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65.慌てるセアラの変な癖
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「さて、我が国の歴史が正された今、気持ちを切り替えて祝福の儀をはじめよう」
(えっ? 祝福の儀?)
王太子の言葉で硬直したセアラの顔をリチャードがにんまりと笑いながら覗き込んだ。
「終わったと思って安心してただろ? 女神降臨はこれからだよ」
「もっ、もう必要ないのではありませんか?」
「選手達が待ってる。この夜会の最後を華やかに決めなくてはね」
本当に祝福の儀をやるとは思っていなかったセアラは真っ青になった。
(儀式をやりはじめたら直ぐにアメリアが抗議してくるはずだから、そこまでで終わりだって思ってたのにどうしよう)
日々鍛錬してきた自信と代表となった誇りを胸に、騎士の礼をした各校の代表者3名の後ろに9名の選手が並んでいる。
(逃げていては失礼にあたる。でも何をすれば⋯⋯)
「リチャード様、薔薇の花をいただけませんか」
腹を括ったセアラの願いを理解したリチャードが指示を出し会場に飾られていたクリスマスローズから美しく咲く花を持ってきた。
アリエノールは清楚な白い花を4本、ミリセントは可憐なピンクの花を4本。セアラは気品溢れる紫の花を持った。
3人の令嬢はセアラを中心に並び白いカーペットの敷かれた階段を降りた。
セアラが一歩前に出て大きく息を吸った。
「今宵、ここに集いし者達とベルスペクト王国の全ての者達はあなた方の勇気と精励を讃え、心からの祝福を捧げます」
セアラ手ずから騎士服の襟に花を付けていく。ベルスペクト王立学園の選手には紫、ケールズ騎士学校の選手にはピンク、サワシリア学園の選手には白。
会場に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
夜会開催と同時刻、レトビア公爵の屋敷は近衛騎士団に包囲され使用人は全て拘束された。
会が終わった直後駆けつけた王太子と共に屋敷に踏み込んだ近衛騎士団は隠し扉から地下に降り、棚の裏に隠されていた金庫の中から神殿の宝物と古い書類を見つけ出した。
長年王家に苦汁を飲ませ続けた密書が漸く王太子の元に戻ってきた。
(ありました。陛下、みんな⋯⋯)
古ぼけて変色したソレを大切そうに胸に抱えた王太子はうっすらと涙を浮かべた。
その後も調査や資産隠しの防止のため屋敷は立ち入り禁止となり騎士団の監視下に置かれた。
使用人は厳しく身体検査された後事情聴取のため勾留された。レトビア公爵の別邸や領地なども全て同様に騎士団が派遣された。
レトビア公爵とアメリアは貴族牢へ入れられ詳しく詮議される。メリッサも逮捕され、婚家の者達も詮議の対象となった。
アリエノール王女は学園を休学し王宮で政務に奔走し、リチャード王子もシルス王太子にこき使われていると言う。
学園内には様々な噂が飛び交い退学者が出たりしていたがセアラは入学して初めて学園生活を満喫していた。授業を受けルークやイリスと食堂へ向かう。放課後は生徒会の手伝いを済ませて寮に戻り、予習復習や宿題とテストの多さに頭を悩ませる。
「セアラ、明日のお休みは王都に遊びに行かない?」
「二人のお邪魔になっちゃうのは嫌かなぁ。暫く会えなくなるんだからしっかり愛を確かめ合ってくるといいわ」
「あっ、愛? ライルが3人でご飯食べに行こうって」
「じゃあ、うんと美味しい物! お兄様に奢って貰おうかしら」
近々領地に戻るライルは爵位継承の準備で忙しくしていたが3日後王都を出発することが決まっている。
翌日の昼前にイリスと一緒に学園の正門に行くと既にライルがソワソワしながら待っていた。
「どうしたの?」
「うん、セアラの顔を見るまで落ち着かなくて。また父上が何か仕出かしてセアラに会えなくなってたらどうしようとかつい不安になって」
相変わらず心配性なライルは今回の件がトラウマになっているらしい。
「シスコン」
「イリス、俺はシスコンじゃないよ。我が家は昔から色々ありすぎてさ。考えすぎなとこはあるけど心配性なのは仕方ないって言うか」
「はいはい」
