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王太子
ある日、ランズデール侯爵家に王家からパーティーの招待状が届いた。
王弟アルベール王子の立太子の儀とお披露目パーティーが開かれるのだ。
この国の現在の王であるジョルジュ王はまだ20代半ばの若い王だ。
10年前に突然亡くなった先王の後を継いで若くして王になった。
しかしジョルジュ王は小さい頃から体が弱く、即位した時から多忙な公務をこなすのは無理だと言われていた。
それでもこの10年は母親である王太后が若き王を支えてなんとかやってきた。
しかしそれももう限界だった。
王は年々痩せ衰え、このままでは命に関わるのではないかと危惧された。
ついに王太后は王を退位させて穏やかな暮らしをさせることを決断した。
その為に計画が立てられた。
まずは王弟アルベール王子を王太子にする。
当面はジョルジュ王が引き続き王として公務を行うが、徐々にアルベール王子に仕事を引き継ぎ王として育成する。
アルベール王子が独り立ちできるようになったらジョルジュ王を退位させてアルベール王太子を王に即位させるという計画だ。
ジョルジュ王は退位後は完全に公務から退いて愛する王妃と暖かく静かなところでゆっくり暮らす予定だ。
王弟のアルベール王子のことは誰もほとんど聞いたことがなかった。
今まで公務などにはまったく出てこず噂すらも聞いたことがなかった。
その王子がようやく表舞台にでてきて王太子になるというのだから世間のみんなは興味津々だった。
特に若い貴族の令嬢達は自分にも王妃になるチャンスがあるのではないかと期待してワクワクしていた。
マーゴットとエリンも招待状が届くや早速仕立て屋と宝石商を呼んだ。
散々あれこれ吟味してマーゴットが濃い紫のマーメイドラインのドレス、エリンが薄い紫のプリンセスラインのドレスを作り、ドレスに合わせてアクセサリーも山ほど買った。
もちろんクラリッサにはドレスなど用意してくれない。
そもそも連れて行く気などないのだ。
クラリッサも連れて行ってもらえないことなど分かりきっていたので気にもしなかった。
パーティー当日、ランズデール侯爵一家は馬車に乗り、王宮にやって来た。
クラリッサも馬車に乗っていたが、パーティーに出席するのではない。
荷物持ちとして連れてこられた。
いつもそうだった。
ランズデール家がパーティーなどに呼ばれた時は一応連れてこられるがみんながパーティーを楽しんでいる間クラリッサは馬車で1人待っているのだ。
王宮の前には貴族達の長蛇の列ができていた。
ランズデール侯爵家も列に並んだ。
順番がやってきてランズデール侯爵が入口の侍従に招待状を渡した。
「ランズデール侯爵様、招待状では4人招待されておりますがもう1人はどうされたのですか?」
「もう1人はパーティーに出席しませんの。
3人でお願いします。」
横からマーゴットが口を出した。
「招待されたのは4人ですから全員そろわないと入場できませんがよろしいですか?」
「ですから1人は来れませんでしたの。
1人くらいいなくてもいいでしょう?」
マーゴットが食い下がった。
「規則ですので招待者全員がそろうまでは入場は許可できません。」
侍従も一歩も引かない。
「ずいぶん杓子定規ですのね。
あなたになんの権限があって侯爵家に楯突くの?」
マーゴットと侍従が一触即発の雰囲気になった。
「申し訳ない。
すぐにもう1人を連れてくるのでお待ち下さい。」
あわててランズデール侯爵が割って入った。
そして馬車で待っていたクラリッサが呼ばれた。
突然呼ばれたクラリッサは戸惑った。
まさかパーティーに出席できるなんて思っていなかったクラリッサはドレスなど着ていない。
いつも通り色褪せた灰色のワンピースに穴の空いた靴をはいていた。
まわりの貴族達はあまりのみすぼらしい格好にギョッとなった。
しかしさすが王宮の侍従は顔色一つ変えずに、
「ランズデール侯爵御一行様、ようこそいらっしゃいました。
どうぞパーティーをお楽しみください。」
と笑顔で入場を許可した。
パーティー会場に入ったクラリッサは思わず感嘆の声を上げた。
お祝いの花で飾られた会場はきらびやかでまるで別世界のようだった。
そのなかで場違いな服装のクラリッサは注目を集めていた。
皆の視線が刺さるのが恥ずかしくてクラリッサはいたたまれなかった。
突然ラッパの音が鳴り響き、国王御一家の入場が告げられた。
皆が道を開けて一斉に頭を下げる。
クラリッサも慌てて見様見真似でカーテンシーをした。
国王御一家が入場してくる。
もうすぐランズデール侯爵家の前を通るという時、エリンはふといたずらを思いついた。
(クラリッサの分際で図々しくもパーティーに来た罰を与えてあげるわ。)
エリンは隣にいるクラリッサの背中を思い切り叩き、前に突き飛ばした。
クラリッサは先頭を歩く王太后の足元に無様に倒れた。
場が一瞬凍りついた。
「なんなの!このみすぼらしい子は!」
王太后が大きな声を上げた。
クラリッサは慌ててその場に平伏して
「申し訳ございません!
