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39.ソフィーの手腕
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「ハンナ、現状報告を!!」
「10時過ぎに倒産の連絡が来た。社長は既に行方不明。買い掛けの金額は算出済み。ルイスが【カランカム商会】に行ってる。ヒョロイのが行っても役に立たないからって」
「倍額の現金を準備できる?」
「もちろん!!」
「おかしな奴らが動き回ってるはずだから移動には細心の注意を。必ず護衛をつけて」
「分かった。護衛が来たら直ぐ行ってくる」
「護衛の手配してきます。人数は?」
「6人。足りなければ追加するって言っておいて」
「了解です」
「設計部は発注をかけてる資材をリストアップしたら別の業者に直ぐに発注をかけて。必要なら現金取引で構わない。他の会社も同じ事を考えるはずだから早い者勝ちになるはずよ。使う業者は【カランカム】と関わりのないところがベストだけどわからなかったら仕方ないわ。足元を見てくる可能性が高いから慌てた態度だけは絶対にしないで」
「すぐ調べて行ってきます」
「「俺もやります」」
「資材部は発注済みの資材の洗い出しの手伝いと【カランカム商会】が取引してる業者の洗い出しを手分けして。連鎖倒産の可能性がある。
わからなければ会社の近くを社員が彷徨いてるはずだから捕まえて聞いてみて」
「俺は資材の方を手伝います」
「俺は業者の洗い出しやります」
「俺も業者を」
「グレンジャー弁護士は?」
「連絡した。見つけ次第【カランカム】に直行するって」
「確か【カランカム】の倉庫はアクスワムにあったはずだから資材を押さえて。護衛付きの弁護士も行かせて」
「すぐ行ってきます」
「俺は法律事務所に」
「あそこは確か経理を社長の従兄弟がやってたはず。従兄弟の行方を追う事と、社長や従兄弟の名前で個人倉庫を借りてないか調べて。見つけたら弁護士事務所に連絡して、倉庫に行くときは必ず複数で行って」
「従兄弟の方は俺が行ってきます」
「個人倉庫調べてきます」
「それから、もういないと思うはけど社長宅の再確認と従兄弟の自宅を調べて。近所の人が何か知ってるかも。名前や住所も会社の近くをうろついてる社員に聞いて」
「俺は社長の自宅を」
「俺は従兄弟の自宅に行ってきます」
「保険会社への連絡は?」
「やった。もうそろそろくるはず」
「グレッグは債権業者の様子を調べて。ヤバいところに回る前に回収したいの」
「了解。直ぐに調べる」
「後忘れてることはないかしら?」
「多分大丈夫じゃないかな」
ソフィーが指示を出す度に人が走り出して行き事務所にはハンナと数人が残っているだけだった。
「後の人は通常業務をお願い。人手が少なくて大変だと思うけど宜しくね。何かあったら部屋にいるから何時でも声をかけて」
全員が青い顔をしながら頷いた。
ギルドや馬車の中で呑気な素振りだったのが嘘のように怒涛の指示を出したソフィーは仕事部屋に入ってコーヒーを淹れ始めた。
「一番怖いのは債権が何処に流れるかだわ。その次は予定している資材が準備できなくて納期が遅れる事ね」
「うちの債権なら優良株だから買い手は山盛りいそう」
「悪質な業者に債権が流れた時の対策を検討しなくちゃ」
「いやー、今日は流石社長だって感心した」
何時も揶揄ってばかりのハンナが珍しくソフィーを褒めた。
「ハンナが折角褒めてくれたのにコーヒー淹れちゃったよ」
「折角褒めたげたのに? って臭いがしてたけど。まあ今の気分だと紅茶よりコーヒーが合ってるよね・・あっ、薄めでお願い。胃が死んじゃう」
その後ソフィーの仕事部屋は終日人が出たり入ったりで、その都度指示を出したり届いた資料を調べたりしていた。
夕方遅くレオからソフィーに手紙が届いた。取引業者の倒産の情報は既に知られているはずだがその事には一言も触れず、金属加工ギルドでの打ち合わせ内容とレバータンブラー錠の特徴や納期などが書かれていた。
