【歪んだ世界の女神様】ストッキングを履いた優香だけの息子

白うさぎ

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(1)息子の罪

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 池井優香36歳は、汗と疲れをまとってアパートのドアを開けた。パートのレジ打ちと夜間病院の緊急窓口業務を終え、へとへとで帰宅したのは夜の10時過ぎ。1DKの狭い部屋は、六畳の居間と小さなキッチンしかない。冷蔵庫には特売の食材がわずかで、明日の夕食をどうやりくりするか、頭の片隅で考えながら、彼女は靴を脱いだ。だが、部屋に入った瞬間、彼女の動きが止まった。

 六畳の部屋の真ん中、薄暗い蛍光灯の下で霞がいた。中学2年生の息子はズボンを膝まで下ろし陰部を露わにし、スマホを握りしめ画面を見つめながら、その手を上下に動かしていた。陰部は中学生とは思えないほど硬く大きくなっている。そして、スマホの画面には、女性のヌード写真が映し出されていた。乳房を露わにした写真。ショートボブでどちらかというと女の子みたいな息子には、まったく似つかわしい行為だった。優香の胸に、怒りと嫌悪が一気に込み上げた。
「霞! 何してるの!」
 優香の声は、狭い部屋に鋭く響いた。バッグを床に投げ出し、彼女は息子に詰め寄った。
「子供のくせに、こんな気持ち悪いことして! ママが毎日必死で働いてるのに、あなた、こんなことしてるの!?」
 霞はハッと顔を上げ、スマホを慌てて床に落とした。顔は真っ赤になり、ズボンを引き上げながら、縮こまるように後ずさった。
「ご、ごめん…ママ、ごめんなさい…」 
 彼の声は震え、目を逸らしてシャツを引っ張った。14歳の少年にとって、母の怒りは嵐のように恐ろしかった。

 優香は息を荒げ、床に落ちたスマホを拾い上げた。画面にはまだ、女性の裸体が映っていた。彼女の胃が締め付けられるような感覚に襲われた。
 離婚した元DV夫の顔が、脳裏にちらついた。あの男も、性欲に駆られるまま暴力を振るい、彼女の体を無理やり犯した。霞が性欲を持ち、そんな男と同じ道を歩むなんて、想像するだけで耐えられなかった。
「こんなもの見て! あなた、どんな大人になるつもり!?」
 優香はスマホをテーブルに叩きつけ、声を張り上げた。
 霞は俯き、肩を震わせた。
「違うよ…ただ、なんか…わかんないんだよ…ごめんなさい…」
 彼の声は掠れ、涙がにじんでいた。霞自身、最近の自分の変化に戸惑っていた。学校で友達が話す下ネタや、ネットで目にしたエッチな画像が頭から離れず、抑えきれない衝動に駆られていた。だが、母の激しい怒りに、彼はただ縮こまるしかなかった。

 優香は息子の小さな背中を見つめ、怒りが少しずつ冷めていくのを感じた。疲れ果てた身体と、胸の奥の不安が、彼女を押し潰しそうだった。彼女は古い座布団に腰を下ろし、深く息を吐いた。
「霞…ママ、毎日あなたのために働いてる。この狭い部屋でも、二人でなんとか生きていこうって頑張ってるの。わかるよね?」
 霞は小さく頷き、顔を上げた。
「うん…ごめん、ママ。もう、しないから…」 
 彼の目は潤み、母を直視できなかった。

 優香は、息子の怯えた表情に胸を締め付けられた。霞はまだ14歳。離婚したDV夫とは違う。ただの子供で、思春期の混乱に戸惑っているだけだ。彼女は目を閉じ、かつての夫の暴力的な言葉や手を思い出した。あの地獄から逃げ、こうして二人で生きている。それだけで十分じゃないか、と自分に言い聞かせた。
「いいよ…もういい。」 
 優香は立ち上がり、キッチンに向かった。
「ご飯作るから。宿題、終わったの?」
 霞はこくんと頷いた。
「うん…数学、ちょっと難しいとこあるけど…」
「後で一緒に見てあげる。ママ、数学くらいならまだ教えられるわよ。」
  優香は無理やり笑顔を作り、冷蔵庫を開けた。鶏むね肉と半額のキャベツを取り出し、包丁を握る手はまだ少し震えていた。

 その夜、食卓には質素な鶏の炒め物と味噌汁が並んだ。二人で小さなテーブルを囲み、テレビの音が静かに響く。霞は黙々とご飯を食べ、時折母をチラッと見た。優香もまた、息子の様子を窺いながら、言葉を選んだ。
「霞、さっきは…ママ、ちょっとキツく言いすぎた。ごめんね。あなたも、色々変わってくる年頃だよね。…もうしないんだよ。」
 霞は驚いたように母を見上げ、小さく頷いた。
「うん…ママ。」
 狭い六畳間は、いつもより少し温かく感じられた。外では遠くで電車の音が響き、街灯がぼんやりと光っていた。
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