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最終章 決戦!『デスティウルス』編
『ヅヴァイ』迎撃戦 〜『帝都リスラム』視点〜
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「あん?なんだありゃ?」
ヅヴァイは迫り来る『ラピス』を見て首を傾げた。
「『ゴーレム』なのか?だけど、それにしてはやけに統率が取れているな・・」
「まあいい、目障りな奴は倒してしまえばいいんだからな!!」
ドゥーン!!
ヅヴァイは気怠そうに首を鳴らすと高速で飛翔し、一番先頭にいる『ラピス』に向かって漆黒の爪で襲い掛かった。
『貴様の思うようにはさせないぞ!!』
『ラピス』に搭乗するクウォリアスは、その爪に対して装備するランスで応戦した。
「はん!馬鹿が!!『神族』の武器ならともかく、俺の爪をそんなデカさだけが取り柄のランスで防げるかよ!!」
ヅヴァイは人間より体格が大きいとは言え、それでも身長は三メートル強程である。
それに対して『ラピス』は全高が二十メートル弱ほどある為、『ラピス』の全高よりやや短い長さを持つ『リデューシングランス』は、ヅヴァイの身体よりも数倍大きい。
ヅヴァイはそんなランスの大きさに臆する様子もなく、自身の爪で受け止めた。
バァァァァァン!!!!
「な・・・にぃ!?」
しかし、魔導機甲の運動能力と質量が乗ったランスの攻撃を真面に受けたヅヴァイは、『ラピス』の攻撃に競り負けて後方へ吹き飛んだ。
イィィィィン、ドガァァァァン!!!
そして、数百メートルに渡って吹き飛ばされたヅヴァイは、そのまま『リスラム』市街地の高層建物に激しく衝突した。
シュウゥゥゥ・・・・バラバラ・・。
「ってーな・・・おい、つーかどういうことだ?」
ヅヴァイは瓦礫の中から体を起こすと、首を傾げた。
「俺の爪は『還元』が付与されている筈・・だから、あらゆるものを切り裂く能力があるはずなんだが・・」
シュウゥゥゥゥ・・・!
ヅヴァイが首を傾げながら自身の爪を確認すると、その爪から黒い霧が霧散していた。
それをよく見れば、爪自体が浄化されているようであった。
「・・『浄化魔導』と『還元』が付与されているのか?一体なんなんだ?あのデカブツは・・」
ガラガラ・・・。
「まあいい。・・・なら、これはどうだ!!!」
ドゥーーン!
ヅヴァイは完全に起き上がると、高速で飛翔して『ラピス』部隊との距離を詰める。
「おらぁぁぁぁ!!!」
そして、ヅヴァイはクウォリアスに向かって魔弾を放った。
クウォリアスは直ぐに回避行動に出るが、それよりも魔弾の速度が速いので完全な回避は不可能であった。
『甘い!!』
ドギャアアアアン!!
しかし、回避が不可能と瞬時に判断したクウォリアスは機体の防御魔導と『リデューシングランス』によって、ヅヴァイの魔弾を弾いて受け流した。
「おいおい!俺の魔弾を受け流すたぁどういうことだ!?まさか防御魔導まで展開しているのか!?よくわからんが、そんなことが可能な下等生物がいるってのかよ!!」
「ちっ・・なら、一番動くてめぇからぶっ殺してやるよ!!」
ドゥン!!
魔弾を弾かれたヅヴァイは、再び自身の爪を振りかぶりながらクウォリアスの機体へ迫る。
『そうはさせません!!!』
ダァーーーーン!!!
しかし、その様子を見た他の『ラピス』が、機体腕部に搭載された発射機から一発の砲弾を発射する。
直後、使用済みの『魔導莢』が砲弾を発射した『ラピス』の腕部から勢いよくパージされた。
「んな!?」
ドガァァァン!!!
