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88.聖女リチャード爆誕
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「ご指名を受けてしまいましたからには、聖女の儀式を遂行致しますわ」
優雅なカーテシーでその場の騒ぎを抑え込んだのはセアラだった。
「おお、流石セアラ様! 次期聖女の自覚が既に目覚めておられたとは」
大司教はギラギラと輝く目で皇太子と側近達を威圧しながらセアラを神殿の中心に跪かせた。
神官達の手を借りて因縁のティアラやブレスレットを身につけて大司教から聖女の唱える祝詞を習った。
「偉大にして慈悲深き神の御前にて申し上げ奉ります。世界中の人々に神の祝福を⋯⋯帝国と王国の未来永劫続く和平を」
セアラが勝手に内容を変えた祝詞に大司教が怒鳴り声を上げようとした時、セアラの手元から眩いばかりの光が広がり、その一筋が神の像の額に当たった。
「なんと、伝説の通りの光が!」
「本物の聖女様だ!!」
セアラに向かって頭を垂れる神官達と信者達。
「セアラ様、我が聖女様⋯⋯ワシの目に狂いはなかった⋯⋯」
「儀式は失敗すると言っていったではないか⋯⋯だから準備も既に終わらせて」
マドナーヤク・ダイヤモンドのついたバクルスを持ち小走りにやって来た大司教がセアラの前で跪いた。
「この貴石を手に⋯⋯世界の全てを我が手にと神に誓うのです。さあ、早く!!」
「わたくしが真の聖女かどうかどうしてわかりますの?」
「何を仰せに! 先程の光はまさに聖女の証でございます。宝物が奪われてから300年⋯⋯漸く現れた神の啓示の御印でございます」
「まさか! 何かの間違いですわ」
「いや、わしの目に狂いはない。イーバリス教会大司教として宣言致しますぞ。聖女の光を宿したセアラ様こそが真の聖女!」
(確約、いただきました)
「アリエノール様、宜しければ試してご覧になられますか?」
「わたくしが?」
「はい、皇太子殿下はアリエノール様が新聖女になられることをお望みでいらっしゃいますし、試してみられては如何かと」
セアラ達に見つめられた皇太子がガクガクと首を縦に振った。
「そう、是非とも試してもらいたい。もしもの時は二人聖女としても構わんのだし」
「馬鹿な事を申すな、聖女は当代に一人と決まっておるわ!!」
言葉も乱れた大司教が皇太子に掴みかかり護衛と神官を巻き込んで乱闘になった。
パンパン⋯⋯。
「神聖な神殿と伺っておりましたのに、争いはお辞めになられた方が宜しいかと存じます」
大きな音で手を叩いたセアラがティアラをアリエノールに手渡しブレスレットも外し王女の腕に嵌めた。簡単な説明を聞いたアリエノールが跪く。
鼻で笑う大司教と期待に満ちた顔の皇太子の前でアリエノールも煌びやかな光を発した。
「おお、アリエノール王女も聖女の光を!!」
無表情のセアラとアリエノールは大司教達の驚きの顔を無視したまま手近にいた女性全てで次々に儀式を行なっていく。ウルリカ、イリス、メアリーアン。アリエノールやウルリカの専属侍女も⋯⋯。
「どう言うことだ!? 宝物があれば誰でも聖女になれると言うことか?」
「わ、私もやる! だって私が次期聖女だったんだもの!!」
エディスが神殿の中に駆け込んで来た。ティアラやブレスレットを身につけネックレスや指輪をもぎ取り跪く。
「⋯⋯なんで⋯⋯何で光らないの!? 使用人でさえ出来たのに!!」
セアラが呆然としているエディスからティアラとブレスレットを外して⋯⋯リチャードにつけた。
「な、何をしておる! 王子は男ではないか!!」
茶目っ気たっぷりに笑ったセアラがリチャードの手を引いて神殿中央に跪かせる。
「さあ、祝詞を」
「偉大にして慈悲深き神の御前にて申し上げ奉ります。王国に未来永劫続く平和を。帝国との間に愚かな戦など起こりませんよう願います」
「おお!! 光ったぞおー!」
入り口にいた信者が大声で叫び神殿の外へと伝わっていく。
「誰でも光るのか!?」
「次期聖女は光らなかったそうだぞ」
「王国の者全員が光らせたんだそうだ」
驚愕の顔で床に座り込む大司教と事態を収拾できないで青褪めた皇太子の周りでは指示を待つ神官や側近達がオロオロしていた。
「どういたしますか?」
「開戦は?」
「皇帝は合図をお待ちです。儀式は失敗として良いのでしょうか?」
今頃は開戦のための合図が届くのを待っているはずの皇帝や軍隊はウズウズとしている頃だろう。
