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最終章 決戦!『デスティウルス』編
呼び起こされた記憶 〜シエラ視点〜
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・・・・。
・・・・・・。
オォォォォ・・・。
白銀の光が収まった後、シエラの視界には見慣れない光景が広がっていた。
果てしなく広がる緑の大地。
縁から地上へと降り注ぐ美しい滝を生み出す浮島の数々。
その『神界』の大地にある高台の丘には、幾柱もの神々が集結していた。
それら神々が見据える遥か先の空には、美しい『神界』の景色には不釣り合いな暗雲が立ち込めていた。
その時、シエラは神々が集結する本陣で神白銀の鎧とランスを身につけながら、部下と共に配置に就いていた。
「・・エラ様、・・・シエラ様!!」
ふと、シエラは自分の部下に声をかけられているのに気がついた。
「・・・ああ、ごめんなさい!どうしたの?」
「・・?久しぶりの前線で気が張ってしまう気持ちはわかりますが、シエラ様らしくないですね・・?」
「・・とりあえず報告です。我々『神族』は予定通り部隊の展開を完了しました。あの様子ですと、そう間もない時間で会敵する事でしょう」
報告を終えた部下は本陣の中央に目を向けると、顔を綻ばせた。
「しかし!本戦いは我々が敬愛してやまないハーティルティア様と側近の三柱が集結しております!ですから、間違いなく『邪神』共は瞬く間に駆逐される事でしょう!」
「わたくしも至高なる四柱の勇姿を拝見するのは数千年ぶりにございます!胸が高鳴りますね!」
「・・そうね。だけど、今回の戦いでまた一つ、美しい『神界』の景色が失われるというのは心苦しい事よ」
それぞれが戦略級の戦闘能力を持つのが、女神ハーティルティアを筆頭とした至高の四柱である。
至高の四柱が集う以上、幾ら『神界』の空を埋め尽くすほどに『邪神』が集結したとて、それらは間違いなく滅し尽くされるだろう。
しかし、シエラはこれから始まる激しい戦いによって、目の前の美しい景色が失われてしまうことに悲しみを隠せずにいた。
「あっ!シエラ様!ご覧になってください!ハーティルティア様です!」
そんな時、部下の女神がハーティルティアを見つけたのか、手を組みながら歓喜の表情を浮かべ出した。
「はあ・・・やはり皆様尊いです。わたくしは至高なる四柱と共に戦えることを心より光栄に思います!」
シエラは歓喜する女神に釣られて、その四柱へと視線を向ける。
そこには、ちょうどハーティルティアに向けて高笑いを上げるバハムスの姿があった。
ドクン・・。
(バハムス様・・・っ!?)
シエラはバハムスを見た瞬間に激しい胸の高まりを感じた。
そして、自身の身体がカッと熱くなる感覚がはっきりとわかった。
「ああ・・本当に素晴らしい・・って、どうなされました?シエラ様・・?何やら顔色が赤くなってらっしゃいますが・・?」
「なな、なんでもないのよ!?気にしないで!!」
「・・はあ・・?左様でございますか」
部下の女神は首を傾げると、再び瞳を輝かせながらハーティルティア達を眺めていた。
シエラにとっても当然のように、ハーティルティア達四柱は尊敬や敬愛の対象である。
しかし、数百年ほど前から、何故かバハムスに対してだけ今シエラの身に起きているような胸の高まりを感じているのであった。
そして、シエラ自身もそれが通常の『神族』が持つことがない気持ちであると言うことを自覚していた。
元より『神気』の集合体であり、『神格』というもので個々を定義されている『神族』は、肉体を持たずに寿命という概念もない。
そして、『神気』から自然発生する『神族』は定義上の外見で『男型』と『女型』が存在するが、それは子孫を残す為の性差ではない。
その為、『神族』は自分より上の『神格』を持つ『神』を敬愛する思いはあっても、男女としての恋愛感情を持つことはあり得なかった。
しかし、シエラがバハムスに抱いている気持ちは紛れもなく特別なものであった。
ダッ!
「あ、シエラ様!どちらに!?」
胸の高まりを認識したシエラは居ても立っても居られず、バハムスの元に駆け寄る。
今回の戦いは明らかに『神族』側に過剰な戦力があるように見える。
だが、シエラは万が一にもバハムスが戦いによって滅びてしまうことを考えたくなかったのであった。
そして、それは最も『神格』の高い『女神ハーティルティア』に対して思う気持ちよりも大きなものであった。
シュタッ!
