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40.驚愕の情報量
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「本当はイリスにはウルリカの秘書をお願いしようと思ってたの。そうすれば一緒に行動できるでしょう? イリスに提案したんだけど調査隊に参加したい、その方がいいはずだって言われてしまったの」
「イリスが子爵家だからですね」
シャーロットは侯爵家でグレイスは伯爵家。生徒会を理由にすれば一緒に行動する事はできるがシャーロット達の横槍を押し退ける事はできない。自身の提案で休学させてしまったと悲しそうな顔をしたアリエノールが小さく頷いた。
「近々、ヴァイマル王国に留学していた辺境伯の下の弟ルーク・マクルーガーがSクラスに編入してきます。で、彼をウルリカの秘書に任命するわ」
我が国では辺境伯は侯爵家より上、公爵家の下なのでシャーロットに対抗できる。夜会で会ったマクルーガー辺境伯を思い出し、彼の弟なら話しやすそうだと胸を撫で下ろした。
「ルークは来年度編入予定でそれに合わせて帰国する筈だったのだけどマーシャル夫人の声掛けで帰国を早めてもらえたの。
王妃殿下からお聞きした話なのだけど、セアラがアルセント伯爵令嬢達に連れ出されるのを見たマーシャル夫人が『セアラには信頼できるお友達が必要ですね』って仰ったんですって。
レトビア公爵派の貴族の令嬢令息の態度にも不満があったようだって仰っておられたわ」
「あの日はシャーロット達とはお話ししませんでしたのに、マーシャル夫人はやはり気付いておられたのですね」
セアラの靴擦れに気付いていたように微妙な所作や目配りなどでマーシャル夫人にはバレていたのだろう。
「国一番のマナー講師ですもの。シャーロット達の目つきや扇子の使い方ですぐにお分かりになったと思うわ。ミリセントも気付いていたわ」
『近いうちにまた会える、そんな気がします』
「マクルーガー辺境伯領には昔からちょくちょくお邪魔していて、元々レトビア公爵家とその派閥に対して疑心を持っておられたのは気付いていたんだ。
我が国の歴史を自分なりの解釈で紐解いたら、理不尽な政策や王命のどれもがレトビア公爵達に都合が良く出来てるって。だけどレトビア公爵達に阿っているように見える王家の遣り方も気に入らないみたいで、彼は基本王都には近づかないんだ。
今回の夜会なんて例外中の例外だったがラッキーだったよな」
「報告によるとマーシャル夫人が夜会に出席されるかもしれないと知った辺境伯夫人の独断のようです。辺境伯は領民との新年の祝いに残りたい、小さな子供を置いて行くのは嫌だと抵抗されたそうですが夫人の意志が固く夫妻揃って参加されました」
ウルリカの元には驚くほどの情報が集まっている。侍従長を務めている元ルクセル侯爵は常に国王の後ろに控えている。噂では諜報部隊を持っているとも言われ、表舞台を嫌い公の場には一切顔を出さない。
ウルリカも父親と同じく諜報や情報操作に長けアリエノールの手足として研鑽している。
「ああ、辺境伯の伝書鳩だね。辺境伯は優秀な伝書鳩のお陰で領地から出なくても誰よりも先に情報を得てるんだ。
しかし、それにしても情報が早すぎる気がするな。マーシャル夫人の夜会参加はそんな前から決まっていたとは思えないんだが」
「レトビア公爵からマーシャル夫人へセアラ様のシャペロンのご依頼があってすぐ辺境伯へ連絡が入ったようです。
もしかしたらマーシャル夫人の近くには辺境伯の手のものが常駐しているのかもしれません」
「ウルリカ情報にもないのだから余程上手く隠れているみたいね」
セアラは意を決してここ数日気になり続けていた事を聞いてみることにした。
「あの、マーシャル夫人は何故そのように色々手助けしてくださるのでしょうか? 以前から気にはなっていたのですが先ほどのお話をお聞きして益々わからなくなってしまいました」
夜会の前準備はアメリアや使用人達の妨害で不快な思いをすることになった上に、デイドレスや化粧品など大量の贈り物に侍女の派遣。時間もお金も使い漸く参加できた夜会ではセアラの評価をアメリアに奪われかけた。