ご無礼いたしました。」
と言った。
場が張り詰める中、エリンが国王一家の前に進み出た。
「王太后様、無作法な妹が大変ご無礼いたしました。
どうぞお許しくださいませ。」
そう言って、優雅にカーテンシーをした。
(これで新王太子に私の存在をアピールできるわ。)
心のなかでほくそ笑んだ。
「王太后様、誠に失礼いたしました。
この子はすぐに帰らせますのでどうぞご容赦を。」
マーゴットも王太后の前にやってきてカーテンシーをした。
「この者達は誰?」
王太后がそう言うと、お付の侍従が耳元でなにやら囁いた。
「あなたがランズデール侯爵夫人?
この子はなぜこんなみすぼらしい格好をしているの?
たしかこの子は前夫人の忘れ形見で、そこの着飾った子があなたの連れ子よね?
この差は何?
あなた継子いじめをしているの?」
周囲がざわざわし始めた。
たしかにクラリッサとエリンの身なりには天と地ほどの差があった。
思いも寄らない王太后の言葉にマーゴットはあわてた。
「継子いじめだなんて滅相もありません。
クラリッサはとても変わった子で着飾るのが嫌いですの。
今日も国王御一家にお会いするのだからきちんとした格好をしなさいと何度も言ったのですが聞き入れてくれませんでした。」
「そうなんです。
妹はこの薄汚いワンピース以外のものを着せようとすると癇癪を起こして狂ったように暴れるのです。」
エリンまで言い出した。
クラリッサは平伏したまま屈辱に耐えていた。
突然王太后の後ろにいたアルベール王子が前に進み出てきた。
「エリン・ランズデール侯爵令嬢。
何処かでお会いしませんでしたか?」
王子がエリンに話しかけた。
(うそ!
王子様に話しかけられたわ!
やったわ!)
エリンは心の中でガッツポーズをした。
王子様直々に声をかけられるなんてクラリッサを突き飛ばして本当によかったと思った。
「恐れながらお会いしたことはございませんわ。
もしどこかで王子様にお会いしていたら私うれしくて忘れるわけありませんわ。」
エリンはわざと少し声を震わせて答えた。
「本当ですか?よく顔を見てください。」
そう王子に言われて恥じらうふりをしながら王子の顔を見た。
王子は艷やかな黒髪に緑色の瞳の見目麗しい青年だった。
思わず見惚れてしまったが、確かにどこかで見たことがあるような気がした。
「お忘れですか?
以前修道院にいた時、あなたに密告されて追い出された修道士のアルですよ。」
そう言われて驚愕した。
よく見ると確かにアルだった。
修道院にいた時は粗末な修道服にボサボサの髪だったけど今は髪を整えてきらびやかな礼服を着ている。
でも顔は間違いなくアルだった。
「思い出していただけましたか?」
そう言われてエリンはガタガタ震えた。
「あの時はあなたのことを心底恨みましたが、今となっては感謝していますよ。
あの出来事でクラリッサ嬢を助ける決心がついた。」
王子は静かな声で言った。
「ご、誤解ですわ。
私はただクラリッサの心配をしていただけなんです。
結婚前のかわいい妹に悪評がたったら大変だから修道院長に相談しただけなんです。」
「あなたは修道院長に『クラリッサとあの若い修道士が木陰で裸になってふしだらなことをしているのを何度も見ました。』と言ったそうですね。
私とアリーナ嬢はアリーナ嬢の母上のお墓の前で立ち話していただけなのに。
そんな嘘をついておいて誤解だと言うのですか?」
エリンは返す言葉もなかった。
エリンの隣で平伏するクラリッサはビックリして声も出なかった。
アルベール王子はクラリッサの前に立った。