イリスとライルの掛け合いを聞きながら3人はのんびりと王都への道を歩いて行った。ライルが昼食に選んだのはパスタのお店。
「ここのトマトソースが絶品なんだ」
セアラとイリスはパスタとデザートを頼みライルはそれにプラスしてボリュームのあるシチューも頼んでいた。
「こんな美味しいトマトが観賞用だったなんて本当に勿体無いわ」
嘗ては手づかみで食べていたと言うスパゲティには4本の歯のついたフォークが添えられていた。
「スパゲッティは偉大よね」
「「?」」
「だってスパゲッティを食べる為にこの形のフォークが発明されたのよ。凄いことだわ」
「⋯⋯イリス、俺のはパスタじゃなくてニョッキなんだけど味見する?」
「ライルも私の食べてみる? チーズが効いてて美味しいよ」
セアラがフォークに向かって感動を伝えているのを放置してイリスとライルは食事を楽しんでいた。
「セアラってああなると長いんだよね~。久しぶりに見た」
「セアラは天才肌の上に思考型だからな」
「それを言うなら天才のくせに思考するの方が合ってると思う。どっちにしろ珍しいタイプだよね。珍種?」
「いやいや、それを言うなら希少な生物」
「⋯⋯私も食べる」
「おっ、戻ってきた。今日は早かったなあ。暖かいうちが美味しいから早く食べよう」
「そうね、悪口聞こえてたから」
「今回はなんで悩んでるんだ?」
「悩んでるというより気が重いの」
「ふむ。ほら食え。食ってからか食った後か好きに選んでいいよ」
セアラは悩んだり落ち込んだりすると今回のように挙動不審になることを知っているイリス達はセアラが戻ってくるまで待っていた。
「陛下から呼び出されたの」
「ぐっ。ゲッ、ゲホッゲホッゲホッ⋯⋯まっ、待て! ようやく落ち着いたんじゃなかったのか? また何かあるのか? レトビアが騒いでる? アメリアが逃げ出した? 一体何があった? 帰るのはやめる! 王宮には付いてくぞ。兄として唯一の真面な家族として。いや、イリスもいるから唯二の「大丈夫、お兄様も呼ばれてるから」」
「へ? おう、いつ?」
ライルの暴走を止めたセアラが溜息をついた。
「明日。今朝王璽の押された手紙が届いたの」
「そうか、明日とはまた随分と急な話だな」
「お兄様のせいだと思うわ。お兄様が急に3日後に帰るって決められたでしょう?」
「俺の⋯⋯すまん」
「どうしてもライルにも来て欲しいって思う要件って何?」
「わからない。けど安心して、イリスも呼ばれてるから」
(えっ? 祝福の儀?)
王太子の言葉で硬直したセアラの顔をリチャードがにんまりと笑いながら覗き込んだ。
「終わったと思って安心してただろ? 女神降臨はこれからだよ」
「もっ、もう必要ないのではありませんか?」
「選手達が待ってる。この夜会の最後を華やかに決めなくてはね」
本当に祝福の儀をやるとは思っていなかったセアラは真っ青になった。
(儀式をやりはじめたら直ぐにアメリアが抗議してくるはずだから、そこまでで終わりだって思ってたのにどうしよう)
日々鍛錬してきた自信と代表となった誇りを胸に、騎士の礼をした各校の代表者3名の後ろに9名の選手が並んでいる。
(逃げていては失礼にあたる。でも何をすれば⋯⋯)
「リチャード様、薔薇の花をいただけませんか」
腹を括ったセアラの願いを理解したリチャードが指示を出し会場に飾られていたクリスマスローズから美しく咲く花を持ってきた。
アリエノールは清楚な白い花を4本、ミリセントは可憐なピンクの花を4本。セアラは気品溢れる紫の花を持った。
3人の令嬢はセアラを中心に並び白いカーペットの敷かれた階段を降りた。
セアラが一歩前に出て大きく息を吸った。
「今宵、ここに集いし者達とベルスペクト王国の全ての者達はあなた方の勇気と精励を讃え、心からの祝福を捧げます」
セアラ手ずから騎士服の襟に花を付けていく。ベルスペクト王立学園の選手には紫、ケールズ騎士学校の選手にはピンク、サワシリア学園の選手には白。
会場に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
夜会開催と同時刻、レトビア公爵の屋敷は近衛騎士団に包囲され使用人は全て拘束された。
会が終わった直後駆けつけた王太子と共に屋敷に踏み込んだ近衛騎士団は隠し扉から地下に降り、棚の裏に隠されていた金庫の中から神殿の宝物と古い書類を見つけ出した。
