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第五章 良き出会いに乾杯

03.秘密のキーマンは日向ぼっこする狸

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「⋯⋯へ? もしかして許されたって事? ミリーがいつも言ってるドナドナってやつ、されない?」

「今回はね~。ほら、犯罪者だって初犯は刑が軽いじゃん? それとおんなじかなぁ」

 前のめりで涙を浮かべたシモンの横で、眉間に皺を寄せたままのビリーが僅かに首を傾げた。

(つまり⋯⋯さっきの話は本気じゃなかった?)

 4歳か5歳くらいの子供に見えるが、話の中では8歳だと言っていたミリーの迫力に戸惑い言葉が出ない。

「では、次はビリーさんのターンですね。シモンを侮っておられるようですので、今回の新規事業については手を引かせていただきたいと思います。
勿論このまま手ぶらでお帰りいただくつもりはありません。今回ご提案させていただいた事業計画についてより詳細な情報を書面にて提供させていただきますので、それ以降はご自身で企画運営していただければと考えています。
商人ギルドとの連携が必要であればギルド長のレオンがお話を伺うでしょう」

「ちょ、ちょっと待って下さい! シモンを侮っているとか、勝手に決めつけられては困ります。私はシモンの話を聞き事業としての魅力や可能性を信じたからこそ、全てを捨ててあの雑木林を手に入れたのです。
シモンの話ぶりからして、この企画の責任者がギルド本部におられるようだと思い、無理を言って同行させていただきました。ここには事業を立ち上げるにあたり、より詳細な情報を求めて来たのです。
ミリーさんではなくレオン殿とお話をさせていただけないでしょうか?」

 ビリーは信頼している商人や他領主達と密かに推し進めている河川貿易の為に有益だと思い話に乗りはしたが、こんな子供に横槍を入れられて『はいそうですか』と帰るわけにはいかない。

(なんだって子供が偉そうに文句を言って、大人がそれを静観してるんだ? まさかと思うが、私は騙されたのか?)



「ビリーさん、大変残念なお知らせがあります。シモンが代表を務めている商会は私が立ち上げ、企画・運営しているのです。表向きはシモンが代表で私は⋯⋯う~ん、なんだろう⋯⋯雑用係ですかね。
実質は今のところ私が代表でシモンは副代表と言った感じでやっています。シモンの事でさえ侮っておられるのに、こんな子供の私と商談ができるのですか?」

「えーっと、ミリー様が代表で⋯⋯あの企画を発案? ちょっと理解できないんですが⋯⋯少なくともシモンを侮ってないのだけは間違いなくてですね」

「シモンは企画書をお渡ししていませんか? その内容を精査し疑問点の洗い出しをする前にわざわざモラヴィアスまで足を運ばれたのは、たかだか15歳のシモンでは力不足だと思ったからとしか思えません。現地調査の計画さえないのではありませんか?
その理屈でいけば8歳の私が責任者だとか、発案者だとかなんて信じられないはずです。ただ、私達にとっては残念な事ですが、ビリーさんの考えの方が真面なんですけどね」

 レオンに話を聞きたいとビリーが言い出したのはごく当然な事で、その次に話を聞きたいとビリーが名指しするのはイリスだろう。

(だから、会わないほうが良かったのにねぇ。手紙なら年齢で揉めることがなかったのになぁ)



「⋯⋯4歳児に見える8歳児が発案したのがあの企画書だと信じろと?」

「そういう偏見の目を避ける為にミリーは表に出てないんですよ。因みに、ミリーの事を外で漏らしたら商人ギルドとしてもブランドール公爵家としてもそれなりの制裁をさせていただきます」

「ブランドール公爵家まで!?」

「公爵夫妻も次期当主もミリーの後見人を希望していますから。勿論私もですがね」

「はあ? それ、聞いてないんだけど!?」

「だってよお、こないだからチビすけは超絶とっつきにくかったからよお、報告しにくくってな。あ、商会についても疑ってるみたいだけど、言ってねえからな」

「はぁ、最悪じゃん。秘密って1人に話したら100人が知ってるとか言うんだよね」

「クラレンド侯爵家とレイモンド子爵家も後見するって言い出すんじゃねえか?」

「レイモンド子爵家はとっくに後見人のつもりでいるわ。クラレンド侯爵家は今のところ半々って感じね。侯爵は後見人を希望しそうな気配だけど、侯爵夫人は完全無視してるから」

「なんか⋯⋯身の危険を感じてきたかも。帰って良い?」



「取り敢えずミリーが企画提案したってのをビリーに信用させればいいって事だろ? なら簡単じゃねえか。さっさと吐け! どうせネタを隠し持ってんだろ。チビすけのくせにケチケチしやがって」

「熊は能天気すぎだよ。あの企画書は結構頑張って作ったから、先ずは専門家を連れて雑木林の調査に入ってから詳細を詰めて行く予定だったんだから。その辺りに辿り着くのに数ヶ月は掛かるはずだって計算してたんだから」

「はあ? だったらその間ビリーは無収入の宿無しって事になるじゃねえか」

「なわけないじゃん! ビリーにはパパから生前贈与された別荘だってあるし、昔馴染みの商会にいくつも出資してて収入もガッツリあるんだから。それだけじゃなくて国王から内密の仕事をうけ⋯⋯あ!」

「よくご存知ですねえ。シモンの話を聞いた時にも思ったのですが、我が国や私の内情をどうやって知り得たのでしょうか」

「このチビすけの影にはすんごい情報屋がいるんだよなあ。俺達にも秘密にしてるけどな~」

 その情報屋は店の軒下でキセルを片手に日向ぼっこを楽しんでばかりいるセオじい⋯⋯ターニャ婆さんに尻を叩かれ、セリナに心配ばかりかけている狸な爺さん。



「と~に~か~く~! ビリーさんは全部捨ててこの事業計画に乗ったわけじゃなくて、メインは河川貿易なの。王宮の老害やクズ兄達にバレないように河川貿易の計画を進めてるけど、子爵家の領主代行は結構時間もお金もかかって困ってた。
そこにシモンが来たから『ラッキー』ってその隠れ蓑に使えるって思ってこの話に乗った⋯⋯と、予想してる」

「違ってても暮らしてけるならオーケーってか?」

「いいじゃん。初期費用はほとんどこっち持ちだし、お金になるのも本当なんだし」



「んじゃ、話をはじめたらどうだ? ビリーが今でもやる気があるならだがな」

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