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36.訳がわからん、混乱する恋愛初心者
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「サラは何かやったのかい?」
「ええ、ちょっとね。でも心配しないで。真面目だって評判が良かったの」
「うん、そんな気がした」
「サラは人見知りするって言ってたけどレオにはそんなでもなかったわね」
「ああ、大人しそうな人だから男性からの誘いが多そうだ」
(よくわからんがノーマンがそんな事を言ってたような気がする)
「やっぱりそう思う? じゃあ・・頑張ってね」
「? ああ」
(えーっと何を頑張るんだ?)
「身分の差なんて乗り越えられるくらいに頑張り屋だから」
「ん? ああ、そうだな」
(身分の差? 何の話だ? そんな話あったか?)
(レオの方もサラの事気に入ってるのかな? こういう時ってどうすればいいの?)
「明日から出社するからここにくればサラに会えるわよ」
「そうだな、その時は声をかけるよ」
(人様の恋愛には口を出すべきじゃないわよね。今度ハンナにどうすればいいか聞いてみよう。明日からの打ち合わせにはサラを参加させた方がレオは喜ぶのかしら?)
鉄柵の忍び返しの種類のレクチャーを受けたり呼び鈴の構造の話をしたりしているうちに子供達はお迎えが来て全員帰って行った。ナニー達も帰宅しレオも帰ってしまうと屋敷の中にはソフィーひとり。
(この屋敷、こんなに静かだったんだ)
仔犬が来た後ここに住む為に空き部屋の状況を確認しようと2階の左手の部屋に入って行った。
(うーん、1人で使うには広すぎて寂しいかも。仕事用の机とかも置けば少しは・・)
ソフィーがいるのはこの屋敷の主寝室。広い窓にカーテンがかかっている以外には何も置かれていない。
(ベッドの他にソファとテーブルを置いて・・ラグを置く。貴族の人ってなんでこんなに大きな部屋を作るんだろう)
2階にあるのは今いる主寝室の他に4部屋。階段に一番近い部屋を応接室に使いその隣を事務所兼倉庫にしている。
(サイズ的には屋根裏部屋に住むくらいが丁度いいんだけどハンナに怒られるよね。主寝室を事務所にしようかな)
1人で部屋をうろうろしながらハンナの顔を思い浮かべていると途端に不安になってきた。
(犬を飼うなんて分不相応だったかな? 歳をとると寂しくなって猫を飼う人が増えるって聞くし、それまで待った方が良かったのかも)
ソフィーは屋敷の鍵を閉め会社の上にある自宅へ帰って行った。
昨日は上機嫌で帰ってきたレオが今日は眉間に皺を寄せて威圧感増し増しで廊下を歩いていた。そのお陰でメイドは持っていたお盆を落とし従僕は壁に張り付いて怪しい彫像になっている。
部屋に入りドカっとソファに座り込む。普通の貴族なら従者やメイドが着替えの手伝いに来たりお茶を運んできたりするが、レオの場合は恐れて誰もやってこない。
その方が気楽でいいと思っているが今日もドアが勢いよく開き別の嵐がやってきた。
「レオ兄様、百面相が怖い! メイドが泣き出すからやめて」
「・・」
返事をしないレオの凹み具合が半端ない。ジョシュアは心配になって優しく声をかけた。
「何かあったの?(絶対何かあった。昨夜の図書室での苦労が役に立たなかった?)」
「何もない・・はず」
(あったな、確実になにかあったんだ)
「ふーん、そうなんだー。明日はどうするの?」
「出かける」
(即答・・って事はまだ大丈夫?)
「・・なあ、例えばなんだが女性が突然態度を変えるのはどんな時だ?」
(キター!)
「それって一般論? それとも特定の女性?」
「・・一般論」
(はい、ギルティ。超朴念仁のレオ兄様が女性の一般論なんて気にするわけないじゃない)
「一般論かぁ。それだとちょっと難しいかなー。女心って複雑だからー。人によって全然違うのよねー」
「・・ならいい」
「何歳?」
「23、俺と同い年」
(一般論じゃなくね?)
「態度が変わる前って何をしてたの?」
「社員の面接に付き合った」
「? その前は?」
「彼女の家族の事を・・そうか! それだ」
「・・」
(多分違うと思う。経験値ゼロのレオ兄様がこの手の話題で1人で正解に辿り着くのは無理だと思う)
「話したくない話題だったんだ。だから・・いや、違うな。それだとあんな事は言わないか」
(レオ兄様、ちょー面白い。表情筋が凄~く活性化してるぅ)
「どんな事を言ったの?」
「突然、貴族と平民の身分差を乗り越えるとか」
(えっ? マジで? 進捗早くない?)
「頑張ってねって、何を頑張ればいいのかさっぱりわからん」
「・・」
(家族の話をして社員面接に付き合った後頑張ってね?)
「ねえ、社員面接って誰の?」
「事務の女性の面接」
(ほう、女性とな?)
「訳ありらしくて途中その女性が泣きだしたから・・」
「から? レオ兄様は何か言ったの?」
「仕事をはじめたら子供達が喜びそうだと」
「他には?」
「・・あー、大人しい人だったから男性からの誘いが多そうだって言ったな」
「そしたら頑張ってって応援されたんだ」
「ああ、訳がわからん」
(わからんって言うお前の頭の中がわからんわ!)
「レオ兄様はその女性の事どう思ったの?」
「別に何も。俺には関係ないからな」
「その女性ってもしかしてレオ兄様ににっこりしたり何か話しかけてきたりした?」
「ん? そうだな。また会いたいとか社交辞令を言うくらいには復活してた」
ジョシュアはガックリと膝をついて頭を抱えた。
(それ、応援されてるんだよ! レオ兄様ソフィーに相手にされてない!)
「・・れっレオ兄様、その女性がレオ兄様に惹かれたかレオ兄様がその女性を気に入ったか、その両方かだと思われてるわ!」
「はあ? 泣き出す直前まで『ひいっ』とかって怯えて震えてたんだぞ? 俺のことを気にいる訳がないだろ?」
「興味ないならレオ兄様はなんでその人がモテそうだなんて言ったのよ!?」
「・・兄弟騎士が言ってた。言っちゃ拙かったのか?」
拙かったと初めて気付いたレオは真っ青になってジョシュアの肩を掴んだ。
「いっ痛い痛い、痛ってぇつってんだろうが!! 馬鹿力出すんじゃねえ!」
「すっすまん。怪我は?」
ジョシュアはレオに掴まれた肩をぐるぐると回しながらレオを睨みつけた。
「レディの肩を掴むなんて酷すぎるわ!」
「えっ? お前さっきは『つってんだろうが』とか」
「煩いわね。ペナルティ1だから覚えといてね。モテそうだとかそう言う言葉は相手に気があるって思われても仕方ないの」
「はあ、マジかぁ」
(これはなんとかしなくちゃ、レオ兄様がボケーッとしてるのを観察してる場合じゃないかも)
「ええ、ちょっとね。でも心配しないで。真面目だって評判が良かったの」
「うん、そんな気がした」
「サラは人見知りするって言ってたけどレオにはそんなでもなかったわね」
「ああ、大人しそうな人だから男性からの誘いが多そうだ」
(よくわからんがノーマンがそんな事を言ってたような気がする)
「やっぱりそう思う? じゃあ・・頑張ってね」
「? ああ」
(えーっと何を頑張るんだ?)
「身分の差なんて乗り越えられるくらいに頑張り屋だから」
「ん? ああ、そうだな」
(身分の差? 何の話だ? そんな話あったか?)
(レオの方もサラの事気に入ってるのかな? こういう時ってどうすればいいの?)
「明日から出社するからここにくればサラに会えるわよ」
「そうだな、その時は声をかけるよ」
(人様の恋愛には口を出すべきじゃないわよね。今度ハンナにどうすればいいか聞いてみよう。明日からの打ち合わせにはサラを参加させた方がレオは喜ぶのかしら?)