『もし信用して貰えるなら柵の補強工事に関わる作業か保育学校の護衛を依頼して貰えないだろうか? それからしっかり食事をとるように』
手紙と共に大量の差し入れが届いた。
「王都はとんでもないことになったわね。結構大手の商会だったから連鎖倒産したとこもでたし」
ジョシュアが眉間に皺を寄せているレオに【ソラージュ不動産】の状況を教えてくれた。
「ああ」
「噂ではソフィーの手腕は凄かったって。怒涛の如く指示を出しまくってたって。近くで見ていた人は鳥肌がたったそうよ。
普段はどちらかと言うとのんびりしててブレーンのハンナがテキパキ仕事をしてるように見えてたんだけど、一気にみんなの見る目が変わったって」
「ああ」
「しかも普段の行いが良かったからか、別の業者が優先して資材を卸したんですって。お陰でソフィーの会社の業務は順調らしいわよ」
「ああ」
「いくつかの会社と現金取引したんですって。そのお陰で何とか倒産を免れた会社があったって」
「ああ」
「ソフィーの会社の社員が個人名義の倉庫を見つけて中にあった資材を押さえたって」
「ああ」
「ソフィーの会社はほとんどの債権を無事回収できたらしいんだけどあと数枚残ってるらしいの」
「ああ」
「今のレオ兄様に『ああ』以外の返事を期待するのは無理そうね」
「ああ(ちゃん寝れてるんだろうか)」
レオは連日保育学校へ行きソフィーの代わりと力仕事を手伝っていた。
(差し入れをするくらいしか出来る事がないのが情けないな)
ソフィーの会社の状況はジョシュアが逐一報告してくれたが、その間ソフィーは休憩を取れているのかとか夜眠れているのかとか心配ばかりしていた。
計画倒産だった事や悪質な債権業者が予想以上に早く動きはじめた事などで、連鎖倒産した会社以外にも多くの会社が被害を受け株価にも大きな影響が出た。
保育学校はローリーの指揮で問題なく経営出来ている。レオは日々の報告をソフィー宛てに送っていた。
「で、例のクソビッチは相変わらずなの?」
「俺が思ってるのと同じ奴のことを言ってるのなら相変わらずだな」
「ねえ、アイツが何やったか知ってる?」
「10時過ぎに倒産の連絡が来た。社長は既に行方不明。買い掛けの金額は算出済み。ルイスが【カランカム商会】に行ってる。ヒョロイのが行っても役に立たないからって」
「倍額の現金を準備できる?」
「もちろん!!」
「おかしな奴らが動き回ってるはずだから移動には細心の注意を。必ず護衛をつけて」
「分かった。護衛が来たら直ぐ行ってくる」
「護衛の手配してきます。人数は?」
「6人。足りなければ追加するって言っておいて」
「了解です」
「設計部は発注をかけてる資材をリストアップしたら別の業者に直ぐに発注をかけて。必要なら現金取引で構わない。他の会社も同じ事を考えるはずだから早い者勝ちになるはずよ。使う業者は【カランカム】と関わりのないところがベストだけどわからなかったら仕方ないわ。足元を見てくる可能性が高いから慌てた態度だけは絶対にしないで」
「すぐ調べて行ってきます」
「「俺もやります」」
「資材部は発注済みの資材の洗い出しの手伝いと【カランカム商会】が取引してる業者の洗い出しを手分けして。連鎖倒産の可能性がある。
わからなければ会社の近くを社員が彷徨いてるはずだから捕まえて聞いてみて」
「俺は資材の方を手伝います」
「俺は業者の洗い出しやります」
「俺も業者を」
「グレンジャー弁護士は?」
「連絡した。見つけ次第【カランカム】に直行するって」
「確か【カランカム】の倉庫はアクスワムにあったはずだから資材を押さえて。護衛付きの弁護士も行かせて」
「すぐ行ってきます」
「俺は法律事務所に」
「あそこは確か経理を社長の従兄弟がやってたはず。従兄弟の行方を追う事と、社長や従兄弟の名前で個人倉庫を借りてないか調べて。見つけたら弁護士事務所に連絡して、倉庫に行くときは必ず複数で行って」
「従兄弟の方は俺が行ってきます」
「個人倉庫調べてきます」
