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53.熊を弄ぶついでに、おっさんも
バシャバシャと派手な水音がして、桟橋がミシッバキバキッと音を立てたかと思うと、ウルサが桟橋によじ登ってきた。
「チビは元気にしてたみてえだな。お前、たまには連絡してこいよ。全然連絡して来ねえから、どこかで死んでんじゃねえかって、心配してたんだぜ」
何事もなさそうに話すウルサの足元には、ピンク色の海水が溜まっている。
「大型の熊は、少々の傷じゃあ致命傷にはならない⋯⋯チビ言うし、やめとこうかなあ」
ぶつぶつと独り言を言っていたロクサーナが、仕方なさそうにウルサを回復した。
「サザエの壺焼き3個」
「はあ? 勝手に回復して金とんのかよ!」
「なら、傷をもう一回⋯⋯」
ロクサーナが人差し指を向けると、ウルサが首を横に振った。
「払う! いや、買ってくるから。海水が染みて凄え痛かったんだ」
熊でも傷は痛むらしい。
「で、ウルサさんは何をしでかしたの?」
「⋯⋯へ? な、な、なんのことかなぁ。デカいサザエが売り切れる前に屋台に行⋯⋯」
慌てて目を逸らしたウルサの目線の前に回り込んだ。
「ウールーサー! シーミアさんは大人は自分で責任取るって言ったけど、どうも私の仕事の邪魔になりそうなことをやらかしてる気がする。
もしかして、旧ロクサーナ・コレクションの凄~くカッコいい船を、クソ領主に取り上げられたり?」
「いや、それはねえって。動かせねえだけだからチビは心配すんな。船は見ての通り完璧な状態だからな」
「はぁ、全部言ってるようなもんじゃない。やっぱりウルサの頭は空っぽだわ」
「ええっ! 漁協ギルドが漁業権を停止してきた? んで、利用時間は朝1時間? 船を動かせる距離が半径5メートル? なにそれ、虐めじゃん」
漁業ギルドは漁港の管理運営を行う。利用時間や港内での帆走区域の指定などを決め、ギルド員に漁業権を販売している。
「クソ領主とズブなギルドって事かあ。半径5メートルを1時間だけチャプチャプとか⋯⋯子供の遊びか?⋯⋯意味わからん」
沖合の島に行きたいロクサーナの取れる手段は⋯⋯空を飛んで行くか、大人の問題に首を突っ込んで壊滅させるか。
「しばらくの間、チビの依頼は受けれねえがチビなら空を飛べるもんな」
仁王立ちして腰に手を当てたロクサーナが、ウルサを見上げて指を突きつけた。
「5回⋯⋯熊が5回もチビ扱いした~! そんな礼儀知らずには天誅じゃあ! 子供に尻拭いされて赤っ恥をかきやがれぇぇ」
【ああ、スイッチ入っちゃった~】
【かきやがれぇぇ⋯⋯ロクサーナ、頑張れ~。ピッピ、お手伝いしちゃうも~ん】
「赤、赤っ恥って」
「こないだのイカ焼きのおっちゃんに会いに行ってくる!」
「あ、おい。待てぇぇ!」
身体強化をかけて走り去ったロクサーナの後を、ウルサが必死に追いかけて行った。
「シーミア、チビを引っ捕まえねえと⋯⋯ロクサーナが暴走したらヤバくね?」
「え~、面白そうじゃない? ロクサーナとウルサってさ、ボケとツッコミみたいよね~」
ウルサに最後まで責任取らせたかったシーミアだったが⋯⋯ロクサーナがしでかす横でオロオロする方が、ウルサには堪えるかも。
「お、面白そう⋯⋯おっ、お、親子」
「ホント! 元気一杯でぶっ飛んだ思考に育った子供に振り回される、間抜けなパパね」
「おじさーん、イカ焼きのおじさんは⋯⋯んん? どこ」
「はあ、はあ⋯⋯グラントは⋯⋯はあ、はあ⋯⋯別んとこで屋台を⋯⋯」
