【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

との

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3.レバントでひと騒動

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 急に決めた旅だったので思い通りの宿が取れずレバントに近付いた頃には母とミリーのご機嫌は最低ランクに落ち込んでいた。

「あんな固いベッドだなんて一睡もできなかったわ。レバントと帰りは真面な宿をお願いしますね」

「私もだよー。せっかくの旅行気分が台無しになっちゃった」

「レバントには先に宿を取りに行かせたし帰りの宿の手配もしたから大丈夫だろう。
わしも背中が痛くてかなわん」

「zzzz・・」

  フレディは爆睡中だった。



 小高い山を越えると潮の香りが漂う海岸線に出た。海は夏の日差しを浴びてキラキラと輝き遠くに船影が見える。

「大きな船が見えるわ。あれがガレオン船かしら」

 エリーが窓を少し開け顔を近付けるとミリーがぐいっと腕を引っ張り窓を閉めた。

「エリー、臭いから窓開けないで」

「えっ? 海の匂いでしょ?」

「違う、海があんなに臭いわけないじゃない。海はセイレーンが住んでるんだからきっと薔薇の花のような素敵な香りがするはずだもの」


 ミリーは天下無敵のロマンチストなのでこのトンデモ発言も本気だったりする。

 ミリー同様エリーも海を見るのは初めてだが多分自分の方が正解なのではないだろうか、少なくとも薔薇の香りはしないと確信していた。


 レバントの街を囲む高い城壁が見えてきた。煉瓦を積み上げた城壁には防衛の為の側防塔やタレット小塔や壁から突き出した張り出し櫓も見受けられた。

 関所を通り過ぎ街の中央を走る石畳を走って行くと白壁にオレンジの屋根を乗せた可愛い家が並んでいた。1階は様々な商品の並んだ店で2階には出窓がありカラフルな花が飾られている。
 街は噴水のある広場を中心に放射状に道が作られ、広場の北側には街を見渡せるほどの高い塔を持った教会が建っていた。


 ひとまず宿に入って一休みすることになったが、今回の宿も母やミリーが思った程のグレードではなかったようでやや不満気味。

「まあ突然来たのだから仕方がないわね」

「申し訳ございません。何分レバントは年中商人や旅行客で賑わっているようで、かなり先まで予約でいっぱいでございまして。
ここは運良くキャンセルが出たようで」

 走り回って宿を探したらしい従者は汗を拭きながら頭を下げた。


「そうか、二部屋取れただけでも良しとしよう。ご苦労だったな」

「でも、お父様二部屋じゃ足りないわ。両方とも二人部屋だからお父様とお兄様で一部屋、お母様と私で一部屋。
エリーやメイド達はどこで寝るの? 馬車の中では流石に可哀想かしら」


「「「「・・ミリー?」」」」


 この発言には流石に両親や兄も絶句した。

「片方のお部屋には簡易ベッドを入れて3人でお泊まり頂く予定でございます」

「ああ、それならエリーもお父様達と一緒の部屋に泊まれるのね。良かったわね」


「・・ミリー、3人部屋には母上とお前達が泊まるんだ」

「お父様ったら揶揄わないで、女の子は荷物が多いのよ。簡易ベッドなんて入れたら狭くてぐっすり眠ることもできないわ」


「いい加減にして! 突然レバントに行きたいって言い出したのはミリーでしょう。どうしても3人部屋が嫌ならミリーがお父様かお兄様と二人部屋に泊まりなさい」

「・・そんなの無茶だわ。お父様達と一緒の部屋でなんて着替えとか出来ないじゃない」

「へえ、ミリーには出来ないのに同い年の私にはやれって言うの?」


「困ったわねえ、折角旅行に来たのに着いた早々喧嘩なんて」

「エリー、お前が着替える時は僕達は外にいるから」

「仕方ない、フレディが私達と一部屋にするか」

「えーっ! この歳になって両親と一緒の部屋とか無理無理無理」




「お父様、お金! お小遣いを下さいな」

 頭にきたエリーは右手を父親に突き出した。


「なっ何をするつもりだ。買い物なら後でみんなで行けば良いだろう?」

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