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32.アメリアの一人遊び(sideアメリア)
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少し時を遡り、セアラがアリエノール達と控室で寛いでいた頃⋯⋯。
一頻りドレス自慢をして気が済んだアメリアはふとリチャードの姿を探した。
(少し目を離しただけでまたあんなに虫が群がってるわ! アイツもいなくなったしそろそろリチャードのところに行ってあげなくちゃ。まだダンスも踊っていないし、待たせすぎは良くないわよね)
『大切な方を待たせておりますので失礼致します』
可愛らしく挨拶をしてリチャードの元へと急ぐアメリアの後ろ姿を見ながらディアナがマーシャル夫人に声をかけた。
『あれで宜しかったでしょうか?』
『ええ、退屈な時間を過ごさせました。お詫びに今度内輪のお茶会でもいかがかしら』
『まあ、是非。楽しいことが起こりそうな予感が致しますわ』
リチャードに群がる令息令嬢達はアメリアの気配にそっと道を開けた。
『リチャード様(お待たせ致しました)』
アメリアはリチャードの前で小さく膝を曲げ挨拶した後少し顔を傾げて上目遣いで見上げた。
アメリアがピッタリと張り付くように立っているせいで、背の高いリチャードは小柄なアメリアを真上から見下ろす事になってしまった。胸を寄せるようにしているからか寂しい胸の谷間が見え隠れしている。
(ふふ、目のやり場に困って少しお顔が赤くなってる。そろそろ2人だけの時間よ、ダンスしながら将来の事を話さなくては間に合わなくなってしまうわ)
一歩後ろに下がったリチャードの行動をダンスを申し込む為だと勘違いしたアメリアはにっこりと笑って片手を差し出した。
『ああ、喉が渇いたのかな?』
リチャードは近くにいた給仕に声をかけて果実水のグラスを受け取りアメリアに手渡した。
『あ、ありがとうございます。⋯⋯先程ドレスの事を聞かれてお話ししていたから喉が渇いていましたの。やっぱりリチャードはわたくしのことをよく見てくださっているのですね』
『⋯⋯』
(こんなに大勢に囲まれてたらリチャードだってダンスに誘いにくいわよ。とっとといなくなればいいのに! 確か後ろにアイツがいたはず)
何気なく振り返ったアメリアがシャーロットに目で合図を出すとシャーロットがスルスルと近くに寄ってきた。
『まあ、今日はまだヘンリーとダンスしていないの? 可哀想なシャーロット、ダンスを楽しみにしていたのにね』
慌てて前に出てきたヘンリーがシャーロットに手を差し出した。
『気が利かなくてごめん。ダンスをお願いできますか、婚約者殿?』
ヘンリーの手を取りシャーロットが広間の中央に出て行くと数人のカップルが同じように離れて行った。
『リチャード、先ほどのダンスとても素敵でしたわ』
『そうかな。兄上と違って私はあまり得意ではないから、いつも冷や汗をかいているよ。出来ればダンスのない世界に行きたいくらい苦手なんだ』
『まあ、ご謙遜を! とても素晴らしかったですわ』
アメリアの斜め後ろから声がかかり思わず振り向いたアメリアはキッと睨んで声の主を探した。
(どこのどいつよ!! 私達の話に割り込むなんて!)
『リチャード、もし宜しければ⋯⋯』
いつまで経っても誘ってこないリチャードに痺れを切らしたアメリアがもう一度上目遣いでリチャードを見上げた。
『では、お手柔らかに』
グラスを給仕に渡し広間の中央に出たアメリアとリチャードは向かい合って小さく頷き曲の始まりを待った。
『リチャードとは何度踊ってもドキドキしますわ』
『そうかな? アメリア嬢はダンスが上手だからとても余裕があるように見えるよ』
『お相手がリチャードだからですわ。だってわたくし達は⋯⋯』
『そうだね、何度も踊ったことがあるから他の人と踊るよりも余裕があるね』
『こうしているとまるで二人きりの世界のようですわ』
『ワルツは昔挑発的だとか汚らわしいとか言われて禁止されていた事を考えるとアメリアの言うことも納得だね』
何度も水を向けるアメリアだが肝心な言葉をリチャードから引き出せない。それどころか微妙に話をずらされているのに気付かないまま曲が半分終わり、焦ったアメリアはもう少し積極的に話すことにした。
『わたくしも学園に入学しましたし、そろそろ決まったお相手との事を正式に発表するようお父様から言われましたの』
『そうか、確かに』
『ええ! 今日の夜会など、王族の方も高位貴族の方も大勢おられて婚約発表にピッタリだと思いませんこと?