(最後は毒物事件で中座を余儀なくされたのに最後まで優しい言葉をかけて下さったわ。親切な方だと言うにはあまりにも⋯⋯)
「マーシャル夫人の亡くなられた旦那様サルタルス子爵はレトビア公爵家の縁戚だと言うのはご存知?」
「はい、執事から聞きました」
「三代前のレトビア公爵の義弟が従属爵位を継承したの。その時の夫人は【レトビアの荊姫】だったの。
婚姻・授爵前は無名だったサルタルス子爵は潤沢な資金とレトビア公爵家の後ろ盾で王璽尚書に上り詰めたのだけどそれでは物足りなかったみたい。
当時の王璽尚書は国王の私的な印章を管理していたのだけど国璽も一緒に管理すべきだと議会に訴えたり、内務省への謁見行為で訴えられたりとお騒がせな人でね。跡を継いだ息子以降は王家に出仕できず領地経営で生計を立ててきたの。
レトビア公爵家から見切りをつけられたのではないかと言われてる」
「マーシャル夫人の出自は曖昧です。前々サルタルス子爵に嫁いで来られたヴァイマル王国の伯爵令嬢の侍女として輿入れに同行して来られたマーシャル様はテンダール男爵令嬢だったと記録されていますが、家名は既に断絶しており詳細は掴めていません」
「ウルリカの調査で分からないなら、本人が口にしない限りこの先も分からないと思う。海千山千という言葉はマーシャル夫人の為にあるんじゃないかと思うくらい謎に包まれてるんだよなぁ」
アリエノールやリチャードもマーシャル夫人にマナー講習を受けたが何を考え何を狙っているのかさっぱり分からなかったと言う。
「侍女だった頃から完璧なマナーでいつしか有名になって、子爵夫人となった後はあちこちの貴族家でマナー講師や家庭教師をはじめたの」
この頃高位貴族との繋がりができた。王太子妃や王子・王女教育で成果を出し国一番のマナー講師として有名になった。
「とても不思議な方でしょう? 普通王族と関わりができればそれを鼻にかけたり、それを利用してもっと上を目指したりするけれどそれもない。たまに参加したお茶会や夜会でも目立たないようにしておられるの。
あの方が何を考えておられるのかは全くわからないけれど、途轍もない人脈と情報をお持ちだと確信しているわ」
「もしかしたら男爵令嬢ではなくもっと高位の貴族令嬢の可能性もあるという事でしょうか?」
「ええ、その可能性はあるわ。マーシャル夫人の思惑が何なのか⋯⋯」
「イリスが子爵家だからですね」
シャーロットは侯爵家でグレイスは伯爵家。生徒会を理由にすれば一緒に行動する事はできるがシャーロット達の横槍を押し退ける事はできない。自身の提案で休学させてしまったと悲しそうな顔をしたアリエノールが小さく頷いた。
「近々、ヴァイマル王国に留学していた辺境伯の下の弟ルーク・マクルーガーがSクラスに編入してきます。で、彼をウルリカの秘書に任命するわ」
我が国では辺境伯は侯爵家より上、公爵家の下なのでシャーロットに対抗できる。夜会で会ったマクルーガー辺境伯を思い出し、彼の弟なら話しやすそうだと胸を撫で下ろした。
「ルークは来年度編入予定でそれに合わせて帰国する筈だったのだけどマーシャル夫人の声掛けで帰国を早めてもらえたの。
王妃殿下からお聞きした話なのだけど、セアラがアルセント伯爵令嬢達に連れ出されるのを見たマーシャル夫人が『セアラには信頼できるお友達が必要ですね』って仰ったんですって。
レトビア公爵派の貴族の令嬢令息の態度にも不満があったようだって仰っておられたわ」
「あの日はシャーロット達とはお話ししませんでしたのに、マーシャル夫人はやはり気付いておられたのですね」
セアラの靴擦れに気付いていたように微妙な所作や目配りなどでマーシャル夫人にはバレていたのだろう。
「国一番のマナー講師ですもの。シャーロット達の目つきや扇子の使い方ですぐにお分かりになったと思うわ。ミリセントも気付いていたわ」
『近いうちにまた会える、そんな気がします』
「マクルーガー辺境伯領には昔からちょくちょくお邪魔していて、元々レトビア公爵家とその派閥に対して疑心を持っておられたのは気付いていたんだ。
我が国の歴史を自分なりの解釈で紐解いたら、理不尽な政策や王命のどれもがレトビア公爵達に都合が良く出来てるって。だけどレトビア公爵達に阿っているように見える王家の遣り方も気に入らないみたいで、彼は基本王都には近づかないんだ。
