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第四章 ご利用は計画的に
02.熊は芸達者さん
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シモンが渋々隣国へ向かって旅立って暫くした頃、野菜の売り上げをターニャ婆から受け取ったミリーはギルドの前に不審な一団がいるのに気付いて立ち止まった。
派手に飾り付けられているわけではないが高価だと分かる馬車と、その周りを取り囲む武装した護衛達。
周囲を警戒するようにして佇む護衛達を遠巻きにした民達の間には緊張に包まれていた。
(イリスが領地へ帰るのはもう少し先だったはず。あの紋章と制服は確かブランドール公爵家⋯⋯なら、レオンに会いに来た人達って事だよね。何かあったのかな)
時間を作ってラッセルの領地を調べに行っていたレオンがギルドに帰って来たのは2日前。ミリーは今日、その調査結果を聞く為にギルドにやって来たのだが⋯⋯。
数年間放浪した経験があるせいなのか、元々の性格なのか⋯⋯全く貴族らしくないレオンは地元の領民達の信頼を易々と手に入れて有益な証拠を掴んだらしい。
(熊にあんな特技があったとは⋯⋯貴族のボンボンも侮れないねぇ)
ふらっと領地にやって来た身元不明のレオンはいつの間にか農民達に混じって農作業を行い、夜は酒場や農民の家での酒盛りに参加した。
一緒に汗を流せば信頼関係が生まれ、酒を飲んでバカ騒ぎすれば口が軽くなる。
初めのうちはここ数年続いている好天でそこそこ順調な農作業や、良いとも悪いとも言えない収穫量の話が会話のネタだったが、酔いが回るにつれ徴税官や領主への不満が口に出るようになってきた。
(かなり大規模な横流しの証拠を見つけたって言ってたから、早速ブランドール公爵が出張って来たのかも。だったら、ギルドに行くのはやめといた方が良さそう。三十六計逃げるに如かず⋯⋯ 面倒な事からは手を引いて逃げるのが一番!)
くるっと踵を返したミリーは脱兎の如くその場から逃げ出した。
翌日、恐る恐るギルドを訪れたミリーは不機嫌そうな顔でだらしなくソファに座るレオンと、笑いを堪えきれないイリスに出迎えられた。
「ちーっす⋯⋯冬眠明けの熊がいるなら、水芭蕉か熊笹を探してこようか? それとも光り物を振り回した方がいい?」
冬眠明けの熊は活動を再開する前に、吐き気や下痢の作用がある水芭蕉の根茎や大量の熊笹を食べて体内の毒素を出すという。
「スコップやピッケルが熊の爪に見えて怖がるって言うあのお話ね」
楽しそうな様子で書類を捌いていたイリスがミリーの冗談に乗ってきた。
「そう、木に擬態するのも効果があるって聞いた事がある」
「でも⋯⋯そこにいる熊には効果がないと思うわ。何しろ今は⋯⋯プフッ⋯⋯コホン⋯⋯隠し子疑惑で大変らしいから」
「ええっ! レオンってば隠し子がいるの!? 疑惑って⋯⋯今まで責任取らずに知らんぷりしてたって事? わぁ、最悪の最低野⋯⋯」
「隠し子なんかいねえし! まさか父上達があんなくだらねえ噂を気にするとか想像もしてなかったってのに⋯⋯堪忍してくれよ」
「でもねぇ、19歳ならあり得なくはないってお考えになられたのは、仕方ない気もするわよ? 何をしでかすか分からない放蕩者だったって仰っておられたもの」
(くすくす笑いは美少女の特権かと思ってたけど、美魔女にも似合うんだ~。凄い、美人って超お得~)
昨日ギルドに乗り込んで来たのは、レオンの隠し子がギルドに出入りしていると言う噂を聞きつけたブランドール公爵夫妻と次期公爵⋯⋯レオンの両親と長兄だった。
男としての責任を教え諭しつつ孫娘の暮らしぶりを心配する両親と、姪に会いたがり好物を聞き出そうとする長兄は完全に噂を信じており⋯⋯レオンが『違うっつっても聞きゃしねえ』状態。
「普段は理知的な方達で噂に翻弄される事なんてあり得ねえってのに、なんで今回の件だけ信じ込んでんだか」
「15歳で突然家を飛び出した原因を漸く見つけたと思われたんだもの。仕方ないんじゃないかしら」
「んじゃ、熊の自業自得だねぇ」
「他人事みたいに言ってんじゃねえよ! 誰のせいだと思ってんだ!? 隠し子って言われてんのはなぁチビすけなんだぞ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ほぅ、熊は10歳で。いや、十月十日の妊娠期間を考えると、9歳で既に発情期に入ったと思われたんだ~。いや~、早熟だねえ。だって、私もう少ししたら9歳になるもん(中身は50代のおばさんだけど)」
「⋯⋯はぁ!! 嘘だろ!?」
ソファから飛び起きたレオンはミリーを凝視してから首を横に振り、イリスの方からはバサリと書類が落ちた音がした。
「あり得ねえ。俺のガキじゃねえのとおんなじくれえあり得ねえって。どう見ても3歳とか4歳くれえだろ」
「わたくしは⋯⋯5歳か6歳くらいだと思ってたわ」
「成長期がちょ~っと遅れてるだけで、もうじき9歳になるもんね~」
長年の栄養不足や生活苦で身長も体重も伸び悩んではいるが、滅多に風邪さえ引かないミリーは健康には問題ないと思っている。
(じゃがいもの収穫は年2回。それでカウントして来たから間違いないもん!)
