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ギルド、初依頼

6.クレルモン

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 金曜日、ミリアは自分の名前だけを書いた用紙をワドル先生に提出した。

「名前はあなた1人ですか?」
「後は先生にお任せしたいと思います。お手数ですが、宜しくお願いします」

 理由は分かっているはずだが、教師達は皆気付いていない振りをしている。
 10ヶ月経てば、それにも慣れてくる。
 魅了の効果が、どこまで浸透しているのかは分からないが。

 それよりも明日、ノアと行く新しい依頼を楽しみにしているミリアだった。


 土曜の朝、寮から近くの林に瞬間移動して、そこからギルドまで走る。
 空が少し明るくなってきた。東の方を見ると綺麗な朝焼けが、木々の影からチラチラと見えてきた。今日もいいお天気になりそうだ。

(冒険日和?)

 毎週この時間が1番楽しい。今日は何が起きるのか? そして何より、向かう先には待ってくれている人達がいる。


「おはようございます」
「今日もアメリアは、元気だね」
「はい」

 以前は朝のギルドでは、人に埋もれて前に進めなくなっていたが、今では沢山の人が声を掛けてくれる。

「おい、ちび助。またギルド内で迷子か?」
「アメリアを押さない。潰れちゃうよ」
「おじちゃんが肩車してやろうか?」
「それ、犯罪だろ?」
「手、引っ張ってあげるから、ついといで」


 最近ノアは、カウンター横のテーブルでミリアを待っている。ミリアが依頼を選び、依頼書を受け取ってからノアのところに行く。
 信頼されているのは嬉しいが、少し寂しい気もする。

「おはよう、今日は何やるんだ?」
「はい、シルバーウルフの調査です」

「クレルモンの林で、シルバーウルフの目撃情報があったそうです」
「ギルマスだろ? アメリアが索敵使えるってんで、楽しようとしやがって。後でおやつでも買ってもらえよ」

 ミリアは、ジト目でノアを見る。
「子供扱いはNGですよ」

「さて、行くか」
「はい!」


 クレルモンの林まで、乗合馬車に乗って行く。小柄なミリアは、馬車が揺れるたびに座席の上で飛び跳ねてしまうので、最近はクッションを持参している。

 クレルモンの入り口に着いた。馬車を降り、徒歩で林の奥に向かう。今日は林の中で野営の予定だ。
 1日目は収穫なし。野営の準備を始めた。

 ノアが大きな木の下に、寝床を作っている間に、焚き付けになる枝を探しに行く。インベントリから鍋や食材を出して、2人で料理を作る。

「あの、聞いて良いですか?」
「ん?」
「その、腕の事」
「そう言えばアメリアは、一度も聞いてきた事なかったな」
「はい」

「・・リッチだ。古い墓場や屋敷なんかにアンデットが出るだろ? そこのボスがリッチだった。奴の呪いを受けてな、教会にも行ったが無理だと言われた」

「人を鑑定したことはないんですが」
「鑑定してみたいか?」
「アカデミーで気になってることがあって」

「話してみな」

「呪いとは種類が違うのかもしれませんが、アカデミーで魅了を使ってる人がいます」
「そりゃ、ヤバいな」
 ミリアは頷いた。

「鑑定をしたら、魅了をかけられているかどうかとか分かるのかな? って考えてて。呪いも似た部分があるような気がしたので」
「うーん、どうなんだろうな」
「禁忌の書庫に、隷属魔法と魅了って言う本があるんです」
「・・禁忌の書庫?」
「アカデミーの図書室にありました。偶々、入り口を見つけて」
「また、ヤバくなってきたな。で?」
「はい、隷属魔法と魅了は似て非なるものだと書いてありました」
「で、呪いも? って事か」
「はい」


「鑑定しても良いですか?」
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