44 / 93
44.令嬢達の熱気と疲労困憊したセアラ
しおりを挟む
土曜日の引っ越しとアリエノールやウルリカとの食事、常にそばにいる完璧侍女のメアリーアン。
月曜日、教室の自分の席に座ったセアラは疲れ果てていた。
(至れり尽くせりで居た堪れない⋯⋯贅沢だってわかってるけど、この後はルーク・マクルーガー様がいらっしゃるのよね。はぁ、心が⋯⋯)
運んだ椅子に立って窓を磨き絞りきれない雑巾でテーブルを拭いていた幼少期のセアラ。庭の草むしりも馬の世話も苦にならなかったがここ最近の人生は途轍もなく激動しすぎており今までの中で一番気疲れしている気がする。
公爵家での軟禁生活で運動不足に悩まされシャーロット達に囲まれて能面を保って暮らしていた時よりも肩が凝る。
(王侯貴族の暮らしには向いてないってことね。問題が解決したら貴族なんてやめて農家とか商家に嫁入りするわ。それとも商売をはじめるとか⋯⋯。兎に角それまでに私に出来る事を考えなくちゃ)
椅子の上に貼り付けられていた画鋲を手の中で転がしながら将来に思いを馳せていると担任のオーシエン先生がルークと共に教室に入ってきた。背筋を伸ばして警戒する男子生徒と身だしなみを気にして髪に手をやる女生徒。
ルークは体格の良さで威圧感があるが顔立ちはかなり整っており辺境伯の弟と言うのも婚約者候補として高評価なのだろう。リチャードとアリエノールが婚約者を決めていないせいで未だに婚約を決めていない令息にとってルークは強敵となり、令嬢にとっては大きなチャンスになる。
リチャードとアメリアの婚約が間近と言われはじめているので新しい獲物の出現に令嬢達は普段より濃いめの化粧としっかりと整えた髪、ギラつく目には本気の気迫が溢れている。
「二番煎じになるが、もう一度挨拶をしなさい」
「ルーク・マクルーガー。長年ヴァイマル王国に留学していて帰国したばかりです。宜しくお願いします」
「それだけか? まあ良いだろう。マクルーガーには暫くの間だけだが移動や休憩時間に侍女がつく。マクルーガーは留学生活が長かったので他国からの留学生と同様の特例措置を使うそうだ。だが同じクラスメイトとして仲良くするように」
女生徒の『是非!』と言う心の声が聞こえてきた。
授業の合間、ルークの周りには人だかりができていた。高位貴族令嬢が殆どで数人の男子生徒もいる。
「王都はどこか行かれましたかしら?」
「いや、まだ」
「寮はもう落ち着かれました?」
「殆どは」
「本当に剣術大会にお出になられるのですか?」
「ああ」
「ルーク様とお呼びしても良いでしょうか?」
午前の授業が終わった直後、聞き慣れたシャーロットの声が聞こえてきた。途端に静まりかえった教室にセアラは溜息を飲み込んだ。
「構いませんが?」
「申し遅れました。わたくしはメイヨー侯爵家の長女シャーロット・メイヨーと申します。以後お見知り置きを」
「ルーク・マクルーガーです」
「宜しければ食堂にご案内致しますわ。是非留学中のお話などお聞かせくださいませ」
かなり興奮気味の取り巻き達がシャーロットの後ろで頬を赤らめている。
「いや、ウルリカ嬢と生徒会室で待ち合わせしているんで」
「ではご案内いたしますね。生徒会室は別棟にございますの」
「いや、セアラ嬢も呼ばれてるんで。セアラ嬢案内してくれ」
キッと睨んだシャーロットの目を見ないようにしながら立ち上がったセアラがルークと共に教室を出ると途端に教室の中がざわつきはじめた。
「凄いな。編入生には皆ああなのかな」
「いえ、マクルーガー様が特別なのではないでしょうか?」
「これから一緒にいる時間は長いんだし、普通に話してくれると助かる。それから、俺はルーク」
「ルーク様、宜しくお願いします」
「うん、こちらこそ。セアラ嬢は母上にお聞きした通りだった。まあ、それ以外の生徒もだけど。そっちは悪い方で当たってたな」
「わたくしは詳しくないのですが一年生で剣技大会の有力候補になるのは珍しいそうです」
「まだ候補にはなってないんだけどね。アリエノール様が壇上で発表されたせいで、注目されているとは聞いた」
「はい、しかも副会長秘書になられましたし」
「それな、ウルリカ様って怖いんだよな。理路整然と話すあ「怖くて申し訳ありません。慣れていただくしかないかと思います」」
「げっ! やっ、やあ。えーっと」
背後から聞こえてきたウルリカの声にビクッと大きな体を縮こまらせたルークの横をウルリカが無言で通り過ぎた。
セアラが助け舟を出す暇を見つけ出せないうちに生徒会室にたどり着いたウルリカが振り返った。
「食事はもうすぐ届きますので」
返事を待たずに生徒会室に入ったウルリカの姿を呆然と見ていたルークが呟いた。
「なっ、怖いだろ?」
「えっと、きちっとした話し方をされる方だなと思うくらいで、今まで一度も怖いと思った事はありませんけど?」
「マジか? 慣れ⋯⋯かなぁ」
生徒会室に入ると何故かアリエノールの隣にリチャード王子がいた。
「来ちゃったのよ。全く困ったお兄様でしょう?」
あからさまにホッとした様子のルークを見たリチャードがケラケラと笑った。
「俺が来たのを喜んでくれた奴もいるみたいだぞ?」
「はいはい。突然お食事を増やすのは大変なのよ」
セアラ達の後ろからやってきたのはウルリカが食事の追加を頼みに行っていたのだろう。
「ルークにはこれから色々手伝ってもらわないといけないから激励に来たんだ。情報のすり合わせも必要だしな」
「牽制はすり合わせる必要がございません」
定番になりつつあるウルリカの指摘にアリエノールがクスクスと笑いはじめた。
