【完結】大切にするってお約束しましたよね。忘れた人には⋯⋯お仕置きしたい人が大集合しました

との

文字の大きさ
3 / 37

3.婚約破棄

しおりを挟む
「な、何を仰っておられるのですか!?」

 サミュエルの言葉が理解できず呆然としているリリスティーナを強引に抱き寄せたマックスがサミュエルに食ってかかった。

「王子殿下のお言葉とは思えません。殿下とリリスティーナは今日初めてあったと言うのに、しかも本人の気持ちを無視して婚約破棄だなんて!」

「わ、私はマックスと婚約破棄するつもりはありません。タチの悪いご冗談はおやめ下さい」

「冗談ではない。リリスティーナは俺の運命だ」

「つい先程初めてお会いしたばかりで運命だなんて! それに、私には大切な婚約者がおります」

 3人の声は会場に響き渡り全員が固唾を飲んで成り行きを見守っていたが、出席者の中で一番高い爵位を持つグレーニア公爵夫人が前に進み出た。

「殿下、折角のパーティーです。お話は別室でなされた方がよろしいかと存じます。デビュタントの令嬢達が怯えておりますわ」

 サミュエルが周りを見回すと新しいスキャンダルに目をぎらつかせる者や不快そうに目を眇める者たちが目に入った。

「そうだな。オーエン伯爵家はこれ以上の口出しは無用。王家に楯突くと言うならそれなりの覚悟を「リリスティーナ!」」

 別室で仲間達と集まって葉巻を楽しんでいた父親や久しぶりに会った友人達とお喋りをしていた夫人が会場に駆け込んできた。

「マックス!?」

「これは⋯⋯一体、何があったのですか?」





 ザワザワとした騒ぎがおさまらないパーティーはそのままお開きになり両家はそのままポーレット邸に集まった。

「せめて私たちがその場にいれば⋯⋯」

 頭を抱えたリリスティーナの父親が悔しげに呟く横で母親が『ごめんなさい』と言い続け泣き崩れていた。

「まさか王子殿下があのような馬鹿げた騒ぎを起こすとは。最初から詳しく教えてくれないか?」

「友達数人と話をしていた時、突然サミュエル殿下が声をかけて来られました。そして⋯⋯」

 特に女性関係で悪評高い王子殿下だが最新の恋人がパーティーに参加していた事もあり両家の親達は安心しきっていた。

「婚約破棄と運命? 殿下は最近流行りの小説に毒されておられるようだな」

「私はリリスティーナを諦めるつもりはありません!」

「勿論だとも。このような理不尽な事を陛下がお許しになられるわけがないからな、多分。明日になれば王子殿下も冷静になられるはず」

 大丈夫だと口にするオーエン伯爵だが皆の顔は暗い。その理由は、評判の良い国王と王妃の最大の欠点が身内に甘い⋯⋯甘すぎる事。一人息子のサミュエル王子を溺愛し数々の醜聞を揉み消してきた。姪のイライザも同様で王妃の寵愛は留まるところを知らない。

『まだ若いから、もう少ししたら落ち着くから』


 エアリアスがショックで泣くこともできず俯いてハンカチを握りしめていたリリスティーナの肩を抱いた。

「リリスは悪くないわ。みんな見てたもの。明日には笑い話になるから元気を出して」


(どうしてこんなことに? デビュタント楽しみにしてたのに⋯⋯。みんなの記念の日が滅茶苦茶になっちゃったわ)

 マックス達が帰路に着きリリスティーナは自室に戻ったが目が冴えて眠れそうにない。リリスティーナはテラスの椅子に腰掛けてぼーっと空を見上げた。
 テラスから身を乗り出すと両親の部屋に灯りがついているのが見えた。

(ごめんなさい。どうすれば良かったのかしら? もっと上手な断り方があったのかしら)

 リリスティーナが一番心配しているのはサミュエル王子の最後の言葉。

『そうだな。オーエン伯爵家はこれ以上の口出しは無用。王家に楯突くと言うならそれなりの覚悟を』

 言葉通りであれば王子はオーエン伯爵家になんらかの制裁をしてくるかもしれない。自分のせいでそんなことになるのだけは阻止しなくては。

 王子の言葉が悪質な冗談で話が無かったことになるか、陛下が王子殿下を諌めて下さるかを祈る以外の方法が見つからなかった。学園で笑い者になっても構わない、大切なデビュタントを台無しにしたと非難されてもいいから冗談であって欲しいと願うリリスティーナだった。

 東の空が薄らと明るくなりはじめ鳥の鳴き声が聞こえてきた。普段は気付かない使用人の起き出した微かな音に今日がはじまった恐怖でリリスティーナは騒動からはじめて声を殺して泣きはじめた。



 青褪めた両親と虚な目をしているリリスティーナが食堂に集まり朝食の皿を突き回していると執事が血相を変えて駆け込んできた。

「旦那様、王家から書状が! お返事を頂きたいと使者の方がお待ちになっておられます」

 急いで中を確認すると今日の昼にリリスティーナを伴い参内するようにという指示が書かれていた。瞬きを忘れて手紙を見つめる父親に母が恐る恐る声をかけた。

「旦那様、どのような⋯⋯」

 手紙を読む父親を見る勇気がなかったリリスティーナは恐怖に震え俯いたまま硬直していた。

(お願い! 神様、どうかお願いします)


「婚約者として参内せよと。不都合があるなら⋯⋯オーエン伯爵家に責任を取らせると」


 母が気を失い椅子から滑り落ちかけたのをメイドが支えたのを目の端に捉えたのを最後にリリスティーナも気を失った。

しおりを挟む
感想 257

あなたにおすすめの小説

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました

よどら文鳥
恋愛
 ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。  ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。  ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。  更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。  再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。  ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。  後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。  ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

処理中です...