で聞こえていたものと同じ声がシエラの耳へ直接入ってきた。
「っ!」
シエラはすぐに声の方向へと振り返る。
すると、そこには先ほどまで存在しなかった一人の屈強な体格をした男性が立っていた。
その男は白銀の光を放つ艶やかな長髪をオールバックにしており、トーガのような服を身に纏った二十代後半程に見える風貌であった。
そして、その体格と立ち姿、向けられた鋭い眼差しを見れば、その男が相当な強さを持つ歴戦の武人なのだろうと誰の目から見ても容易に想像できた。
「待っていたぞ、『勇者シエラ』よ」
「っ!?どうして私の名前を!?貴方は一体何者なんですか!?」
シエラの質問に対して、男はニカッと微笑んだ。
「我は名を『バハムス』という。かつて『神界』では親愛なる主君・・・『ハーティルティア』様の側近であった者だ」
「っ!?ということは神ぞ・・・っは!?そうとも知らず大変失礼をっ・・・!?」
目の前の男が『神族』であると知ったシエラは直ぐさま『最敬礼』をしようとする。
「構わないぞ、そのままでいい」
しかし、それをバハムスが制止した。
「わかりました、バハムス様・・・ですが、どうして突然私の前に御姿を現されたのですか?」
シエラの質問にバハムスは『ふむ』と頷いた。
「まず、シエラよ・・君は今もあの『霊峰』にいるのだ。ここは、いわば我の『残滓』が遺した精神世界のようなものであるな」
「・・・『残滓』ですか?」
「うむ、我は君のいる世界で『黒竜』として転生した『神族』だったのだ」
「『黒竜』!?あの五千年以上生きるとされる伝説の・・・!?」
「・・そうだ。・・・だが、恥ずかしながら我は『邪神』に不覚を取ってしまって自我を失ったのだ。そして、親愛なる主君へその牙を向けてしまった・・」
「ハーティさん達に!?ハーティさん達は大丈夫なんですか!?」
シエラは、バハムスがハーティと戦っていたことを知ってひどく狼狽えた。
「もちろんだ。親愛なる主君とその仲間達はとても強かった。主君達は自我を失った我を正気に戻してくれたし、我を操った『邪神エメラダ』を討伐することもできた」
「よかった・・・」
シエラはバハムスの言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。
「しかし、既に『闇の力』にその肉体を蝕まれた我は、今君が立っているこの『霊峰』の頂で『失われた神界』へと還ったのだ」
「そんな・・・そんなことって」
バハムスの死を聞いたシエラは表情を曇らせた。
「・・・そう悲しむことはない。我は最期に探し求めていた親愛なる主君に会うことができた。それに、主君のもたらした新しい世界で五千年以上の年月を生きることができたのだ。だから、我の生については一片の悔いもない」
「だが、我の肉体がエーテルに還ろうとする中、何故か我の『残滓』がこの地に残ったのだ」
「それは、おそらく我がまだこの地で為すべきことがあるからなのだと、我は思ったのだ」
「だから、我は必死にこの世界へ向けて声を発した。すると、シエラ・・君に我の声が届いたのだ」
「つまり、君には記憶が残っていないのかもしれぬが、おそらく君もかつて『神界』に存在した『女神』の転生体なのだろう」
「君の、人間としては異常な程満ち溢れる『マナの滾り』は、おそらくその点が関係しているかもやしれん。とにかく、だからこそ君は私の声を聞くことが出来たと考えられるな」
「私が・・『女神』・・・」
「我は最期に親愛なる主君に道標を示したが、おそらく近いうちにこの世界は『邪神』による危機に晒されるであろう。我の予感がそう告げるのだ」
「だが、我は見ての通り君達の事を助けることはできないのだ」
「そんなっ!?」
「・・だからこそ、我は君達に親愛なる主君が生み出した、この愛すべき世界を託したいのだ」
「本来エーテルに還るはずの我が君に声を届けることが出来たのは、何かの運命やもしれん」
「だが・・・我の『残滓』も、そろそろこの世界には留まれなくなるだろう」
バハムスは、一瞬表情を曇らせると、再びしっかりとした眼差しでシエラを見つめた。
パァァァ!!
そして、バハムスはその両手を前に出すと、突如光を伴って出現した一本の『斧』を携えた。
それは、シエラがバハムスと立っている空間にやってくる直前に触れたものと同じ『斧』であった。
「君が現実世界で触れたのは、この『聖斧レガリア』だ」
「これは、かつて『神界大戦』の時に『女神ハーティルティア』によって生み出され、数多の『邪神』を滅ぼした三つの『神器』のうちの一つ。そして、我の愛用していた『相棒』だ」
そう言いながら、バハムスはシエラに『聖斧レガリア』を手渡した。
「それを君に託そう」
シエラが手にした『聖斧レガリア』には、見た目以上の確かな『重み』が感じられた。
「我が君を認めたのだ。『聖斧レガリア』は必ず君に応えてくれるだろう」
「そして、親愛なる主君と共に、必ずこの世界を救ってくれ」
「バハムス様・・・」
バハムスはシエラを見て満足げに微笑むと、その手で優しく頭を撫でた。
同時に、バハムスの身体が白銀の光の粒子となって崩れ始めた。
「必ず頼むぞ・・・・『小さくも勇敢な勇者』よ・・・」
「っ!待ってください!バハムス様!まだ私は沢山聞きたいことがっ!」
しかし、シエラの言葉も空しく、バハムスは光の粒子となって消滅していった。
パァァァ!!
「っ!?」
そして、そのまま激しい光がシエラの視界を埋め尽くすと、意識は再び『霊峰』へと戻った。
「『聖斧レガリア』・・」
シエラが触れたときは地面に突き刺さっていた『聖斧レガリア』は、いつのまにかシエラの両手に握られていた。
そして、シエラが『神斧』の名を呼びながら、それを握る手の力を込めた、その瞬間・・。
パァァァァ!!!
シエラの身体から視認できるほどのマナが放出され、シエラの暗く艶やかな長髪が根元から白銀色に染まって行く。
やがて、毛並みの良い獣耳や尻尾、更には愛らしい双眸までもが美しい白銀色に染まって行った。
シエラは『聖斧レガリア』の刃に映り込む自身の顔を見て、目を見開いた。
「これが・・『女神』の力・・・!!」
そして、静かに瞼を閉じて呼吸を整えると、再びその双眸を力強く見開いた。
(バハムス様!!貴方様の想い・・確かに受け取りました!!)
(私、シエラは必ず貴方様の想いを叶えてみせます!!!!)
そう言いながら、シエラは『聖斧レガリア』を構えた。
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