【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

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41.謎に包まれたマーシャル夫人

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(他国の男爵令嬢がベルスペクト王国一のマナー講師? ウルリカ様でさえ辿れない出自。誰にも本心を明かしていないマーシャル夫人か)

「ヴァイマル王国は我が国の友好国だから情報制限があるわけじゃないしね、何も分からない事自体怪しいんだよな。だけど、マーシャル夫人を知っている人なら全員『彼女は信用できる』って思っていると断言できる。
本当に不思議な人だよ」


 マーシャル夫人が仕事を請け負ったり交流を持ったりする相手には何かしらのルールがあるように思えるのだが、誰もそのルールが何なのか想像がつかないでいる。

「高位貴族の依頼を断ったかと思えば下位貴族の依頼を受ける。派閥にも関係ないし資産や年齢も様々。
今回セアラのシャペロンを受けた理由なんて想像もつかないんだ」


「マーシャル夫人は気まぐれだと仰いましたが、そうとは思えなくて」

「マーシャル夫人に何かしらの目的や思惑があるのかないのか⋯⋯セアラに任せてもいいかしら? 少なくとも今の所、今回の件には有利に運んでいるのだけど。もし相反する目的で動いておられるのなら危険だわ」

「マーシャル夫人の人脈と行動力と情報操作能力は諸刃の剣です。王家の影でさえマーシャル夫人宅には忍び込めていませんし」


「少なくともセアラはマーシャル夫人に気に入られているわ。例の毒物の報告をした時マーシャル夫人が動揺しておられたとメアリーアンが言ってたわ」

「毒物?」

 訝しげな顔で問いただしたリチャードにウルリカが説明すると真っ赤な顔で怒り出した。

「イヌサフランって猛毒じゃないか! それで、その。大丈夫だったのか!? 身体はもう?」

「はい、とても杜撰な計画でしたから口にせずに済みました。今から仕掛けますって宣言しているようなやり方でしたし、何よりアリエノール様が侍女をつけて下さっていたので何の問題もありませんでした」

「お馬鹿なアメリアの作戦でなければ危なかったわ。あの時の令嬢達もあからさまだったから速攻で捕まえようかと思ったくらいよ。
だからくれぐれも注意して欲しいの。お兄様がセアラの周りを彷徨きはじめたらアメリアが何をしでかすか。
口にするものだけでなく全てを疑うようにね」


 口を歪め眉間に皺を寄せたリチャードを放置したまま話が進んでいく。


 正式に生徒会長秘書に任命されたと同時に寮の部屋を移動する事。

 食事はアリエノールと一緒にとる事。

 ルーク辺境伯の弟が来たら常に一緒に行動する事。

 放課後や休日に公爵邸に呼び出されても行かない事。



「ルークに侍女をつけられないか? 令嬢だけの授業とかの時、侍女に近くにいて貰えば良いんじゃないか?」

「ルーク様であれば特例が使えると思います」

 少し悩んでいたアリエノールが首を縦に振った。

 留学生の場合、特例として学園生活に慣れるまでの間だけ従者や侍女を連れて行動することができる。幼少期から他国へ留学していたルークならそれが使えるだろうと言う。

「そうね、辺境伯から学園に依頼してもらいましょう」

「それと、ルークは剣術大会に無条件参加だな」



「アメリアの性格ならそんなに時間はかからないと思うの。但し取り巻きも含め過激な行動を取ってくると思うから注意しなくては。
全てはお兄様にかかってるわ。
セアラに夢中になっていてもアメリアをうまく誘導してくれなくては」

「おっ、おう」




 寮に戻ったセアラはドサリとソファに倒れ込んだ。

(イリスがお兄様と一緒にサルドニア帝国に行ったなんて)

『ライルがあちこち案内してくれるって言うから王都を堪能する予定! セアラにいっぱいお土産買ってくるね。
勿論レトビアの呪いの事も調べてくるし』

 明るく話していたイリスの姿からは帝国の調査隊に参加するなど思いもよらなかった。

(私なんて『これでイリスとお兄様との仲が縮まれば良いな』なんて呑気な事を考えてたのに)


 ふと気づくと夕食が食べられるギリギリの時間になっていた。セアラが慌てて食堂に行くと隅の方でお喋りしていた一団が一斉にセアラの方を見た後一人の令嬢が食堂を飛び出して行った。


 飛び出して行った令嬢が戻って来て注文した料理が届いてもシャーロット達はやって来なかった。
 不躾な目線は感じるが近くには誰もいないのでいつもより息がしやすい気がする。寮の食事はいつも豪華で綺麗に盛り付けられているが、今日は格段に香りが良くて食欲をそそる。

 セアラは食事を堪能して部屋に戻った。



 生徒会長秘書の任命式は今週末の全体集会で行われる。副会長のウルリカの秘書は編入前のルークなので発表できない可能性があるが、それ以外の書記・会計・広報の各秘書は決まっているらしい。書記と会計はSクラス、広報はAクラスの生徒だと言っていた。

 今日の昼、剣技大会の参加申し込み用の箱が職員室前に設置された。既にかなりの申し込みが来ており明日の放課後から集計の準備に取り掛かる予定。

『今年は一年生もかなりいるんじゃないかしら?』

『そうなのかい?』

『ええ、お兄様はものすご~く人気者でいらっしゃるでしょう? お兄様の剣技を間近で見たいって生徒が集まると思いますわ』

『⋯⋯悪口にしか聞こえないのは俺の耳がおかしいのかな?』

『リチャード王子の聴力に問題はないと推察します』

『だよな』


『もし練習前からお兄様がセアラの近くを彷徨くおつもりなら練習中も気をつけなくちゃ。大勢の生徒に紛れてセアラに近付く者がいるかも』

『そうか、練習中は目が離れる可能性が。となると侍女一人だけだと不安だな』

『一応わたくしの影に見張らせはするのだけど、お兄様が護衛を連れてきてくれると良いわね』

『そうですね。リチャード王子の護衛までセアラ様の周りに張り付くようになればヒロインらしさが出るでしょう』




『失敗したら公爵邸を燃やすつもりだから』

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