生徒会室の続き部屋に行くと広いテーブルが片付けられて既にクロスが敷かれている。
「予備の部屋だったのだけど変更したの。ここで食事することが多いのに真面なテーブルもないんですもの」
「俺の時なんて執務机の隅に置いて食べてたんだぞ」
歴代の生徒会長は男子生徒ばかりだったそうでアリエノールが初の女子生徒会長に就任した。目の前の食事用のテーブルや新しいソファとコーヒーテーブルを持ち込み、カーペットも一新したらしい。
「気持ちの良い空間は仕事の効率を高めますの。美味しいお茶とお食事も同じですわね」
運び込まれた5人分の料理はワンプレートに並べられた温野菜とチキン。バターとジャムが添えられた温かいパンとスープ。白地に鮮やかな青で模様が描かれた皿は⋯⋯。
「マイセンのブルー・オニオン?」
「ええ、わたくしのお気に入りなの」
学園の中で取る食事とは思えない豪華な食器に載せられた豪華な料理を食べながら作戦会議がはじまった。
月曜日、教室の自分の席に座ったセアラは疲れ果てていた。
(至れり尽くせりで居た堪れない⋯⋯贅沢だってわかってるけど、この後はルーク・マクルーガー様がいらっしゃるのよね。はぁ、心が⋯⋯)
運んだ椅子に立って窓を磨き絞りきれない雑巾でテーブルを拭いていた幼少期のセアラ。庭の草むしりも馬の世話も苦にならなかったがここ最近の人生は途轍もなく激動しすぎており今までの中で一番気疲れしている気がする。
公爵家での軟禁生活で運動不足に悩まされシャーロット達に囲まれて能面を保って暮らしていた時よりも肩が凝る。
(王侯貴族の暮らしには向いてないってことね。問題が解決したら貴族なんてやめて農家とか商家に嫁入りするわ。それとも商売をはじめるとか⋯⋯。兎に角それまでに私に出来る事を考えなくちゃ)
椅子の上に貼り付けられていた画鋲を手の中で転がしながら将来に思いを馳せていると担任のオーシエン先生がルークと共に教室に入ってきた。背筋を伸ばして警戒する男子生徒と身だしなみを気にして髪に手をやる女生徒。
ルークは体格の良さで威圧感があるが顔立ちはかなり整っており辺境伯の弟と言うのも婚約者候補として高評価なのだろう。リチャードとアリエノールが婚約者を決めていないせいで未だに婚約を決めていない令息にとってルークは強敵となり、令嬢にとっては大きなチャンスになる。
リチャードとアメリアの婚約が間近と言われはじめているので新しい獲物の出現に令嬢達は普段より濃いめの化粧としっかりと整えた髪、ギラつく目には本気の気迫が溢れている。
「二番煎じになるが、もう一度挨拶をしなさい」
「ルーク・マクルーガー。長年ヴァイマル王国に留学していて帰国したばかりです。宜しくお願いします」
「それだけか? まあ良いだろう。マクルーガーには暫くの間だけだが移動や休憩時間に侍女がつく。マクルーガーは留学生活が長かったので他国からの留学生と同様の特例措置を使うそうだ。だが同じクラスメイトとして仲良くするように」
女生徒の『是非!』と言う心の声が聞こえてきた。
授業の合間、ルークの周りには人だかりができていた。高位貴族令嬢が殆どで数人の男子生徒もいる。
「王都はどこか行かれましたかしら?」
「いや、まだ」
「寮はもう落ち着かれました?」
「殆どは」
「本当に剣術大会にお出になられるのですか?」
「ああ」
「ルーク様とお呼びしても良いでしょうか?」
午前の授業が終わった直後、聞き慣れたシャーロットの声が聞こえてきた。途端に静まりかえった教室にセアラは溜息を飲み込んだ。
「構いませんが?」
「申し遅れました。わたくしはメイヨー侯爵家の長女シャーロット・メイヨーと申します。以後お見知り置きを」
「ルーク・マクルーガーです」
「宜しければ食堂にご案内致しますわ。是非留学中のお話などお聞かせくださいませ」
かなり興奮気味の取り巻き達がシャーロットの後ろで頬を赤らめている。
「いや、ウルリカ嬢と生徒会室で待ち合わせしているんで」
「ではご案内いたしますね。生徒会室は別棟にございますの」
「いや、セアラ嬢も呼ばれてるんで。セアラ嬢案内してくれ」
キッと睨んだシャーロットの目を見ないようにしながら立ち上がったセアラがルークと共に教室を出ると途端に教室の中がざわつきはじめた。
「凄いな。編入生には皆ああなのかな」
「いえ、マクルーガー様が特別なのではないでしょうか?」
「これから一緒にいる時間は長いんだし、普通に話してくれると助かる。それから、俺はルーク」
「ルーク様、宜しくお願いします」
「うん、こちらこそ。セアラ嬢は母上にお聞きした通りだった。まあ、それ以外の生徒もだけど。そっちは悪い方で当たってたな」
「わたくしは詳しくないのですが一年生で剣技大会の有力候補になるのは珍しいそうです」
「まだ候補にはなってないんだけどね。アリエノール様が壇上で発表されたせいで、注目されているとは聞いた」
「はい、しかも副会長秘書になられましたし」
「それな、ウルリカ様って怖いんだよな。理路整然と話すあ「怖くて申し訳ありません。慣れていただくしかないかと思います」」
「げっ! やっ、やあ。えーっと」
背後から聞こえてきたウルリカの声にビクッと大きな体を縮こまらせたルークの横をウルリカが無言で通り過ぎた。
セアラが助け舟を出す暇を見つけ出せないうちに生徒会室にたどり着いたウルリカが振り返った。
「食事はもうすぐ届きますので」
返事を待たずに生徒会室に入ったウルリカの姿を呆然と見ていたルークが呟いた。
「なっ、怖いだろ?」
「えっと、きちっとした話し方をされる方だなと思うくらいで、今まで一度も怖いと思った事はありませんけど?」