「クラリッサ、久しぶりだね。
こうして元気な君にまた会えてうれしいよ。」
笑顔でそう言うとクラリッサの手を取って立たせた。
「クラリッサ、ずっと黙っていたけどぼくは修道士アルじゃない。
王弟アルベールだ。
君をだますみたいになってしまってごめん。
こんな事になった理由を説明させて欲しい。
ぼくの兄は小さい頃からとても体が弱くて貴族達の中には兄を王にふさわしくないという者達がいたんだ。
そして兄を廃位してぼくを王太子にしようという動きがあった。
でもぼくはずっと優しく思慮深い兄こそ王にふさわしいと思っていて、ぼくを推す貴族たちをあきらめさせるために王家を出て修道士の道を選んだんだ。
でもある日兄から呼び出されて『もう限界だ。王妃と静かに暮らしたい。王家を継いでくれ。』と頼まれたんだ。
すごく悩んだ。
ぼくはずっと修道士として祈りと奉仕の生活を送ってきた。
公務などしたこともない、政治も知らない自分が王になれるだろうかと。
でも疲れ果てた兄を見て休ませてあげたいと心から思った。
それで修道院を出て王家に戻る決心をしたんだ。」
思いもよらぬ話にクラリッサは面食らった。
「突然で驚くと思うけど、クラリッサ・ランズデール嬢。
ぼくの妃になってください。
以前は修道士だったから自分の気持ちにふたをしていたけど、ぼくはずっと君に心惹かれていたんだ。
これから僕は国を背負って戦わなくてはならない。
あんな過酷な状況でも自暴自棄にならず耐え抜いた君は誰よりも強い。
ぼくの妃となって一緒に戦ってほしい。」
クラリッサは戸惑った。
アルにこんなことを言われるなんて夢かと思うほど嬉しい。
しかし自分はまともな教育も受けていないのである。
自分なんかが王太子妃になっていいのだろうか。
アルの足を引っ張ることになるのではないかと危惧した。
そんなクラリッサの逡巡を察したように王太后が話し出した。
「ねぇ、クラリッサ。
アルベールに王太子になってくれと頼んだ時に一つだけ条件を出されたの。
それはあなたを王太子妃として迎えるということだったのよ。
あなたが『はい』と言ってくれないとこの国は王を失うわ。
お願いよ。国を救うと思って『はい』と言ってちょうだい。」
「王太后様!もったいないお言葉でございます。」
王太后の言葉にクラリッサはあわてた。
「母上、私も少しクラリッサ嬢と話をさせていただいてよろしいですか?」
王妃に支えられたジョルジュ王がクラリッサの前に出てきた。
「クラリッサ嬢、申し訳ない。
私が不甲斐ないばかりに君にも苦労をさせることを許してほしい。
弟のアルベールは幼い頃私のために家を出る決意をしたほど優しい男だ。
私は弟はきっと良き王になると信じている。
どうか弟を支えてやってほしい。」
ジョルジュ王はそう言ってクラリッサに頭を下げた。
「クラリッサさん、不安もあると思いますがきっと大丈夫ですわ。
アルベール様は私も幼い頃からよく知っておりますが優しく信念のある方です。
王太后様は心の温かな方でとても頼りになる方です。
お二人が一緒なら大丈夫です。
私も微力ながらお助けいたしますから。」
アリーナ王妃はそう言って優しく微笑んだ。
クラリッサは決心した。
「皆様、ありがとうございます。
私のような者に王太子妃など務まるか不安ですが、アルベール王子が望んでくださるのなら喜んでおそばに仕えさせていただきます。」
クラリッサの言葉に王太后の顔に笑みが浮かんだ。
「ありがとう、クラリッサ嬢。 これでこの国は救われたわ。」
そう言って、クラリッサの手を取った。
「みんな聞いたわね!
