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兄妹の過去
9.危険な依頼
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階段を上がり、ギルマスの部屋に入ると渋い顔をしたギルマスと一人の紳士が並んでソファに座っていた。
ペコリと頭を下げると、ギルマスが「座ってくれ」と言いながら、一枚の依頼書を手渡してきた。
「そいつは森の結構奥にしかいねえ。一人じゃ厳しい。受けるんならパーティーを組め」
「俺はソロでしかやらないんで、他の人に回して下さい」
依頼書をテーブルに置き席を立ちかけると、
「私はウォーカー君にお願いしたいと思っています」
ギルマスの隣に座っている紳士が口を開いた。
豊かな銀髪を丁寧に撫で付け仕立ての良いお仕着せを着ている。
「私はある方の下で執事をしております、リチャードと申します」
「ここには他にも冒険者が沢山います。俺でなくても良いと思います」
「お前は腕も確かだが、持って帰る素材の質がいい。十三歳のガキのくせによ」
「・・」
「オークジェネラルの強さは単体でAランク。しかもゾロゾロ手下を従えていやがる。本体に傷を付けずに持って帰れるのはお前くらいなもんだろう」
「アイテムバックをお貸しします。如何でしょうか?」
「・・」
(アイテムバック・・見てみたい。どうやって作るんだ?)
「この依頼を成功させりゃお前はAランクだ。どうする?」
「・・やります。但しパーティーは組みません」
「お前なぁ、パーティーも経験しとけ。これからはレイドとかに参加することも出てくるだろうし、今のうちにぼっちな性格を何とかするべきだとおじちゃんは思うぞ?」
「オークジェネラルなら倒した事ありますから」
「「はあ?」」
「流石に本体に傷は付きましたけど。
それからパーティーはいずれ組むつもりですから」
その後、ウォーカーはオークジェネラルの単独討伐を成功させAランクに昇格。
アッシュフォールの町から姿を消した。
「ミリア、これやっときな」
「はい、バレリーさん」
バレリーは村で唯一の雑貨を取り扱う商店のおかみさん。
一年前に別の村からやってきて夫婦で店を開いたが、ミリアが字が読めることを知ったバレリーに気に入られ手伝いをすることになった。
扱っているのは、傷薬や回復薬・塩や香辛料・干した肉と塩漬けの魚など。
「うちで扱ってる物はどれもここ以外じゃ手に入らないからね。丁寧に扱うんだよ」
「はい」
仕事が終わりその日の給料の銅貨を握りしめて孤児院への道を急ぐ。
(兄ちゃん、今日も仕事終わったよ)
「ミリアー、おかえりー」
元気な声が聞こえてきた。同じ孤児院に住んでいるマックスが走ってきた。
マックスはウォーカーと丁度入れ替わりに孤児院に来た少年で、鍛冶屋の見習いをしている。
二人並んで孤児院へ向けて歩いて行く。
「いやー、疲れたー。おっさん、人使い荒いのなんのって。
ミリアは今日もバレリーさんとこだろ?」
「うん、今日は荷馬車が来た」
「そりゃ忙しかったな」
「うーん、そうでもないよ。もう慣れたし」
マックスと歩いていると、以前ウォーカーが襲われかけた杣道にさしかかった。
ミリアはその時の事を覚えていないが、ウォーカーが何度か話してくれたことがある
(兄ちゃん・・)
『ミリアは兄ちゃんのたった一人の家族で命の恩人だからな』
(三年って長いよ)
ミリアがぼうっと考え事をしながら歩いていると、木の棒でバシバシ周りの木を叩いていたマックスが話しはじめた。
「ミリア、俺さぁいつか自分の工房作ってすっごい武器とか防具とか作るんだ」
「農具は作んないの?」
「うーん、伝説の武器とかのがかっこよくね? ミリアの兄ちゃん冒険者になったんだろ? 武器は何使ってんの?」
「分かんない、連絡ないから」
「マジで? 一回もないの? まさかだけど・・」
「来年迎えにきてくれる! 約束したもん。兄ちゃんとの約束ちゃんと守ってるから私が十一歳になったら迎えに来てくれるって!」
「ごっごめん。そうだよな、きっと迎えにきてくれるよ」
(冒険者って死亡率高いしな)
もしかしたらミリアの兄ちゃんは既に亡くなってしまったのではないかと思ったマックスは、『俺が鍛冶屋になってミリアを守る!』と心に決めた。
翌日、仕事が休みのミリアはシスター達に内緒で山に来ていた。
(今日はアルカンナとジオウが欲しいので宜しくね)
ミリアは誰にともなく心の中で話しかける。そうする事で何故か目的の薬草に辿り着けるのだ。
アルカンナは解毒・ジオウは止血の効果があり乾燥させてすり潰し、粉にした状態で保存している。
(冒険者って怪我とか多そうだもんね)
この二年で薬草探しの腕は格段に上がった。
稀に野生動物に遭遇することもあるが、殆どの動物はミリアを見ると逃げて行くし、逃げない動物は水の玉で追い払っている。
それでも逃げない動物でも、ミリアが火の玉を出すと必ず逃げて行く。
殆どの薬草の作り方は覚えたし、内緒で試して効果も確認済み。
自作の壺には沢山の薬草が集まった。
(早く一年たたないかな?)
(珍しい薬も出来てるから兄ちゃんきっと驚くよ)
この薬がミリア達兄妹の運命を変えていく事になると気付いていないミリアだった。
ペコリと頭を下げると、ギルマスが「座ってくれ」と言いながら、一枚の依頼書を手渡してきた。
「そいつは森の結構奥にしかいねえ。一人じゃ厳しい。受けるんならパーティーを組め」
「俺はソロでしかやらないんで、他の人に回して下さい」
依頼書をテーブルに置き席を立ちかけると、
「私はウォーカー君にお願いしたいと思っています」
ギルマスの隣に座っている紳士が口を開いた。
豊かな銀髪を丁寧に撫で付け仕立ての良いお仕着せを着ている。
「私はある方の下で執事をしております、リチャードと申します」
「ここには他にも冒険者が沢山います。俺でなくても良いと思います」
「お前は腕も確かだが、持って帰る素材の質がいい。十三歳のガキのくせによ」
「・・」
「オークジェネラルの強さは単体でAランク。しかもゾロゾロ手下を従えていやがる。本体に傷を付けずに持って帰れるのはお前くらいなもんだろう」
「アイテムバックをお貸しします。如何でしょうか?」
「・・」
(アイテムバック・・見てみたい。どうやって作るんだ?)
「この依頼を成功させりゃお前はAランクだ。どうする?」
「・・やります。但しパーティーは組みません」
「お前なぁ、パーティーも経験しとけ。これからはレイドとかに参加することも出てくるだろうし、今のうちにぼっちな性格を何とかするべきだとおじちゃんは思うぞ?」
「オークジェネラルなら倒した事ありますから」
「「はあ?」」
「流石に本体に傷は付きましたけど。
それからパーティーはいずれ組むつもりですから」
その後、ウォーカーはオークジェネラルの単独討伐を成功させAランクに昇格。
アッシュフォールの町から姿を消した。
「ミリア、これやっときな」
「はい、バレリーさん」
バレリーは村で唯一の雑貨を取り扱う商店のおかみさん。
一年前に別の村からやってきて夫婦で店を開いたが、ミリアが字が読めることを知ったバレリーに気に入られ手伝いをすることになった。
扱っているのは、傷薬や回復薬・塩や香辛料・干した肉と塩漬けの魚など。
「うちで扱ってる物はどれもここ以外じゃ手に入らないからね。丁寧に扱うんだよ」
「はい」
仕事が終わりその日の給料の銅貨を握りしめて孤児院への道を急ぐ。
(兄ちゃん、今日も仕事終わったよ)
「ミリアー、おかえりー」
元気な声が聞こえてきた。同じ孤児院に住んでいるマックスが走ってきた。
マックスはウォーカーと丁度入れ替わりに孤児院に来た少年で、鍛冶屋の見習いをしている。
二人並んで孤児院へ向けて歩いて行く。
「いやー、疲れたー。おっさん、人使い荒いのなんのって。
ミリアは今日もバレリーさんとこだろ?」
「うん、今日は荷馬車が来た」
「そりゃ忙しかったな」
「うーん、そうでもないよ。もう慣れたし」
マックスと歩いていると、以前ウォーカーが襲われかけた杣道にさしかかった。
ミリアはその時の事を覚えていないが、ウォーカーが何度か話してくれたことがある
(兄ちゃん・・)
『ミリアは兄ちゃんのたった一人の家族で命の恩人だからな』
(三年って長いよ)
ミリアがぼうっと考え事をしながら歩いていると、木の棒でバシバシ周りの木を叩いていたマックスが話しはじめた。
「ミリア、俺さぁいつか自分の工房作ってすっごい武器とか防具とか作るんだ」
「農具は作んないの?」
「うーん、伝説の武器とかのがかっこよくね? ミリアの兄ちゃん冒険者になったんだろ? 武器は何使ってんの?」
「分かんない、連絡ないから」
「マジで? 一回もないの? まさかだけど・・」
「来年迎えにきてくれる! 約束したもん。兄ちゃんとの約束ちゃんと守ってるから私が十一歳になったら迎えに来てくれるって!」
「ごっごめん。そうだよな、きっと迎えにきてくれるよ」
(冒険者って死亡率高いしな)
もしかしたらミリアの兄ちゃんは既に亡くなってしまったのではないかと思ったマックスは、『俺が鍛冶屋になってミリアを守る!』と心に決めた。
翌日、仕事が休みのミリアはシスター達に内緒で山に来ていた。
(今日はアルカンナとジオウが欲しいので宜しくね)
ミリアは誰にともなく心の中で話しかける。そうする事で何故か目的の薬草に辿り着けるのだ。
アルカンナは解毒・ジオウは止血の効果があり乾燥させてすり潰し、粉にした状態で保存している。
(冒険者って怪我とか多そうだもんね)
この二年で薬草探しの腕は格段に上がった。
稀に野生動物に遭遇することもあるが、殆どの動物はミリアを見ると逃げて行くし、逃げない動物は水の玉で追い払っている。
それでも逃げない動物でも、ミリアが火の玉を出すと必ず逃げて行く。
殆どの薬草の作り方は覚えたし、内緒で試して効果も確認済み。
自作の壺には沢山の薬草が集まった。
(早く一年たたないかな?)
(珍しい薬も出来てるから兄ちゃんきっと驚くよ)
この薬がミリア達兄妹の運命を変えていく事になると気付いていないミリアだった。
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