四柱の側に辿り着いたシエラは素早く跪く。
「此度の戦いで当方面の軍勢を任されている『第三神格位』のシエラと申します。突然の事で無礼とは存じておりますっ!ですか、至高なるハーティルティア様に連なる皆様と戦える喜びをどうしてもお伝えしたく、部隊を代表して参りました!」
「そうかしこまらないでください。シエラの武勲は私の耳にもよく入ってきています」
ハーティルティアはシエラに向かって柔らかい笑みを浮かべる。
「はっ!ハーティルティア様にそのような事を仰って頂いて恐悦至極に存じます!」
「おう!君が先の戦いで武勲を挙げたシエラか!!今回も期待しているぞ!」
バハムスは跪くシエラに向かってニカッと笑いながら語りかける。
「はっはひ!!あああありがとうございます!かか必ずや!バハムス様の期待に沿う戦果を挙げて見せます!」
バハムスに声をかけられたシエラは一気に顔を真っ赤に染め上げて、激しい鼓動のような感覚に胸が張り裂けそうな思いになった。
「バハムス、貴方はただでさえ図体が大きいのですからもう少し声を落としてください。シエラが萎縮しているではありませんか」
「親愛なる主君、我の図体や声は元々故、なかなか変えれませんなあ!」
バハムスは手にした『聖斧』を自身の肩にトントンと置いて『ガハハ』と大きく笑いながら答える。
「バハムス!貴方は!!またそうやってハーティルティア様から賜った『神器』を雑に扱って!!」
「おっと悪りぃ悪りぃ!ひぃ、リリスちゃんはいつもおっかねぇなあ!」
「なんですって!」
『神界』に存在する『神族』には、それぞれ自身の存在を定義する『神格』の高さによって位を持つ。
ハーティルティアが最も高い『神格』である、『第一神格位』を持つのは当然として、シエラの持つ『第三神格位』は『神族』の中では、貴族でいう『侯爵』に並ぶほど高い『神格』である。
因みに、バハムスを含むハーティルティアの側近三柱の神々は『第二神格位』を持つが、たった一つの位の差であっても、それは決して埋まることの無い大きなものであった。
そして、シエラは『第一神格位』で、本来であれば声をかけてもらうことすら畏れ多いハーティルティアよりも、バハムスに声をかけられたことに緊張してしまうようであった。
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白銀の光が収まった後、シエラの視界には見慣れない光景が広がっていた。
果てしなく広がる緑の大地。
縁から地上へと降り注ぐ美しい滝を生み出す浮島の数々。
その『神界』の大地にある高台の丘には、幾柱もの神々が集結していた。
それら神々が見据える遥か先の空には、美しい『神界』の景色には不釣り合いな暗雲が立ち込めていた。
その時、シエラは神々が集結する本陣で神白銀の鎧とランスを身につけながら、部下と共に配置に就いていた。
「・・エラ様、・・・シエラ様!!」
ふと、シエラは自分の部下に声をかけられているのに気がついた。
「・・・ああ、ごめんなさい!どうしたの?」
「・・?久しぶりの前線で気が張ってしまう気持ちはわかりますが、シエラ様らしくないですね・・?」
「・・とりあえず報告です。我々『神族』は予定通り部隊の展開を完了しました。あの様子ですと、そう間もない時間で会敵する事でしょう」
報告を終えた部下は本陣の中央に目を向けると、顔を綻ばせた。
「しかし!本戦いは我々が敬愛してやまないハーティルティア様と側近の三柱が集結しております!ですから、間違いなく『邪神』共は瞬く間に駆逐される事でしょう!」
「わたくしも至高なる四柱の勇姿を拝見するのは数千年ぶりにございます!胸が高鳴りますね!」
「・・そうね。だけど、今回の戦いでまた一つ、美しい『神界』の景色が失われるというのは心苦しい事よ」
それぞれが戦略級の戦闘能力を持つのが、女神ハーティルティアを筆頭とした至高の四柱である。
至高の四柱が集う以上、幾ら『神界』の空を埋め尽くすほどに『邪神』が集結したとて、それらは間違いなく滅し尽くされるだろう。
しかし、シエラはこれから始まる激しい戦いによって、目の前の美しい景色が失われてしまうことに悲しみを隠せずにいた。
「あっ!シエラ様!ご覧になってください!ハーティルティア様です!」
そんな時、部下の女神がハーティルティアを見つけたのか、手を組みながら歓喜の表情を浮かべ出した。
「はあ・・・やはり皆様尊いです。わたくしは至高なる四柱と共に戦えることを心より光栄に思います!」
シエラは歓喜する女神に釣られて、その四柱へと視線を向ける。
そこには、ちょうどハーティルティアに向けて高笑いを上げるバハムスの姿があった。
ドクン・・。
(バハムス様・・・っ!?)