クラリッサ嬢を正式に王太子妃として王家に迎えます。
異論は認めません。
クラリッサ嬢は貴族令嬢としての教育を受けていませんが侮辱することは許しません。
文句がある者は私が相手になります!」
王太后が周囲の貴族達にそう宣言した。
居並ぶ貴族達は同意を表すように深く礼をした。
さすが先王亡きあと王の補佐として王国を10年も支えてきた王太后である。
女傑と呼ばれるだけあってその有無を言わせぬ迫力に皆気圧されていた。
「それでは王太子妃にふさわしい格好に着替えさせなければ。」
王太后がパンパンと手を叩くとサワサワと女官達がやって来てクラリッサを連れて行ってしまった。
ランズデール侯爵、マーゴット、エリンは今起きたことが信じられなくて呆然としていた。
「ランズデール侯爵、クラリッサを王太子妃に迎えるにあたってあなたの家のことは徹底的に調べさせてもらったわ。
そこでマーゴットに会いたいと言う人物を見つけたの。
レッドファン伯爵、いらっしゃい。」
王太后がそう言うと、男性が現れた。
その男性を見るなりマーゴットが震えだした。
男性はランズデール侯爵に丁寧に礼をした。
「ランズデール侯爵、初めてお目にかかります。
ジョセフ・レッドファンと申します。」
ランズデール侯爵は名前を聞いてもこの男性に心当たりがなかった。
「ランズデール侯爵、私はマーゴットの前夫です。
10年前マーゴットを不貞、詐欺、横領で告発しようと準備していた矢先逃げられてこの10年間探しておりました。
まさか遠く離れた王都で侯爵夫人におさまっていたとは思いもよりませんでした。」
ランズデール侯爵はレッドファン伯爵の言っていることが理解できなかった。
マーゴットは前夫に虐げられ、他の女と結婚するからと無一文で追い出されたはずだった。
あわてて隣のマーゴットを見ると気まずそうに目を逸らした。
「マーゴットは私の仕事が忙しく留守がちだったのをいいことに結婚後すぐに愛人を作りました。
相手は役者くずれの詐欺師です。
その男と散々贅沢をして我が家の財産を食いつぶし、私の名前で詐欺までしていました。
私が気付いた時にはエリンを連れて逃げられた後でした。
マーゴットのせいで我が家は無一文どころか借金まみれです。
愛人の男は逮捕できたので刑務所送りにしてやりましたが。」
「うそ!お母様そんな事したの?
レッドファン伯爵家の財産はいずれ嫡子の私のものになるのよ!
返してよ!」
エリンがマーゴットに食ってかかった。
「心配しなくても大丈夫だ、エリン。
君は私の子ではないそうだ。
マーゴットの愛人が自白したよ。
君の父上は役者くずれの詐欺師だ。
どちらにしても君に我が家の財産はわたらないよ。」
「うそ!うそでしょ!
私貴族じゃないの?
父親が詐欺師なの?」
エリンがヘナヘナと崩れ落ちた。
「マーゴット!
やっと君に私の人生をめちゃくちゃにした報いを受けさせることができるよ!
この10年長かったがやっと報われた!
残りの人生は刑務所で反省して過ごしたまえ!」
レッドファン伯爵がマーゴットに言った。
マーゴットは憎々しげにレッドファン伯爵をにらみつけると、踵を返して逃げようとした。
しかし王太后が手を挙げると警備の騎士達が素早くやって来てマーゴットを拘束した。
「いや!はなして!
あなた!助けて!」
マーゴットはランズデール侯爵に助けを求めたが、ランズデール侯爵はショックのあまり動けなかった。
そのままマーゴットは騎士達に連行されていった。
レッドファン伯爵は王太后の前にひざまずいた。
「王太后様、おかげさまでマーゴットを捕まえることができました。
これで報いを受けさせることができます。」
「10年間大変でしたね。
あんなひどい女にかかわってしまったばかりに不運なことでした。
あなたもまだ若い。
人生を立て直して幸せになりなさい。
王家として最大限の協力を約束しましょう。」
王太后の言葉にレッドファン伯爵は涙をこらえきれずに咽び泣いた。
王太后はランズデール侯爵とエリンの前に来ると言った。
「これからアルベールの立太子の儀とクラリッサとの婚約パーティーを開きます。
ですがあなたとそこの娘に出席する資格はありません。
お帰りなさい。」
ランズデール侯爵は王太后の前でひざまずいた。
「私はクラリッサの父親です。
せめて遠くからでも見せてください。」
必死に王太后に食い下がった。
「あなたにあの子の父親を名乗る資格があると思うの?
