陶器の人形は夢を見る

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旅芸人一座

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 しばらくの間船に揺られて、ソフィアと青年は船着き場で降ろされた。 
 青年にうながされて歩く。  
 大きなテントが見えてきた。 
 青年がテントに入っていくのでソフィアもついて行った。
 テントの中には数人の人とウォードがいた。 

 「ソフィア様!ご無事だったんですね。」 

 「ウォード殿、なんとか成功しましたわ。」

 ウォードが合図するとテント内にいた人達が出ていった。 
 
 「とりあえずこれを着てください。」 

 ドレスを渡されて自分が下着姿だったことに気がついた。 
 あわててドレスを着る。

 「何から何までありがとう。」 
 
 「ご無事で何よりです。」 

 ソフィアは下着に縫い付けていた小袋をウォードに差し出した。 
 ウォードは袋の中を確かめる。
 袋の中には宝石が10個ほど入っていた。 
 ウォードとの取り決めで逃亡を手助けする報酬としてソフィアの全財産を宝石に変えて渡すという約束になっていた。
  ウォードは宝石の品質を確かめた。 

 「確かに約束通りの品です。」 

 そう言うとウォードは2つの宝石をソフィアの手に握らせた。

 「これは私からあなた様への餞別です。
  いいですか、これは日々の生活などに使ってはいけませんよ。 
 あなたの人生のここぞという時に使うのです。」

 「ありがとう。でもいいの?」 

 「これからあのキャンディスとかいうバカ娘相手に稼がせていただきますよ。」 

 そう言って笑った。

 ウォードはソフィアにこれからのことについて指示した。
 まずはソフィアに新しい身分証明書を渡した。
 ソフィアの新しい名前は『エミリア・サマーズ』になった。
 この瞬間、ソフィア・モリスはこの世からいなくなりエミリア・サマーズが誕生した。
 両親が付けてくれた名前を捨てるのはさすがに胸が痛かった。
 
 「しばらくはここの人達にあなたの世話を頼んでいます。
 彼らと行動を共にしてください。」

 「ここは何なのですか?」

 先ほどからずっと思っていた疑問をぶつけてみた。

 「ここは旅芸人のテントです。
 彼らは各地を転々として定住しないから身を隠すのには最適です。
 当分はここで行動を共にして、ほとぼりが冷めたら自由に好きなところにお行きなさい。」

 ウォードはそう言った。

 「実は私も昔ここにいたんですよ。
 ここで剣のジャグリングをしていました。」

 ウォードに関しては色々な噂が流れていたが旅芸人だったとは知らなかった。

 「ここで私達はお別れです。
 共犯者ですからもう二度と会わないほうがいいでしょう。
 さようならソフィア様。
 幸運をお祈りします。」

 ウォードはそう言って手を差し出してきた。

 「ありがとう。あなたには感謝してもしきれません。」

 ソフィアはそう言ってウォードと握手した。

 ウォードが最後にソフィアを本当の名前で呼んだ人となった。

 ウォードはニッコリ笑うとテントから出ていった。



 こうしてソフィアは旅芸人の一座にお世話になることになった。 
 旅芸人の暮らしは本当に自由だった。
 風の吹くまま、気の向くまま。 
 あちらの街で祭りがあると聞けば行って興行を打ち、こちらの街で祝い事があると聞けば行って芸を披露してご祝儀をもらう。 
 誰かが一座を去ったと思えばまた新しい人がやってくる。 
 そんな自由で何物にも縛られない生活だった。

 最初はすべてが分刻みで決められていた生活から何の決まりもない生活になったことに戸惑った。
 しかし次第に慣れて何もすることのない時間は風の音を聞き、星を眺めて過ごした。

 旅芸人達とも次第に打ち解けた。
 ソフィアを助けてくれた青年はアデルフィンという名前だった。 
 あまり自分のことは話さないが、他の人から聞いた話だと元は奴隷で耐えきれず逃げてきたところを一座に拾われたらしい。   
 寡黙だが不思議とソフィアと気が合った。
  一緒にいると落ち着いて何も話さないでも心が通じ合っているような気がした。

 アデルフィン以外にも旅芸人達は複雑な事情を抱えた人が多かった。
 親の虐待や夫の暴力から逃げてきた人。
 借金のカタに娼館に売られそうになった人。
 駆け落ちしてきたカップルなんてのもいた。

 一座の皆は苦労してきたからか人に優しかった。
 そして家族のように仲が良かった。 
 そんな一座の皆をソフィアも次第に家族のように思い始め、いつの間にか一員となって働いていた。
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