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1.想い人は女好き王子
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私はいつものように、学園に登校する。この学園を卒業するまで、残り3ヶ月。少し寂しさも感じる。
中庭をふと見ると、いつものように、1人の男子生徒が女子生徒と一緒に、ベンチで座っているのが見える。男子生徒のはちみつ色の金髪は、離れたところからでも、すぐに誰か分かる。女子生徒が顔を寄せようとしても、男子生徒は拒否も何もしない。触れようとした直前、私は2人の前に立ちはだかる。
「殿下」
私がそう声をかけると、女子生徒は私に気がつき、恥ずかしそうに走って行った。男子生徒はそれを追いかけるどころか、見てもいない。深い海を閉じ込めたような瞳が、こちらを向いた。
「レオン、お前は高貴な存在なのだから、行動には謹めといつも言っているだろう」
レオン・ヴィルバード。この国の、王位継承権第三位の高貴な存在。高貴な存在のはずなのに、この男はいつも女性といる。しかも、一緒にいる女性はいつも違う。来るもの拒まず、去るもの追わずなんて言われている。寄宿舎に連れ込む女子生徒は毎日違うとの噂もある。噂のことは、私は寄宿生でないから分からないが、私の知る限り、大方、来る者拒まずというのは、合っているだろう。
幼なじみだから分かることだが、昔はこんな男ではなかった。2ヶ月ほど前からだ、こうなったのは。
何がレオンをこうさせたのかは分からないが、王位継承権を持つ高貴なお人だ。いずれ、王が決めた相手と、この国のために結婚することになるだろう。その相手は良い家の令嬢か、はたまた他国のプリンセスか……
このような王子との結婚は後ろ向きになってしまわれるかもしれない。
「そういうことを今も私に直接言うのは、君だけだよ、ユリウス」
レオンは行動を咎められたにも関わらず、悪びれていない微笑みでそう言った。王家の人間が皆している、シルクの手袋を付けた手で、はちみつ色の髪をかきあげた。
ユリウス・ツェプラリト。それが伯爵家の次男である私の名前だ。私の家は王族との交流が盛んで、幼い頃に父に連れられて行った、王宮の敷地内でレオンと知り合った。それからの仲で、付き合いが長い。
「幼なじみとして、口を出す権利はある」
レオンの行動に、はじめのうちは注意する側近等がいたらしい。行動を改めないレオンに諦めを感じたのか、父である王が好きにさせておけと言ったからなのか、レオンの行動を咎める者は、私だけになってしまった。
なぜ王はそんなことを言ったのだろう。やはり王も、注意しても変わらないと、諦めてしまったのだろうか。
「幼なじみ、ねえ……」
レオンは交わっていた目を逸らして、ため息をついた。側から見れば、私のことを煩わしく思っているように見えるだろうが、私は幼なじみだ。その目の奥に、悲しみをはらんでいるのが分かる。
何故、お前がそのような目をする。幼なじみに咎められるのが、そんなに悲しいことか?
悲しいのは私の方だ。
私は、よりにもよって、この男を好いている。
私たちはいずれ、それぞれ親が決めた相手と結婚する。男同士の結婚も法律で定められていない。だから私はずっと、この想いを秘めてきた。これからもそうするつもりだ。誰にも知られることなく、この想いは墓まで持っていく。自分の想いに気がついた時に、そう誓った。
レオンが、どこかの令嬢と結婚するのは仕方のないこと。結婚の誓いを最前列で見る覚悟はしていた。だが、まさか女性とベタベタしている場面を何度も見ることになるとは思ってもみなかった。見るたびに、私の胸はしめつけられる。
私が女性だったなら、レオンは私に触れてくれたのだろうか。
未来のレオンの結婚相手の為だとか、高貴な存在がするような行動ではないだとか、そんな理由は建前でしかない。
レオンが女性といるところを見たくない。
私がレオンの行動を咎めるのは、何よりも私の為なのだ。
中庭をふと見ると、いつものように、1人の男子生徒が女子生徒と一緒に、ベンチで座っているのが見える。男子生徒のはちみつ色の金髪は、離れたところからでも、すぐに誰か分かる。女子生徒が顔を寄せようとしても、男子生徒は拒否も何もしない。触れようとした直前、私は2人の前に立ちはだかる。
「殿下」
私がそう声をかけると、女子生徒は私に気がつき、恥ずかしそうに走って行った。男子生徒はそれを追いかけるどころか、見てもいない。深い海を閉じ込めたような瞳が、こちらを向いた。
「レオン、お前は高貴な存在なのだから、行動には謹めといつも言っているだろう」
レオン・ヴィルバード。この国の、王位継承権第三位の高貴な存在。高貴な存在のはずなのに、この男はいつも女性といる。しかも、一緒にいる女性はいつも違う。来るもの拒まず、去るもの追わずなんて言われている。寄宿舎に連れ込む女子生徒は毎日違うとの噂もある。噂のことは、私は寄宿生でないから分からないが、私の知る限り、大方、来る者拒まずというのは、合っているだろう。
幼なじみだから分かることだが、昔はこんな男ではなかった。2ヶ月ほど前からだ、こうなったのは。
何がレオンをこうさせたのかは分からないが、王位継承権を持つ高貴なお人だ。いずれ、王が決めた相手と、この国のために結婚することになるだろう。その相手は良い家の令嬢か、はたまた他国のプリンセスか……
このような王子との結婚は後ろ向きになってしまわれるかもしれない。
「そういうことを今も私に直接言うのは、君だけだよ、ユリウス」
レオンは行動を咎められたにも関わらず、悪びれていない微笑みでそう言った。王家の人間が皆している、シルクの手袋を付けた手で、はちみつ色の髪をかきあげた。
ユリウス・ツェプラリト。それが伯爵家の次男である私の名前だ。私の家は王族との交流が盛んで、幼い頃に父に連れられて行った、王宮の敷地内でレオンと知り合った。それからの仲で、付き合いが長い。
「幼なじみとして、口を出す権利はある」
レオンの行動に、はじめのうちは注意する側近等がいたらしい。行動を改めないレオンに諦めを感じたのか、父である王が好きにさせておけと言ったからなのか、レオンの行動を咎める者は、私だけになってしまった。
なぜ王はそんなことを言ったのだろう。やはり王も、注意しても変わらないと、諦めてしまったのだろうか。
「幼なじみ、ねえ……」
レオンは交わっていた目を逸らして、ため息をついた。側から見れば、私のことを煩わしく思っているように見えるだろうが、私は幼なじみだ。その目の奥に、悲しみをはらんでいるのが分かる。
何故、お前がそのような目をする。幼なじみに咎められるのが、そんなに悲しいことか?
悲しいのは私の方だ。
私は、よりにもよって、この男を好いている。
私たちはいずれ、それぞれ親が決めた相手と結婚する。男同士の結婚も法律で定められていない。だから私はずっと、この想いを秘めてきた。これからもそうするつもりだ。誰にも知られることなく、この想いは墓まで持っていく。自分の想いに気がついた時に、そう誓った。
レオンが、どこかの令嬢と結婚するのは仕方のないこと。結婚の誓いを最前列で見る覚悟はしていた。だが、まさか女性とベタベタしている場面を何度も見ることになるとは思ってもみなかった。見るたびに、私の胸はしめつけられる。
私が女性だったなら、レオンは私に触れてくれたのだろうか。
未来のレオンの結婚相手の為だとか、高貴な存在がするような行動ではないだとか、そんな理由は建前でしかない。
レオンが女性といるところを見たくない。
私がレオンの行動を咎めるのは、何よりも私の為なのだ。
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