今回の夜会なんて例外中の例外だったがラッキーだったよな」
「報告によるとマーシャル夫人が夜会に出席されるかもしれないと知った辺境伯夫人の独断のようです。辺境伯は領民との新年の祝いに残りたい、小さな子供を置いて行くのは嫌だと抵抗されたそうですが夫人の意志が固く夫妻揃って参加されました」
ウルリカの元には驚くほどの情報が集まっている。侍従長を務めている元ルクセル侯爵は常に国王の後ろに控えている。噂では諜報部隊を持っているとも言われ、表舞台を嫌い公の場には一切顔を出さない。
ウルリカも父親と同じく諜報や情報操作に長けアリエノールの手足として研鑽している。
「ああ、辺境伯の伝書鳩だね。辺境伯は優秀な伝書鳩のお陰で領地から出なくても誰よりも先に情報を得てるんだ。
しかし、それにしても情報が早すぎる気がするな。マーシャル夫人の夜会参加はそんな前から決まっていたとは思えないんだが」
「レトビア公爵からマーシャル夫人へセアラ様のシャペロンのご依頼があってすぐ辺境伯へ連絡が入ったようです。
もしかしたらマーシャル夫人の近くには辺境伯の手のものが常駐しているのかもしれません」
「ウルリカ情報にもないのだから余程上手く隠れているみたいね」
セアラは意を決してここ数日気になり続けていた事を聞いてみることにした。
「あの、マーシャル夫人は何故そのように色々手助けしてくださるのでしょうか? 以前から気にはなっていたのですが先ほどのお話をお聞きして益々わからなくなってしまいました」
夜会の前準備はアメリアや使用人達の妨害で不快な思いをすることになった上に、デイドレスや化粧品など大量の贈り物に侍女の派遣。時間もお金も使い漸く参加できた夜会ではセアラの評価をアメリアに奪われかけた。
(最後は毒物事件で中座を余儀なくされたのに最後まで優しい言葉をかけて下さったわ。親切な方だと言うにはあまりにも⋯⋯)
「マーシャル夫人の亡くなられた旦那様サルタルス子爵はレトビア公爵家の縁戚だと言うのはご存知?」
「はい、執事から聞きました」
「三代前のレトビア公爵の義弟が従属爵位を継承したの。その時の夫人は【レトビアの荊姫】だったの。
婚姻・授爵前は無名だったサルタルス子爵は潤沢な資金とレトビア公爵家の後ろ盾で王璽尚書に上り詰めたのだけどそれでは物足りなかったみたい。
当時の王璽尚書は国王の私的な印章を管理していたのだけど国璽も一緒に管理すべきだと議会に訴えたり、内務省への謁見行為で訴えられたりとお騒がせな人でね。跡を継いだ息子以降は王家に出仕できず領地経営で生計を立ててきたの。
レトビア公爵家から見切りをつけられたのではないかと言われてる」
「マーシャル夫人の出自は曖昧です。前々サルタルス子爵に嫁いで来られたヴァイマル王国の伯爵令嬢の侍女として輿入れに同行して来られたマーシャル様はテンダール男爵令嬢だったと記録されていますが、家名は既に断絶しており詳細は掴めていません」
「ウルリカの調査で分からないなら、本人が口にしない限りこの先も分からないと思う。海千山千という言葉はマーシャル夫人の為にあるんじゃないかと思うくらい謎に包まれてるんだよなぁ」
アリエノールやリチャードもマーシャル夫人にマナー講習を受けたが何を考え何を狙っているのかさっぱり分からなかったと言う。
「侍女だった頃から完璧なマナーでいつしか有名になって、子爵夫人となった後はあちこちの貴族家でマナー講師や家庭教師をはじめたの」
この頃高位貴族との繋がりができた。王太子妃や王子・王女教育で成果を出し国一番のマナー講師として有名になった。
「とても不思議な方でしょう? 普通王族と関わりができればそれを鼻にかけたり、それを利用してもっと上を目指したりするけれどそれもない。たまに参加したお茶会や夜会でも目立たないようにしておられるの。
あの方が何を考えておられるのかは全くわからないけれど、途轍もない人脈と情報をお持ちだと確信しているわ」
「もしかしたら男爵令嬢ではなくもっと高位の貴族令嬢の可能性もあるという事でしょうか?」
「ええ、その可能性はあるわ。マーシャル夫人の思惑が何なのか⋯⋯」
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