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2.仕方ないから顔合わせ
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ライラがビクトールとの婚約を知ってから2ヶ月が経った。
両親の前では気落ちして何もする気力がないふりをしながら、ライラはここ数年に起きた婚約破棄騒動の詳細と末路を調べていた。
表立って動けないライラの代わりに専属護衛騎士のノアが調査員との架け橋になり情報を集めてくれた。
「高位貴族が婚約破棄騒動を起こした後は殆どの男性は廃嫡や領地送りにされていて、女性は修道院送りか評判の悪い家に売り飛ばされているのね」
「そのようですね。高位貴族は名誉を重んじますから家名に傷をつけた者をそのままにしておく事はほとんどありません」
「恐らく他家からの評判の為ね。我が家の子供が騒ぎを起こしましたがこのような厳しい罰を与えました。我らはそのような正義感のある者だと知らしめて自身の損失を最低限にしようとしている。
中には単なる被害者の女性だっているのに、傷物は役立たずだと切り捨ててるとしか思えないわ」
「貴族社会ではそれが当然なのでしょう」
「ええ、だからムカつくの。例えば今回わたくしが婚約破棄されるとしたら全面的にビクトール有責だけど、お父様はわたくしを修道院へ送るはず。
自分で決めていくのなら構わないけれど逃げ出す為や無理矢理行かされるのは我慢できないわ」
幼い頃からライラの護衛騎士となったノアはライラの性格をよく知っている。家柄だけではなく貴族令嬢として必要な資質の全てを備えており年齢さえ合えば王子妃にもなれただろう。
(女性騎士になっていれば男性騎士達が青褪めていただろうし)
「では、残りの調査を待ちましょう。そちらに良い情報があれば話は早いんだけど」
残りの調査の一つは歴代のターンブリー侯爵家とプリンストン侯爵家の家系を辿るもの。特に公にされていない⋯⋯庶子の存在も調べている。
もう一つは同じく両家の徹底調査。交友関係や金の流れなどを徹底的に洗っている。
(ターンブリー側は庶子が1人いらっしゃるのだから他にもいる可能性は高いし、お父様に愛人がいらっしゃるのは今にはじまったことでもないしね)
ライラが引き篭もっている間にプロムが終わり学年末の休みも明日で終わる。明後日から2年生になるのでこれ以上は顔合わせから逃げられないと覚悟を決めた。
「ハーヴィーみたいな軟弱な奴じゃあ、ターンブリー侯爵家の行く末は散々だったもんなぁ。ま、会社も爵位も俺様がちゃーんと引き継ぐし?
大人しく言うことを聞くならお前にも贅沢させてやらなくもないから、これからは俺様の前で奴隷のようにひれ伏すんだな」
父親に言われて仕方なくやってきた顔合わせで、応接室に案内されたライラが挨拶をはじめる前にビクトールが言った言葉でライラはブチ切れそうになった。
(カーテシーで顔を下に向けていて良かったわ。それに近くにいたら殴りかかっていたかも)
ふんぞり返ってソファに座るビクトールの腕の中には最新の恋人がいてビクトールの肩に顔を寄せている。
「おい、サッサと挨拶しないか!」
「お久しぶりでございます」
無表情を意識しながらゆっくりと顔を上げビクトール達を視線に入れた。
(間違いないわ、報告書にあったリリア・キャンベル子爵令嬢ね。学園に入る前は平民で養子になった数ヶ月後に入学した⋯⋯トラブルメーカー)
「は! お高くとまったライラ様は真面な挨拶も出来んらしい。俺様のリリアにもちゃーんと挨拶をしたらどうなんだ?」
「⋯⋯ライラ・プリンストンと申します」
「あたしはぁリリアって言うんだけど、ご立派なプリンストン侯爵令嬢は知らないわよねぇ」
「クラスが違うのでお話しした事はございませんが、お名前だけは存じておりますわ」
「きゃ、こわ~い。睨まれちゃったぁ」
(ありがとうって思っているのに睨むわけないじゃない)
学園に入学してまだ1年だというのに既に数件の婚約破棄事件を起こしているリリアはライラにとっては希望の星のひとつだと思っている。
(少し役不足だからこのままでは上手くいかないけど、キャンベル子爵の調査報告の結果次第ではリリア嬢の夢を叶えて差し上げるつもりなんだから)
爵位が高く贅沢できる資産があれば婚約者がいようがいまいが気にしないで付き合うリリアだが、婚約破棄に持ち込めてもその後が続かなくて未だに獲物を探している。
