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第五章 良き出会いに乾杯
08.優しさは罪作りってホントだね
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「おはようごじゃます~! 熊は今日も熊だね~。どんぐりあるけど欲しい? あ、イリス⋯⋯おはようで~す。美魔女が神々しくて、安心・安定の今日この頃でございます。
シモンったら今日は三つ編み!? 三つ編みなの!? しかもフリルの付いたシャツって⋯⋯ダ、ダメじゃん。三つ編み男子は二次元だけって決まってて、フリルのシャツはベル◯ラ限定なのに~。でもでも、似合ってる、似合い過ぎて超絶怖い! あ、危ない世界の扉が開いちゃいそうだよぉ⋯⋯そうだ! 先っちょにリボン付けていい?」
自分専用の机の引き出しを開けてゴソゴソ⋯⋯。
「えーっと、多分どっかに⋯⋯あ、あったぁ!」
ソファに座っているシモンの横に立ち、三つ編みの先に丁寧に結びつけた。
「シモンはね、あ~んなムキムキになっちゃダメだよ~。人類の損失、芸術への破壊行為、文化の衰退、魔王降臨からの世界滅亡になっちゃうからね」
「よう、チビすけ。今日も朝から毒舌が冴え渡ってんじゃねえか」
「そうかなぁ⋯⋯そんなに褒められたら照れちゃうじゃんか~」
昨日慌てふためいて帰ったミリーは、レオン達の目線を妙に居心地悪く感じていた。
(初めてミリーの誕生日をすっぽかしちゃったから慌て過ぎて、うっかり口に出しちゃったけど『お誕生日だったの?』とか言われて、気を遣われたら嫌なんだもん。
⋯⋯先日誕生日だったのは『ミリー』だからなぁ)
心の奥でミリーが眠っているのをいつも感じると言う事は、いつか本物のミリーが復活するのだろうと思っている。
何年経っても薄れない『ミリー』の存在は、これは物語にある転生とかではなく、実里の意識は『ミリー』の復活と共に元の世界に戻るか消えるかのどちらかになりそう⋯⋯。
(お祝いを言うのは本物のミリーが戻って来てからお願いしますね~)
「⋯⋯ほら、金貨20枚と、うちの親からの謝罪分の金貨30枚。ボッタクリの銭ゲバ娘に、俺の家族の相手をさせた手間賃。すっげえ単価の高い手間賃だけどな~」
実務机に置かれた袋から可愛らしいチャリンと言う音ではなく、ジャリンと言う重々しい金貨の音が聞こえた。
「おぉ! 太っ腹な熊ちゃんと熊パパと飼育係ママにも大感謝! 毎度ありがとうございます~。今後もどうぞご贔屓に願いますです~。イリス~、この金貨をギルドに預けたいのでお願いできる?」
「ええ、勿論出来るけど⋯⋯たまにはお買い物とかしたらどうかしら。ラッセルの情報料もほとんど残ってるし、密輸と脱税の情報料もギルドで預かってるから、ミリーの口座はとんでもない金額になってるのよ?