シエラはバハムスを見た瞬間に激しい胸の高まりを感じた。
そして、自身の身体がカッと熱くなる感覚がはっきりとわかった。
「ああ・・本当に素晴らしい・・って、どうなされました?シエラ様・・?何やら顔色が赤くなってらっしゃいますが・・?」
「なな、なんでもないのよ!?気にしないで!!」
「・・はあ・・?左様でございますか」
部下の女神は首を傾げると、再び瞳を輝かせながらハーティルティア達を眺めていた。
シエラにとっても当然のように、ハーティルティア達四柱は尊敬や敬愛の対象である。
しかし、数百年ほど前から、何故かバハムスに対してだけ今シエラの身に起きているような胸の高まりを感じているのであった。
そして、シエラ自身もそれが通常の『神族』が持つことがない気持ちであると言うことを自覚していた。
元より『神気』の集合体であり、『神格』というもので個々を定義されている『神族』は、肉体を持たずに寿命という概念もない。
そして、『神気』から自然発生する『神族』は定義上の外見で『男型』と『女型』が存在するが、それは子孫を残す為の性差ではない。
その為、『神族』は自分より上の『神格』を持つ『神』を敬愛する思いはあっても、男女としての恋愛感情を持つことはあり得なかった。
しかし、シエラがバハムスに抱いている気持ちは紛れもなく特別なものであった。
ダッ!
「あ、シエラ様!どちらに!?」
胸の高まりを認識したシエラは居ても立っても居られず、バハムスの元に駆け寄る。
今回の戦いは明らかに『神族』側に過剰な戦力があるように見える。
だが、シエラは万が一にもバハムスが戦いによって滅びてしまうことを考えたくなかったのであった。
そして、それは最も『神格』の高い『女神ハーティルティア』に対して思う気持ちよりも大きなものであった。
シュタッ!
四柱の側に辿り着いたシエラは素早く跪く。
「此度の戦いで当方面の軍勢を任されている『第三神格位』のシエラと申します。突然の事で無礼とは存じておりますっ!ですか、至高なるハーティルティア様に連なる皆様と戦える喜びをどうしてもお伝えしたく、部隊を代表して参りました!」
「そうかしこまらないでください。シエラの武勲は私の耳にもよく入ってきています」
ハーティルティアはシエラに向かって柔らかい笑みを浮かべる。
「はっ!ハーティルティア様にそのような事を仰って頂いて恐悦至極に存じます!」
「おう!君が先の戦いで武勲を挙げたシエラか!!今回も期待しているぞ!」
バハムスは跪くシエラに向かってニカッと笑いながら語りかける。
「はっはひ!!あああありがとうございます!かか必ずや!バハムス様の期待に沿う戦果を挙げて見せます!」
バハムスに声をかけられたシエラは一気に顔を真っ赤に染め上げて、激しい鼓動のような感覚に胸が張り裂けそうな思いになった。
「バハムス、貴方はただでさえ図体が大きいのですからもう少し声を落としてください。シエラが萎縮しているではありませんか」
「親愛なる主君、我の図体や声は元々故、なかなか変えれませんなあ!」
バハムスは手にした『聖斧』を自身の肩にトントンと置いて『ガハハ』と大きく笑いながら答える。
「バハムス!貴方は!!またそうやってハーティルティア様から賜った『神器』を雑に扱って!!」
「おっと悪りぃ悪りぃ!ひぃ、リリスちゃんはいつもおっかねぇなあ!」
「なんですって!」
『神界』に存在する『神族』には、それぞれ自身の存在を定義する『神格』の高さによって位を持つ。
ハーティルティアが最も高い『神格』である、『第一神格位』を持つのは当然として、シエラの持つ『第三神格位』は『神族』の中では、貴族でいう『侯爵』に並ぶほど高い『神格』である。
因みに、バハムスを含むハーティルティアの側近三柱の神々は『第二神格位』を持つが、たった一つの位の差であっても、それは決して埋まることの無い大きなものであった。
そして、シエラは『第一神格位』で、本来であれば声をかけてもらうことすら畏れ多いハーティルティアよりも、バハムスに声をかけられたことに緊張してしまうようであった。
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