「そっか⋯⋯えーっと、あっちだね」
一度会っただけの屋台のおじさんを、あっという間に索敵で見つけ出したロクサーナが走り出した。
「こんな人混みん中で、どうやって見つけたんだよ! くっそぉ、迷子になったらケツを叩いてやるからな」
ぶつぶつ言いながらロクサーナを後を追って走り出した。
ウルサがたどり着いた時には、屋台の横に座り込んでハフハフしながらサザエの壺焼きを食べるロクサーナの姿があった。
「お、ウルサか。銀貨3枚な⋯⋯毎度あり~⋯⋯なら、明日の朝にでも行ってくりゃいいんだな」
「おい、グラ⋯⋯」
「そう、仕込みなら手伝うからね」
「朝の市のあとに行って⋯⋯まあ、もしもの時には頼むかな」
「おい、お前らなんの話してんだよ!」
「へ? おじさんに漁師さんになってもらうの。名前だけね~」
「⋯⋯はあ!? グラントが漁師って」
「はあ、美味しかった~。お土産分焼けた?」
サザエの壺焼きを15個、ウルサに持たせて港へ向かうロクサーナは呑気に鼻歌を歌っている。
想像以上に美味しかったサザエ。『次は何にしようかなぁ』とキョロキョロしながら歩くロクサーナが背中から突き飛ばされた。
「おやおやぁ、デカいウルサに隠れててぇ、ちっこすぎて見えなかった~」
「おい、子供に何やってんだ!」
両手が塞がっているウルサがロクサーナの横にしゃがみ込んだ。
「怪我してねえか? あー、膝小僧を擦りむいて。おい、テメェ⋯⋯」
「漁師ギルドを出禁になった漁師のウルサはぁ、ガキの守りで駄賃を稼ぐってかあ? 随分と落ちぶれたもんだよなあ」
「おじさん、ありがとう! ウルサさんにぶつかってたらサザエの壺焼きがダメになるとこだったよ⋯⋯あっ、おじさん程度の攻撃じゃ、ウルサさんはびくともしないか⋯⋯テヘッ、間違えて謝っちゃった。
そうだ! おじさん臭すぎるからさ、たまにはお風呂に入ったほうがいいよ~」
「こんのクソガキがぁぁ! 大人を舐めたらタダじゃおかねえからな!」
ロクサーナにつかみかかった臭いオヤジの腹に、身体強化をかけない飛び蹴りが決まった。
グボォォ!
「こんのクッソ臭いジジイがぁぁ! ガキだと思って舐めたらタダじゃおかねえからな! じゃあね~」
無邪気な笑顔で毒舌を吐いたロクサーナが『ふっふふ~ん』と調子ハズレの鼻歌を歌いながら、屋台に飛びついた。
「おばちゃん、これって帆立だよね? 15本ちょうだいな。んでさあ、貝殻ってどうしてるの」
「毎度あり、すぐ焼くから待っててね。貝殻はね、山に埋めるんだよ⋯⋯使い道がないのに嵩張って邪魔だからねえ」
「ええ! そ、そ、そんなもったいない⋯⋯それ、売って! 捨ててるなら安く売って欲しい」
ホタテの貝殻は、飼料や肥料に洗剤まで作れる優れもので、殺菌もしてくれる。捨てるなんて勿体なさすぎる魅惑の存在。
「そりゃ良いけどさ、何枚くらい欲しいんだい?」
「全部! 他の人で帆立の貝殻を捨ててる人のも買いたいの」
鶏のエサにすれば割れにくい卵が産まれ、肥料にすれば土壌を改良してくれて作物が育ちやすくなる。
洗剤にすれば、洗浄力が高くて川を汚さない。
熱を加えると驚くほどの抗菌性を発揮して、食べれば口やお腹の中の有害物質を排除する。
貝殻を高温で焼いて水に溶かして飲むだけで、除菌・抗菌・消臭効果等を発揮する。
(昔の人の知識ってすごいよね)
これは、教会の書庫の奥の奥⋯⋯埃まみれの棚にあった本で覚えた知識。
かつて自然の物を利用する知恵が発達していた頃の記録で、魔法が発展するにつれて忘れられた大切な知恵のひとつ。
