春の宝物と夏の宝物

こぐま

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夏の落とし物

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そして、俺達は1年間の友達を続け、
一緒にカフェに何度も行った。


1年経つと2人とも意識し始め、
今年の春に俺から告白をし
俺と桜は見事、
お付き合いすることになった。





「花火、もうすぐだね~」

「なー…あ、桜」

「何?」

「ソース、口元ついてる」


彼女は慌てて手で拭こうとするが、


「逆だってば、こっちだよ」


彼女の柔らかい左頬に触れ
ソースを拭う。


「ほら」

「ほんとだ…」


彼女は真っ赤な顔をするのが、
相変わらず見てて飽きない。
表情豊かでかわいいな…。

思わず微笑んでしまう…。


「今、子供っぽいって思ってるでしょ?」

「まぁな」


そう言うと彼女は
両頬を膨らませ、足をジタバタしだす。


20歳の彼女はもともと童顔で、
身長も低く、化粧をしても、
ませた中学生ぐらいに見える。
今日は浴衣で大人っぽいが、
所々で子供っぽさが滲みでる。


「私、今日大人っぽくない?
頑張ったんだよ?」

「そこが子供っぽいかな?」

「次会う時、もっとうんとお化粧して
れんさんをドキドキさせるもん!」


…待って、何それ…。
俺をドキドキさせようとして
頑張ってくれてんの?

あー…もう…。
そういう所がさ、
俺もう充分ドキドキしてるよ…。
…なんて事、言えないけど。


顔がにやけそう…。
でもここは落ち着け、自分。
紳士的に、大人の男らしく!


「はいはい、頑張ってね」

「だーかーらー」


そう言ってたら…


ドンッ!


と、大きな音が鳴り響いた。
赤、黄、緑が混じった大きな花火が
1発目に上がり、
次々と色んな色の花火が上がりだす。


他の人も待ってましたと
言わんばかりに、
食い入るように花火を見上げる。


「花火ー!綺麗だなー…」

「そうだな…」


ふと彼女の横顔をみると、
彼女の目にもキレイな
花火が次々と映ってて、
この景色もいいな、なんて思ってしまう。


「蓮さん、花火見ないの?」

「んー…見るよー…」


桜の方が綺麗だよ…。
…なんてキザなセリフ俺には無理だった…。


「ほら、前みて前みて!」


花火を向く彼女を
そのまま見ていると、
違和感があった。


いつも、彼女は桜のイヤリングをしているが、
今日はつけていなかった。


「今日、イヤリング付けてないんだ?」

「え、付けてきたよ?」


そう言って、彼女は自分の片耳を触り、
表情がさっと曇った。
そして両耳を触りさらに
表情が曇った。


「え…待って?
付けてきたのに!
両方…落ちた?」

「いつまであった?」

「家で付ける時まではあったよ…。
ちょっと周り探す!」


彼女は花火に目もくれずに
イヤリングを探しだした。


そう、そのイヤリングは彼女の
亡くなったお母さんからの形見だった。


「ない…どこ?ない!」


人々が花火で上を向いている中、
俺達は下を向き、
イヤリングを探し続けた…。

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