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22.もしかしてグレッグは・・
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「ううん、まだ。どうしたらいいのか悩んでるとこ。私の事前調査がダメダメだったのが問題だったんだけど改竄とか横領はねえ。しかも人を巻き込んでるし。
サラは昨日の夕方自分から話に来てくれたの。正直に話して謝ってくれた」
ルイスやハンナ達の為の差し入れを買いに行こうとして裏口から出た時、ソフィーを待っていたのはサラだった。
『あの、申し訳ありませんでした。弁償して罪も償います。本当に申し訳ありません』
『どうしてあんな事を?』
『・・窓口にいる私にしょっちゅう声をかけてくれて。おはようとかお疲れ様とかそんなのだけですけど・・私こんなだから・・頼まれた時いけない事だって分かってたけどすごく嬉しかったんです』
「はあ、ジュードはその辺も最低だったな。俺も見る目がねえよなー。ちょっと調子のいい奴だとは思ってたが若いからしょうがねえのかって。
アイツがあんな奴だと思ってなくてぜんっぜん警戒してなかった」
「あの時ルイスが殴ったの見てスッキリしちゃった」
ふふっと笑ったソフィーは秘密の話をするように少し小声で呟いた。
「俺もブチ切れたのは久しぶりだったが・・少しスッキリした。あと2・3発殴ったら爆睡できそうなんだがな」
「そんなことになったら、へなちょこジュードはヨボヨボのヘロヘロになるの確実ね」
ルイスが昔作業現場で問題のある作業員に躾をしていた現場に何度も遭遇したソフィーは、泣き出した作業員やお漏らしした大男がいた事を思い出した。
そのくせ女子供と老人には優しく、ソフィーの中では昔読んだ絵本に出てきた子供を助ける『森の熊さん』扱い。
「しかしこんなに乗り心地が良い馬車には初めて乗ったぜ。流石高位貴族様の乗り物だな。乗り心地は最高で居心地は最悪」
「ふふっ、私も同意見。楽ちんだけど汚したらどうしようって思ったから乗る前に靴脱ごうかと思った」
「そうだ、忘れてた。どっか怪我とかしてねえかちょっと足出してみな」
慌てて前に屈み大きな手でソフィーの足を捕まえようとしたルイスは真っ赤になったソフィーに突き飛ばされた。
「ちょ、触っちゃダメ! 怪我してないしワインも乾いてるから」
焦って馬車の端に座り直すソフィーを見てルイスがハッと自分の行動に気がついた。
「すっすまん、ソフィーももうガキじゃねえんだよな。すっかり忘れて」
ルイスは息子が1人と甥が2人と姪が1人いる。ルイスは出会った時からずっとソフィーの事を2人目の姪のように扱っていた。
偶にルイスの家に遊びに行くと料理好きで美人の奥さんが近所の子供を抱っこして出迎えてくれる。大きな仕事が終わったお祝いに昼から酒盛りをして盛大に酔っ払ったルイスが一度だけ教えてくれた。
『アイツとは幼馴染なんだけどよ。昔は体が弱くて子供も結婚も無理だって言われてたんだ。だったら俺がもらってやるって言ったら偉そーに、でっかい家じゃなきゃ嫌だって言いやがるんだぜ。近所の子供を一杯集めて子守りするのが夢だからって。
なら、仕方ねえ大工になってやるよってな』
ルイスの家は二階建てで広い庭があり息子や甥と姪以外にも何人もの子供達が毎日出入りしている。
「あー、そういやあ。男爵のあのヘンテコな喋り方。途中で笑いを堪えるのに必死だったぜ」
「お芝居の見過ぎだよね。多分身近に貴族がいなかったんじゃないかな、普通の貴族はあんな言い方しないもの。『余は男爵であるぞよ!』みたいだった。
男爵もデイジーもどんどん態度がヘンテコになってウケた」
「帰ったら打ち上げするか?」