そして、発射された弾頭部分が、迫り来るヅヴァイに命中して大爆発を起こした。
「ぐあっ!!」
ヅヴァイに爆発による直接的なダメージは無かったが、勢いを削がれたことによってその表情を歪ませた。
「ちっ・・小賢しい奴らだ」
「下等生物が足掻きやがって・・・こうなったら本気でやらしてもらおうか!!」
鋭利な牙を向いて泡を飛ばしながら叫びだしたヅヴァイは、自身の周囲に複数の魔弾を収束し始めた。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
ザワザワザワ・・・。
『ラピス』の部隊とヅヴァイが交戦を始めた頃、冒険者ギルドでは宮殿からの緊急依頼を受け、冒険者の招集に慌ただしくなっていた。
ドォォォン・・・。
「上空で『邪神』との交戦が始まりました!!」
『リスラム』の冒険者ギルドで受付嬢をするリーシャは屋根の向こうから聞こえてくる爆発音に涙目になりながら業務を行っていた。
その時、騒然とする冒険者ギルドの受付ロビーに三人組の冒険者達がやってきた。
そのうちのリーダー格の男がリーシャの元へ歩み寄る。
「『ブラックスミス』だ。招集を受けてここに来たんだが、市街地の被害はどうなっているんだ?」
「あ、マックスさん!今のところ帝国軍の魔導機甲部隊が食い止めてくれているので建物の損壊が一部あるものの、大きな被害はありません」
「それはよかった・・。正直『邪神』が相手となると、いくら俺たちが『二級冒険者』とはいえ立ち向かえる相手ではないだろう。だが、俺たちは俺たちで出来ることをするつもりだ」
「帝都民の避難誘導は任せるんだな」
「それに、私たちにちょっとした考えがあるんですよ。ですから『ブラックスミス』は避難誘導しながら独自に動かせてもらいますよ」
「もちろん結構ですよ!協力ありがとうございます!グロックさん、リックスさんもありがとうございます!」
「ああ、クランによろしく伝えておいてくれ!君も気を付けるんだぞ!」
マックス達はリーシャにひらひらと手を振ると、颯爽と冒険者ギルドを後にした。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
ウォンウォン・・・。
一方、宮殿内部の通信室では、オルクスが『イルティア・レ・イーレ』に向けて長距離エーテル通信を発していた。
「こちらオルクス。『イルティア・レ・イーレ』、聞こえるか!!」
先程からオルクスが魔導コンソールに向かって声をかけるが、『イルティア・レ・イーレ』からの返答は得られないままであった。
「よもや・・デスティウルスにやられたわけではあるまいな・・ハーティー嬢・・」
『・・ザザッ、こちら『イルティア・レ・イーレ』艦長マクスウェル。聞こえるか?』
いよいよ不吉な想像で表情が暗くなり始めた頃、漸く返ってきた応答を聞いてオルクスは胸を撫で下ろした。
「ああマクスウェル、聴こえているぞ。無事で何よりだ」
『ドギャギャギャ・・・』
マクスウェルが応答した直後、激しい衝突音らしきものがコンソールからオルクスの耳へと入ってきた。
『正直無事とは喜べない状況だ。こっちは今、ハーティ達と共にデスティウルスと交戦中だ。それよりも急ぎ貴殿に伝えたいことがある』
マクスウェルが言わんとする事を悟ったオルクスは先に口を開いた。
「『邪神』が襲来してくるという事だろう?ちょうど今、帝都は獣人型の『邪神』による襲撃を受けているところだ」
『なんだって!?帝都は大丈夫なのか!?』
エーテル通信で会話している為、オルクスはマクスウェルの表情が窺えないが、声の雰囲気から酷く狼狽えているのが伝わってきていた。
「今のところは『ラピス』でなんとか食い止めている。余はデスティウルスと交戦しているそなた達の方が心配だが・・」
『こっちは『女神』に『聖女』に『聖騎士』、あげくは人工女神まであるんだ。問題ないよ』
「確かに、それだけいれば帝都よりは安全かな」
オルクスは自嘲気味に苦笑いした。
『・・話は変わるが、貴殿に伝えたいことがある』