つまみ出される前に出ていきなさい。」
有無を言わさぬ王太后の迫力にランズデール侯爵は一礼すると茫然自失のエリンを抱えて出ていった。
その後、支度を終えたクラリッサが登場した。
薄い水色のドレスを着てきれいに髪を結い上げ、キチンとメイクをしたクラリッサは別人のように美しく、会場のそこかしこから感嘆の声が上がった。
アルベールがクラリッサの隣にそっと寄り添った。
「クラリッサ、とてもきれいだ。
きっと天国の母上も喜んでくれているよ。」
アルベールの言葉にクラリッサの目に涙がにじんだ。
「改めて言うよ。
クラリッサ・ランズデール侯爵令嬢。
私の妻になってください。」
「はい。喜んで。」
2人は静かに抱き合った。
それからアルベール王子の立太子の儀とクラリッサとの婚約パーティーが開かれ、困難を乗り越えて結ばれた若い2人を皆が祝福した。
そして若い2人が担う新しい時代の幕開けに人々は喜びを分かち合った。
王弟アルベール王子の立太子の儀とお披露目パーティーが開かれるのだ。
この国の現在の王であるジョルジュ王はまだ20代半ばの若い王だ。
10年前に突然亡くなった先王の後を継いで若くして王になった。
しかしジョルジュ王は小さい頃から体が弱く、即位した時から多忙な公務をこなすのは無理だと言われていた。
それでもこの10年は母親である王太后が若き王を支えてなんとかやってきた。
しかしそれももう限界だった。
王は年々痩せ衰え、このままでは命に関わるのではないかと危惧された。
ついに王太后は王を退位させて穏やかな暮らしをさせることを決断した。
その為に計画が立てられた。
まずは王弟アルベール王子を王太子にする。
当面はジョルジュ王が引き続き王として公務を行うが、徐々にアルベール王子に仕事を引き継ぎ王として育成する。
アルベール王子が独り立ちできるようになったらジョルジュ王を退位させてアルベール王太子を王に即位させるという計画だ。
ジョルジュ王は退位後は完全に公務から退いて愛する王妃と暖かく静かなところでゆっくり暮らす予定だ。
王弟のアルベール王子のことは誰もほとんど聞いたことがなかった。
今まで公務などにはまったく出てこず噂すらも聞いたことがなかった。
その王子がようやく表舞台にでてきて王太子になるというのだから世間のみんなは興味津々だった。
特に若い貴族の令嬢達は自分にも王妃になるチャンスがあるのではないかと期待してワクワクしていた。
マーゴットとエリンも招待状が届くや早速仕立て屋と宝石商を呼んだ。
散々あれこれ吟味してマーゴットが濃い紫のマーメイドラインのドレス、エリンが薄い紫のプリンセスラインのドレスを作り、ドレスに合わせてアクセサリーも山ほど買った。
もちろんクラリッサにはドレスなど用意してくれない。
そもそも連れて行く気などないのだ。
クラリッサも連れて行ってもらえないことなど分かりきっていたので気にもしなかった。
パーティー当日、ランズデール侯爵一家は馬車に乗り、王宮にやって来た。
クラリッサも馬車に乗っていたが、パーティーに出席するのではない。
荷物持ちとして連れてこられた。
いつもそうだった。
ランズデール家がパーティーなどに呼ばれた時は一応連れてこられるがみんながパーティーを楽しんでいる間クラリッサは馬車で1人待っているのだ。
王宮の前には貴族達の長蛇の列ができていた。
ランズデール侯爵家も列に並んだ。
順番がやってきてランズデール侯爵が入口の侍従に招待状を渡した。
「ランズデール侯爵様、招待状では4人招待されておりますがもう1人はどうされたのですか?」
「もう1人はパーティーに出席しませんの。
3人でお願いします。」
横からマーゴットが口を出した。
「招待されたのは4人ですから全員そろわないと入場できませんがよろしいですか?」
「ですから1人は来れませんでしたの。
1人くらいいなくてもいいでしょう?」
マーゴットが食い下がった。
「規則ですので招待者全員がそろうまでは入場は許可できません。」
侍従も一歩も引かない。
「ずいぶん杓子定規ですのね。
あなたになんの権限があって侯爵家に楯突くの?」
マーゴットと侍従が一触即発の雰囲気になった。
「申し訳ない。
すぐにもう1人を連れてくるのでお待ち下さい。」
あわててランズデール侯爵が割って入った。
そして馬車で待っていたクラリッサが呼ばれた。
突然呼ばれたクラリッサは戸惑った。
まさかパーティーに出席できるなんて思っていなかったクラリッサはドレスなど着ていない。
いつも通り色褪せた灰色のワンピースに穴の空いた靴をはいていた。
まわりの貴族達はあまりのみすぼらしい格好にギョッとなった。
しかしさすが王宮の侍従は顔色一つ変えずに、
「ランズデール侯爵御一行様、ようこそいらっしゃいました。
どうぞパーティーをお楽しみください。」
と笑顔で入場を許可した。
パーティー会場に入ったクラリッサは思わず感嘆の声を上げた。
お祝いの花で飾られた会場はきらびやかでまるで別世界のようだった。
そのなかで場違いな服装のクラリッサは注目を集めていた。
皆の視線が刺さるのが恥ずかしくてクラリッサはいたたまれなかった。
突然ラッパの音が鳴り響き、国王御一家の入場が告げられた。
皆が道を開けて一斉に頭を下げる。
クラリッサも慌てて見様見真似でカーテンシーをした。
国王御一家が入場してくる。
もうすぐランズデール侯爵家の前を通るという時、エリンはふといたずらを思いついた。
(クラリッサの分際で図々しくもパーティーに来た罰を与えてあげるわ。)
エリンは隣にいるクラリッサの背中を思い切り叩き、前に突き飛ばした。
クラリッサは先頭を歩く王太后の足元に無様に倒れた。
場が一瞬凍りついた。
「なんなの!このみすぼらしい子は!」
王太后が大きな声を上げた。
クラリッサは慌ててその場に平伏して
「申し訳ございません!