頑張ったご褒美とか気分転換とか⋯⋯わたくしと一緒にお洋服でも見に行かない?」
欲しい物がなくても見れば欲しくなるのは人の常。『欲しがりません勝つまでは』がモットーのミリーが行くのはターニャ婆のお店だけ。
(ターニャ婆のお店にはお野菜もお塩もあるからね。昨日はクッキーもそこで買ったし)
「う~ん、欲しいものも特にないしなぁ。お誘いはすっごく嬉しいけど、この後行くとこもあるからまた今度でお願いします」
「でもね、新しくできたカフェのチョコレートドリンクが美味しいって評判なの。ミリーも好きでしょ、チョコレート」
ペコリと頭を下げてから昨日やりかけにした書類を引き出しから出していると、珍しくイリスが粘って誘ってきた。
「チョコレート⋯⋯チョコレートパウダーはまだないのかなぁ。ココアの作り方を覚えてたらひと財産稼げてたかも~。脱脂するとかアルカリ処理がどうとか⋯⋯ぜんっぜんわかんない。粉ミルクを混ぜたミルクチョコレートとか板チョコとか⋯⋯ガナッシュができればトリュフとか作れるし、エクレアももっと美味しくなるし⋯⋯」
イリスの誘いをさらっと断って、新しい商売のネタを模索しているミリーをレオン達は生暖かい目で見つめた。
シモンの髪型とフリル付きのシャツ・かなり多めのレオンからの報酬・イリスからのお誘いは、誕生日を祝うと言っても断られるのが目に見えているからと、それぞれが考えた婉曲的なお祝いだった。
(オネエ言葉を1年なんて言ってたから、ちょっとそれっぽくしてみたんだけどなぁ)
(どうせ何にも受け取らねえだろうから、報酬に色をつけてみたんだが⋯⋯全部貯金すんのかよ)
(お買い物に連れ出せれば勢いでプレゼントを贈れるかなって思ったのだけど、チョコレートでも無理⋯⋯)
(凄く嬉しくて感謝だけど、あんまり優しくされると寂しくて消えたくなくなっちゃうから。元の世界に戻って『会いたい』って思っても帰って来れないし)
消えて無になるなら寂しさは一瞬で終わるのかもしれないが、それでもきっと身を切るように辛いはず。
元の世界に戻るのだとしたら寂しさはずっと続くことになってしまう。
(ここは『ミリー』の世界だから、私がここにずっといたいって思うようになってしまったら『ミリー』が帰って来にくくなっちゃう。『ミリー』の居場所は奪えないよ)
家族と暮らす家でずっと居心地が悪かった実里。ここにいちゃいけないのかなぁと思いながら暮らす日々はとても辛くて寂しかったから。
ミリーを気にかけてくれる人達と安心できる居場所、自由に生きられるだけの資金⋯⋯実里がこの世界に来たのはミリーの為にそれを叶える為だと信じている。
(ミリーの不安が実里を呼び寄せたのかも。助けてって⋯⋯でもね、実里はミリーだけじゃなくて子供の頃の実里も救ってる気がしてる)
大人になった実里の知識と経験が、ミリーの身体を借りて子供の頃の実里の夢を叶えているようにも思えているから。
「そう言えばビリーは?」
シモンったら今日は三つ編み!? 三つ編みなの!? しかもフリルの付いたシャツって⋯⋯ダ、ダメじゃん。三つ編み男子は二次元だけって決まってて、フリルのシャツはベル◯ラ限定なのに~。でもでも、似合ってる、似合い過ぎて超絶怖い! あ、危ない世界の扉が開いちゃいそうだよぉ⋯⋯そうだ! 先っちょにリボン付けていい?」
自分専用の机の引き出しを開けてゴソゴソ⋯⋯。
「えーっと、多分どっかに⋯⋯あ、あったぁ!」
ソファに座っているシモンの横に立ち、三つ編みの先に丁寧に結びつけた。
「シモンはね、あ~んなムキムキになっちゃダメだよ~。人類の損失、芸術への破壊行為、文化の衰退、魔王降臨からの世界滅亡になっちゃうからね」
「よう、チビすけ。今日も朝から毒舌が冴え渡ってんじゃねえか」
「そうかなぁ⋯⋯そんなに褒められたら照れちゃうじゃんか~」
昨日慌てふためいて帰ったミリーは、レオン達の目線を妙に居心地悪く感じていた。
(初めてミリーの誕生日をすっぽかしちゃったから慌て過ぎて、うっかり口に出しちゃったけど『お誕生日だったの?』とか言われて、気を遣われたら嫌なんだもん。
⋯⋯先日誕生日だったのは『ミリー』だからなぁ)
心の奥でミリーが眠っているのをいつも感じると言う事は、いつか本物のミリーが復活するのだろうと思っている。
何年経っても薄れない『ミリー』の存在は、これは物語にある転生とかではなく、実里の意識は『ミリー』の復活と共に元の世界に戻るか消えるかのどちらかになりそう⋯⋯。
(お祝いを言うのは本物のミリーが戻って来てからお願いしますね~)
「⋯⋯ほら、金貨20枚と、うちの親からの謝罪分の金貨30枚。ボッタクリの銭ゲバ娘に、俺の家族の相手をさせた手間賃。すっげえ単価の高い手間賃だけどな~」
実務机に置かれた袋から可愛らしいチャリンと言う音ではなく、ジャリンと言う重々しい金貨の音が聞こえた。
「おぉ! 太っ腹な熊ちゃんと熊パパと飼育係ママにも大感謝! 毎度ありがとうございます~。今後もどうぞご贔屓に願いますです~。イリス~、この金貨をギルドに預けたいのでお願いできる?」
「ええ、勿論出来るけど⋯⋯たまにはお買い物とかしたらどうかしら。ラッセルの情報料もほとんど残ってるし、密輸と脱税の情報料もギルドで預かってるから、ミリーの口座はとんでもない金額になってるのよ?
