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暗号
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それからソフィアはウォードの出方を待った。
ウォードがこの話に乗ってくるかどうかは賭けだった。
(種は蒔いたわ。あとはウォード次第ね。)
そしてまたウォードがやってくる日になった。
いつも通りソフィアが注文したものを納品する。
帰り際にウォードが一冊の聖書を差し出した。
「ソフィア様、以前から聖書をご所望でしたよね。
やっと手に入れることができました。 これはいつもご贔屓くださるお礼でございますのでどうぞお納めください。」
ソフィアはそんな物を頼んだ覚えはなかった。
これはもしや何らかの返事なのではないかと直感した。
「お気づかいありがとう。 ありがたくいただくわ。」
そう言うと受け取った。
ウォードが帰るとさっそくソフィアは聖書を調べた。
浅葱色の皮の表紙に金の箔押しで聖書と書いてある。
とても美しかったが中身は何の変哲もない聖書だった。
ペラペラめくり、何か書き込まれていないか何か仕掛けはないか探したが何もなかった。
(おかしい。何もないわ。 ただの聖書なのかしら?
でもこのタイミングで頼んでもいない聖書を持ってきたのは何かの意図があるはずよ。)
聖書をバサバサと振ってみた。
はさまれていたしおりが落ちただけだった。
(どうしよう。全然分からないわ。)
しおりを拾った。
ふと思いついてしおりを調べてみた。
鳥の絵が描いてある何の変哲もないしおりだ。
しかしよく見ると絵にまぎれて数字が書いてあることに気がついた。
『12 8 6』 といったふうに3つの数字が並んでいる。
それが8つあった。
(これは何?何か意味があるの?)
わけが分からなかった。
色々と試行錯誤してみるがうまくいかない。
ふとこの聖書と何か関係があるのではと思って閃いた。
(もしかして『12 8 6』って12ページの8行目の6文字目ってことなんじゃない?)
調べてみるとそれは『ど』だった。
同じ要領で他の数字もやってみると文ができた。
『どうしたらいい?』 と出てきた。
(やったわ!解読した!)
ソフィアは歓喜で飛び上がりそうだった。
(どうしたらいい?って聞いてきたってことは協力してくれるってことでいいわよね。)
協力者を得てソフィアの逃亡が現実味を帯びてきた。
ちょっと怖くもあるが後戻りするつもりはなかった。
(なんとしてでもここから逃げて自分の人生を取り戻すわ。)
改めて決意した。
次のウォードが来る日にソフィアは返事を渡すことにした。
ウォードが同じ聖書を持っているとふんでソフィアも3つの数字で返事を書いた。
ウォードに渡す注文書の隅に小さく数字を書いた。
解読すると、
『ありがとう』
となる。
とりあえず初回はそれだけにした。
これでウォードはソフィアが暗号を解いたと察するだろう。
思った通り次の納品でウォードもソフィアに渡す納品書の隅に数字を書いてきた。
次のウォードの返事は
『報酬は?』
だった。
やはり金の事しか考えていない男は話が早い。
『全財産』
と返事する。
ウォードの返事は、
『うけたまわる』
だった。
契約成立だ。
こうしてソフィアとウォードは暗号でやり取りをし続けた。
慣れれば長い文章もやり取りできるようになった。
数カ月の時間をかけてやっと逃亡方法が決まった。
2ヶ月後にカイル王子は大規模な船上パーティーを催す。
カイル王子の私的なパーティーなので王子の友人を中心に若い貴族ばかりが招待されて国王夫妻などは参加しない。
そのパーティーの手配の一切をウォードが任されたのでその時を狙うことにした。
色々考えてただの逃亡だと実家のモリス侯爵家に迷惑がかかるから死を偽装することにした。
ウォードからあらかじめ決めた時間に何かを海に落としたふりをして落ちるように指示された。
あくまで事故死を装うのだ。
そして当日用のドレスを渡された。
このドレスには仕掛けがあって糸を引っ張るとバラバラになるのだ。
水に潜ったら糸を引っ張って重いドレスは脱ぎ捨て、身軽になるように言われた。
ソフィアが指示されたのはそこまでで、そこからは詳しくは聞いていないがウォードの手の者が助けてくれるらしい。
とにかく決められた時間に息を大きく吸って海に落ちる。
そしてドレスの糸を引っ張る。
ソフィアがするのはそれだけだ。
後は運を天にまかせるしかない。
ソフィアは毎日神に成功を祈った。
ウォードがこの話に乗ってくるかどうかは賭けだった。
(種は蒔いたわ。あとはウォード次第ね。)
そしてまたウォードがやってくる日になった。
いつも通りソフィアが注文したものを納品する。
帰り際にウォードが一冊の聖書を差し出した。
「ソフィア様、以前から聖書をご所望でしたよね。
やっと手に入れることができました。 これはいつもご贔屓くださるお礼でございますのでどうぞお納めください。」
ソフィアはそんな物を頼んだ覚えはなかった。
これはもしや何らかの返事なのではないかと直感した。
「お気づかいありがとう。 ありがたくいただくわ。」
そう言うと受け取った。
ウォードが帰るとさっそくソフィアは聖書を調べた。
浅葱色の皮の表紙に金の箔押しで聖書と書いてある。
とても美しかったが中身は何の変哲もない聖書だった。
ペラペラめくり、何か書き込まれていないか何か仕掛けはないか探したが何もなかった。
(おかしい。何もないわ。 ただの聖書なのかしら?