ご無礼いたしました。」
と言った。
場が張り詰める中、エリンが国王一家の前に進み出た。
「王太后様、無作法な妹が大変ご無礼いたしました。
どうぞお許しくださいませ。」
そう言って、優雅にカーテンシーをした。
(これで新王太子に私の存在をアピールできるわ。)
心のなかでほくそ笑んだ。
「王太后様、誠に失礼いたしました。
この子はすぐに帰らせますのでどうぞご容赦を。」
マーゴットも王太后の前にやってきてカーテンシーをした。
「この者達は誰?」
王太后がそう言うと、お付の侍従が耳元でなにやら囁いた。
「あなたがランズデール侯爵夫人?
この子はなぜこんなみすぼらしい格好をしているの?
たしかこの子は前夫人の忘れ形見で、そこの着飾った子があなたの連れ子よね?
この差は何?
あなた継子いじめをしているの?」
周囲がざわざわし始めた。
たしかにクラリッサとエリンの身なりには天と地ほどの差があった。
思いも寄らない王太后の言葉にマーゴットはあわてた。
「継子いじめだなんて滅相もありません。
クラリッサはとても変わった子で着飾るのが嫌いですの。
今日も国王御一家にお会いするのだからきちんとした格好をしなさいと何度も言ったのですが聞き入れてくれませんでした。」
「そうなんです。
妹はこの薄汚いワンピース以外のものを着せようとすると癇癪を起こして狂ったように暴れるのです。」
エリンまで言い出した。
クラリッサは平伏したまま屈辱に耐えていた。
突然王太后の後ろにいたアルベール王子が前に進み出てきた。
「エリン・ランズデール侯爵令嬢。
何処かでお会いしませんでしたか?」
王子がエリンに話しかけた。
(うそ!
王子様に話しかけられたわ!
やったわ!)
エリンは心の中でガッツポーズをした。
王子様直々に声をかけられるなんてクラリッサを突き飛ばして本当によかったと思った。
「恐れながらお会いしたことはございませんわ。
もしどこかで王子様にお会いしていたら私うれしくて忘れるわけありませんわ。」
エリンはわざと少し声を震わせて答えた。
「本当ですか?よく顔を見てください。」
そう王子に言われて恥じらうふりをしながら王子の顔を見た。
王子は艷やかな黒髪に緑色の瞳の見目麗しい青年だった。
思わず見惚れてしまったが、確かにどこかで見たことがあるような気がした。
「お忘れですか?
以前修道院にいた時、あなたに密告されて追い出された修道士のアルですよ。」
そう言われて驚愕した。
よく見ると確かにアルだった。
修道院にいた時は粗末な修道服にボサボサの髪だったけど今は髪を整えてきらびやかな礼服を着ている。
でも顔は間違いなくアルだった。
「思い出していただけましたか?」
そう言われてエリンはガタガタ震えた。
「あの時はあなたのことを心底恨みましたが、今となっては感謝していますよ。
あの出来事でクラリッサ嬢を助ける決心がついた。」
王子は静かな声で言った。
「ご、誤解ですわ。
私はただクラリッサの心配をしていただけなんです。
結婚前のかわいい妹に悪評がたったら大変だから修道院長に相談しただけなんです。」
「あなたは修道院長に『クラリッサとあの若い修道士が木陰で裸になってふしだらなことをしているのを何度も見ました。』と言ったそうですね。
私とアリーナ嬢はアリーナ嬢の母上のお墓の前で立ち話していただけなのに。
そんな嘘をついておいて誤解だと言うのですか?」
エリンは返す言葉もなかった。
エリンの隣で平伏するクラリッサはビックリして声も出なかった。
アルベール王子はクラリッサの前に立った。