頑張ったご褒美とか気分転換とか⋯⋯わたくしと一緒にお洋服でも見に行かない?」
欲しい物がなくても見れば欲しくなるのは人の常。『欲しがりません勝つまでは』がモットーのミリーが行くのはターニャ婆のお店だけ。
(ターニャ婆のお店にはお野菜もお塩もあるからね。昨日はクッキーもそこで買ったし)
「う~ん、欲しいものも特にないしなぁ。お誘いはすっごく嬉しいけど、この後行くとこもあるからまた今度でお願いします」
「でもね、新しくできたカフェのチョコレートドリンクが美味しいって評判なの。ミリーも好きでしょ、チョコレート」
ペコリと頭を下げてから昨日やりかけにした書類を引き出しから出していると、珍しくイリスが粘って誘ってきた。
「チョコレート⋯⋯チョコレートパウダーはまだないのかなぁ。ココアの作り方を覚えてたらひと財産稼げてたかも~。脱脂するとかアルカリ処理がどうとか⋯⋯ぜんっぜんわかんない。粉ミルクを混ぜたミルクチョコレートとか板チョコとか⋯⋯ガナッシュができればトリュフとか作れるし、エクレアももっと美味しくなるし⋯⋯」
イリスの誘いをさらっと断って、新しい商売のネタを模索しているミリーをレオン達は生暖かい目で見つめた。
シモンの髪型とフリル付きのシャツ・かなり多めのレオンからの報酬・イリスからのお誘いは、誕生日を祝うと言っても断られるのが目に見えているからと、それぞれが考えた婉曲的なお祝いだった。
(オネエ言葉を1年なんて言ってたから、ちょっとそれっぽくしてみたんだけどなぁ)
(どうせ何にも受け取らねえだろうから、報酬に色をつけてみたんだが⋯⋯全部貯金すんのかよ)
(お買い物に連れ出せれば勢いでプレゼントを贈れるかなって思ったのだけど、チョコレートでも無理⋯⋯)
(凄く嬉しくて感謝だけど、あんまり優しくされると寂しくて消えたくなくなっちゃうから。元の世界に戻って『会いたい』って思っても帰って来れないし)
消えて無になるなら寂しさは一瞬で終わるのかもしれないが、それでもきっと身を切るように辛いはず。
元の世界に戻るのだとしたら寂しさはずっと続くことになってしまう。
(ここは『ミリー』の世界だから、私がここにずっといたいって思うようになってしまったら『ミリー』が帰って来にくくなっちゃう。『ミリー』の居場所は奪えないよ)
家族と暮らす家でずっと居心地が悪かった実里。ここにいちゃいけないのかなぁと思いながら暮らす日々はとても辛くて寂しかったから。
ミリーを気にかけてくれる人達と安心できる居場所、自由に生きられるだけの資金⋯⋯実里がこの世界に来たのはミリーの為にそれを叶える為だと信じている。
(ミリーの不安が実里を呼び寄せたのかも。助けてって⋯⋯でもね、実里はミリーだけじゃなくて子供の頃の実里も救ってる気がしてる)
大人になった実里の知識と経験が、ミリーの身体を借りて子供の頃の実里の夢を叶えているようにも思えているから。
「そう言えばビリーは?」
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