「ぎ、儀式は⋯⋯」
「儀式が失敗したと言う証明は出来ますでしょうか? わたくし達は皆様が聖女の光を見たとはっきりと口にされるのを耳にいたしました。入り口近くにおられる信者の方々も目にしておられ、その様子は外におられる信者の方達に伝わっていることでしょう。
この状況で『儀式が失敗した、その責めを王国取らせなければならない』などとお考えになられるはずはないと信じておりますが⋯⋯いかがなものでしょうか?」
「⋯⋯イカサマだ。王国はイカサマで帝国とイーバリス教会を愚弄した。それを理由として」
「開戦ですか? 帝国は随分と弱い理由で他国を侵略なさるのですね。ならば、イカサマだと証明していただきましょう。その上で昔は真に聖女が神の啓示を受けていたと証明してくださいませ。
数年前までは不定期であっても神の啓示があったと聞き及んでおります。それが真に神の啓示によるものであったと証明してくださいませ」
「セアラ殿は我が教団が嘘を伝えていたと申すのか?」
「まさか、そのような事は申しません。神の啓示かイカサマなのかわたくしには判別がつきませんもの」
この場にそぐわない非常に可愛らしいセアラの最上級の笑顔に、リチャードやアリエノール達が笑いを堪えた。
「ただ、気になっている事はございますの⋯⋯襲撃の際教会から奪われたとされているものの中に強い幻覚を見せる薬品が複数ありましたでしょう? それが教会所有の物だと今日の時点で認められております。一体何にお使いになられていたのか⋯⋯お教え頂ければ恐縮ですわ」
「何のことを言っておるのか⋯⋯教会がそのような危険な薬物を所持していたなどと言いがかりも甚だしい!」
「先ほど亡くなられた当代の聖女様。長年の激務だけであのようなお姿になられたのですかしら?」
「どう言う意味だ!?」
「手足が震え虚な目は人と視点が合わず、宝物を身につける際もまるで操り人形のようでした。それなのに祝詞を唱えるお声ははっきりとしておいででした。
本当に、激務のせいや神力に耐えられなかったなどと言う理由で亡くなられたのですか? 今後の聖女様の為に詳しくお調べになられた方が良いのではありませんか」
「⋯⋯」
「それと、わたくしから謝罪しなくてはいけないかもと思っていることがございますの。
実は木箱に入っていたものの中でわたくしが持ったままお返ししていない物が一つありましたの。
資料にも載っておりませんし間違って紛れ込んだものかもしれないなぁと思って別にしており⋯⋯そのまますっかり忘れて。
この鏡なのですが、調べた所大層古いもので教会の儀式にお使いだったのかもしれないと一応持って参りました」
「⋯⋯それは、いやそんなはずは」
「木箱に入っていた中でたった一つだけ装飾も何もないとても小さい鏡なのですけれど、以前教会から頂いた資料にも載っていませんでしたし、昨日の会議でも出て来ませんでしたでしょう?
なので関係のない物だとは思ったのですけれど、光をとてもよく反射するので、とても面白い使い方を思いついたんです」
「き、貴様⋯⋯まさか」
優雅なカーテシーでその場の騒ぎを抑え込んだのはセアラだった。
「おお、流石セアラ様! 次期聖女の自覚が既に目覚めておられたとは」
大司教はギラギラと輝く目で皇太子と側近達を威圧しながらセアラを神殿の中心に跪かせた。
神官達の手を借りて因縁のティアラやブレスレットを身につけて大司教から聖女の唱える祝詞を習った。
「偉大にして慈悲深き神の御前にて申し上げ奉ります。世界中の人々に神の祝福を⋯⋯帝国と王国の未来永劫続く和平を」
セアラが勝手に内容を変えた祝詞に大司教が怒鳴り声を上げようとした時、セアラの手元から眩いばかりの光が広がり、その一筋が神の像の額に当たった。
「なんと、伝説の通りの光が!」
「本物の聖女様だ!!」
セアラに向かって頭を垂れる神官達と信者達。
「セアラ様、我が聖女様⋯⋯ワシの目に狂いはなかった⋯⋯」
「儀式は失敗すると言っていったではないか⋯⋯だから準備も既に終わらせて」
マドナーヤク・ダイヤモンドのついたバクルスを持ち小走りにやって来た大司教がセアラの前で跪いた。
「この貴石を手に⋯⋯世界の全てを我が手にと神に誓うのです。さあ、早く!!」
「わたくしが真の聖女かどうかどうしてわかりますの?」
「何を仰せに! 先程の光はまさに聖女の証でございます。宝物が奪われてから300年⋯⋯漸く現れた神の啓示の御印でございます」
「まさか! 何かの間違いですわ」