「クラリッサ、久しぶりだね。
こうして元気な君にまた会えてうれしいよ。」
笑顔でそう言うとクラリッサの手を取って立たせた。
「クラリッサ、ずっと黙っていたけどぼくは修道士アルじゃない。
王弟アルベールだ。
君をだますみたいになってしまってごめん。
こんな事になった理由を説明させて欲しい。
ぼくの兄は小さい頃からとても体が弱くて貴族達の中には兄を王にふさわしくないという者達がいたんだ。
そして兄を廃位してぼくを王太子にしようという動きがあった。
でもぼくはずっと優しく思慮深い兄こそ王にふさわしいと思っていて、ぼくを推す貴族たちをあきらめさせるために王家を出て修道士の道を選んだんだ。
でもある日兄から呼び出されて『もう限界だ。王妃と静かに暮らしたい。王家を継いでくれ。』と頼まれたんだ。
すごく悩んだ。
ぼくはずっと修道士として祈りと奉仕の生活を送ってきた。
公務などしたこともない、政治も知らない自分が王になれるだろうかと。
でも疲れ果てた兄を見て休ませてあげたいと心から思った。
それで修道院を出て王家に戻る決心をしたんだ。」
思いもよらぬ話にクラリッサは面食らった。
「突然で驚くと思うけど、クラリッサ・ランズデール嬢。
ぼくの妃になってください。
以前は修道士だったから自分の気持ちにふたをしていたけど、ぼくはずっと君に心惹かれていたんだ。
これから僕は国を背負って戦わなくてはならない。
あんな過酷な状況でも自暴自棄にならず耐え抜いた君は誰よりも強い。
ぼくの妃となって一緒に戦ってほしい。」
クラリッサは戸惑った。
アルにこんなことを言われるなんて夢かと思うほど嬉しい。
しかし自分はまともな教育も受けていないのである。
自分なんかが王太子妃になっていいのだろうか。
アルの足を引っ張ることになるのではないかと危惧した。
そんなクラリッサの逡巡を察したように王太后が話し出した。
「ねぇ、クラリッサ。
アルベールに王太子になってくれと頼んだ時に一つだけ条件を出されたの。
それはあなたを王太子妃として迎えるということだったのよ。
あなたが『はい』と言ってくれないとこの国は王を失うわ。
お願いよ。国を救うと思って『はい』と言ってちょうだい。」
「王太后様!もったいないお言葉でございます。」
王太后の言葉にクラリッサはあわてた。
「母上、私も少しクラリッサ嬢と話をさせていただいてよろしいですか?」
王妃に支えられたジョルジュ王がクラリッサの前に出てきた。
「クラリッサ嬢、申し訳ない。
私が不甲斐ないばかりに君にも苦労をさせることを許してほしい。
弟のアルベールは幼い頃私のために家を出る決意をしたほど優しい男だ。
私は弟はきっと良き王になると信じている。
どうか弟を支えてやってほしい。」
ジョルジュ王はそう言ってクラリッサに頭を下げた。
「クラリッサさん、不安もあると思いますがきっと大丈夫ですわ。
アルベール様は私も幼い頃からよく知っておりますが優しく信念のある方です。
王太后様は心の温かな方でとても頼りになる方です。
お二人が一緒なら大丈夫です。
私も微力ながらお助けいたしますから。」
アリーナ王妃はそう言って優しく微笑んだ。
クラリッサは決心した。
「皆様、ありがとうございます。
私のような者に王太子妃など務まるか不安ですが、アルベール王子が望んでくださるのなら喜んでおそばに仕えさせていただきます。」
クラリッサの言葉に王太后の顔に笑みが浮かんだ。
「ありがとう、クラリッサ嬢。 これでこの国は救われたわ。」
そう言って、クラリッサの手を取った。
「みんな聞いたわね!