「悪い知らせか?」
『ああ、とってもな。デスティウルスはどうやら三柱の『邪神』を世界各地に放ったらしい。おそらく、今帝都に襲来しているのはその内の一柱だろう。もし、他の『邪神』が帝国以外の国にも襲来していたら一大事だ。だから貴殿の方から各国へ注意を促してほしい。正直、こっちは手が離せそうにないんだ』
「ちっ・・やはりか。わかった、この通信室は各国の王宮や宮殿へ直接エーテル通信ができる。だから、余の方から各国へ伝達しよう」
『すまない、また落ち着いたら、そちらの報告も逐一欲しいのだが・・』
「勿論だ」
『・・ありがとう』
「・・・・・」
『・・・・・』
しばらく会話した二人の間に沈黙が続く。
その沈黙を先に破ったのはオルクスであった。
「マクスウェル・・ハーティ嬢を、皆を頼んだぞ。必ず誰一人失う事なく、生きてまた会うと約束してくれ」
『・・ああ、約束する。この世界の為に必ずデスティウルスを滅ぼし、生きて帰ってみせるさ』
「頼むぞ・・!」
再度念押ししたオルクスは、マクスウェルとの通信を終えようと、コンソールに手を伸ばす。
『・・だが、ひとつだけ言っておく』
ピタッ。
しかし、その手はマクスウェルの言葉によって引き留められた。
『ハーティーは私の『婚約者』だ。今までも、そしてこれからも。だから、無事生きて帰ってきたとしても貴殿には渡さないから』
「ふっ・・」
マクスウェルの言葉を聞いたオルクスは不敵に笑った。
「それはどうかな?相手を選ぶのはハーティー嬢とて同じだ。『婚約者』という立場に胡座をかいていたら、どこぞの男にでも掻っ攫われるぞ。まあ、余はそれでも構わぬがな」
『ちょ!?オルクス!それはどういう・・』
「武運を祈る」
ピッ!
オルクスは言いたい事だけ言うと一方的に通信を切った。
「ふう・・さあ、ハーティー嬢が安心して帰れるよう、余も気合を入れなければな」
オルクスは独り言ちたあと、『邪神』襲来を他の国に伝えるべく魔導コンソールに再び指を走らせた。
~設定資料~
魔導機甲『ラピス』
『魔導帝国オルテアガ』と『神聖イルティア王国』を主体とした多国籍軍である『女神同盟軍』によって共同開発された、人類史上初の量産型魔導機甲。
発導機には『商業国家アーティナイ連邦』で生み出されるも、利用用途の少なさから錬成方法が衰退しつつあった『ヒヒイロカネ』を用いたクラマ式を使用する。
『プラティウム』を用いるクラリス式に比べると、マナ出力で大幅に劣るがそれでも今までの魔導具に比べると桁違いのマナ出力を誇る。
当初から対『邪神』用の運用をメインに設計された為、『還元』の魔導と『浄化魔導』が付与された『リデューシングランス』等、浄化魔導を盛り込んだ特殊兵装を備える。
しかし、搭載装備の重量やそれに伴う機体の大型化により機体重量が重い為、陸地や市街地での運用には注意が必要である。
尚、操縦方式は『プラタナ』と酷似している。
スペック
魔導機甲『ラピス』
全高18.5メートル
乾燥重量 65.8トン システム重量 74.5トン
動力 クラマ式発導機(ヒヒイロカネ・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター)
動力伝達系 流体ミスリル
装甲 ミスリル合金(一部ヒヒイロカネを使用)
定格出力 3211サイクラ 最大 3650サイクラ
最高飛行速度 時速720km/h
想定耐用時間8,187時間(定格出力稼働による)
搭載魔導
飛翔魔導 上級防御魔導
武装
対『邪神』用近接衝槍『リデューシングランス』
45口径50mm腕部砲
砲弾 50mm対『邪神』用ホーリー・バーストジャケット弾
50mm対魔獣用徹甲弾
50mm爆裂魔導榴弾
のいずれかを選択(装填数はいずれも25発)
ヅヴァイは迫り来る『ラピス』を見て首を傾げた。
「『ゴーレム』なのか?だけど、それにしてはやけに統率が取れているな・・」
「まあいい、目障りな奴は倒してしまえばいいんだからな!!」
ドゥーン!!