『そうかな? レディはそう言う華やかなのが良いのか。私はもっとこう⋯⋯ごく少人数で⋯⋯暖かい日差しと花に囲まれたとかの方が良いと思ってる』
『では、お茶会を開くのはいかがでしょう? お庭で家族と親しい友人だけのお茶会を開きましょう』
『そう言うのは良いね。とても憧れる』
(決まりだわ! 今日の発表はなくなったけどリチャードの夢を叶えてあげるのも悪くないわ。夜会での大々的な発表はその後でいいにしてあげるわ)
ダンスが終わり満足げな顔のアメリアは早速報告をしなくてはとレトビア公爵の姿を探した。
(お父様に言いさえすれば秘書も私のものだわ)
『今日のネックレスはデザインがとても珍しいね』
『まあ、気付いておられましたの? このネックレスとイヤリングは他国の物ですのよ。古いものもたまには良いかと思ってつけてみましたの。お父様に強請って特別に出してもらいました』
『他国⋯⋯それでか。アクセサリーは詳しくないんだが細工がとても美しいからつい目についたんだ』
『他にも色々ありますの。次のお茶会で別の物を披露致しますわね。あっ、でもエメラルドのついたアクセサリーはこれ以外あまり良いものがなかったんでした』
『そうなんだ、それは残念だな』
『でもとても素敵な物もあって、わたくしの結婚式にはそれを絶対身につけるって決めていますの』
『そんなに凄いのか』
『ええ、秘密ですけど。王家の宝物庫にもないと思いますわ。結婚式の日取りが決まったらお見せしますわ』
一頻りドレス自慢をして気が済んだアメリアはふとリチャードの姿を探した。
(少し目を離しただけでまたあんなに虫が群がってるわ! アイツもいなくなったしそろそろリチャードのところに行ってあげなくちゃ。まだダンスも踊っていないし、待たせすぎは良くないわよね)
『大切な方を待たせておりますので失礼致します』
可愛らしく挨拶をしてリチャードの元へと急ぐアメリアの後ろ姿を見ながらディアナがマーシャル夫人に声をかけた。
『あれで宜しかったでしょうか?』
『ええ、退屈な時間を過ごさせました。お詫びに今度内輪のお茶会でもいかがかしら』
『まあ、是非。楽しいことが起こりそうな予感が致しますわ』
リチャードに群がる令息令嬢達はアメリアの気配にそっと道を開けた。
『リチャード様(お待たせ致しました)』
アメリアはリチャードの前で小さく膝を曲げ挨拶した後少し顔を傾げて上目遣いで見上げた。
アメリアがピッタリと張り付くように立っているせいで、背の高いリチャードは小柄なアメリアを真上から見下ろす事になってしまった。胸を寄せるようにしているからか寂しい胸の谷間が見え隠れしている。
(ふふ、目のやり場に困って少しお顔が赤くなってる。そろそろ2人だけの時間よ、ダンスしながら将来の事を話さなくては間に合わなくなってしまうわ)
一歩後ろに下がったリチャードの行動をダンスを申し込む為だと勘違いしたアメリアはにっこりと笑って片手を差し出した。
『ああ、喉が渇いたのかな?』
リチャードは近くにいた給仕に声をかけて果実水のグラスを受け取りアメリアに手渡した。
『あ、ありがとうございます。⋯⋯先程ドレスの事を聞かれてお話ししていたから喉が渇いていましたの。やっぱりリチャードはわたくしのことをよく見てくださっているのですね』
『⋯⋯』
(こんなに大勢に囲まれてたらリチャードだってダンスに誘いにくいわよ。とっとといなくなればいいのに! 確か後ろにアイツがいたはず)
何気なく振り返ったアメリアがシャーロットに目で合図を出すとシャーロットがスルスルと近くに寄ってきた。
