【完結】育成準備完了しました。お父様を立派な領主にしてみせます。

との

文字の大きさ
33 / 34

33.タイミングなんてクソ喰らえ!

しおりを挟む
 大量の官僚の入れ替えがあった王宮は未だ混乱を極めているが、セドリック新国王の戴冠式が終わってから少しずつ落ち着きを取り戻しはじめた。


 前国王と前王妃は大勢の民衆が集まる中で断頭台の露と消え、ユージーン王弟・グレイソン王子・マクガバン侯爵外務大臣ディスペンサー伯爵騎士団長もその後に続いた。

 宰相は爵位剥奪領地返上の上全ての資産を返済に充て終生鉱山奴隷となり、夫人と娘は北の修道院へ送られた。夫人の実家であるフリューゲル子爵家は連帯責任を取らされ男爵に降爵となり資産の大半を負債の一部として支払い領地へ戻って行った。

 元々領地経営に行き詰まっていたディスペンサー伯爵家は破産し爵位と領地は返上。実家から絶縁された夫人は娘と共に娼館で働きはじめたが間もなく病気になり死亡した。

 フラウド男爵は爵位剥奪領地返上の上借金奴隷となり夫人と令嬢は辺境地で生涯奉仕活動を行うことが義務付けられた。


 それ以外にも不正を行っていた官僚は罪状により随時処罰されていったがその数は大臣と補佐官の4割以上。官職についていない貴族や平民にも逮捕者が続出し、過労で倒れる監査役の為に人手を増やさなければならなかった。

 貴族家の降爵と領地の一部返上が相次ぐと同時に貴族の陞爵も行われた。


 激動の中、セドリックの出した法案で税の見直しも行われ領主の裁量次第で重税を課されていた町や村が激減した。

 これまで貴族しか入学できなかった王立学院は入学前試験を導入する事で平民にも門戸を開くことができた。ルーナの進言により一定以上の成績を維持している生徒には学費の軽減や免除と奨学金制度も作られた。

 学院を優秀な成績で卒業する事は貴族としてのステータスとなり、平民の文官登用などへの道も開きはじめた。
 いずれは専門分野を学ぶ学部や学校の設立も視野に入れている。

 ルーナの婚約破棄騒動に倣い一時学園内での婚約破棄が流行になった。男性優位に疑問を抱いた令嬢からの断罪返しや不義・不貞の証拠集めがブームになっていると聞いたルーナは頭を抱えた。

「ルーナ様は良くも悪くも目立ってしまわれる。エポックメイキングだのアバンギャルドだのと騒がれております。私感としては攻撃の先頭に立つと言う意味合いを持つアバンギャルドのほうがお似合いかと」

 笑いを堪えプルプルしながら報告するマシューは相変わらずウォルデン侯爵家の執事をしている。

「ナーガルザリアへ送り返した方が良いわね。ねえ、ガストン。マシューくらいの大きさだと小荷物扱いにできるかしら?」

「手足をちょいと小さく折り曲げりゃいけるんじゃないっすかね。頭の中身はうちの子より軽そうだしな」

 試してみるかと言いつつマシューに近寄るガストンは今だにルーナの護衛をしているが先日2人目の子供が生まれ親バカに拍車がかかっている。



「陛下とのお約束は成人されるまでだし、マシューはナーガルザリアに送り返して私は領地に篭ろうかしら」

「えっ? 俺を置いてくつもりですか?」

「だって領地にはジョージがいるから執事は間に合ってるもの」

 ルーナの意趣返しにマシューが青褪めた。

「いや、あの。無理でしょう。どうせガッバーナ様があれこれ策を練ってくるでしょうから」

「知略には知略でお返しするわ。一回戦は私の負けだったから次は勝つつもりよ。領地に戻ったら二度と王都の土は踏まないって決めてるの。
その前にはアビゲイル叔母様と旅行に行く予定だから負けてられないのよね」

 アビゲイル・フリューゲルはルーナの母の姉にあたる。ルーナが生まれてすぐ亡くなった母のラリサは穏やかな優しい女性だったがアビゲイルは子供の頃から冒険好きのお転婆で有名。

