62 / 126
57.ジルベルト司祭と長話⋯⋯な、なんて贅沢な
シーサーペントの討伐の後、そのまま自分の島に帰ってきたロクサーナは、ジルベルト司祭に連絡を入れた。
「お疲れ様だったね~」
かなりクマが薄くなったジルベルト司祭が通信鏡の前で微笑んだ。
「結構楽しかったし、サザエと帆立は美味しかったしで結果オーライかな。あと、帆立の貝殻を大量にゲットできたしね」
貝殻の使い道についてはジルベルト司祭にも話してあり、教会でも試したいと言っている。
「しかし、女神の愛し子とはなぁ⋯⋯流石にそれは見逃せないから、枢機卿達も今回は動くだろう」
「ねえ、そんなにレベッカを⋯⋯と言うか誰かをあの国に出したかったの?」
「いや、『そんなに乗り気なら』ってくらいだな。レベッカは修練もせず魔法も伸びない。権力だけ欲しがって、都合が悪くなると親の権力でゴリ押ししてくる。今回の件に参加した時がそうだっただろ?
なら、王国に住むって言うならラッキーってやつ」
「確かに、短い間しか見てないけど⋯⋯レベッカはポンコツ王子とか取り巻きに囲まれて、幸せそうだった」
「サブリナとセシルは⋯⋯ロクサーナなら気付いてたと思うけど、魔力とか魔法とかが弱まってた。他にもそういう魔法士達はいるが、彼女達の劣化は顕著でね」
「うん、サブリナは上位魔法が使えなくなってたし、セシルは魔力の減少が⋯⋯」
鑑定しなくてもわかるほどの劣化に、2人が落ち込み焦っているのが手に取るようにわかっていた。
「2人を見ているとさ、魔法に頼り切って生きる恐ろしさをひしひしと感じるもん」
「それなら、力があるうちに場所を変えれば⋯⋯と考えたんだ。力が弱くなったと言っても、他国の人に比べれば⋯⋯って思えたら違うかなあってね。
まだ予測に過ぎないんだけど、力の劣化には本人の精神状態が大きく影響すると考えられていてね。場所が変わって気持ちが落ち着けば、彼女達の状況も良くなるかもとか、力のある者達の中にいて益々萎縮しているのではないかとか⋯⋯本人達も納得していたんだけど、あまりうまく行ってないようで、とても残念に思ってるんだ」
サブリナとセシルの担当司教は別の人物だが、2人を完全に見放していたと言う。
『力が弱まっていく魔法士やら、聖女見習いにかける時間は無駄にしかならんからな』
「レベッカだけじゃなく、サブリナやセシルも自分で決めてダンゼリアム王国に行ったんだし、その後の行動も自分の意思だから。ロクサーナは気にしなくていいよ」
「うん、私の契約は学園の終業式の日で終わりだよね」
「うん、王国から退学じゃなくてそうしてくれってゴネられたから。ずるずると伸ばす理由が全く分からないよ」
「じゃあ、終業式に出たらそのままジルベルト司祭の執務室に飛ぶね。んで、お茶会かお食事会がしたい⋯⋯もちろん、時間があればだけどね」
「ロクサーナからのお誘いか! それは最高のプレゼントだな。何か欲しいものとかない? 俺に見つけられるものならなんでもいいよ?」
「う~ん、考えとくね」
「そうだ! ニール・ガーラント司教とアリエス・ジェファーソン以下3名の破門が決まったんだけど、本人達への通達はロクサーナの終業式の前日になった」
討伐隊についてはグレーゾーンの部分がある為、減俸と降格で様子を見る事になり、今後は王国からの依頼を受ける事はない。
人為的スタンピードと海獣騒ぎはなくなったが、魔物の森とその奥にあるダンジョンは手付かずのままなので、国の存続は優秀な冒険者を呼べるかどうかにかかってくるだろう。
「今までの依頼料は過去に遡って王国とガーラント司教達に請求して、その内訳は彼らで話し合ってもらう事になったんだ。
ガーラント達が王国からいくらもらっているかで、王国への請求額が変わるからね」
捕縛した帝国兵とテイマーは現在も教会の牢に収監されているが、記録については王国と帝国にコピーを送りつける事になっており、請求額はかなりの金額になる。
「ロクサーナには追加報酬が出る事になったから楽しみにしておいて」
「やった~、今度変異種のアラクネの勧誘に行ってこようかなぁ」
「その時は一緒に行きたいから、教えてくれるかな?」
「マジ? ジルベルト司祭のしつこさがあれば勧誘確実じゃん」
「しつこ⋯⋯いや、確かにそうかも。ロクサーナについては頑張って粘ったと自分でも思うからね。終業式まで島にいるの?」
