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第五章 良き出会いに乾杯
04.そんなに簡単にはいかないよ〜
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メープルツリーは30年以上の年月をかけて30~40メートルという大木に成長し、3~5つに裂けた大型の葉は季節によって黄色や赤に変色する。
木材としても優秀な硬い材質から家具などを作るのにも適しており、耐摩耗性が高い為に床材などにも適している。
「長い間放置されてた林だからさぁ、事業として成り立つまでには時間がかかると思うんだよね」
「えぇっ! マジで!? ミリーの事だから、手に入れたら速攻でドッカーンって儲ける気だと思ったのに⋯⋯」
「何それ~、わけわかんない。あの企画書を見ててそう思ったって事はシモンってば、かなりのおバカさんなんだ。超ガッカリ~。おバカなイケメンって、めちゃめちゃ残念な子じゃん」
「ううっ! 今日のミリーってば毒舌が暴走してない?」
ビリーに秘密をバラした恨みは貸しひとつでは足りないらしく、これから暫くはミリーのオモチャ決定かも。
「まず初めに残す木を選定して、残りを切り出して木材にしなきゃだよ? 放りっぱなしの木だもん。虫食いとかいっぱいあるはずだから、どれくらいの木材ができるかわかんないじゃん」
「それはそうなんだけど⋯⋯ミリーなんだだもん。真面じゃないって言うか普通じゃないって言うか。あ、いい意味でだよ! これ、褒めてるからね!」
「どの程度の虫害が発生してるのかを早急に調査しないといけないから、信用できる専門家を見つけないと話が進まない。
国境が近いから境界線をはっきりさせとかなくちゃ。お金になるってわかったらどこかの領主だの隣の国だのから難癖をつけられかねないから、それまでに所有権の登録と土地の境界については微細な漏れもないようにしておく事⋯⋯ここは法律の専門家に最終確認してもらってね。
商売としてのトラブルが起きた時は商人ギルド任せだけど、領地についてはビリーの管轄だから。出来れば定期的に連絡を取り合える弁護士とかを見つけて欲しいの。間違いなく大量のハイエナが湧いて出るからね」
平民となったビリーでは貴族からのゴリ押しに太刀打ちできない可能性がある。
(国王陛下と仲が良いみたいだから、その辺りから紹介してもらえたら良いんだけどね~)
「木の輸送ルートと作業場の位置を想定して伐採の計画を立てるけど、そこには残す木と残さない木の選別も必要になる。
木の販売先と輸送経路は河川貿易絡みで考えたいだろうから、ビリーの方が詳しいかも。
この木は家具や床材だけじゃなくて、オイルやワックスを含浸させれば木製軸受としても利用できるの。で、肝心なのはこの木から取れる樹液で作るシロップ。メープルシロップって言うんだけど、これがほっぺが落ちそうになるくらい美味しいの」
「樹液がシロップに?」
「砂糖は高価で庶民には手が出せないし、買い渋る貴族だっているでしょ? それに蜂蜜は0歳児・妊娠中・授乳中・蜂に刺されたことのある人は、ショック死する可能性があるから食べちゃダメなんだけど、メープルシロップの危険は美味しすぎて食べ過ぎに注意って事くらいしかないの。植物性の甘味料で疲れた時の疲労回復にもなる」
「蜂蜜にそんな危険があるとは知りませんでした。ある地方では産まれたばかりの赤ちゃんの口にハチミツを塗る習慣があると聞いたことがあります。それが本当なら⋯⋯本当だと信じていますが、早急に対応しないと⋯⋯」
「なあ、そのメイプルシロップってのはどのくらい取れるんだ?」
「幹に空けた1つの穴から採取できるメイプルシロップは1リットルで、1本の木からは約40~80リットルの樹液が採れる。1リットルのメープルシロップを作るためには40リットルの樹液が必要になる。
残せる木があればある程良いのは勿論だけど、植林についても計画立てていかなくちゃ」
「虫だらけの林で木が全滅だったら最悪じゃねえか」
「全滅って事はないんじゃない? 林って言ってるけど広さから考えたら何千本どころの騒ぎじゃないと思う。あの広さは林じゃなくて山って言うべきだしね。
全滅してたら観光地化する手もあるから大丈夫」
「虫だらけの観光地⋯⋯ブルブル⋯⋯」
「新緑や紅葉の美しさをポイントにしてログハウスやフィールドアスレチック、巨大滑り台やミニ動物園とか。ホテルを作って宿泊客を呼べば結構儲かるはず」
「ふぃーる? なんだそりゃ」
「えーっと、大きな遊具で登ったりぶら下がったり出来るの。これとかは必要になりそうなら設計図みたいなのを描いておくから、今は気にしないで」
(フィールドアスレチックは良さそうとか思ったけど、この世界にやる人いるのかな? う~ん、この世界にスポーツ選手みたいな人がいるのか調べてみようかなぁ。もしいれば体力作りしたいってなるかも。アウトドアって言ったら野営のことかって聞かれそう)
家族全員でキャンプやフィールドアスレチックを楽しむのは実里の夢だったから⋯⋯つい口をついて出てしまったが、パニエで膨らませたドレス姿の夫人が滑り台に並ぶ姿は想像出来ないし、チュニックを着た平民は『滑ったら布が破れそう』だと言い出すだろう。
(ダンボールの代わりになるものを考えつけば子供や男性にウケるとか?)