ヅヴァイは気怠そうに首を鳴らすと高速で飛翔し、一番先頭にいる『ラピス』に向かって漆黒の爪で襲い掛かった。
『貴様の思うようにはさせないぞ!!』
『ラピス』に搭乗するクウォリアスは、その爪に対して装備するランスで応戦した。
「はん!馬鹿が!!『神族』の武器ならともかく、俺の爪をそんなデカさだけが取り柄のランスで防げるかよ!!」
ヅヴァイは人間より体格が大きいとは言え、それでも身長は三メートル強程である。
それに対して『ラピス』は全高が二十メートル弱ほどある為、『ラピス』の全高よりやや短い長さを持つ『リデューシングランス』は、ヅヴァイの身体よりも数倍大きい。
ヅヴァイはそんなランスの大きさに臆する様子もなく、自身の爪で受け止めた。
バァァァァァン!!!!
「な・・・にぃ!?」
しかし、魔導機甲の運動能力と質量が乗ったランスの攻撃を真面に受けたヅヴァイは、『ラピス』の攻撃に競り負けて後方へ吹き飛んだ。
イィィィィン、ドガァァァァン!!!
そして、数百メートルに渡って吹き飛ばされたヅヴァイは、そのまま『リスラム』市街地の高層建物に激しく衝突した。
シュウゥゥゥ・・・・バラバラ・・。
「ってーな・・・おい、つーかどういうことだ?」
ヅヴァイは瓦礫の中から体を起こすと、首を傾げた。
「俺の爪は『還元』が付与されている筈・・だから、あらゆるものを切り裂く能力があるはずなんだが・・」
シュウゥゥゥゥ・・・!
ヅヴァイが首を傾げながら自身の爪を確認すると、その爪から黒い霧が霧散していた。
それをよく見れば、爪自体が浄化されているようであった。
「・・『浄化魔導』と『還元』が付与されているのか?一体なんなんだ?あのデカブツは・・」
ガラガラ・・・。
「まあいい。・・・なら、これはどうだ!!!」
ドゥーーン!
ヅヴァイは完全に起き上がると、高速で飛翔して『ラピス』部隊との距離を詰める。
「おらぁぁぁぁ!!!」
そして、ヅヴァイはクウォリアスに向かって魔弾を放った。
クウォリアスは直ぐに回避行動に出るが、それよりも魔弾の速度が速いので完全な回避は不可能であった。
『甘い!!』
ドギャアアアアン!!
しかし、回避が不可能と瞬時に判断したクウォリアスは機体の防御魔導と『リデューシングランス』によって、ヅヴァイの魔弾を弾いて受け流した。
「おいおい!俺の魔弾を受け流すたぁどういうことだ!?まさか防御魔導まで展開しているのか!?よくわからんが、そんなことが可能な下等生物がいるってのかよ!!」
「ちっ・・なら、一番動くてめぇからぶっ殺してやるよ!!」
ドゥン!!
魔弾を弾かれたヅヴァイは、再び自身の爪を振りかぶりながらクウォリアスの機体へ迫る。
『そうはさせません!!!』
ダァーーーーン!!!
しかし、その様子を見た他の『ラピス』が、機体腕部に搭載された発射機から一発の砲弾を発射する。
直後、使用済みの『魔導莢』が砲弾を発射した『ラピス』の腕部から勢いよくパージされた。
「んな!?」
ドガァァァン!!!