『まあ、今日はまだヘンリーとダンスしていないの? 可哀想なシャーロット、ダンスを楽しみにしていたのにね』
慌てて前に出てきたヘンリーがシャーロットに手を差し出した。
『気が利かなくてごめん。ダンスをお願いできますか、婚約者殿?』
ヘンリーの手を取りシャーロットが広間の中央に出て行くと数人のカップルが同じように離れて行った。
『リチャード、先ほどのダンスとても素敵でしたわ』
『そうかな。兄上と違って私はあまり得意ではないから、いつも冷や汗をかいているよ。出来ればダンスのない世界に行きたいくらい苦手なんだ』
『まあ、ご謙遜を! とても素晴らしかったですわ』
アメリアの斜め後ろから声がかかり思わず振り向いたアメリアはキッと睨んで声の主を探した。
(どこのどいつよ!! 私達の話に割り込むなんて!)
『リチャード、もし宜しければ⋯⋯』
いつまで経っても誘ってこないリチャードに痺れを切らしたアメリアがもう一度上目遣いでリチャードを見上げた。
『では、お手柔らかに』
グラスを給仕に渡し広間の中央に出たアメリアとリチャードは向かい合って小さく頷き曲の始まりを待った。
『リチャードとは何度踊ってもドキドキしますわ』
『そうかな? アメリア嬢はダンスが上手だからとても余裕があるように見えるよ』
『お相手がリチャードだからですわ。だってわたくし達は⋯⋯』
『そうだね、何度も踊ったことがあるから他の人と踊るよりも余裕があるね』
『こうしているとまるで二人きりの世界のようですわ』
『ワルツは昔挑発的だとか汚らわしいとか言われて禁止されていた事を考えるとアメリアの言うことも納得だね』
何度も水を向けるアメリアだが肝心な言葉をリチャードから引き出せない。それどころか微妙に話をずらされているのに気付かないまま曲が半分終わり、焦ったアメリアはもう少し積極的に話すことにした。
『わたくしも学園に入学しましたし、そろそろ決まったお相手との事を正式に発表するようお父様から言われましたの』
『そうか、確かに』
『ええ! 今日の夜会など、王族の方も高位貴族の方も大勢おられて婚約発表にピッタリだと思いませんこと?
『そうかな? レディはそう言う華やかなのが良いのか。私はもっとこう⋯⋯ごく少人数で⋯⋯暖かい日差しと花に囲まれたとかの方が良いと思ってる』
『では、お茶会を開くのはいかがでしょう? お庭で家族と親しい友人だけのお茶会を開きましょう』
『そう言うのは良いね。とても憧れる』
(決まりだわ! 今日の発表はなくなったけどリチャードの夢を叶えてあげるのも悪くないわ。夜会での大々的な発表はその後でいいにしてあげるわ)
ダンスが終わり満足げな顔のアメリアは早速報告をしなくてはとレトビア公爵の姿を探した。
(お父様に言いさえすれば秘書も私のものだわ)
『今日のネックレスはデザインがとても珍しいね』
『まあ、気付いておられましたの? このネックレスとイヤリングは他国の物ですのよ。古いものもたまには良いかと思ってつけてみましたの。お父様に強請って特別に出してもらいました』
『他国⋯⋯それでか。アクセサリーは詳しくないんだが細工がとても美しいからつい目についたんだ』
『他にも色々ありますの。次のお茶会で別の物を披露致しますわね。あっ、でもエメラルドのついたアクセサリーはこれ以外あまり良いものがなかったんでした』
『そうなんだ、それは残念だな』
『でもとても素敵な物もあって、わたくしの結婚式にはそれを絶対身につけるって決めていますの』
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