「いや、わしの目に狂いはない。イーバリス教会大司教として宣言致しますぞ。聖女の光を宿したセアラ様こそが真の聖女!」
(確約、いただきました)
「アリエノール様、宜しければ試してご覧になられますか?」
「わたくしが?」
「はい、皇太子殿下はアリエノール様が新聖女になられることをお望みでいらっしゃいますし、試してみられては如何かと」
セアラ達に見つめられた皇太子がガクガクと首を縦に振った。
「そう、是非とも試してもらいたい。もしもの時は二人聖女としても構わんのだし」
「馬鹿な事を申すな、聖女は当代に一人と決まっておるわ!!」
言葉も乱れた大司教が皇太子に掴みかかり護衛と神官を巻き込んで乱闘になった。
パンパン⋯⋯。
「神聖な神殿と伺っておりましたのに、争いはお辞めになられた方が宜しいかと存じます」
大きな音で手を叩いたセアラがティアラをアリエノールに手渡しブレスレットも外し王女の腕に嵌めた。簡単な説明を聞いたアリエノールが跪く。
鼻で笑う大司教と期待に満ちた顔の皇太子の前でアリエノールも煌びやかな光を発した。
「おお、アリエノール王女も聖女の光を!!」
無表情のセアラとアリエノールは大司教達の驚きの顔を無視したまま手近にいた女性全てで次々に儀式を行なっていく。ウルリカ、イリス、メアリーアン。アリエノールやウルリカの専属侍女も⋯⋯。
「どう言うことだ!? 宝物があれば誰でも聖女になれると言うことか?」
「わ、私もやる! だって私が次期聖女だったんだもの!!」
エディスが神殿の中に駆け込んで来た。ティアラやブレスレットを身につけネックレスや指輪をもぎ取り跪く。
「⋯⋯なんで⋯⋯何で光らないの!? 使用人でさえ出来たのに!!」
セアラが呆然としているエディスからティアラとブレスレットを外して⋯⋯リチャードにつけた。
「な、何をしておる! 王子は男ではないか!!」
茶目っ気たっぷりに笑ったセアラがリチャードの手を引いて神殿中央に跪かせる。
「さあ、祝詞を」
「偉大にして慈悲深き神の御前にて申し上げ奉ります。王国に未来永劫続く平和を。帝国との間に愚かな戦など起こりませんよう願います」
「おお!! 光ったぞおー!」
入り口にいた信者が大声で叫び神殿の外へと伝わっていく。
「誰でも光るのか!?」
「次期聖女は光らなかったそうだぞ」
「王国の者全員が光らせたんだそうだ」
驚愕の顔で床に座り込む大司教と事態を収拾できないで青褪めた皇太子の周りでは指示を待つ神官や側近達がオロオロしていた。
「どういたしますか?」
「開戦は?」
「皇帝は合図をお待ちです。儀式は失敗として良いのでしょうか?」
今頃は開戦のための合図が届くのを待っているはずの皇帝や軍隊はウズウズとしている頃だろう。
「ぎ、儀式は⋯⋯」
「儀式が失敗したと言う証明は出来ますでしょうか? わたくし達は皆様が聖女の光を見たとはっきりと口にされるのを耳にいたしました。入り口近くにおられる信者の方々も目にしておられ、その様子は外におられる信者の方達に伝わっていることでしょう。
この状況で『儀式が失敗した、その責めを王国取らせなければならない』などとお考えになられるはずはないと信じておりますが⋯⋯いかがなものでしょうか?」
「⋯⋯イカサマだ。王国はイカサマで帝国とイーバリス教会を愚弄した。それを理由として」
「開戦ですか? 帝国は随分と弱い理由で他国を侵略なさるのですね。ならば、イカサマだと証明していただきましょう。その上で昔は真に聖女が神の啓示を受けていたと証明してくださいませ。
数年前までは不定期であっても神の啓示があったと聞き及んでおります。それが真に神の啓示によるものであったと証明してくださいませ」
「セアラ殿は我が教団が嘘を伝えていたと申すのか?」
「まさか、そのような事は申しません。神の啓示かイカサマなのかわたくしには判別がつきませんもの」
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「ただ、気になっている事はございますの⋯⋯襲撃の際教会から奪われたとされているものの中に強い幻覚を見せる薬品が複数ありましたでしょう? それが教会所有の物だと今日の時点で認められております。一体何にお使いになられていたのか⋯⋯お教え頂ければ恐縮ですわ」
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「⋯⋯それは、いやそんなはずは」
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