(魔力や魔法が減っている⋯⋯これからは自然の恵みをもっと学んで感謝するべきだよ)
上位精霊から大聖女と言われるほど、今世で最強の聖女・魔法士のロクサーナは、誰よりも自然懐古主義者だった。
「チビは元気にしてたみてえだな。お前、たまには連絡してこいよ。全然連絡して来ねえから、どこかで死んでんじゃねえかって、心配してたんだぜ」
何事もなさそうに話すウルサの足元には、ピンク色の海水が溜まっている。
「大型の熊は、少々の傷じゃあ致命傷にはならない⋯⋯チビ言うし、やめとこうかなあ」
ぶつぶつと独り言を言っていたロクサーナが、仕方なさそうにウルサを回復した。
「サザエの壺焼き3個」
「はあ? 勝手に回復して金とんのかよ!」
「なら、傷をもう一回⋯⋯」
ロクサーナが人差し指を向けると、ウルサが首を横に振った。
「払う! いや、買ってくるから。海水が染みて凄え痛かったんだ」
熊でも傷は痛むらしい。
「で、ウルサさんは何をしでかしたの?」
「⋯⋯へ? な、な、なんのことかなぁ。デカいサザエが売り切れる前に屋台に行⋯⋯」
慌てて目を逸らしたウルサの目線の前に回り込んだ。
「ウールーサー! シーミアさんは大人は自分で責任取るって言ったけど、どうも私の仕事の邪魔になりそうなことをやらかしてる気がする。
もしかして、旧ロクサーナ・コレクションの凄~くカッコいい船を、クソ領主に取り上げられたり?」
「いや、それはねえって。動かせねえだけだからチビは心配すんな。船は見ての通り完璧な状態だからな」
「はぁ、全部言ってるようなもんじゃない。やっぱりウルサの頭は空っぽだわ」
「ええっ! 漁協ギルドが漁業権を停止してきた? んで、利用時間は朝1時間? 船を動かせる距離が半径5メートル? なにそれ、虐めじゃん」
漁業ギルドは漁港の管理運営を行う。利用時間や港内での帆走区域の指定などを決め、ギルド員に漁業権を販売している。
「クソ領主とズブなギルドって事かあ。半径5メートルを1時間だけチャプチャプとか⋯⋯子供の遊びか?⋯⋯意味わからん」
沖合の島に行きたいロクサーナの取れる手段は⋯⋯空を飛んで行くか、大人の問題に首を突っ込んで壊滅させるか。
「しばらくの間、チビの依頼は受けれねえがチビなら空を飛べるもんな」
仁王立ちして腰に手を当てたロクサーナが、ウルサを見上げて指を突きつけた。
「5回⋯⋯熊が5回もチビ扱いした~! そんな礼儀知らずには天誅じゃあ! 子供に尻拭いされて赤っ恥をかきやがれぇぇ」
【ああ、スイッチ入っちゃった~】
【かきやがれぇぇ⋯⋯ロクサーナ、頑張れ~。ピッピ、お手伝いしちゃうも~ん】
「赤、赤っ恥って」
「こないだのイカ焼きのおっちゃんに会いに行ってくる!」
「あ、おい。待てぇぇ!」
身体強化をかけて走り去ったロクサーナの後を、ウルサが必死に追いかけて行った。
「シーミア、チビを引っ捕まえねえと⋯⋯ロクサーナが暴走したらヤバくね?」
「え~、面白そうじゃない? ロクサーナとウルサってさ、ボケとツッコミみたいよね~」
ウルサに最後まで責任取らせたかったシーミアだったが⋯⋯ロクサーナがしでかす横でオロオロする方が、ウルサには堪えるかも。
「お、面白そう⋯⋯おっ、お、親子」
「ホント! 元気一杯でぶっ飛んだ思考に育った子供に振り回される、間抜けなパパね」
「おじさーん、イカ焼きのおじさんは⋯⋯んん? どこ」
「はあ、はあ⋯⋯グラントは⋯⋯はあ、はあ⋯⋯別んとこで屋台を⋯⋯」
「そっか⋯⋯えーっと、あっちだね」
一度会っただけの屋台のおじさんを、あっという間に索敵で見つけ出したロクサーナが走り出した。
