【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

との

文字の大きさ
44 / 48

44.アリシア仕込み

しおりを挟む
「エリーはパドラス付属学園の5年生に進級が決まっています。貴方達とは違うのよ」

「そんな学校聞いたことないわ。お兄様知ってる?」

 フレディは首をブンブンと横に振りサイラスとエドナも首を傾げている。

「パドラスは世界最高峰って言われてる大学で附属学園はその大学に入る為にと世界中の研究者達が集まる優秀な学校で生半可な成績じゃ入学も進級も出来ない」

 放心状態で使い物にならなくなっているミゲルを横目に見ながら王弟殿下が説明した。

「しかもね、エリーは成績優秀者が集められるSクラスに入学当初からずっと在籍してるのよ」

「なっ何で? エリーなんて私と一緒に勉強してただけじゃん」

「エリーはわたくしの元にいた時もしっかり勉強していましたし、サイラスが連れて帰ってからもわたくしが送った参考書で勉強していました。自分の課題さえエリーに押し付けていたミリーと差があるのは当然です」

「なっなら、私だってお祖母様から参考書貰えたらそこに行けたんじゃん」

「今からでもお勉強しますか? ロンダール学園でさえ寄付金なしでは進級出来なかったミリーに出来るなら」

「えっ? わた、私はオーエンと結婚するから自主退学しただけだもん。それに結婚するから学校には行けないし」


「無駄な話はこれくらいにして話を進めましょう。まず、伯爵家への援助金は打ち切りとします。元々援助金ではなく伯爵家への融資として契約したものですから返済の義務があります。帰ったら早々に返済計画を立てる事」

「そんな、親子で借金とか」

「貴方は私の子供ではありませんし、私の事業も資産も伯爵家とは無関係です」

「おっお祖母様、僕は・・僕は良いんですよね」

「何を言っているのかしら、先程から言っている通りフレディがわたくしの事業や資産に関わる可能性はありません。フレディのご両親と相談なさい。
そしてミリー、貴方も同様です」

「エリーは? エリーがいいなら私だって」
「そうだよ、僕だって!」

「エリーは孫と言うよりも一人の人間として気に入ってるの。勤勉・優秀・誠実。どれも貴方達にはない資質だわ。
話が逸れてしまったけどわたくしの用事はこれでおしまい。漏れはないかしら?」

 横に立っていたマイラに話を振るとマイラはしばらく考えた後首を横に振った。

「大丈夫だと思いますわ。漏れがあっても微調整できるのでは?」



「あの、婚約の件はどうなったんすか? 殿下がやばいっす」

 床に膝をつき小声でぶつぶつと呟いているミゲルは頭を抱え、来た時より一回りも二回りも小さく見えた。

「再起不能ってやつかしら」
殿下王弟と公爵もヤバいっちゃヤバいが」


 暫くミゲルを眺めていたが様子は変わらない、エリーはアリシアを見やったが肩をすくめられてしまった。マイラは口元を隠し笑いを堪えている。大きく溜息をついたエリーはミゲルに声をかけた。

「ミゲル皇太子殿下。今後どうされたいですか?」

「僕、私はエリーと。違う、エリーしか妃にしたくないんだ。ずっとエリーに会いたかった。本当はもっと早く迎えに行きたかったし手紙も書けたのに」

 今回はエリーの頼みでサイラスの所へ結婚の申込みに行ったミゲル。ミリー達への仕返しの手伝いができで良かったとホッとしていたら・・。
 俯いたままだったミゲルが顔を上げると目の縁が真っ赤になっている。

「ほんとにごめん」

「だったら一度申し込んでみられます? まだ何もお聞きしてませんし」

「僕の妃になって下さい。二度と寂しい思いはさせないから一緒に灯台を見に行ってガレオン船に乗ろう」

 ミゲルは二人の約束をちゃんと覚えていた。

「私はあと2年学園に通わなくてはいけません。その間にお手紙を書いたり時間の合う時はお会いしたりからやり直しと言うのはどうですか?」

「うん、是非。今度は手紙も書くし時間を作って会いに行く。婚約者になってくれる?」

「お互いに婚約者候補と言うのは如何ですか?」

「?」

「私は皇太子様の婚約者候補で、ミゲル様は私の婚約者候補。どちらも対等でどちらからも辞退できます。婚約者でも良いですけど条件は同じです。立場の違いはあっても婚約破棄できる権利は同等」

「ぶっ!」

「シリル、お前良いとこで笑うんじゃねえ」
「だってぇミゲルったら完全に尻に敷かれてるんだもん」

「そうだね。是非そうしたい。必ずエリーに認められる男になる」

「凄えな、アリシア様仕込みか?」

 モブレー公爵が呟き全員が吹き出した。



「巫山戯るな、エリーの勝手にはさせんぞ! エリーと結婚したいなら婚約破棄の慰謝料を払え! そうしたら結婚させてやる」

 ヤケクソになったサイラスが叫んだ。

「どの婚約のことを言ってるのかしら?」

 再びアリシアの冷たい声が響いた。

しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」それが妹の口癖でした、が……

四季
恋愛
「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」 それが妹の口癖でした。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

処理中です...