「マジか? 慣れ⋯⋯かなぁ」
生徒会室に入ると何故かアリエノールの隣にリチャード王子がいた。
「来ちゃったのよ。全く困ったお兄様でしょう?」
あからさまにホッとした様子のルークを見たリチャードがケラケラと笑った。
「俺が来たのを喜んでくれた奴もいるみたいだぞ?」
「はいはい。突然お食事を増やすのは大変なのよ」
セアラ達の後ろからやってきたのはウルリカが食事の追加を頼みに行っていたのだろう。
「ルークにはこれから色々手伝ってもらわないといけないから激励に来たんだ。情報のすり合わせも必要だしな」
「牽制はすり合わせる必要がございません」
定番になりつつあるウルリカの指摘にアリエノールがクスクスと笑いはじめた。
生徒会室の続き部屋に行くと広いテーブルが片付けられて既にクロスが敷かれている。
「予備の部屋だったのだけど変更したの。ここで食事することが多いのに真面なテーブルもないんですもの」
「俺の時なんて執務机の隅に置いて食べてたんだぞ」
歴代の生徒会長は男子生徒ばかりだったそうでアリエノールが初の女子生徒会長に就任した。目の前の食事用のテーブルや新しいソファとコーヒーテーブルを持ち込み、カーペットも一新したらしい。
「気持ちの良い空間は仕事の効率を高めますの。美味しいお茶とお食事も同じですわね」
運び込まれた5人分の料理はワンプレートに並べられた温野菜とチキン。バターとジャムが添えられた温かいパンとスープ。白地に鮮やかな青で模様が描かれた皿は⋯⋯。
「マイセンのブルー・オニオン?」
「ええ、わたくしのお気に入りなの」
学園の中で取る食事とは思えない豪華な食器に載せられた豪華な料理を食べながら作戦会議がはじまった。
12
あなたにおすすめの小説
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
誤解は解きません。悪女で結構です。
砂礫レキ
恋愛
オルソン家の伯爵令嬢エリカ。彼女は亡き母がメイドだった為に異母姉ローズとその母によって長年虐げられていた。
二人から男好きの悪女の噂を流布され、それを真に受けた結婚相手に乱暴に扱われそうになる。
その瞬間エリカは前世の記憶を思い出した。そして今の自分が「一輪の花は氷を溶かす」という漫画のドアマットヒロインに転生していることに気付く。
漫画の内容は氷の公爵ケビン・アベニウスが政略結婚相手のエリカを悪女と思い込み冷遇するが、優しさに徐々に惹かれていくという長編ストーリーだ。
しかし記憶を取り戻した彼女は呟く。「そんな噂を鵜呑みにするアホ男なんてどうでもいいわ」
夫からの愛を求めない新生エリカは悪女と呼ばれようと自分らしく生きることを決意するのだった。
婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?
パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。
しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)
藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。)
この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。
両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。
この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。
自分が悪役令嬢と知ったソフィア。
婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が!
驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。
死亡フラグが立ってしまったーー!!?
早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。
そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。
しかも、正式に求婚されてしまう!?
これはどういうこと!?
ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。
なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。
攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。
中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。
ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!?
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体などに一切関係ありません。
誤字脱字、感想を受け付けております。
HOT ランキング 4位にランクイン
第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品
この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる