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36.王妃の想い 二
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民を苦しめながら散財を続け国を疲弊させていく国王とそれを見習う王子。親子の絆は捨て民を救い国王を失脚させる証拠集めに奔走した。
国王と宰相は税を払えなくなった民を奴隷として他国に売り払おうと画策しているが、メルバーグ王国からの資金援助を失いたくない為王妃には内密に行動しているつもりらしい。
先日内密に交わされた売買契約書を王妃が手に入れた直後にリアムと共に里帰りするよう指示された。
(とうとうその時が来た)
前回とは違い何人もの大人達がロクサーナを守ろうと奮闘している。リアムも予想通りロクサーナに夢中になっているようで嬉しそうに手を赤く腫らしている。
(全てを終わらせるわ。準備はできてるから)
✳︎✳︎✳︎✳︎ 元王妃の追憶 完 ✳︎✳︎✳︎✳︎
メリッサ達が処刑された後離宮に留まっていた元王妃の元にやって来たチャールズは頭を下げた。
「ありがとうございました」
「・・何に対してお礼を言われてるのかわからないわ」
チャールズの顔色は青褪め以前より一回り小さくなったように見えた。
「ロクサーナの時が戻りやり直しをできたのは恐らくミリアーナ様のお力だったのではないかと思っています。
それ以外にもロクサーナの事を心から気に留め守ってくださっていた事も。
ロクサーナに起きた全てのことは私の愚かさから起きた事です。私は最低の父親でした」
「・・ロクサーナは何と?」
「何も・・お前のせいだと罵ってくれればと願っていますが」
「そうね、そうなればあなたの心は少しは救われるのでしょうね」
チャールズを許せないミリアーナは冷たく言い放った。
「本当なら私も彼らと一緒に処刑されるべきでした」
膝の上で両手を握りしめたチャールズは俯いたまま肩を震わせている。
「ロクサーナはわたくしと一緒にメルバーグへ来てくれると言ってくれたの。
向こうで学園に編入して普通の暮らしをさせてあげたいと思っていたんだけど、商会や鉱山の事は既に一部の貴族に知られてるみたいだから気をつけなくては」
「ロクサーナの事、どうか宜しくお願いします」
「あなたはこれからどうするつもり?」
「私は爵位を返上して鉱山で一鉱夫として働こうと思います」
「鉱山採掘権者と言う事? まさか坑道に潜るのではないでしょう?」
裕福な貴族令息として生まれ一人で着替えたこともない男が、最も過酷だと言われている鉱夫になると言う。
「私がしてきた事は育児放棄です。そのせいでメリッサ達の悪意に気付けなかった。あの二人をロクサーナに近付けたのも婚約破棄させなかったのも、何も考えていなかった私の責任です。
商会の名前がアニーだと知った時になって漸く気付いたんです。アナベルを失って辛かったのは自分だけじゃなかったと、一番辛い思いをしたのは母を知らずに育ち父に見捨てられたロクサーナだった。
その程度の事さえ気付いていませんでした」
アナベルが親しい者達からアニーと呼ばれていたと旧ロクサーナに教えたのはミリアーナだった。
王宮で嬉しそうに頬を染めゴーフルを頬張るロクサーナは亡くなった母親の事を何も知らなかった。
無表情が定番の貴族令嬢のトップにいながら、アナベルは屈託のない笑顔を見せ友人の悩みに共に涙を流した。汚れる事を厭わず子供達と走り回り、溜息を吐く侍女に叱られては小さくなっていた姿を思い出す。
『刺繍するのは好きだけどじっと座って刺繍をするよりもパンを焼いて配る方が絶対いいと思うの。
それにね、平民の子達が字や計算を学ぶ場所を作りたいの』
堂々と自分の考えを発するアナベルの言葉は、定められた枠の中だけで鬱々と生きてきたミリアーナの目を開かせてくれた。
『お母様に会いたくなったら鏡を覗いてご覧なさい。貴方はお母様にそっくりなのよ』
目を大きく見開きミリアーナを見つめたロクサーナが満面の笑みを浮かべた。
『お父様も喜んでくださるでしょうか?』
ミリアーナは項垂れて黙り込んでいるチャールズを見つめぽつりと呟いた。
「・・本当はね、アナベルが亡くなる前に巻き戻して欲しいってお願いしたの」
肩を揺らしたチャールズが顔を覆って嗚咽を漏らした。
国王と宰相は税を払えなくなった民を奴隷として他国に売り払おうと画策しているが、メルバーグ王国からの資金援助を失いたくない為王妃には内密に行動しているつもりらしい。
先日内密に交わされた売買契約書を王妃が手に入れた直後にリアムと共に里帰りするよう指示された。
(とうとうその時が来た)
前回とは違い何人もの大人達がロクサーナを守ろうと奮闘している。リアムも予想通りロクサーナに夢中になっているようで嬉しそうに手を赤く腫らしている。
(全てを終わらせるわ。準備はできてるから)
✳︎✳︎✳︎✳︎ 元王妃の追憶 完 ✳︎✳︎✳︎✳︎
メリッサ達が処刑された後離宮に留まっていた元王妃の元にやって来たチャールズは頭を下げた。
「ありがとうございました」
「・・何に対してお礼を言われてるのかわからないわ」
チャールズの顔色は青褪め以前より一回り小さくなったように見えた。
「ロクサーナの時が戻りやり直しをできたのは恐らくミリアーナ様のお力だったのではないかと思っています。
それ以外にもロクサーナの事を心から気に留め守ってくださっていた事も。
ロクサーナに起きた全てのことは私の愚かさから起きた事です。私は最低の父親でした」
「・・ロクサーナは何と?」
「何も・・お前のせいだと罵ってくれればと願っていますが」
「そうね、そうなればあなたの心は少しは救われるのでしょうね」
チャールズを許せないミリアーナは冷たく言い放った。
「本当なら私も彼らと一緒に処刑されるべきでした」
膝の上で両手を握りしめたチャールズは俯いたまま肩を震わせている。
「ロクサーナはわたくしと一緒にメルバーグへ来てくれると言ってくれたの。
向こうで学園に編入して普通の暮らしをさせてあげたいと思っていたんだけど、商会や鉱山の事は既に一部の貴族に知られてるみたいだから気をつけなくては」
「ロクサーナの事、どうか宜しくお願いします」
「あなたはこれからどうするつもり?」
「私は爵位を返上して鉱山で一鉱夫として働こうと思います」
「鉱山採掘権者と言う事? まさか坑道に潜るのではないでしょう?」
裕福な貴族令息として生まれ一人で着替えたこともない男が、最も過酷だと言われている鉱夫になると言う。
「私がしてきた事は育児放棄です。そのせいでメリッサ達の悪意に気付けなかった。あの二人をロクサーナに近付けたのも婚約破棄させなかったのも、何も考えていなかった私の責任です。
商会の名前がアニーだと知った時になって漸く気付いたんです。アナベルを失って辛かったのは自分だけじゃなかったと、一番辛い思いをしたのは母を知らずに育ち父に見捨てられたロクサーナだった。
その程度の事さえ気付いていませんでした」
アナベルが親しい者達からアニーと呼ばれていたと旧ロクサーナに教えたのはミリアーナだった。
王宮で嬉しそうに頬を染めゴーフルを頬張るロクサーナは亡くなった母親の事を何も知らなかった。
無表情が定番の貴族令嬢のトップにいながら、アナベルは屈託のない笑顔を見せ友人の悩みに共に涙を流した。汚れる事を厭わず子供達と走り回り、溜息を吐く侍女に叱られては小さくなっていた姿を思い出す。
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堂々と自分の考えを発するアナベルの言葉は、定められた枠の中だけで鬱々と生きてきたミリアーナの目を開かせてくれた。
『お母様に会いたくなったら鏡を覗いてご覧なさい。貴方はお母様にそっくりなのよ』
目を大きく見開きミリアーナを見つめたロクサーナが満面の笑みを浮かべた。
『お父様も喜んでくださるでしょうか?』
ミリアーナは項垂れて黙り込んでいるチャールズを見つめぽつりと呟いた。
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