「うん、そのつもり。色々やりたい事が山積みだもん。ひとつ気になってるんだけど⋯⋯王国の収入源は報告しなくていいの?」
「それは様子見しようと思うんだ。支払えないとか金がないとか言い出したら、証拠を突きつけて五割り増しくらいにしてもぎ取ってやる」
「うん、それ面白そう。偉そうにしてた王侯貴族が青くなるのが目に浮かぶよ」
「じゃあ、何かあったらすぐに連絡するんだよ? それと⋯⋯時間が合えばなんだけど⋯⋯島に遊びに行ってもいいかな。えーっと、その、転移門を使ってみたくて」
「あ、うん! 一番最初のお客様がジルベルト司祭だったらすごく嬉しい! まだ何もない島だけど、見て欲しいとこはいっぱいあるんだ」
「じゃあ、張り切って書類を片付けて休みをもぎ取るよ」
「休みかぁ⋯⋯ジルベルト司祭に教えてもらった言葉のひとつだね」
「そうだな。その割に有効活用してくれないけどね」
「あ⋯⋯うぅ⋯⋯も、もうすぐ休み放題だし。気になるなら時々チェックしにきたらいいんです! ジルベルト司祭は仕事命だから、そんな暇なんてないですけどね!」
「じゃあ、仕事を減らそうかな~」
「ええっ!? なんか変なものでも拾い食いしちゃったんですか。だめですよ! お腹壊しますからね。大丈夫そうでもヤバい草とかありますからね。
鑑定して、食べれるのか腐ってないのか調べてからじゃないと、口に入れちゃいけま⋯⋯」
「食べ物は拾わないし、拾っても食べないから」
「そそ、そうでした。美味しいサザエと帆立を食べに来て下さい。上位精霊のクラーケンも」
「ぷぷっ! そうだね。一緒に食べれば怖くない」
「犯罪者の片棒担がせるみたいな言い方じゃん⋯⋯ツルッツルにしてトイレで悲鳴上げさせてやるんだから」
「⋯⋯チェンジで」
「なら、ウルサさんが一番嫌がる『勃起不⋯⋯」
「やーめーれー! それはダメだし口にするのも禁止」
「医学用語です! 清廉潔白な司祭様ともあろう方が、何をおっしゃいますやら」
「次に会ったら頭ぐりぐりの刑だな」
「それ、懐かしいです」
「じゃあ、楽しみにしておいて」
★★ ★★
ふと目を離すと、今にも消えてしまうんじゃないかと思う時があるんですよ。
なんて言うか⋯⋯初めて会った10歳の時から変わらない不安定さを、固い鎧に閉じ込めてる感じで⋯⋯。
向かい風をわざわざ探し求めて立ち向かいたがるから、危なっかしくてハラハラし続けです。
不器用すぎて見てられない時がありまくりかと思うと、とんでもない無茶をしますしね。次に何が起きるのか、何をしでかすのか⋯⋯目が離せなくても仕方ないかなと。
『お金は正義、人は嫌い』
『神様なんて信じない』
何度もそう口にする少女が神と精霊に護られているんですから、あの方々には彼女の本心が見えているんでしょう。
ずっとそばにいて『大丈夫だよ』と声をかけ続けたいし、甘やかしたいし。けど、彼女は嫌がりそうで何も言えないまま。ただ見てるだけです。
え? いえ、年の差11才ですよ。兄妹よりも離れてますから、そう言う不埒な考えは駄目だと弁えてます。
上司と部下ですし、私のような過去を持つ者は⋯⋯。
えっ? まあ、確かにレオンと野宿したとか聞いた時は⋯⋯いや、ただ単に兄のような気持ちで心配をしていただけですから。
誰よりも大切にしたいと思うし、甘やかしたい。今でもあまり眠れないみたいですから、昔のように⋯⋯毎晩ホットミルクを作ってあげたいとかですね。
あの『期間限定銭ゲバ聖女』が、可愛くて可愛くて仕方ないんです。
「お疲れ様だったね~」
かなりクマが薄くなったジルベルト司祭が通信鏡の前で微笑んだ。
「結構楽しかったし、サザエと帆立は美味しかったしで結果オーライかな。あと、帆立の貝殻を大量にゲットできたしね」
貝殻の使い道についてはジルベルト司祭にも話してあり、教会でも試したいと言っている。
「しかし、女神の愛し子とはなぁ⋯⋯流石にそれは見逃せないから、枢機卿達も今回は動くだろう」
「ねえ、そんなにレベッカを⋯⋯と言うか誰かをあの国に出したかったの?」
「いや、『そんなに乗り気なら』ってくらいだな。レベッカは修練もせず魔法も伸びない。権力だけ欲しがって、都合が悪くなると親の権力でゴリ押ししてくる。今回の件に参加した時がそうだっただろ?
