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第八章 いざ、決戦!

15.すれ違う願い

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「ギルバート、今は授業中だと思うんだが?」

「ユーフェミア様がコンプトンさんに絡んでいたので、Cクラスの授業を自習にしてコンプトンさんをお連れしました」

「ミッドランド侯爵令嬢が騒ぎを? 思ったより早く馬脚を現したな。座って話そう」

(ん? どゆこと⋯⋯理事長と王子ちゃまの話が見えんのだが)

 ソファに腰掛けながら隣に座ったメイナード先生の顔をチラッと見るとミリーに向けて小さく頷いた。

「大丈夫、心配ないからな」



「顔を合わせるのは初めてだったね。理事長のケアリズ・モラヴィアスだ。突然会議に出なければいけなくなったんだが、私が学園にいない間にコンプトンさんには嫌な思いをさせてしまった。心から謝罪させて欲しい」

 理事長は議会のゴリ押しで学園長の代わりに会議に行かされ、昨日帰ってきたばかりだそう。

「学園長は議会のご機嫌取りが大好きなんで、議員達からするととても扱いやすいんだ。今回の問題は平民を排除すると決めた議会と、生徒達の暴走をわざと放置した学園長が元凶なんだ」

 ミリーが学園長に会ったのは面接の時だけ。

(そう言えば⋯⋯学園長は何がなんでも平民を入学させたくなさそうだって思ったっけ。感じが悪かったけど学園に通いたくなかったから、あんまり気にしてなかったかも。
もしかして私に入学許可証が届いたのは、理事長のゴリ押しだったりして⋯⋯私にとっての元凶は理事長なのか?)

「議会が何故そんな事を言い出したのか予測はつくだろう?」

「テオドール皇子殿下の留学ですね。テオドール皇子殿下のご機嫌次第では、帝国との外交を再開して貰えると思っておられる。その為に、問題の火種になりそうな平民を排除。貴族至上主義の方の考えそうな事です」

「その通りだよ。実に浅はかな考えだろう? 貴族の子女で固めても、多くの人間が集まれば大なり小なり揉め事は起きるんだ。それを『平民は排除』なんて言い出したから問題が起きた。
だが、今回のイジメ問題はもっと早くに手を打てば、これほど大きな騒ぎにはならなかったはずだ」

 正論ではあるけれど『もっと早く』と言う言葉は今更感がハンパない。



「理由は話せないが、ミッドランド侯爵令嬢を担ぎ出したのは大きな失敗のひとつでもあるんだ。だからどんな理由を付けてでも彼女は排除しなくてはならない」

(う~ん、なんか微妙にズレてると思うのは私だけ? まるでユーフェミアがいなきゃ問題は解決するって聞こえる。ホントにそういう問題なのかなぁ。第一、解決する問題ってどの部分なの?)

 理事長達が狙っている最善の結果はなんだろう。イジメ問題の解消、テオドール皇子のご機嫌とり、外交の再開⋯⋯。議会と理事長の意見は食い違い、学園長は議会の犬。であれば学園長の退任と議会の失策を公にする事を狙っているとも考えられる。

 理事長の真剣な顔とギルバートの覚悟を決めた様子、メイナードは安堵したような穏やかな顔。彼等の考えが分からないまま自分の考えを話すのは危険かもしれない。

(曲者っぽい理事長と短絡思考の王子ちゃまと、癒しのゾウさん⋯⋯)



 ミリーの考えでは⋯⋯学園全体に広がったイジメ問題は、ユーフェミアの手を離れて学園中に広がっている。ユーフェミアだけが元凶とも言い切れず、彼女だけを排除したところで何も変わらない。

 排除されたユーフェミアは騒ぎを大きくしようとして、やらかす気がしている。

(ユーフェミアの味方は学園だけじゃなくて、社交界での影響力も半端ないって聞いてるからね。理不尽に追い出されたとか言い出したら、ユーフェミア教の奴等が今以上に騒ぎ出しそうじゃん)

 モラヴィアス王国が帝国との外交再開を望むなら、全てを公にするところからはじめるべき。

(子供相手だから詳しい話をしないだけかもしれないけど。まぁ、外交問題なんて私の知った事じゃないから、聞かない方が良いよね。私の狙いはミッドランド侯爵家だけ。国の問題は大人同士でどうぞ)

 オーレリアが望むならオーレリアの望み通りにいくらでも口や手を出すが、彼女が何も言わない間はミリーは何もしない。

(手を出していいのは私が直接関わった事限定ですからね)



「ミッドランド侯爵令嬢について私の方で対策を立てるから、しばらく関わらないようにして欲しい」

「令嬢をなんとかすると仰られてますが、方法はあるのでしょうか? 社交界での侯爵家の評判は良いと聞いていますし、学園内でも同様です。ユーフェミア様の授業を心待ちにしている生徒達は、全員彼女の味方になるでしょう」

 チラッとギルバートを見るとビクッと飛び上がった。

(王子ちゃまもな!)

「侯爵家一家の評価は空に浮かぶパイ絵に描いた餅と同じ意味なんだが、今のところそれを崩すネタがないんだ。少し待ってもらえたら必ずなんとかしよう。それまでは彼女の授業に出ないように」

 ギルバートが前のめりになった。

「叔父上、やはり私の話だけでは無理なんでしょうか? コンプトンさんが試験で不正をしたと言い続けていたんだから講師の資格なんてないんです」

 ミリーが不正をしたとギルバートに信じ込ませたのは、ミリーの予想通りユーフェミアだった。

「それだけではなあ。昨夜も言ったが、ギルバートの勘違いだと言われたらおしまいなんだよ」

 多くの生徒を味方につけている状況で失敗すれば、悲劇のヒロインよろしくユーフェミアの独壇場になるかもしれない。

(失敗してもしなくても、王子ちゃまの名誉を守りたいんだろうね~。成功したら騙された王子ちゃまって言われるし、失敗したら自分の勘違いをなすりつけようとした王子ちゃまと言われるもんね)

「しかし、彼女を追い出す方法なんてないじゃないですか!」

「ギルバート王子殿下、理事長は殿下の名誉と王家の威信を守りたいんです。そうですよね? どちらを守りたいと考えておられても私には関係ないんですけど」

(だって、王子ちゃまにも国にも腹が立ってるんだもん)

 ギルバートはミリーに謝罪っぽい言葉を言った後、何も行動しなかった。周りの生徒に『ミリーが不正した』と言っていたくせに、自分の間違いだったと誰にも言っていない。自分の言葉が何を引き起こしたのか考えていないから何もしない。
ギルバートの言葉を聞いた生徒達は今もミリーは『不正した奴』だと信じている。



「関係ないって⋯⋯君だってこの国の国民だろう?」

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