「ルーナ様がアビゲイル様とご旅行されるなら障壁かストッパーが必要だわ。生贄とか」

 アリシアが思わず小声で呟いた一言にガストンとマシューが目を見開きルーナが笑いを堪えた。


「レガーロだな。何があった?」

「ルーナ様ったら風がビュービュー吹く岩壁に張り付いて階段を降りて・・。私、心臓が止まるかと思いました!」

 思い出して真っ青な顔で震え出したアリシアに『風はそれほど吹いてなかったし』とルーナが不平を言おうとしたが、ドンと大きな音を立てて机を叩いたマシューに睨まれてルーナは黙り込んだ。

(やば、口止めしておけばよかったわ。マシューの目が据わってる)


「ほーぅ、ルーナ様はあの階段を降りられたんですね? あの階段をねえ。ルーナ様の鳥頭には俺との約束は残ってなかったわけだ」

 避難場所をレガーロにすると決めた時マシューがルーナに一つだけ約束させたのが『岩壁の階段には近寄らない』

「えーっと、覚えてはいたのよ。でも暇だったし、せっかくだから帰る前にちょっと体験してみたいなーって。何のトラブルも起きなかったもの。でしょ?」

「私は生きた心地がしませんでした」

「階段って?」

 一人話の見えないガストンが首を傾げた。

「切り立った岩壁に張り付いた急な階段があるんです。ものすごい高さがあって海まで続いているので落ちたら一発で死にます」

「お嬢・・諦めろ。そいつはごめんじゃすまん。俺ならケツをひっぱたいてる」

 眉間に皺を寄せたガストンに睨まれたルーナはしょんぼりと俯いた。

「終わった事をぐちぐち言うのって男らしくないと思うわ。絶対大丈夫だって思ったんだもの。ほんとに大丈夫だったし、私の勘は外れたことがないし」

「普段は先の先まで計算して計画して動く癖にたまーにしでかす癖は何とかなりませんか? その度に周りの者が心臓をやられます!」

「私的にはきちんと計画してるわよ?」

「一般常識で判断して下さい!」

 睨み続けるマシューと反省している気配のないルーナの周りでガストンとアリシアが呆れ顔になり、部屋のドアに向けてそろりそろりと移動しはじめた。

「心配かけたのはごめんなさい。でも、心配しすぎだと思う」

「・・(あーもータイミングなんかクソ喰らえだ! ほんとはもっとこー、二人っきりで雰囲気も)」


 上着の内ポケットに手を入れたマシューが端が少しよれた手紙を机に置いた。

「ん?」

 眉間に皺を寄せて腕を組んだマシューが顎でちょいっと手紙を指し示すとルーナが恐る恐る手紙を読みはじめた。


「ウォルデン侯爵様にルーナ様への求婚の許可をいただきました。ナーガルザリアの父上の許可ももらっています。ルーナ様と初めてお会いした時からずっと心に決めていました。
俺と結婚していただけませんか」

 逃げ出すチャンスを失ったガストンが扉の前で硬直しアリシアが口を丸く開けて目を輝かせた。

「えっと、・・マシューってロリコンだったの?」

「「ぶっ!」」

 ガストンとアリシアが思わず吹き出したがマシューは肩を怒らせたままルーナを凝視していた。

「最初は新種の生き物を見るような珍しさと言うか・・だから、ロリコンじゃないですからね。
でも今はずっと側にいたい。俺じゃダメですか? 執事兼護衛兼が希望です。監視役も含めて」

 手紙を手に俯いたままのルーナと耳を赤くしたマシュー。扉の前には世紀の瞬間に立ち会えた喜びで息をするのを忘れたガストンとアリシアが立ち尽くしていた。






「随分ゴージャスな役職みたいだけど・・順番を変えてもらえるなら」

「じゅ、順番ですか?」






「夫が最優先が嬉しいかなぁと。それと、監視役はなしで」

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

わざわざ証拠まで用意してくれたみたいなのですが、それ、私じゃないですよね?

ここあ
恋愛
「ヴァレリアン!この場をもって、宣言しようではないか!俺はお前と婚約破棄をさせていただく!」 ダンスパーティの途中、伯爵令嬢の私・ヴァレリアンは、侯爵家のオランジェレス様に婚約破棄を言い渡されてしまった。 一体どういう理由でなのかしらね? あるいは、きちんと証拠もお揃いなのかしら。 そう思っていたヴァレリアンだが…。 ※誤字脱字等あるかもしれません! ※設定はゆるふわです。 ※題名やサブタイトルの言葉がそのまま出てくるとは限りません。 ※現代の文明のようなものが混じっていますが、ファンタジーの物語なのでご了承ください。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...