【完結】婚約してる? 婚約破棄した? ところであなたはどなたですか?

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28.暴走するローガン

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(ソフィーは不思議な人だな。家名がないから平民なのは間違いないが、これだけの事業を運営しているからにはかなり裕福な家の娘だろう。別の仕事をしていると言ってもここを維持するだけの資金を稼ぎ出せるわけがないしな。そのくせ低所得者の事もよく知っているし)

 レオが考え事をしながらボンヤリとソフィーを見つめているとローガンがガタンと大きな音を立てて椅子を倒し立ち上がった。


「レオ、しんまいのくせになまいきだぞ!!」



 全員が驚いてローガンを凝視すると、ローガンは赤い顔をしてレオに言い募った。

「とおちゃんがいってたんだ! ピクニックにいってかあちゃんとこっそりちゅーしたからおれがうまれたって。だっ、だから・・レオはソフィーに、ちゅっちゅーしたらダメだからな!!」

 ガバッと勢いよく子供達がレオを見つめナニー達は口を押さえて笑いを堪えた。自分たちが知らなかった生命の神秘を知った(つもりの)子供達の顔はキラキラと輝く者と睨みを利かせる者に分かれた。

(はっ? あの、え?)

「ソフィーはみん、みんなのソフィーだから、だからダメなんだからな。ソフィーはいっしょう、だれともちゅーしないんだから」

 目が点になり口をポカンと開けたレオと少しずつ尻すぼみになりながらも最後まで言い切ったローガン。

「えーっと、私が誰とちゅーするかは別だけど少なくとも今ここでちゅーするつもりはないから」

 ソフィーが呆然としているレオの腕を軽く叩いた。

「あっ? ああ、俺はその、今飯を食ってるだけでそれ以外の予定はない。うん、今のところそれ以外の予定は・・」

「じゃあ、あとでするのね? すてき!!」

 レオが『今のところ』と言った言葉尻を捉えたエラが興奮気味に叫んだ。真っ赤だったローガンの顔は真っ青になり目を潤ませプルプルと震えている。

「子供と話すのは面白いでしょう?」

 ほんの少しレオの方に身を寄せたソフィーが笑いを抑えながら小声でレオに話しかけた。

「レオと色々お話ししたのは今日が初めてなの。だから、ピクニックしてもキスはしないわ。そうでしょう、レオ?」

「あっああ、その通り。ちゅーはしない」

「がっかりー」「ざんねん」


「うるさい! これからもぜったいだめだからな!!」

「ああ、覚えとくよ」

(どうやらローガンの初恋の相手はソフィーのようだ)





 食事を終え片付けを終えた子供達が大広間に移動して行った。食堂にはソフィーとレオが残されジェニーが布巾でテーブルや椅子を拭いている。

 食事の後はレオと剣の練習をすると張り切っていたローガンはレオをひと睨みして食堂を出て行った。

「ローガンに嫌われちゃったみたいね」

「子供は凄いな。座って食事してただけでその・・」

「ローガンの父親はお酒好きなの。きっと酔った勢いで話したのかもね」

 このくらいの事は日常茶飯事だと言わんばかりのソフィーは堂々としたもので、レオはあの程度の事で動揺してしまったのが恥ずかしくなった。



「知り合いの方がどんな目的でここの事を知りたがっているのか分からないんだけど取り敢えずこんな感じかしら」

「忙しいところ時間を取ってもらってありがとう。色々教えて貰って助かった」
 
「まだはじめたばかりだから何もかも手探り状態なの。まだ必要最低限の物しか準備してないし、次にお会いすることがあったらここもうんと様変わりしてるかも」

 確かに何も飾られていない壁や機能性重視の家具は見る人によっては物足りないのかもしれないが、子供達の表情を見ていたら過不足のない設備に思えた。安心して遊べる広い部屋と走り回れる庭。職員達は過度に手を出さず子供達に話し合いをさせていた事に一番の魅力を感じた。

(ジョシュアの幼児学校を思い出したら身内ながら恥ずかし過ぎて顔を上げられんな)




「ちょっと気になったんだが・・その、余計な事だったら申し訳ないが、警備と言うか安全対策を見直した方がいいと思うんだ」

「?」

「ここは隣の家とは少し離れてるだろ? それに屋敷の周りを歩いているだけで敷地内の様子が丸見えだったし、窓が大きいせいで部屋の中を歩く人の姿が通りからでも見えたんだ」

「・・少し前からこの辺りで不審者情報が出てるからなるべく急いで犬を飼おうかって話をしてるの。種類や大きさによってはかなり有効でしょう?」

「不審者?」

 レオの眉間に皺が寄って酷く凶悪な顔になった。

(厨房で片付けをしているジェニーがここにいたら怯えるかしら?)


「目撃情報からすると2人組で、ただ近所を歩き回ったり塀のとこから中を覗いたりするだけなんだけど心配で・・ナニー達や親御さんもピリピリしてるの」

「もし良ければ相談に乗らせてもらえないかな。いくつか提案もできるし犬を選ぶ時にも役に立てると思う」

「それはとても助かるわ。騎士様から防衛面をチェックしてもらえるなんて凄くラッキー。無料奉仕になるけど構わないのかしら?」

「ああ、休暇中で暇を持て余してるから紅茶を淹れてもらえたら充分だ」

「なら時間によっては食事とオヤツ付きで」

「随分と気前が良いんだな」

「フィフティフィフティが一番。人に貸しを作るのは好きじゃないから」

「まあ、今日初めて真面に話した相手だから仕方ないか」

「ごめんなさい、そういうつもりではないの」

「いや、正しい選択だと思う。簡単に人を信じる奴は足元を掬われるからな」

「経験者?」

「魔王を騙す勇気のある奴にはまだ会ったことがない」

「確かに。レオみたいに大きくて力持ちな人を警備担当で雇うと良いかも」


「暫くは俺をこき使っても構わんぞ?」

「魅力的なお誘いだけど私の紅茶では流石にレオは雇えないと思うわ」

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