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第三章 ロケットスタート

09.おちゅむをぎゅ〜ってちたの

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「では、言い値をお支払い致しましょう。これでも我が国で三圃式農業の先駆者などと言われておった身ですからな、新しい手法があるのであれば是非にも試したいと思うのですよ。それがこの国をより栄えさせる礎となればなによりですし」

 とんでもない金額をふっかけてきたら叩き出してやろうと勢いづくラッセル卿は、シモンの言葉に耳を疑った。

「では、お話を聞いていただいた上で、その情報に値をつけていただきますわ。くだらないと思えば無料で構いませんし、有益な情報だと思われたなら、それに見合うとお考えになられた金額をご提示下さいませ。ありがたい事に、他にも興味を示してくださっている方々がおられますから、多くは望んでおりませんの。
そして、実際に新しい農地改革に挑まれるとお決めになられたならば、成功報酬として国に収める税額の10パーセントと同額を5年間と考えておりますの」



 シモンの希望ミリーの厳命で今回の提案を口外しない事や最終契約に至らなかった場合は農地改革に利用しない事などを記した契約書を交わし、新しい手法を話し始めた。

「休耕地は作らず農地を4つに分割して耕作を行うので輪栽式農業と名付けました。
一つ目の畑は冬穀物で小麦・ライ麦など。二つ目は家畜の冬用の餌にも利用するカブ・ジャガイモ・テンサイなど。三つ目は夏穀物で大麦・燕麦・豆など。
四つ目は牧草地でクローバー・サインフォイン・ライグラス・ウマゴヤシなど地力を回復させてくれるものを植えて家畜に糞もさせます。
これをローテーションさせるという方法ですが、穀物が取れる部分が減るため一見すると収穫量が減ったように感じる事でしょう。しかし、家畜の冬用エサが用意されている為、冬用の家畜のエサを特別に用意しなくても良くなります。
農耕用の大切な家畜を殺して肉にしてしまわずに済むどころか、農耕用の家畜を増やす事もできるようになります。如何かしら」



(なんと! まさか、休耕地を廃止するとは⋯⋯あり得ん⋯⋯いや、待てよ。この方法なら⋯⋯農耕用の家畜を増やせるなら農地を広げられると言う事か。しかもクローバーが肥料を撒くのと同じ効果⋯⋯なら、先ずは人手を増やして⋯⋯いける、これなら確実に収穫量を増やし、雇用も拡大できる)

「契約期間は⋯⋯10年としたい。契約完了まで、この情報を他に流さないとお約束いただけるのならば、今回の情報料はシモン殿にお任せしましょう。
それから、純利益の15パーセントを報酬としてお支払いしよう。如何ですかな?」

(輪栽式農業は確実に農地を広げ領地を富ませる事が出来る。どうせ学園や大学で習った知識しかないんだし、いくらでも誤魔化しがきく。
国に収める税額の10パーセントと同額なんて大笑いだがな)

「⋯⋯では、輪栽式農業で生産された収穫物の全利益の15パーセントで契約書を交わさせていただきますわ。内容に違反した際の違約金やペナルティも含めて」

 レオンの言葉にラッセルは笑いを堪えながら大きく頷いた。








「いや~、本当に驚いた~。あのラッセル卿が即決即断だもんなぁ。ミリーの言ってた額を言っても少し驚いただけで値下げ交渉もなし。もしかしてだけど、ミリーって怪しい呪いとかやってるの?」

「私、絶対に失敗しないので! ⋯⋯こっ、これこれ、一回言ってみたかったのよ~。すんご~い、きもちい~い! きゃ~! 私、絶対に失敗しないので⋯⋯私、絶対に⋯⋯」

 きゃいきゃいと奇声を上げて飛び跳ねるミリーを温かい目で見ているのはイリスで、眉間に皺を寄せているのはレオン。シモンは特別報酬を手に部屋から出ようとしていた。

「お~い、待て待て! チビすけは舞い上がって話にならねえし、シモンが種明かししせずにトンズラしたら意味がわかんねえまんまじゃねえか」

「別にいいじゃ~ん。シモンは稀覯本ちゃんをお迎えに行きたいんだよね~。ギルドには登録料も今月の手数料も入ったんだからさぁ、商会が何を売ろうが何をしようが、熊にはぜんっぜん関係あっりっませ~ん。
シモンが裏切ったから金持ちマダムに売り飛ばさなきゃって事になったら、前もって連絡するけどね~。ふっふふのふ~ん」

「⋯⋯ミリーちゃん、可愛い顔が台無しだわ」

「可愛い⋯⋯そう、小さいとなんでも可愛く見えちゃうんだよね~。小さいは正義! 小さいは最強!」

「銭ゲバミリーは最恐⋯⋯あっという間に大金持ちになってさ。もう、俺いらないよね。商会長、辞めても良いよね?」

「あ~、それは無理。すぐにすっかんぴんになる予定だから。シモンには旅に出てもらうから、大学の講義を前倒しで済ませておいてね。よろ~」

「は、はあぁぁ!? なにその『すっかんぴん』って。あの大金をどうやって使い切るんだよ!?」

「てか、その前に説明しろぉ! 4歳のガキがどうやってあんな大金を稼いだってんだ!?」

「しょれはぁ、おちゅむを~ぎゅってちたの~。ぐふふふ」

 知恵を絞ったと言ったつもりのようだが、レオンの頭にはシモンにヘッドロックするミリーが思い浮かんでいた。

「くまは~、やっぱちやっぱりまにゅけね~」

「てんめえ~! その言葉遣いやめろっつっただろうがぁぁぁ!」

 レオンの叩いた机がメキメキと音を立てて真っ二つになった。

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