「良いの? 時間あるなら打ち上げしたいなー」
「おう、フレディが頑張ってるぞ。お陰でソフィーが言うほどペナルティにはなりそうにねえ」
「フレディは特別ボーナス奮発かな?」
「さあ、どこまで気合いが続くかだな。フレディは突然途中下車する悪い癖があるからな」
「おまけにその後迷子になる!」
「おー、よく知ってるな。流石社長様だ」
「この設計が終わる迄にルイス先生が鍛えてくれるから即戦力に数えとくかなー」
「おっおう、頑張るぜ。フレディ坊やがフレディ君になる位にな」
会社の前に馬車が停まり御者がステップを準備しドアを開けた。ルイスがステップを無視して飛び降りた後、御者の差し出した手を取りソフィーがゆっくりと降りてきた。
豪奢なキャリッジから平民らしき人が降りてくるのが珍しかったのか道ゆく大勢の人が足を止めた。
「ソフィー!!」
店で待ち構えていたのか青い顔のハンナが飛び出して来た。
「ただいまー。任務完了! お土産忘れた」
「完了? マジで? 上行こう、話聞かせて」
興奮度マックスのハンナがソフィーの手をグイグイと引っ張るが、ソフィーがその手を掴んで引き留め馬車の横に立つ御者に向かって頭を下げた。
「ちょっと待って・・ありがとうございました。あのご主人様にお礼を伝えていただけますでしょうか?」
「畏まりました。それでは失礼致します」
にこやかな笑顔で礼をした御者は足を止めている通行人達に小さく会釈して御者台に座った。ゆっくりとしたスピードで馬車が動き出す。
「すげえな、立派な貴族だと御者迄礼儀正しい。グレッグの奴もやる気になりゃパーティーとかで優雅にダンスとかすんのかな? 似合わねー、てかキモい」
ソフィーの手を引いて早足で店に入って行くハンナの後ろ姿を馬車を見送っていたルイスが穏やかな顔で見ていた。
「ルイスゥー、早く早く。上で話を聞かせてー」
ハンナの大声に通行人も店の中の人も注目しているがハンナは全く気づいていないのかルイスに向けて大きく手を振っている。
(ハンナは昔貴族令嬢だったっぽいがお貴族様のアレが出来るのか? うーん、グレッグは前途多難だな)
サラは昨日の夕方自分から話に来てくれたの。正直に話して謝ってくれた」
ルイスやハンナ達の為の差し入れを買いに行こうとして裏口から出た時、ソフィーを待っていたのはサラだった。
『あの、申し訳ありませんでした。弁償して罪も償います。本当に申し訳ありません』
『どうしてあんな事を?』
『・・窓口にいる私にしょっちゅう声をかけてくれて。おはようとかお疲れ様とかそんなのだけですけど・・私こんなだから・・頼まれた時いけない事だって分かってたけどすごく嬉しかったんです』
「はあ、ジュードはその辺も最低だったな。俺も見る目がねえよなー。ちょっと調子のいい奴だとは思ってたが若いからしょうがねえのかって。
アイツがあんな奴だと思ってなくてぜんっぜん警戒してなかった」
「あの時ルイスが殴ったの見てスッキリしちゃった」
ふふっと笑ったソフィーは秘密の話をするように少し小声で呟いた。
「俺もブチ切れたのは久しぶりだったが・・少しスッキリした。あと2・3発殴ったら爆睡できそうなんだがな」
「そんなことになったら、へなちょこジュードはヨボヨボのヘロヘロになるの確実ね」
ルイスが昔作業現場で問題のある作業員に躾をしていた現場に何度も遭遇したソフィーは、泣き出した作業員やお漏らしした大男がいた事を思い出した。
そのくせ女子供と老人には優しく、ソフィーの中では昔読んだ絵本に出てきた子供を助ける『森の熊さん』扱い。
「しかしこんなに乗り心地が良い馬車には初めて乗ったぜ。流石高位貴族様の乗り物だな。乗り心地は最高で居心地は最悪」
「ふふっ、私も同意見。楽ちんだけど汚したらどうしようって思ったから乗る前に靴脱ごうかと思った」