そして、発射された弾頭部分が、迫り来るヅヴァイに命中して大爆発を起こした。
「ぐあっ!!」
ヅヴァイに爆発による直接的なダメージは無かったが、勢いを削がれたことによってその表情を歪ませた。
「ちっ・・小賢しい奴らだ」
「下等生物が足掻きやがって・・・こうなったら本気でやらしてもらおうか!!」
鋭利な牙を向いて泡を飛ばしながら叫びだしたヅヴァイは、自身の周囲に複数の魔弾を収束し始めた。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
ザワザワザワ・・・。
『ラピス』の部隊とヅヴァイが交戦を始めた頃、冒険者ギルドでは宮殿からの緊急依頼を受け、冒険者の招集に慌ただしくなっていた。
ドォォォン・・・。
「上空で『邪神』との交戦が始まりました!!」
『リスラム』の冒険者ギルドで受付嬢をするリーシャは屋根の向こうから聞こえてくる爆発音に涙目になりながら業務を行っていた。
その時、騒然とする冒険者ギルドの受付ロビーに三人組の冒険者達がやってきた。
そのうちのリーダー格の男がリーシャの元へ歩み寄る。
「『ブラックスミス』だ。招集を受けてここに来たんだが、市街地の被害はどうなっているんだ?」
「あ、マックスさん!今のところ帝国軍の魔導機甲部隊が食い止めてくれているので建物の損壊が一部あるものの、大きな被害はありません」
「それはよかった・・。正直『邪神』が相手となると、いくら俺たちが『二級冒険者』とはいえ立ち向かえる相手ではないだろう。だが、俺たちは俺たちで出来ることをするつもりだ」
「帝都民の避難誘導は任せるんだな」
「それに、私たちにちょっとした考えがあるんですよ。ですから『ブラックスミス』は避難誘導しながら独自に動かせてもらいますよ」
「もちろん結構ですよ!協力ありがとうございます!グロックさん、リックスさんもありがとうございます!」
「ああ、クランによろしく伝えておいてくれ!君も気を付けるんだぞ!」
マックス達はリーシャにひらひらと手を振ると、颯爽と冒険者ギルドを後にした。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
ウォンウォン・・・。
一方、宮殿内部の通信室では、オルクスが『イルティア・レ・イーレ』に向けて長距離エーテル通信を発していた。
「こちらオルクス。『イルティア・レ・イーレ』、聞こえるか!!」
先程からオルクスが魔導コンソールに向かって声をかけるが、『イルティア・レ・イーレ』からの返答は得られないままであった。
「よもや・・デスティウルスにやられたわけではあるまいな・・ハーティー嬢・・」
『・・ザザッ、こちら『イルティア・レ・イーレ』艦長マクスウェル。聞こえるか?』
いよいよ不吉な想像で表情が暗くなり始めた頃、漸く返ってきた応答を聞いてオルクスは胸を撫で下ろした。
「ああマクスウェル、聴こえているぞ。無事で何よりだ」
『ドギャギャギャ・・・』
マクスウェルが応答した直後、激しい衝突音らしきものがコンソールからオルクスの耳へと入ってきた。
『正直無事とは喜べない状況だ。こっちは今、ハーティ達と共にデスティウルスと交戦中だ。それよりも急ぎ貴殿に伝えたいことがある』
マクスウェルが言わんとする事を悟ったオルクスは先に口を開いた。
「『邪神』が襲来してくるという事だろう?ちょうど今、帝都は獣人型の『邪神』による襲撃を受けているところだ」
『なんだって!?帝都は大丈夫なのか!?』
エーテル通信で会話している為、オルクスはマクスウェルの表情が窺えないが、声の雰囲気から酷く狼狽えているのが伝わってきていた。
「今のところは『ラピス』でなんとか食い止めている。余はデスティウルスと交戦しているそなた達の方が心配だが・・」
『こっちは『女神』に『聖女』に『聖騎士』、あげくは人工女神まであるんだ。問題ないよ』
「確かに、それだけいれば帝都よりは安全かな」
オルクスは自嘲気味に苦笑いした。