長年王家に苦汁を飲ませ続けた密書が漸く王太子の元に戻ってきた。
(ありました。陛下、みんな⋯⋯)
古ぼけて変色したソレを大切そうに胸に抱えた王太子はうっすらと涙を浮かべた。
その後も調査や資産隠しの防止のため屋敷は立ち入り禁止となり騎士団の監視下に置かれた。
使用人は厳しく身体検査された後事情聴取のため勾留された。レトビア公爵の別邸や領地なども全て同様に騎士団が派遣された。
レトビア公爵とアメリアは貴族牢へ入れられ詳しく詮議される。メリッサも逮捕され、婚家の者達も詮議の対象となった。
アリエノール王女は学園を休学し王宮で政務に奔走し、リチャード王子もシルス王太子にこき使われていると言う。
学園内には様々な噂が飛び交い退学者が出たりしていたがセアラは入学して初めて学園生活を満喫していた。授業を受けルークやイリスと食堂へ向かう。放課後は生徒会の手伝いを済ませて寮に戻り、予習復習や宿題とテストの多さに頭を悩ませる。
「セアラ、明日のお休みは王都に遊びに行かない?」
「二人のお邪魔になっちゃうのは嫌かなぁ。暫く会えなくなるんだからしっかり愛を確かめ合ってくるといいわ」
「あっ、愛? ライルが3人でご飯食べに行こうって」
「じゃあ、うんと美味しい物! お兄様に奢って貰おうかしら」
近々領地に戻るライルは爵位継承の準備で忙しくしていたが3日後王都を出発することが決まっている。
翌日の昼前にイリスと一緒に学園の正門に行くと既にライルがソワソワしながら待っていた。
「どうしたの?」
「うん、セアラの顔を見るまで落ち着かなくて。また父上が何か仕出かしてセアラに会えなくなってたらどうしようとかつい不安になって」
相変わらず心配性なライルは今回の件がトラウマになっているらしい。
「シスコン」
「イリス、俺はシスコンじゃないよ。我が家は昔から色々ありすぎてさ。考えすぎなとこはあるけど心配性なのは仕方ないって言うか」
「はいはい」
イリスとライルの掛け合いを聞きながら3人はのんびりと王都への道を歩いて行った。ライルが昼食に選んだのはパスタのお店。
「ここのトマトソースが絶品なんだ」
セアラとイリスはパスタとデザートを頼みライルはそれにプラスしてボリュームのあるシチューも頼んでいた。
「こんな美味しいトマトが観賞用だったなんて本当に勿体無いわ」
嘗ては手づかみで食べていたと言うスパゲティには4本の歯のついたフォークが添えられていた。
「スパゲッティは偉大よね」
「「?」」
「だってスパゲッティを食べる為にこの形のフォークが発明されたのよ。凄いことだわ」
「⋯⋯イリス、俺のはパスタじゃなくてニョッキなんだけど味見する?」
「ライルも私の食べてみる? チーズが効いてて美味しいよ」
セアラがフォークに向かって感動を伝えているのを放置してイリスとライルは食事を楽しんでいた。
「セアラってああなると長いんだよね~。久しぶりに見た」
「セアラは天才肌の上に思考型だからな」
「それを言うなら天才のくせに思考するの方が合ってると思う。どっちにしろ珍しいタイプだよね。珍種?」
「いやいや、それを言うなら希少な生物」
「⋯⋯私も食べる」
「おっ、戻ってきた。今日は早かったなあ。暖かいうちが美味しいから早く食べよう」
「そうね、悪口聞こえてたから」
「今回はなんで悩んでるんだ?」
「悩んでるというより気が重いの」
「ふむ。ほら食え。食ってからか食った後か好きに選んでいいよ」
セアラは悩んだり落ち込んだりすると今回のように挙動不審になることを知っているイリス達はセアラが戻ってくるまで待っていた。
「陛下から呼び出されたの」
「ぐっ。ゲッ、ゲホッゲホッゲホッ⋯⋯まっ、待て! ようやく落ち着いたんじゃなかったのか? また何かあるのか? レトビアが騒いでる? アメリアが逃げ出した? 一体何があった? 帰るのはやめる! 王宮には付いてくぞ。兄として唯一の真面な家族として。いや、イリスもいるから唯二の「大丈夫、お兄様も呼ばれてるから」」
「へ? おう、いつ?」
ライルの暴走を止めたセアラが溜息をついた。
「明日。今朝王璽の押された手紙が届いたの」
「そうか、明日とはまた随分と急な話だな」
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