クラリッサ嬢を正式に王太子妃として王家に迎えます。
異論は認めません。
クラリッサ嬢は貴族令嬢としての教育を受けていませんが侮辱することは許しません。
文句がある者は私が相手になります!」
王太后が周囲の貴族達にそう宣言した。
居並ぶ貴族達は同意を表すように深く礼をした。
さすが先王亡きあと王の補佐として王国を10年も支えてきた王太后である。
女傑と呼ばれるだけあってその有無を言わせぬ迫力に皆気圧されていた。
「それでは王太子妃にふさわしい格好に着替えさせなければ。」
王太后がパンパンと手を叩くとサワサワと女官達がやって来てクラリッサを連れて行ってしまった。
ランズデール侯爵、マーゴット、エリンは今起きたことが信じられなくて呆然としていた。
「ランズデール侯爵、クラリッサを王太子妃に迎えるにあたってあなたの家のことは徹底的に調べさせてもらったわ。
そこでマーゴットに会いたいと言う人物を見つけたの。
レッドファン伯爵、いらっしゃい。」
王太后がそう言うと、男性が現れた。
その男性を見るなりマーゴットが震えだした。
男性はランズデール侯爵に丁寧に礼をした。
「ランズデール侯爵、初めてお目にかかります。
ジョセフ・レッドファンと申します。」
ランズデール侯爵は名前を聞いてもこの男性に心当たりがなかった。
「ランズデール侯爵、私はマーゴットの前夫です。
10年前マーゴットを不貞、詐欺、横領で告発しようと準備していた矢先逃げられてこの10年間探しておりました。
まさか遠く離れた王都で侯爵夫人におさまっていたとは思いもよりませんでした。」
ランズデール侯爵はレッドファン伯爵の言っていることが理解できなかった。
マーゴットは前夫に虐げられ、他の女と結婚するからと無一文で追い出されたはずだった。
あわてて隣のマーゴットを見ると気まずそうに目を逸らした。
「マーゴットは私の仕事が忙しく留守がちだったのをいいことに結婚後すぐに愛人を作りました。
相手は役者くずれの詐欺師です。
その男と散々贅沢をして我が家の財産を食いつぶし、私の名前で詐欺までしていました。
私が気付いた時にはエリンを連れて逃げられた後でした。
マーゴットのせいで我が家は無一文どころか借金まみれです。
愛人の男は逮捕できたので刑務所送りにしてやりましたが。」
「うそ!お母様そんな事したの?
レッドファン伯爵家の財産はいずれ嫡子の私のものになるのよ!
返してよ!」
エリンがマーゴットに食ってかかった。
「心配しなくても大丈夫だ、エリン。
君は私の子ではないそうだ。
マーゴットの愛人が自白したよ。
君の父上は役者くずれの詐欺師だ。
どちらにしても君に我が家の財産はわたらないよ。」
「うそ!うそでしょ!
私貴族じゃないの?
父親が詐欺師なの?」
エリンがヘナヘナと崩れ落ちた。
「マーゴット!
やっと君に私の人生をめちゃくちゃにした報いを受けさせることができるよ!
この10年長かったがやっと報われた!
残りの人生は刑務所で反省して過ごしたまえ!」
レッドファン伯爵がマーゴットに言った。
マーゴットは憎々しげにレッドファン伯爵をにらみつけると、踵を返して逃げようとした。
しかし王太后が手を挙げると警備の騎士達が素早くやって来てマーゴットを拘束した。
「いや!はなして!
あなた!助けて!」
マーゴットはランズデール侯爵に助けを求めたが、ランズデール侯爵はショックのあまり動けなかった。
そのままマーゴットは騎士達に連行されていった。
レッドファン伯爵は王太后の前にひざまずいた。
「王太后様、おかげさまでマーゴットを捕まえることができました。
これで報いを受けさせることができます。」
「10年間大変でしたね。
あんなひどい女にかかわってしまったばかりに不運なことでした。
あなたもまだ若い。
人生を立て直して幸せになりなさい。
王家として最大限の協力を約束しましょう。」
王太后の言葉にレッドファン伯爵は涙をこらえきれずに咽び泣いた。
王太后はランズデール侯爵とエリンの前に来ると言った。
「これからアルベールの立太子の儀とクラリッサとの婚約パーティーを開きます。
ですがあなたとそこの娘に出席する資格はありません。
お帰りなさい。」
ランズデール侯爵は王太后の前でひざまずいた。
「私はクラリッサの父親です。
せめて遠くからでも見せてください。」
必死に王太后に食い下がった。
「あなたにあの子の父親を名乗る資格があると思うの?
つまみ出される前に出ていきなさい。」
有無を言わさぬ王太后の迫力にランズデール侯爵は一礼すると茫然自失のエリンを抱えて出ていった。
その後、支度を終えたクラリッサが登場した。
薄い水色のドレスを着てきれいに髪を結い上げ、キチンとメイクをしたクラリッサは別人のように美しく、会場のそこかしこから感嘆の声が上がった。
アルベールがクラリッサの隣にそっと寄り添った。
「クラリッサ、とてもきれいだ。
きっと天国の母上も喜んでくれているよ。」
アルベールの言葉にクラリッサの目に涙がにじんだ。
「改めて言うよ。
クラリッサ・ランズデール侯爵令嬢。
私の妻になってください。」
「はい。喜んで。」
2人は静かに抱き合った。
それからアルベール王子の立太子の儀とクラリッサとの婚約パーティーが開かれ、困難を乗り越えて結ばれた若い2人を皆が祝福した。
そして若い2人が担う新しい時代の幕開けに人々は喜びを分かち合った。
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