なら、王国に住むって言うならラッキーってやつ」
「確かに、短い間しか見てないけど⋯⋯レベッカはポンコツ王子とか取り巻きに囲まれて、幸せそうだった」
「サブリナとセシルは⋯⋯ロクサーナなら気付いてたと思うけど、魔力とか魔法とかが弱まってた。他にもそういう魔法士達はいるが、彼女達の劣化は顕著でね」
「うん、サブリナは上位魔法が使えなくなってたし、セシルは魔力の減少が⋯⋯」
鑑定しなくてもわかるほどの劣化に、2人が落ち込み焦っているのが手に取るようにわかっていた。
「2人を見ているとさ、魔法に頼り切って生きる恐ろしさをひしひしと感じるもん」
「それなら、力があるうちに場所を変えれば⋯⋯と考えたんだ。力が弱くなったと言っても、他国の人に比べれば⋯⋯って思えたら違うかなあってね。
まだ予測に過ぎないんだけど、力の劣化には本人の精神状態が大きく影響すると考えられていてね。場所が変わって気持ちが落ち着けば、彼女達の状況も良くなるかもとか、力のある者達の中にいて益々萎縮しているのではないかとか⋯⋯本人達も納得していたんだけど、あまりうまく行ってないようで、とても残念に思ってるんだ」
サブリナとセシルの担当司教は別の人物だが、2人を完全に見放していたと言う。
『力が弱まっていく魔法士やら、聖女見習いにかける時間は無駄にしかならんからな』
「レベッカだけじゃなく、サブリナやセシルも自分で決めてダンゼリアム王国に行ったんだし、その後の行動も自分の意思だから。ロクサーナは気にしなくていいよ」
「うん、私の契約は学園の終業式の日で終わりだよね」
「うん、王国から退学じゃなくてそうしてくれってゴネられたから。ずるずると伸ばす理由が全く分からないよ」
「じゃあ、終業式に出たらそのままジルベルト司祭の執務室に飛ぶね。んで、お茶会かお食事会がしたい⋯⋯もちろん、時間があればだけどね」
「ロクサーナからのお誘いか! それは最高のプレゼントだな。何か欲しいものとかない? 俺に見つけられるものならなんでもいいよ?」
「う~ん、考えとくね」
「そうだ! ニール・ガーラント司教とアリエス・ジェファーソン以下3名の破門が決まったんだけど、本人達への通達はロクサーナの終業式の前日になった」
討伐隊についてはグレーゾーンの部分がある為、減俸と降格で様子を見る事になり、今後は王国からの依頼を受ける事はない。
人為的スタンピードと海獣騒ぎはなくなったが、魔物の森とその奥にあるダンジョンは手付かずのままなので、国の存続は優秀な冒険者を呼べるかどうかにかかってくるだろう。
「今までの依頼料は過去に遡って王国とガーラント司教達に請求して、その内訳は彼らで話し合ってもらう事になったんだ。
ガーラント達が王国からいくらもらっているかで、王国への請求額が変わるからね」
捕縛した帝国兵とテイマーは現在も教会の牢に収監されているが、記録については王国と帝国にコピーを送りつける事になっており、請求額はかなりの金額になる。
「ロクサーナには追加報酬が出る事になったから楽しみにしておいて」
「やった~、今度変異種のアラクネの勧誘に行ってこようかなぁ」
「その時は一緒に行きたいから、教えてくれるかな?」
「マジ? ジルベルト司祭のしつこさがあれば勧誘確実じゃん」
「しつこ⋯⋯いや、確かにそうかも。ロクサーナについては頑張って粘ったと自分でも思うからね。終業式まで島にいるの?」
「うん、そのつもり。色々やりたい事が山積みだもん。ひとつ気になってるんだけど⋯⋯王国の収入源は報告しなくていいの?」
「それは様子見しようと思うんだ。支払えないとか金がないとか言い出したら、証拠を突きつけて五割り増しくらいにしてもぎ取ってやる」
「うん、それ面白そう。偉そうにしてた王侯貴族が青くなるのが目に浮かぶよ」
「じゃあ、何かあったらすぐに連絡するんだよ? それと⋯⋯時間が合えばなんだけど⋯⋯島に遊びに行ってもいいかな。えーっと、その、転移門を使ってみたくて」
「あ、うん! 一番最初のお客様がジルベルト司祭だったらすごく嬉しい! まだ何もない島だけど、見て欲しいとこはいっぱいあるんだ」
「じゃあ、張り切って書類を片付けて休みをもぎ取るよ」
「休みかぁ⋯⋯ジルベルト司祭に教えてもらった言葉のひとつだね」
「そうだな。その割に有効活用してくれないけどね」