「それから、もういないと思うはけど社長宅の再確認と従兄弟の自宅を調べて。近所の人が何か知ってるかも。名前や住所も会社の近くをうろついてる社員に聞いて」
「俺は社長の自宅を」
「俺は従兄弟の自宅に行ってきます」
「保険会社への連絡は?」
「やった。もうそろそろくるはず」
「グレッグは債権業者の様子を調べて。ヤバいところに回る前に回収したいの」
「了解。直ぐに調べる」
「後忘れてることはないかしら?」
「多分大丈夫じゃないかな」
ソフィーが指示を出す度に人が走り出して行き事務所にはハンナと数人が残っているだけだった。
「後の人は通常業務をお願い。人手が少なくて大変だと思うけど宜しくね。何かあったら部屋にいるから何時でも声をかけて」
全員が青い顔をしながら頷いた。
ギルドや馬車の中で呑気な素振りだったのが嘘のように怒涛の指示を出したソフィーは仕事部屋に入ってコーヒーを淹れ始めた。
「一番怖いのは債権が何処に流れるかだわ。その次は予定している資材が準備できなくて納期が遅れる事ね」
「うちの債権なら優良株だから買い手は山盛りいそう」
「悪質な業者に債権が流れた時の対策を検討しなくちゃ」
「いやー、今日は流石社長だって感心した」
何時も揶揄ってばかりのハンナが珍しくソフィーを褒めた。
「ハンナが折角褒めてくれたのにコーヒー淹れちゃったよ」
「折角褒めたげたのに? って臭いがしてたけど。まあ今の気分だと紅茶よりコーヒーが合ってるよね・・あっ、薄めでお願い。胃が死んじゃう」
その後ソフィーの仕事部屋は終日人が出たり入ったりで、その都度指示を出したり届いた資料を調べたりしていた。
夕方遅くレオからソフィーに手紙が届いた。取引業者の倒産の情報は既に知られているはずだがその事には一言も触れず、金属加工ギルドでの打ち合わせ内容とレバータンブラー錠の特徴や納期などが書かれていた。
『もし信用して貰えるなら柵の補強工事に関わる作業か保育学校の護衛を依頼して貰えないだろうか? それからしっかり食事をとるように』
手紙と共に大量の差し入れが届いた。
「王都はとんでもないことになったわね。結構大手の商会だったから連鎖倒産したとこもでたし」
ジョシュアが眉間に皺を寄せているレオに【ソラージュ不動産】の状況を教えてくれた。
「ああ」
「噂ではソフィーの手腕は凄かったって。怒涛の如く指示を出しまくってたって。近くで見ていた人は鳥肌がたったそうよ。
普段はどちらかと言うとのんびりしててブレーンのハンナがテキパキ仕事をしてるように見えてたんだけど、一気にみんなの見る目が変わったって」
「ああ」
「しかも普段の行いが良かったからか、別の業者が優先して資材を卸したんですって。お陰でソフィーの会社の業務は順調らしいわよ」
「ああ」
「いくつかの会社と現金取引したんですって。そのお陰で何とか倒産を免れた会社があったって」
「ああ」
「ソフィーの会社の社員が個人名義の倉庫を見つけて中にあった資材を押さえたって」
「ああ」
「ソフィーの会社はほとんどの債権を無事回収できたらしいんだけどあと数枚残ってるらしいの」
「ああ」
「今のレオ兄様に『ああ』以外の返事を期待するのは無理そうね」
「ああ(ちゃん寝れてるんだろうか)」
レオは連日保育学校へ行きソフィーの代わりと力仕事を手伝っていた。
(差し入れをするくらいしか出来る事がないのが情けないな)
ソフィーの会社の状況はジョシュアが逐一報告してくれたが、その間ソフィーは休憩を取れているのかとか夜眠れているのかとか心配ばかりしていた。
計画倒産だった事や悪質な債権業者が予想以上に早く動きはじめた事などで、連鎖倒産した会社以外にも多くの会社が被害を受け株価にも大きな影響が出た。
保育学校はローリーの指揮で問題なく経営出来ている。レオは日々の報告をソフィー宛てに送っていた。
「で、例のクソビッチは相変わらずなの?」
「俺が思ってるのと同じ奴のことを言ってるのなら相変わらずだな」
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