『婚約破棄になっちゃうなんてぇ⋯⋯リリア、そんなつもりじゃなかったんですぅ』
『こないだまで平民だったからぁ、貴族の方のルールがよくわからなくてぇ。お友達だって思ってたのにぃ』
『クラスでは意地悪ばっかりされてたからぁ、その代わりに色々教えてくれる優しい方だとしか思ってませんでしたよ~』
リリアの嘘泣きと言い訳に騙された愚か者達は婚約破棄・親からの叱責と廃嫡ルートを辿っているが本人はケロッとして学園に通っている。
『だって、リリアは悪くないもん! 勝手に婚約者よりリリアの事を好きになられちゃっただけだよ~』
1年間で付き合う男の爵位と資産が上がっていっているリリアはビクトールが侯爵家を継ぐ可能性が出てきてからの付き合い。毎月恋人が変わるビクトールからすれば割と長い方になる。
(そろそろ変更になるのかもって想っていたけれど、この様子だともう暫く持ちそうだわ。報告書が届くまで頑張ってね)
ライラが狙っているのは他にもいる。コロコロと変わるビクトールの恋人の隙間を縫うように暗躍する『幼馴染のイライザ』
ビクトールの母親はアスローン男爵令嬢で、ターンブリー侯爵とは学園生の頃から付き合いが今も続いている。低位貴族だった為結婚に反対されるとそのまま愛人の座におさまり、多額の資金援助を受けて平民向けの商会を立ち上げた。
本人に商才はなく贅沢三昧の暮らしをしているが、商会が立ち行かなくなる度に追加の資金をターンブリー侯爵が補填するので商会自体は王都の一等地にある。
可愛がっている幼馴染イライザはビクトールの母親の親友の娘。
(本当は入学試験に落ちたのだけど補欠合格したラッキーガールって有名なのよね)
婚約破棄された後母親の後押しがあればイライザを新しい婚約者にできる可能性がないわけではないので頑張って欲しいと思っている。
「辛気臭い顔は見てやったんだ。いつまでもそんなところに突っ立ってないでサッサと消えろ!」
(帰っていいなんてラッキーだわ)
満面の笑みを浮かべたライラの顔を見たビクトールがポカンと口を開けた。
両親の前では気落ちして何もする気力がないふりをしながら、ライラはここ数年に起きた婚約破棄騒動の詳細と末路を調べていた。
表立って動けないライラの代わりに専属護衛騎士のノアが調査員との架け橋になり情報を集めてくれた。
「高位貴族が婚約破棄騒動を起こした後は殆どの男性は廃嫡や領地送りにされていて、女性は修道院送りか評判の悪い家に売り飛ばされているのね」
「そのようですね。高位貴族は名誉を重んじますから家名に傷をつけた者をそのままにしておく事はほとんどありません」
「恐らく他家からの評判の為ね。我が家の子供が騒ぎを起こしましたがこのような厳しい罰を与えました。我らはそのような正義感のある者だと知らしめて自身の損失を最低限にしようとしている。
中には単なる被害者の女性だっているのに、傷物は役立たずだと切り捨ててるとしか思えないわ」
「貴族社会ではそれが当然なのでしょう」
「ええ、だからムカつくの。例えば今回わたくしが婚約破棄されるとしたら全面的にビクトール有責だけど、お父様はわたくしを修道院へ送るはず。
自分で決めていくのなら構わないけれど逃げ出す為や無理矢理行かされるのは我慢できないわ」
幼い頃からライラの護衛騎士となったノアはライラの性格をよく知っている。家柄だけではなく貴族令嬢として必要な資質の全てを備えており年齢さえ合えば王子妃にもなれただろう。
(女性騎士になっていれば男性騎士達が青褪めていただろうし)
「では、残りの調査を待ちましょう。そちらに良い情報があれば話は早いんだけど」
残りの調査の一つは歴代のターンブリー侯爵家とプリンストン侯爵家の家系を辿るもの。特に公にされていない⋯⋯庶子の存在も調べている。
もう一つは同じく両家の徹底調査。交友関係や金の流れなどを徹底的に洗っている。
(ターンブリー側は庶子が1人いらっしゃるのだから他にもいる可能性は高いし、お父様に愛人がいらっしゃるのは今にはじまったことでもないしね)
ライラが引き篭もっている間にプロムが終わり学年末の休みも明日で終わる。明後日から2年生になるのでこれ以上は顔合わせから逃げられないと覚悟を決めた。
「ハーヴィーみたいな軟弱な奴じゃあ、ターンブリー侯爵家の行く末は散々だったもんなぁ。ま、会社も爵位も俺様がちゃーんと引き継ぐし?