「あ⋯⋯うぅ⋯⋯も、もうすぐ休み放題だし。気になるなら時々チェックしにきたらいいんです! ジルベルト司祭は仕事命だから、そんな暇なんてないですけどね!」
「じゃあ、仕事を減らそうかな~」
「ええっ!? なんか変なものでも拾い食いしちゃったんですか。だめですよ! お腹壊しますからね。大丈夫そうでもヤバい草とかありますからね。
鑑定して、食べれるのか腐ってないのか調べてからじゃないと、口に入れちゃいけま⋯⋯」
「食べ物は拾わないし、拾っても食べないから」
「そそ、そうでした。美味しいサザエと帆立を食べに来て下さい。上位精霊のクラーケンも」
「ぷぷっ! そうだね。一緒に食べれば怖くない」
「犯罪者の片棒担がせるみたいな言い方じゃん⋯⋯ツルッツルにしてトイレで悲鳴上げさせてやるんだから」
「⋯⋯チェンジで」
「なら、ウルサさんが一番嫌がる『勃起不⋯⋯」
「やーめーれー! それはダメだし口にするのも禁止」
「医学用語です! 清廉潔白な司祭様ともあろう方が、何をおっしゃいますやら」
「次に会ったら頭ぐりぐりの刑だな」
「それ、懐かしいです」
「じゃあ、楽しみにしておいて」
★★ ★★
ふと目を離すと、今にも消えてしまうんじゃないかと思う時があるんですよ。
なんて言うか⋯⋯初めて会った10歳の時から変わらない不安定さを、固い鎧に閉じ込めてる感じで⋯⋯。
向かい風をわざわざ探し求めて立ち向かいたがるから、危なっかしくてハラハラし続けです。
不器用すぎて見てられない時がありまくりかと思うと、とんでもない無茶をしますしね。次に何が起きるのか、何をしでかすのか⋯⋯目が離せなくても仕方ないかなと。
『お金は正義、人は嫌い』
『神様なんて信じない』
何度もそう口にする少女が神と精霊に護られているんですから、あの方々には彼女の本心が見えているんでしょう。
ずっとそばにいて『大丈夫だよ』と声をかけ続けたいし、甘やかしたいし。けど、彼女は嫌がりそうで何も言えないまま。ただ見てるだけです。
え? いえ、年の差11才ですよ。兄妹よりも離れてますから、そう言う不埒な考えは駄目だと弁えてます。
上司と部下ですし、私のような過去を持つ者は⋯⋯。
えっ? まあ、確かにレオンと野宿したとか聞いた時は⋯⋯いや、ただ単に兄のような気持ちで心配をしていただけですから。
誰よりも大切にしたいと思うし、甘やかしたい。今でもあまり眠れないみたいですから、昔のように⋯⋯毎晩ホットミルクを作ってあげたいとかですね。
あの『期間限定銭ゲバ聖女』が、可愛くて可愛くて仕方ないんです。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、もう頑張りません 〜静かな公爵に放っておかれたら、本当の人生が始まりました〜
あう
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
pdf
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました
冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。
代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。
クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。
それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。
そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。
幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。
さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。
絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。
そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。
エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。