「長期的な事業はとてもありがたいです。雇用を生み出せて税収増にも繋がるなら、ある程度の目処が立った辺りで国に助成金を申請することが可能かもしれません」
新国王の政を後押ししたいビリーにとって、この事業計画を発案してくれたミリーには感謝の気持ちしかない。
「さっきは子供だからと侮って本当に申し訳ありません」
「いえいえ、ビリーさんの反応は当然の事ですから。むしろそうならない方がおかしいですもん」
メープルシロップの収穫は『シュガーブッシュ』と言われる木立の中で行われる。樹液を集め『シュガーシャック』と呼ばれる小屋の中で沸騰させて濃縮させる。
樹液は寒暖の差が最も大きくなる季節に、直径30センチ以上の木に小穴を開けて採取する。濃縮前の樹液はメープルウォーターと呼ばれる。
「採取シーズンのはじめは高い糖分を含む樹液が取れるけど、後半になるにつれて糖分が薄くなって最終的に約半分まで下がるの。でも、この糖分の薄い樹液をしっかり煮詰めるとシーズン序盤に採れた樹液より色と風味が濃いものができるって忘れないでね」
「あの、ひとつ疑問があるんですが⋯⋯なぜそんなに詳しいんですか?」
木材としても優秀な硬い材質から家具などを作るのにも適しており、耐摩耗性が高い為に床材などにも適している。
「長い間放置されてた林だからさぁ、事業として成り立つまでには時間がかかると思うんだよね」
「えぇっ! マジで!? ミリーの事だから、手に入れたら速攻でドッカーンって儲ける気だと思ったのに⋯⋯」
「何それ~、わけわかんない。あの企画書を見ててそう思ったって事はシモンってば、かなりのおバカさんなんだ。超ガッカリ~。おバカなイケメンって、めちゃめちゃ残念な子じゃん」
「ううっ! 今日のミリーってば毒舌が暴走してない?」
ビリーに秘密をバラした恨みは貸しひとつでは足りないらしく、これから暫くはミリーのオモチャ決定かも。
「まず初めに残す木を選定して、残りを切り出して木材にしなきゃだよ? 放りっぱなしの木だもん。虫食いとかいっぱいあるはずだから、どれくらいの木材ができるかわかんないじゃん」
「それはそうなんだけど⋯⋯ミリーなんだだもん。真面じゃないって言うか普通じゃないって言うか。あ、いい意味でだよ! これ、褒めてるからね!」
「どの程度の虫害が発生してるのかを早急に調査しないといけないから、信用できる専門家を見つけないと話が進まない。
国境が近いから境界線をはっきりさせとかなくちゃ。お金になるってわかったらどこかの領主だの隣の国だのから難癖をつけられかねないから、それまでに所有権の登録と土地の境界については微細な漏れもないようにしておく事⋯⋯ここは法律の専門家に最終確認してもらってね。
商売としてのトラブルが起きた時は商人ギルド任せだけど、領地についてはビリーの管轄だから。出来れば定期的に連絡を取り合える弁護士とかを見つけて欲しいの。間違いなく大量のハイエナが湧いて出るからね」
平民となったビリーでは貴族からのゴリ押しに太刀打ちできない可能性がある。
(国王陛下と仲が良いみたいだから、その辺りから紹介してもらえたら良いんだけどね~)
「木の輸送ルートと作業場の位置を想定して伐採の計画を立てるけど、そこには残す木と残さない木の選別も必要になる。
木の販売先と輸送経路は河川貿易絡みで考えたいだろうから、ビリーの方が詳しいかも。
この木は家具や床材だけじゃなくて、オイルやワックスを含浸させれば木製軸受としても利用できるの。で、肝心なのはこの木から取れる樹液で作るシロップ。メープルシロップって言うんだけど、これがほっぺが落ちそうになるくらい美味しいの」
「樹液がシロップに?」