大人しく言うことを聞くならお前にも贅沢させてやらなくもないから、これからは俺様の前で奴隷のようにひれ伏すんだな」
父親に言われて仕方なくやってきた顔合わせで、応接室に案内されたライラが挨拶をはじめる前にビクトールが言った言葉でライラはブチ切れそうになった。
(カーテシーで顔を下に向けていて良かったわ。それに近くにいたら殴りかかっていたかも)
ふんぞり返ってソファに座るビクトールの腕の中には最新の恋人がいてビクトールの肩に顔を寄せている。
「おい、サッサと挨拶しないか!」
「お久しぶりでございます」
無表情を意識しながらゆっくりと顔を上げビクトール達を視線に入れた。
(間違いないわ、報告書にあったリリア・キャンベル子爵令嬢ね。学園に入る前は平民で養子になった数ヶ月後に入学した⋯⋯トラブルメーカー)
「は! お高くとまったライラ様は真面な挨拶も出来んらしい。俺様のリリアにもちゃーんと挨拶をしたらどうなんだ?」
「⋯⋯ライラ・プリンストンと申します」
「あたしはぁリリアって言うんだけど、ご立派なプリンストン侯爵令嬢は知らないわよねぇ」
「クラスが違うのでお話しした事はございませんが、お名前だけは存じておりますわ」
「きゃ、こわ~い。睨まれちゃったぁ」
(ありがとうって思っているのに睨むわけないじゃない)
学園に入学してまだ1年だというのに既に数件の婚約破棄事件を起こしているリリアはライラにとっては希望の星のひとつだと思っている。
(少し役不足だからこのままでは上手くいかないけど、キャンベル子爵の調査報告の結果次第ではリリア嬢の夢を叶えて差し上げるつもりなんだから)
爵位が高く贅沢できる資産があれば婚約者がいようがいまいが気にしないで付き合うリリアだが、婚約破棄に持ち込めてもその後が続かなくて未だに獲物を探している。
『婚約破棄になっちゃうなんてぇ⋯⋯リリア、そんなつもりじゃなかったんですぅ』
『こないだまで平民だったからぁ、貴族の方のルールがよくわからなくてぇ。お友達だって思ってたのにぃ』
『クラスでは意地悪ばっかりされてたからぁ、その代わりに色々教えてくれる優しい方だとしか思ってませんでしたよ~』
リリアの嘘泣きと言い訳に騙された愚か者達は婚約破棄・親からの叱責と廃嫡ルートを辿っているが本人はケロッとして学園に通っている。
『だって、リリアは悪くないもん! 勝手に婚約者よりリリアの事を好きになられちゃっただけだよ~』
1年間で付き合う男の爵位と資産が上がっていっているリリアはビクトールが侯爵家を継ぐ可能性が出てきてからの付き合い。毎月恋人が変わるビクトールからすれば割と長い方になる。
(そろそろ変更になるのかもって想っていたけれど、この様子だともう暫く持ちそうだわ。報告書が届くまで頑張ってね)
ライラが狙っているのは他にもいる。コロコロと変わるビクトールの恋人の隙間を縫うように暗躍する『幼馴染のイライザ』
ビクトールの母親はアスローン男爵令嬢で、ターンブリー侯爵とは学園生の頃から付き合いが今も続いている。低位貴族だった為結婚に反対されるとそのまま愛人の座におさまり、多額の資金援助を受けて平民向けの商会を立ち上げた。
本人に商才はなく贅沢三昧の暮らしをしているが、商会が立ち行かなくなる度に追加の資金をターンブリー侯爵が補填するので商会自体は王都の一等地にある。
可愛がっている幼馴染イライザはビクトールの母親の親友の娘。
(本当は入学試験に落ちたのだけど補欠合格したラッキーガールって有名なのよね)
婚約破棄された後母親の後押しがあればイライザを新しい婚約者にできる可能性がないわけではないので頑張って欲しいと思っている。
「辛気臭い顔は見てやったんだ。いつまでもそんなところに突っ立ってないでサッサと消えろ!」
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満面の笑みを浮かべたライラの顔を見たビクトールがポカンと口を開けた。
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