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第八章 いざ、決戦!

16.詐欺師を見抜く3箇条?

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「関係ないって⋯⋯君だってこの国の国民だろう?」

 信じられない言葉を聞いたと言わんばかりに理事長が目を大きく見開いた。

「国・王家・学園・貴族。その中で私の味方だったのは? ごく少数の貴族や平民の方にはお世話になっていますから感謝していますし、信頼している方もいらっしゃいます。でもその中に入っていない方に忖度しなければならない理由が分かりません」

「しかしこの国で生きていればそれなりの恩恵を受けていて、平民であってもそれは変わらない。
現に君は健康に育ち学園に入学もできている。あれだけの成績を出せたのも、勉強できる環境を整えてもらえたからじゃないか。君以外の平民の孤児で、これほど恵まれた者は他にいないと気付いていないのか? しかも奨学生として、入学金や授業料の全額免除の恩恵を国から受けているんだ。
それを分かっていないなんて⋯⋯まさか優秀な君がその程度の事さえ分かっていないとは思わなかったよ。国を思う気持ちがないなんて残念だ。失望したと言ってもいい」

「ようやくお互いの意見が一致してホッとしました。
理事長が仰られた内容について今はノーコメントですが、奨学生である事について理事長と同意見の方々から色々言われていまして、かなり腹に据えかねています。
奨学生である事で卑屈になれと仰るのであれば、制度をなくすか奨学生になった場合のデメリットとして前もって知らせるべきだと考えています」

「私はそんなつもりで言ったのではなくて、国や学園から恩恵を受けていると言いたかっただけなんだ。君が努力した結果受け取った権利ではあるが、国や王家は関係ないなどという思い違いを正したくて」

「先程も言いましたように今はノーコメントですので、相手が何を考えているのか理解できないと思います」

 ミッドランド侯爵家を潰したいと本気で思っているのはミリーとオーレリアだけ。理事長が国や王家を守りたいと思うのは当然だが、ミリーとは方向性が違いすぎる。

 何も喋らないメイナードが何を考えているのかは分からない。

(王家の人間としてクソ皇子に気持ち良~く留学を終えてもらって、現状維持ができれば国と王家のメンツは守られる⋯⋯そう考えているのは間違いないんじゃないかな。
でもでも~、こちとらクソ皇子に散々迷惑かけられまくって悲惨な目に遭ったんだもん。アリンコの心臓ほどの親切心もないっつうの。メソメソ泣いて、漏らして内股になって帰りやがれ~って思ってるも~ん)

 モラヴィアス王国や王家を慮る気がなく、テオドール皇子殿下に忖度するどころかボコボコにするチャンスを狙っている。帝国とモラヴィアス王国の問題にも全く興味がないミリーが、理事長達と共闘するのは難しい。



「なぜノーコメントなのかだけでも教えてくれないか?」

「⋯⋯⋯⋯私自身の為、私を守ってくれた方々を守る為。生命って、ひとつしかないんです。理事長と私は大切なものを守ろうとしているのは同じですけど、大切なものが違いすぎてるんです」

 マーサがいてセオじいと出会って、ターニャ婆やセリナと縁ができた。それからもミリーには大切な人が何人もできて⋯⋯笑って、怒って、泣いて、かけがえのない大切な時間をくれた。

(自分を守るのはミリーを守る為だって頑張っていたけど、いつの間にかミリー以外にも大切な人ができていて。守りたいから要らないものは切り捨てる)








「という事で、私は私の判断で行動させていただきます」

 席を立とうとしたミリーを理事長が押し留めた。

「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。勝手に動かれては困るよ。お互いに意見のすり合わせをしてからじゃないと、何が起きるのか分からないじゃないか」

「⋯⋯策はあるのか?」

 この部屋に入ってきて、初めてに近いメイナードの言葉だった。

「はい」

 策はあるが問題がひとつ⋯⋯確実に潰せるネタは既に掴んでいるが、関係する人数が多すぎてミリーの伝手では全員を集めきれない。

 理事長と共闘できればそれも可能かと思っていたが、目標が違うならターゲットを絞るしかない。

(二兎を追うもの一兎をも得ずっていうから、ミッドランド侯爵一家だけに集中する。
クソ皇子と学園の生徒&生徒の親をボコボコにするタイミングは状況を見ながら)

「策⋯⋯それがどんなものか、教えてもらうのは無理なんだろうね」

「情報には対価が必要ですが、私が持っている情報に見合う対価をお持ちのようには見えません」

 ミリーの持つ情報は確実に侯爵一家を潰せるが、理事長達の狙いには役に立たない気がする。

(ユーフェミアを学園から排除したいとは言ったけど、それ以外には何も明言してないもん。そんな人の本当の狙いなんて分かんなくって当然だし、分かんないなら気にする必要なし!)

 使い所を失敗すれば文字通りミリーの生命がなくなる可能性があるネタは、ミリーにだけ毒にも薬にもなる代物。

「金銭的なものなら、王弟としてある程度は準備できる」

「いえ、お金には不自由していませんので」

「しかし⋯⋯何も知らずに話を進めるわけにはいかない。私は君を心から心配してるんだ」

「別行動ですからご心配なく。私の行動が理事長達の邪魔になったら排除に動いていただいて構いません。排除されるつもりはないので、全力で戦いますけど。
私の目的の邪魔になれば私も排除に動きますから」

 テオドール皇子殿下の前で、これ以上失態をしでかすわけにはいかない理事長は、ミリーの『策』が気になって仕方ない。

 自分達にとって役に立つのなら利用したいが、危険なら今の内に芽を摘んでおきたい。

「お互いに手伝いあえる事が絶対にあるはずだ。よく考えてみようじゃないか」

「構いません。元々自分ひとりでやるつもりでしたから。理事長の目標はユーフェミア様を排除してイジメをなくしたい⋯⋯でしたか?」

「⋯⋯ん、ああ、もちろんだよ。それは君の為でもあるって分かるよね」

 理事長が人好きのする笑顔で頷いたが、目はミリーの様子を伺っている。

(ああ、やっぱりこの人は信用できない。どのくらい相手を利用できるか、どうやれば相手を丸め込めるか測ってるもん)

 実里の世界で見かけた上司に似ている。どこまで無理をさせられるか、どのくらいなら文句を言わずやるか⋯⋯優しげな笑顔と労わるような口ぶりに騙されて、何度も徹夜をして休みなしで働かされた。

(詐欺師がよく使う『絶対に』 『あなたのため』 『心配してる』をパーフェクトに揃えてくるって、ある意味凄くね?)

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