【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

との

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4.ブチギレました

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「ミリーの我儘を許していつも私に押し付けるのね。双子だからってもう我慢出来ない!」

「旅先で何を言ってるんだ? 癇癪を起こすなんて小さな子供じゃあるまいし」

「そうよ、我儘を言ってるのはエリーじゃない。お父様もお母様もお兄様もみんな呆れてるわよ。もちろん私だって」


「わかりました」

 エリーの言葉に安堵した家族を無視して自分の鞄を持ったエリーは部屋を出て行こうとした。

「エリー、待ちなさい。どこへ行くんだ!」

「お父様、エリーの事なんて放っておけば? どこにも行くとこなんてないんだし。でも鞄は置いてきなさいよ、足りないものがあったら困るんだからー」




 鞄を抱えたエリーは真っ直ぐ教会に向けて歩いて行った。

 教会の正面扉を開けると狭い前室があり司祭が声をかけて来た。

「大きな荷物を抱えて、今日はどうされましたか?」

「児童を虐待する家族から逃げ出して参りました。親戚に連絡がつくまで保護して頂きたいのですが可能でしょうか?」

 驚きで目を丸くした司祭がエリーを上から下まで何度も見直した。

「お話を伺いますのでお入り下さい」


 司祭に連れられて入り口を入るとそこは広々とした聖堂で、正面に十字架の掲げられた祭壇があった。
 両側には火が灯された蝋燭があり、数人の信者が椅子に腰掛け祈りを捧げているように見受けられた。

 入り口横の水盤に入っている聖水に指先を浸し十字を切る。
 
 司祭の後をついて聖堂の左端を進み、途中のドアから入った先にある応接室に案内された。
 エリーは司祭の後に続き応接室に入って行った。

 鞄を置き座り心地の良いソファに腰掛けると助祭が温かい紅茶と一緒に甘いお茶菓子と小粒のチョコレートを運んできた。


 司祭に勧められた紅茶は濃い茶褐色で芳醇な香りと強いコク。

「アッサムティーの・・ファーストフラッシュでしょうか?」

「幼いと言うと失礼かな? お若いのに良くお分かりですね。ミルクをお持ちしますか?」

「いえ、このままで大丈夫です。
父方のお祖母様と叔母様が色々なお茶を集めておられて、かなり鍛えて頂きました」

 エリーの言葉に司祭が小さく笑みを溢した。


「さて本題に入りましょう。児童虐待といいますと?」


「私はコーンウォリス伯爵家エリー・コーンウォリスと申します。王都から家族で今日レバントに観光に参りました」


 双子の妹の希望で急遽旅行が決まりレバントへやって来たが、前もって予約をしていなかったが辛うじて二人部屋が2つ取れた事とその後の顛末を話した。

「今回だけであれば単なる家族の内輪揉めなのですが今までも同じような事がありすぎて7歳から3年間お祖母様の家におりました」


 エリーとミリーは生まれた時から親でさえ見分けがつかないほどそっくりだった為エリーにはエメラルドで、ミリーにはサファイアのついたブレスレットをつけて見分けていたという。

 2人が5歳くらいになると性格の違いからか母親は何となく見分けがつく様になってきたらしい。(本人談)

 ミリーは明るく元気一杯。天真爛漫でじっとしているのが苦手なタイプで、エリーはミリーに比べると大人しく晴耕雨読を良しとするタイプ。


 ミリーの物はミリーの物で、エリーの物は2人の共有の物と思っているらしくエリーの部屋には使い古したドレスや勉強道具がある程度。勉強は嫌いなので今のところ被害に遭っていない。

 新しく買ってもらったりプレゼントされた物はエリーの物も含め全てミリーの部屋にあるが、本人は借りてるだけだと言う。
 エリーが必要だと言えば返してくれるがその日のうちに必ずまた借りにきて無理矢理持って行ってしまうかエリーのいない時に持ち出して行く。


「先日は学園に入学した後二人を見分ける為につる付きの眼鏡をかけるようにと妹が言い出して、家族も賛成して毎日顔を見る度に言われ続けました。
目が悪いのなら仕方ありませんが特に必要はないので断り続けていますがこのままでは学園の中でも何を言い出すかわかりません」

「ご家族は話を聞いてくれないんですね」

「妹は甘えん坊だからとか双子なんだからとか細かいことを言い過ぎるとか言われています。
この状況は可哀想だからと祖母は私を引き取ってくれたのですが、学園に入学する前の準備があるからと一年前に両親が迎えにきました。2度と不平等な扱いはしないと言っていましたが」

 エリーは小さな肩をすくめた。


「状況は変わっていなかったんですね」

「はい、益々酷くなりました。貸してと言われるのはまだましなんです」

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