『・・話は変わるが、貴殿に伝えたいことがある』
「悪い知らせか?」
『ああ、とってもな。デスティウルスはどうやら三柱の『邪神』を世界各地に放ったらしい。おそらく、今帝都に襲来しているのはその内の一柱だろう。もし、他の『邪神』が帝国以外の国にも襲来していたら一大事だ。だから貴殿の方から各国へ注意を促してほしい。正直、こっちは手が離せそうにないんだ』
「ちっ・・やはりか。わかった、この通信室は各国の王宮や宮殿へ直接エーテル通信ができる。だから、余の方から各国へ伝達しよう」
『すまない、また落ち着いたら、そちらの報告も逐一欲しいのだが・・』
「勿論だ」
『・・ありがとう』
「・・・・・」
『・・・・・』
しばらく会話した二人の間に沈黙が続く。
その沈黙を先に破ったのはオルクスであった。
「マクスウェル・・ハーティ嬢を、皆を頼んだぞ。必ず誰一人失う事なく、生きてまた会うと約束してくれ」
『・・ああ、約束する。この世界の為に必ずデスティウルスを滅ぼし、生きて帰ってみせるさ』
「頼むぞ・・!」
再度念押ししたオルクスは、マクスウェルとの通信を終えようと、コンソールに手を伸ばす。
『・・だが、ひとつだけ言っておく』
ピタッ。
しかし、その手はマクスウェルの言葉によって引き留められた。
『ハーティーは私の『婚約者』だ。今までも、そしてこれからも。だから、無事生きて帰ってきたとしても貴殿には渡さないから』
「ふっ・・」
マクスウェルの言葉を聞いたオルクスは不敵に笑った。
「それはどうかな?相手を選ぶのはハーティー嬢とて同じだ。『婚約者』という立場に胡座をかいていたら、どこぞの男にでも掻っ攫われるぞ。まあ、余はそれでも構わぬがな」
『ちょ!?オルクス!それはどういう・・』
「武運を祈る」
ピッ!
オルクスは言いたい事だけ言うと一方的に通信を切った。
「ふう・・さあ、ハーティー嬢が安心して帰れるよう、余も気合を入れなければな」
オルクスは独り言ちたあと、『邪神』襲来を他の国に伝えるべく魔導コンソールに再び指を走らせた。
~設定資料~
魔導機甲『ラピス』
『魔導帝国オルテアガ』と『神聖イルティア王国』を主体とした多国籍軍である『女神同盟軍』によって共同開発された、人類史上初の量産型魔導機甲。
発導機には『商業国家アーティナイ連邦』で生み出されるも、利用用途の少なさから錬成方法が衰退しつつあった『ヒヒイロカネ』を用いたクラマ式を使用する。
『プラティウム』を用いるクラリス式に比べると、マナ出力で大幅に劣るがそれでも今までの魔導具に比べると桁違いのマナ出力を誇る。
当初から対『邪神』用の運用をメインに設計された為、『還元』の魔導と『浄化魔導』が付与された『リデューシングランス』等、浄化魔導を盛り込んだ特殊兵装を備える。
しかし、搭載装備の重量やそれに伴う機体の大型化により機体重量が重い為、陸地や市街地での運用には注意が必要である。
尚、操縦方式は『プラタナ』と酷似している。
スペック
魔導機甲『ラピス』
全高18.5メートル
乾燥重量 65.8トン システム重量 74.5トン
動力 クラマ式発導機(ヒヒイロカネ・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター)
動力伝達系 流体ミスリル
装甲 ミスリル合金(一部ヒヒイロカネを使用)
定格出力 3211サイクラ 最大 3650サイクラ
最高飛行速度 時速720km/h
想定耐用時間8,187時間(定格出力稼働による)
搭載魔導
飛翔魔導 上級防御魔導
武装
対『邪神』用近接衝槍『リデューシングランス』
45口径50mm腕部砲
砲弾 50mm対『邪神』用ホーリー・バーストジャケット弾
50mm対魔獣用徹甲弾
50mm爆裂魔導榴弾
のいずれかを選択(装填数はいずれも25発)
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