でもこのタイミングで頼んでもいない聖書を持ってきたのは何かの意図があるはずよ。)
聖書をバサバサと振ってみた。
はさまれていたしおりが落ちただけだった。
(どうしよう。全然分からないわ。)
しおりを拾った。
ふと思いついてしおりを調べてみた。
鳥の絵が描いてある何の変哲もないしおりだ。
しかしよく見ると絵にまぎれて数字が書いてあることに気がついた。
『12 8 6』 といったふうに3つの数字が並んでいる。
それが8つあった。
(これは何?何か意味があるの?)
わけが分からなかった。
色々と試行錯誤してみるがうまくいかない。
ふとこの聖書と何か関係があるのではと思って閃いた。
(もしかして『12 8 6』って12ページの8行目の6文字目ってことなんじゃない?)
調べてみるとそれは『ど』だった。
同じ要領で他の数字もやってみると文ができた。
『どうしたらいい?』 と出てきた。
(やったわ!解読した!)
ソフィアは歓喜で飛び上がりそうだった。
(どうしたらいい?って聞いてきたってことは協力してくれるってことでいいわよね。)
協力者を得てソフィアの逃亡が現実味を帯びてきた。
ちょっと怖くもあるが後戻りするつもりはなかった。
(なんとしてでもここから逃げて自分の人生を取り戻すわ。)
改めて決意した。
次のウォードが来る日にソフィアは返事を渡すことにした。
ウォードが同じ聖書を持っているとふんでソフィアも3つの数字で返事を書いた。
ウォードに渡す注文書の隅に小さく数字を書いた。
解読すると、
『ありがとう』
となる。
とりあえず初回はそれだけにした。
これでウォードはソフィアが暗号を解いたと察するだろう。
思った通り次の納品でウォードもソフィアに渡す納品書の隅に数字を書いてきた。
次のウォードの返事は
『報酬は?』
だった。
やはり金の事しか考えていない男は話が早い。
『全財産』
と返事する。
ウォードの返事は、
『うけたまわる』
だった。
契約成立だ。
こうしてソフィアとウォードは暗号でやり取りをし続けた。
慣れれば長い文章もやり取りできるようになった。
数カ月の時間をかけてやっと逃亡方法が決まった。
2ヶ月後にカイル王子は大規模な船上パーティーを催す。
カイル王子の私的なパーティーなので王子の友人を中心に若い貴族ばかりが招待されて国王夫妻などは参加しない。
そのパーティーの手配の一切をウォードが任されたのでその時を狙うことにした。
色々考えてただの逃亡だと実家のモリス侯爵家に迷惑がかかるから死を偽装することにした。
ウォードからあらかじめ決めた時間に何かを海に落としたふりをして落ちるように指示された。
あくまで事故死を装うのだ。
そして当日用のドレスを渡された。
このドレスには仕掛けがあって糸を引っ張るとバラバラになるのだ。
水に潜ったら糸を引っ張って重いドレスは脱ぎ捨て、身軽になるように言われた。
ソフィアが指示されたのはそこまでで、そこからは詳しくは聞いていないがウォードの手の者が助けてくれるらしい。
とにかく決められた時間に息を大きく吸って海に落ちる。
そしてドレスの糸を引っ張る。
ソフィアがするのはそれだけだ。
後は運を天にまかせるしかない。
ソフィアは毎日神に成功を祈った。
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