「そうだ、忘れてた。どっか怪我とかしてねえかちょっと足出してみな」
慌てて前に屈み大きな手でソフィーの足を捕まえようとしたルイスは真っ赤になったソフィーに突き飛ばされた。
「ちょ、触っちゃダメ! 怪我してないしワインも乾いてるから」
焦って馬車の端に座り直すソフィーを見てルイスがハッと自分の行動に気がついた。
「すっすまん、ソフィーももうガキじゃねえんだよな。すっかり忘れて」
ルイスは息子が1人と甥が2人と姪が1人いる。ルイスは出会った時からずっとソフィーの事を2人目の姪のように扱っていた。
偶にルイスの家に遊びに行くと料理好きで美人の奥さんが近所の子供を抱っこして出迎えてくれる。大きな仕事が終わったお祝いに昼から酒盛りをして盛大に酔っ払ったルイスが一度だけ教えてくれた。
『アイツとは幼馴染なんだけどよ。昔は体が弱くて子供も結婚も無理だって言われてたんだ。だったら俺がもらってやるって言ったら偉そーに、でっかい家じゃなきゃ嫌だって言いやがるんだぜ。近所の子供を一杯集めて子守りするのが夢だからって。
なら、仕方ねえ大工になってやるよってな』
ルイスの家は二階建てで広い庭があり息子や甥と姪以外にも何人もの子供達が毎日出入りしている。
「あー、そういやあ。男爵のあのヘンテコな喋り方。途中で笑いを堪えるのに必死だったぜ」
「お芝居の見過ぎだよね。多分身近に貴族がいなかったんじゃないかな、普通の貴族はあんな言い方しないもの。『余は男爵であるぞよ!』みたいだった。
男爵もデイジーもどんどん態度がヘンテコになってウケた」
「帰ったら打ち上げするか?」
「良いの? 時間あるなら打ち上げしたいなー」
「おう、フレディが頑張ってるぞ。お陰でソフィーが言うほどペナルティにはなりそうにねえ」
「フレディは特別ボーナス奮発かな?」
「さあ、どこまで気合いが続くかだな。フレディは突然途中下車する悪い癖があるからな」
「おまけにその後迷子になる!」
「おー、よく知ってるな。流石社長様だ」
「この設計が終わる迄にルイス先生が鍛えてくれるから即戦力に数えとくかなー」
「おっおう、頑張るぜ。フレディ坊やがフレディ君になる位にな」
会社の前に馬車が停まり御者がステップを準備しドアを開けた。ルイスがステップを無視して飛び降りた後、御者の差し出した手を取りソフィーがゆっくりと降りてきた。
豪奢なキャリッジから平民らしき人が降りてくるのが珍しかったのか道ゆく大勢の人が足を止めた。
「ソフィー!!」
店で待ち構えていたのか青い顔のハンナが飛び出して来た。
「ただいまー。任務完了! お土産忘れた」
「完了? マジで? 上行こう、話聞かせて」
興奮度マックスのハンナがソフィーの手をグイグイと引っ張るが、ソフィーがその手を掴んで引き留め馬車の横に立つ御者に向かって頭を下げた。
「ちょっと待って・・ありがとうございました。あのご主人様にお礼を伝えていただけますでしょうか?」
「畏まりました。それでは失礼致します」
にこやかな笑顔で礼をした御者は足を止めている通行人達に小さく会釈して御者台に座った。ゆっくりとしたスピードで馬車が動き出す。
「すげえな、立派な貴族だと御者迄礼儀正しい。グレッグの奴もやる気になりゃパーティーとかで優雅にダンスとかすんのかな? 似合わねー、てかキモい」
ソフィーの手を引いて早足で店に入って行くハンナの後ろ姿を馬車を見送っていたルイスが穏やかな顔で見ていた。
「ルイスゥー、早く早く。上で話を聞かせてー」
ハンナの大声に通行人も店の中の人も注目しているがハンナは全く気づいていないのかルイスに向けて大きく手を振っている。
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