鉄柵の忍び返しの種類のレクチャーを受けたり呼び鈴の構造の話をしたりしているうちに子供達はお迎えが来て全員帰って行った。ナニー達も帰宅しレオも帰ってしまうと屋敷の中にはソフィーひとり。
(この屋敷、こんなに静かだったんだ)
仔犬が来た後ここに住む為に空き部屋の状況を確認しようと2階の左手の部屋に入って行った。
(うーん、1人で使うには広すぎて寂しいかも。仕事用の机とかも置けば少しは・・)
ソフィーがいるのはこの屋敷の主寝室。広い窓にカーテンがかかっている以外には何も置かれていない。
(ベッドの他にソファとテーブルを置いて・・ラグを置く。貴族の人ってなんでこんなに大きな部屋を作るんだろう)
2階にあるのは今いる主寝室の他に4部屋。階段に一番近い部屋を応接室に使いその隣を事務所兼倉庫にしている。
(サイズ的には屋根裏部屋に住むくらいが丁度いいんだけどハンナに怒られるよね。主寝室を事務所にしようかな)
1人で部屋をうろうろしながらハンナの顔を思い浮かべていると途端に不安になってきた。
(犬を飼うなんて分不相応だったかな? 歳をとると寂しくなって猫を飼う人が増えるって聞くし、それまで待った方が良かったのかも)
ソフィーは屋敷の鍵を閉め会社の上にある自宅へ帰って行った。
昨日は上機嫌で帰ってきたレオが今日は眉間に皺を寄せて威圧感増し増しで廊下を歩いていた。そのお陰でメイドは持っていたお盆を落とし従僕は壁に張り付いて怪しい彫像になっている。
部屋に入りドカっとソファに座り込む。普通の貴族なら従者やメイドが着替えの手伝いに来たりお茶を運んできたりするが、レオの場合は恐れて誰もやってこない。
その方が気楽でいいと思っているが今日もドアが勢いよく開き別の嵐がやってきた。
「レオ兄様、百面相が怖い! メイドが泣き出すからやめて」
「・・」
返事をしないレオの凹み具合が半端ない。ジョシュアは心配になって優しく声をかけた。
「何かあったの?(絶対何かあった。昨夜の図書室での苦労が役に立たなかった?)」
「何もない・・はず」
(あったな、確実になにかあったんだ)
「ふーん、そうなんだー。明日はどうするの?」
「出かける」
(即答・・って事はまだ大丈夫?)
「・・なあ、例えばなんだが女性が突然態度を変えるのはどんな時だ?」
(キター!)
「それって一般論? それとも特定の女性?」
「・・一般論」
(はい、ギルティ。超朴念仁のレオ兄様が女性の一般論なんて気にするわけないじゃない)
「一般論かぁ。それだとちょっと難しいかなー。女心って複雑だからー。人によって全然違うのよねー」
「・・ならいい」
「何歳?」
「23、俺と同い年」
(一般論じゃなくね?)
「態度が変わる前って何をしてたの?」
「社員の面接に付き合った」
「? その前は?」
「彼女の家族の事を・・そうか! それだ」
「・・」
(多分違うと思う。経験値ゼロのレオ兄様がこの手の話題で1人で正解に辿り着くのは無理だと思う)
「話したくない話題だったんだ。だから・・いや、違うな。それだとあんな事は言わないか」
(レオ兄様、ちょー面白い。表情筋が凄~く活性化してるぅ)
「どんな事を言ったの?」
「突然、貴族と平民の身分差を乗り越えるとか」
(えっ? マジで? 進捗早くない?)
「頑張ってねって、何を頑張ればいいのかさっぱりわからん」
「・・」
(家族の話をして社員面接に付き合った後頑張ってね?)
「ねえ、社員面接って誰の?」
「事務の女性の面接」
(ほう、女性とな?)
「訳ありらしくて途中その女性が泣きだしたから・・」
「から? レオ兄様は何か言ったの?」
「仕事をはじめたら子供達が喜びそうだと」
「他には?」
「・・あー、大人しい人だったから男性からの誘いが多そうだって言ったな」
「そしたら頑張ってって応援されたんだ」
「ああ、訳がわからん」
(わからんって言うお前の頭の中がわからんわ!)
「レオ兄様はその女性の事どう思ったの?」
「別に何も。俺には関係ないからな」
「その女性ってもしかしてレオ兄様ににっこりしたり何か話しかけてきたりした?」
「ん? そうだな。また会いたいとか社交辞令を言うくらいには復活してた」
ジョシュアはガックリと膝をついて頭を抱えた。
(それ、応援されてるんだよ! レオ兄様ソフィーに相手にされてない!)
「・・れっレオ兄様、その女性がレオ兄様に惹かれたかレオ兄様がその女性を気に入ったか、その両方かだと思われてるわ!」
「はあ? 泣き出す直前まで『ひいっ』とかって怯えて震えてたんだぞ? 俺のことを気にいる訳がないだろ?」
「興味ないならレオ兄様はなんでその人がモテそうだなんて言ったのよ!?」
「・・兄弟騎士が言ってた。言っちゃ拙かったのか?」
拙かったと初めて気付いたレオは真っ青になってジョシュアの肩を掴んだ。
「いっ痛い痛い、痛ってぇつってんだろうが!! 馬鹿力出すんじゃねえ!」
「すっすまん。怪我は?」
ジョシュアはレオに掴まれた肩をぐるぐると回しながらレオを睨みつけた。
「レディの肩を掴むなんて酷すぎるわ!」
「えっ? お前さっきは『つってんだろうが』とか」
「煩いわね。ペナルティ1だから覚えといてね。モテそうだとかそう言う言葉は相手に気があるって思われても仕方ないの」
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