【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

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8.アリエノール・ベルスペクト

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 俯いていたセアラがハッとして顔を上げアリエノールを凝視した。ここは中二階で半個室とはいえ食堂に来ている生徒の声がザワザワと聞こえてきている。

「アリエノール王女殿下! ここでそのお話はあまり⋯⋯」

「大丈夫。階段の下は人払いしてあるわ。さっきわたくしの周りにいた生徒達はわたくしの護衛なの。よほど大きな声を出さない限り外に話は漏れないわ」

 セアラはホッとしたと同時にアリエノールの狙いがわからず困惑した。

(何故王女殿下は【レトビアの呪い】の事を今更仰るのかしら?)



「長女のメリッサは既に婚約し近く婚姻が整うでしょう? そうなればレトビアの長女はアメリアの役目になるはずだった」

「⋯⋯メリッサ様はご結婚されてもレトビアの長女である事に変わりはありません」

「法律上や通例ではその通りね。だけど戦乙女ディースのかけた呪いでは嫁いでしまえば長女の役割から外れる。でしょ?」

「⋯⋯」

「レトビア公爵はプライドの高い方だから自分の代で縁戚に爵位を継がせるなんて許せない。となるとメリッサかアメリアはレトビア公爵家を継がざるをえない。
そして、メリッサが早々に戦線離脱したからアメリアは逃げ出せなくなった」

「⋯⋯」

「でも、レトビア家の血を引くセアラを養子にしたからアメリアは次女のままで安心して爵位を継承できるわね。
わたくしのお話はあってるかしら?」

「どうして⋯⋯王女殿下はどうしてその事を気になさるのでしょうか?」

 アリエノールの推測はセアラ達のものと同じだが王女がそれを気にする理由がわからず、困惑したセアラは失礼を承知で質問に質問を返した。



「これから話すことは王家にしか伝わっていない話だから他言無用にしてね」


 穏やかな表情を崩さなかったアリエノールが話が漏れる事を避ける為か少し前屈みになり真剣な表情になった。

「王家はね、独立戦争で戦況を覆したと言われている支援金を受け取った事を当初否定していたの。でも、戦後の騒乱が落ち着いた頃にはもう誰もがそれを信じていて噂を消すことができなかったし、いつの頃からか歴史書にも⋯⋯。
レトビア公爵家が王家と共に否定すれば噂を覆すことはできたかもしれないけどそうはならなかった」

「では、神殿を襲撃して奪ったと言う宝物はどこにいったのですか?」


「わからないのよ。建国してもうすぐ三百年だから残っている記録がそれほど多くはないの。でもね、王家の記録に神殿が襲撃された事は記載されているけれど宝物については何も記載されていないわ。
調べようにも破壊されたイーバリス神殿は未だに我が国を目の敵にしているから協力も得られないし」

 今まで考えてもみなかった話にセアラは混乱した。

(王女殿下が声をかけてこられたのは⋯⋯王家は呪いに関係ないって仰りたかったって事? でも、今になってそんな必要があるとは思えないし)

 噂は長い間放置されていたし歴史書にも記載されている。レトビア公爵家の努力のおかげか呪いで亡くなった人はいないと言われているし、今では殆ど都市伝説のような扱いを受けている。


「王家の記録では支援金で戦況を覆したのではなく初代国王が私財を全て放出したと書かれているの。お陰で、独立はしたけれど国庫は火の車だったと」

「王家が宝物に関わっておられないのならば神殿を襲撃した貴族が⋯⋯全てを手に入れたと言うことでしょうか?」

「ええ、それしか考えられないわね。少なくともわたくし達はそう考えているわ。それに、神殿の破壊を主導したのはレトビア公爵だけどその他にも有名貴族が名を連ねているから独り占めはできなかったはずなの。
でもね。そうなるとおかしなことがあるの」

 意味深に言葉を切ったアリエノールは少し目を細めてセアラをじっと見つめた。

「その他の貴族ですね。レトビア公爵家が先導していたとしてもレトビア公爵家と行動を共にした他の貴族家には呪いなんて話は出ていない」


 確かに、戦乙女ディースが現れたのはレトビア公爵家のみ。神殿の富を手に入れた筈の王家にも破壊・略奪に手を貸した貴族にも戦乙女ディースは現れていない。


「わたくし達は建国三百年の記念式典までに【レトビアの呪い】を解明して、呪いを解きたいと思っているのだけど、一緒に調べてみない?」

「わたくしに出来ますでしょうか? 調べてみたいと思ってはおりますが全く身動きが取れるとは思えずおります」

「レトビア公爵の囲い込みでしょう? だから、生徒会長の秘書におなりなさいな。生徒会の仕事だからって言えばあの方達に拘束されずに済むわ」

(王女殿下を信じてもいいの? もしこの話が本当なら⋯⋯でも、そんな上手い話がある? 王女殿下が態々乗り出すほどのことかしら⋯⋯王家にとって300年も前の話だしなんのメリットもないと思う。だってあまりにも都合が良すぎる)

 突然降って湧いたような話を信じる事ができずセアラは首を縦に振る事ができなかった。

「申し訳ありませんが遠い昔の話ですし。王家の名誉を気にされているのだと愚考致しますが王女殿下がお気になさるほどの事とは」

 セアラが断りの言葉を口にしかけるとアリエノール王女が右手を前に出し話を遮った。

「王家としては、イーバリス神殿襲撃の恩恵で建国できたと信じていた三代目国王陛下がレトビア公爵家と交わした密約が問題なの。
その所為でレトビア公爵家当主は今までに王太子の決定や裁判官の任命等に口を挟んできたの。
公には国王が最終決定権を持ち任命している事になっているけれど、レトビアは自分達こそ真の王家だとでも思っているのか気に入らなければレトビア公爵家が摂政となって国を動かすつもりでいるのよ。
建国できたのはレトビア公爵家の手柄であり呪いを唯一受けたレトビア家には国の決定権があるとゴリ押しして作らせた書類が200年以上経った今でも有効なの」

「まさか! 失礼ながらそんな事があり得るとは思えないのですが」

「残念だけど事実なの。レトビア公爵家は表立っては王族派として行動しているけれど、周りから疑義を唱えられない程度に自分達の希望を押し付け続けてきたの」

(それが事実であればレトビア公爵家が今まで国王の殺害や簒奪を企てなかったのが不思議なくらいだわ)

「何故⋯⋯今の立ち位置がとても便利だからですか? 陰でコソコソ暗躍しなくてもさっさと摂政になって国を牛耳ってしまえば良いのではありませんか?」

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