「砂糖は高価で庶民には手が出せないし、買い渋る貴族だっているでしょ? それに蜂蜜は0歳児・妊娠中・授乳中・蜂に刺されたことのある人は、ショック死する可能性があるから食べちゃダメなんだけど、メープルシロップの危険は美味しすぎて食べ過ぎに注意って事くらいしかないの。植物性の甘味料で疲れた時の疲労回復にもなる」
「蜂蜜にそんな危険があるとは知りませんでした。ある地方では産まれたばかりの赤ちゃんの口にハチミツを塗る習慣があると聞いたことがあります。それが本当なら⋯⋯本当だと信じていますが、早急に対応しないと⋯⋯」
「なあ、そのメイプルシロップってのはどのくらい取れるんだ?」
「幹に空けた1つの穴から採取できるメイプルシロップは1リットルで、1本の木からは約40~80リットルの樹液が採れる。1リットルのメープルシロップを作るためには40リットルの樹液が必要になる。
残せる木があればある程良いのは勿論だけど、植林についても計画立てていかなくちゃ」
「虫だらけの林で木が全滅だったら最悪じゃねえか」
「全滅って事はないんじゃない? 林って言ってるけど広さから考えたら何千本どころの騒ぎじゃないと思う。あの広さは林じゃなくて山って言うべきだしね。
全滅してたら観光地化する手もあるから大丈夫」
「虫だらけの観光地⋯⋯ブルブル⋯⋯」
「新緑や紅葉の美しさをポイントにしてログハウスやフィールドアスレチック、巨大滑り台やミニ動物園とか。ホテルを作って宿泊客を呼べば結構儲かるはず」
「ふぃーる? なんだそりゃ」
「えーっと、大きな遊具で登ったりぶら下がったり出来るの。これとかは必要になりそうなら設計図みたいなのを描いておくから、今は気にしないで」
(フィールドアスレチックは良さそうとか思ったけど、この世界にやる人いるのかな? う~ん、この世界にスポーツ選手みたいな人がいるのか調べてみようかなぁ。もしいれば体力作りしたいってなるかも。アウトドアって言ったら野営のことかって聞かれそう)
家族全員でキャンプやフィールドアスレチックを楽しむのは実里の夢だったから⋯⋯つい口をついて出てしまったが、パニエで膨らませたドレス姿の夫人が滑り台に並ぶ姿は想像出来ないし、チュニックを着た平民は『滑ったら布が破れそう』だと言い出すだろう。
(ダンボールの代わりになるものを考えつけば子供や男性にウケるとか?)
「長期的な事業はとてもありがたいです。雇用を生み出せて税収増にも繋がるなら、ある程度の目処が立った辺りで国に助成金を申請することが可能かもしれません」
新国王の政を後押ししたいビリーにとって、この事業計画を発案してくれたミリーには感謝の気持ちしかない。
「さっきは子供だからと侮って本当に申し訳ありません」
「いえいえ、ビリーさんの反応は当然の事ですから。むしろそうならない方がおかしいですもん」
メープルシロップの収穫は『シュガーブッシュ』と言われる木立の中で行われる。樹液を集め『シュガーシャック』と呼ばれる小屋の中で沸騰させて濃縮させる。
樹液は寒暖の差が最も大きくなる季節に、直径30センチ以上の木に小穴を開けて採取する。濃縮前の樹液はメープルウォーターと呼ばれる。
「採取シーズンのはじめは高い糖分を含む樹液が取れるけど、後半になるにつれて糖分が薄くなって最終的に約半分まで下がるの。でも、この糖分の薄い樹液をしっかり煮詰めるとシーズン序盤に採れた樹液より色と風味が濃いものができるって忘れないでね」
「あの、ひとつ疑問があるんですが⋯⋯なぜそんなに詳しいんですか?」
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