「こんな人混みん中で、どうやって見つけたんだよ! くっそぉ、迷子になったらケツを叩いてやるからな」
ぶつぶつ言いながらロクサーナを後を追って走り出した。
ウルサがたどり着いた時には、屋台の横に座り込んでハフハフしながらサザエの壺焼きを食べるロクサーナの姿があった。
「お、ウルサか。銀貨3枚な⋯⋯毎度あり~⋯⋯なら、明日の朝にでも行ってくりゃいいんだな」
「おい、グラ⋯⋯」
「そう、仕込みなら手伝うからね」
「朝の市のあとに行って⋯⋯まあ、もしもの時には頼むかな」
「おい、お前らなんの話してんだよ!」
「へ? おじさんに漁師さんになってもらうの。名前だけね~」
「⋯⋯はあ!? グラントが漁師って」
「はあ、美味しかった~。お土産分焼けた?」
サザエの壺焼きを15個、ウルサに持たせて港へ向かうロクサーナは呑気に鼻歌を歌っている。
想像以上に美味しかったサザエ。『次は何にしようかなぁ』とキョロキョロしながら歩くロクサーナが背中から突き飛ばされた。
「おやおやぁ、デカいウルサに隠れててぇ、ちっこすぎて見えなかった~」
「おい、子供に何やってんだ!」
両手が塞がっているウルサがロクサーナの横にしゃがみ込んだ。
「怪我してねえか? あー、膝小僧を擦りむいて。おい、テメェ⋯⋯」
「漁師ギルドを出禁になった漁師のウルサはぁ、ガキの守りで駄賃を稼ぐってかあ? 随分と落ちぶれたもんだよなあ」
「おじさん、ありがとう! ウルサさんにぶつかってたらサザエの壺焼きがダメになるとこだったよ⋯⋯あっ、おじさん程度の攻撃じゃ、ウルサさんはびくともしないか⋯⋯テヘッ、間違えて謝っちゃった。
そうだ! おじさん臭すぎるからさ、たまにはお風呂に入ったほうがいいよ~」
「こんのクソガキがぁぁ! 大人を舐めたらタダじゃおかねえからな!」
ロクサーナにつかみかかった臭いオヤジの腹に、身体強化をかけない飛び蹴りが決まった。
グボォォ!
「こんのクッソ臭いジジイがぁぁ! ガキだと思って舐めたらタダじゃおかねえからな! じゃあね~」
無邪気な笑顔で毒舌を吐いたロクサーナが『ふっふふ~ん』と調子ハズレの鼻歌を歌いながら、屋台に飛びついた。
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「ええ! そ、そ、そんなもったいない⋯⋯それ、売って! 捨ててるなら安く売って欲しい」
ホタテの貝殻は、飼料や肥料に洗剤まで作れる優れもので、殺菌もしてくれる。捨てるなんて勿体なさすぎる魅惑の存在。
「そりゃ良いけどさ、何枚くらい欲しいんだい?」
「全部! 他の人で帆立の貝殻を捨ててる人のも買いたいの」
鶏のエサにすれば割れにくい卵が産まれ、肥料にすれば土壌を改良してくれて作物が育ちやすくなる。
洗剤にすれば、洗浄力が高くて川を汚さない。
熱を加えると驚くほどの抗菌性を発揮して、食べれば口やお腹の中の有害物質を排除する。
貝殻を高温で焼いて水に溶かして飲むだけで、除菌・抗菌・消臭効果等を発揮する。
(昔の人の知識ってすごいよね)
これは、教会の書庫の奥の奥⋯⋯埃まみれの棚にあった本で覚えた知識。
かつて自然の物を利用する知恵が発達していた頃の記録で、魔法が発展するにつれて忘れられた大切な知恵のひとつ。
(魔力や魔法が減っている⋯⋯これからは自然の恵みをもっと学んで感謝するべきだよ)
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