「それを証明する方法はあるのかよ?」
「ない! あっても教えないけどね」
「チビすけ⋯⋯ちょっと頼みがあるんだが⋯⋯」
「え~⋯⋯えーっと、依頼料は金貨何枚?」
派手に飾り付けられているわけではないが高価だと分かる馬車と、その周りを取り囲む武装した護衛達。
周囲を警戒するようにして佇む護衛達を遠巻きにした民達の間には緊張に包まれていた。
(イリスが領地へ帰るのはもう少し先だったはず。あの紋章と制服は確かブランドール公爵家⋯⋯なら、レオンに会いに来た人達って事だよね。何かあったのかな)
時間を作ってラッセルの領地を調べに行っていたレオンがギルドに帰って来たのは2日前。ミリーは今日、その調査結果を聞く為にギルドにやって来たのだが⋯⋯。
数年間放浪した経験があるせいなのか、元々の性格なのか⋯⋯全く貴族らしくないレオンは地元の領民達の信頼を易々と手に入れて有益な証拠を掴んだらしい。
(熊にあんな特技があったとは⋯⋯貴族のボンボンも侮れないねぇ)
ふらっと領地にやって来た身元不明のレオンはいつの間にか農民達に混じって農作業を行い、夜は酒場や農民の家での酒盛りに参加した。
一緒に汗を流せば信頼関係が生まれ、酒を飲んでバカ騒ぎすれば口が軽くなる。
初めのうちはここ数年続いている好天でそこそこ順調な農作業や、良いとも悪いとも言えない収穫量の話が会話のネタだったが、酔いが回るにつれ徴税官や領主への不満が口に出るようになってきた。
(かなり大規模な横流しの証拠を見つけたって言ってたから、早速ブランドール公爵が出張って来たのかも。だったら、ギルドに行くのはやめといた方が良さそう。三十六計逃げるに如かず⋯⋯ 面倒な事からは手を引いて逃げるのが一番!)
くるっと踵を返したミリーは脱兎の如くその場から逃げ出した。
翌日、恐る恐るギルドを訪れたミリーは不機嫌そうな顔でだらしなくソファに座るレオンと、笑いを堪えきれないイリスに出迎えられた。
「ちーっす⋯⋯冬眠明けの熊がいるなら、水芭蕉か熊笹を探してこようか? それとも光り物を振り回した方がいい?」
冬眠明けの熊は活動を再開する前に、吐き気や下痢の作用がある水芭蕉の根茎や大量の熊笹を食べて体内の毒素を出すという。
「スコップやピッケルが熊の爪に見えて怖がるって言うあのお話ね」
楽しそうな様子で書類を捌いていたイリスがミリーの冗談に乗ってきた。
「そう、木に擬態するのも効果があるって聞いた事がある」
「でも⋯⋯そこにいる熊には効果がないと思うわ。何しろ今は⋯⋯プフッ⋯⋯コホン⋯⋯隠し子疑惑で大変らしいから」
「ええっ! レオンってば隠し子がいるの!? 疑惑って⋯⋯今まで責任取らずに知らんぷりしてたって事? わぁ、最悪の最低野⋯⋯」
「隠し子なんかいねえし! まさか父上達があんなくだらねえ噂を気にするとか想像もしてなかったってのに⋯⋯堪忍してくれよ」
「でもねぇ、19歳ならあり得なくはないってお考えになられたのは、仕方ない気もするわよ? 何をしでかすか分からない放蕩者だったって仰っておられたもの」
(くすくす笑いは美少女の特権かと思ってたけど、美魔女にも似合うんだ~。凄い、美人って超お得~)
昨日ギルドに乗り込んで来たのは、レオンの隠し子がギルドに出入りしていると言う噂を聞きつけたブランドール公爵夫妻と次期公爵⋯⋯レオンの両親と長兄だった。
男としての責任を教え諭しつつ孫娘の暮らしぶりを心配する両親と、姪に会いたがり好物を聞き出そうとする長兄は完全に噂を信じており⋯⋯レオンが『違うっつっても聞きゃしねえ』状態。
「普段は理知的な方達で噂に翻弄される事なんてあり得ねえってのに、なんで今回の件だけ信じ込んでんだか」
「15歳で突然家を飛び出した原因を漸く見つけたと思われたんだもの。仕方ないんじゃないかしら」
「んじゃ、熊の自業自得だねぇ」
「他人事みたいに言ってんじゃねえよ! 誰のせいだと思ってんだ!? 隠し子って言われてんのはなぁチビすけなんだぞ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ほぅ、熊は10歳で。いや、十月十日の妊娠期間を考えると、9歳で既に発情期に入ったと思われたんだ~。いや~、早熟だねえ。だって、私もう少ししたら9歳になるもん(中身は50代のおばさんだけど)」
「⋯⋯はぁ!! 嘘だろ!?」
ソファから飛び起きたレオンはミリーを凝視してから首を横に振り、イリスの方からはバサリと書類が落ちた音がした。
「あり得ねえ。俺のガキじゃねえのとおんなじくれえあり得ねえって。どう見ても3歳とか4歳くれえだろ」
「わたくしは⋯⋯5歳か6歳くらいだと思ってたわ」
「成長期がちょ~っと遅れてるだけで、もうじき9歳になるもんね~」
長年の栄養不足や生活苦で身長も体重も伸び悩んではいるが、滅多に風邪さえ引かないミリーは健康には問題ないと思っている。
(じゃがいもの収穫は年2回。それでカウントして来たから間違いないもん!)
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