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ハーミット王国、ドワーフの里へ
23.おやっさんのロマンが
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「すみません! 申し遅れました。ギルドからノッカーの件でご依頼されたと聞き伺いました、ミイと申します」
「は?」「ミイ?」
マックスが顔色を変えた。
「いやー、すまねえなぁ。てっきりこいつが女の子連れ込んだのかと」
「こちらこそ挨拶もせず座り込んでしまって」
「しっかし、こんなちびっこいねーちゃんがねぇ」
(ドワーフにちびっこいって言われると、なんかすっごいモヤモヤする)
「あんたがノッカーを見つけられるってか?」
「出来るかどうか分からないのですが試してみたいんです。
お話をお伺いできますか?」
「はあ、だよな。精霊使いなんてSランクのアレンしか聞いことねえもんなあ。
俺っちが武器やるっつうたら来ねえかなあ」
「おやっさん」
「まあええ、試してみる分には損はねえしよ」
ノッカーは鉱山に棲み鉱夫と同じ服装をしている悪戯好きな妖精。
ドワーフ達が穴を掘っている時、「コンコン」と岩肌を叩き、ドワーフ達に良質の鉱脈や危険を知らせてくれるのでノッカーと名前がついた。
採掘した鉱石の「10分の1」を分け前として渡し、機嫌のいい時や気前の良い者の前には顔を見せてくれることもある。
ノッカーとの約束は、
・家を探さない
・坑道の中では怒鳴り声を上げない
・口笛を吹かない
・十字を切らない
質の良い鉱脈を教えてくれる彼らに対し敬意を表して、ドワーフは小休止の際には彼らのために席を開けていた。
「ところがこのルールを破った馬鹿野郎がいてよ、鉱山の中で喧嘩をおっぱじめやがった。
それ以来ノッカーの気配がしなくなっちまった。
お陰でクズ鉱石しか見つけられやしねえ。
ドワーフが石を手に入れられなきゃ生きてけねえ」
「その鉱山ってここから近いんですか?」
「いや、ドワーフの里だから結構距離がある。ドワーフ以外の奴には行き着けねえしな」
「ではガンツさんも同行して下さるのですか?」
「おう、それしかねえな」
それから準備をはじめた。ミリアは殆どの荷物(野営の道具)を持っていたが、足りない食料や防寒着の準備を行った。
何でも途中雪山を通過するらしい。
二日後、約束の時間にガンツの工房を訪ねると玄関に巨大なリュックが置いてあり、斧を持ったガンツと剣を下げたマックスが待っていた。
「荷物はこれだけですか?」
「おう、あんたの荷物は外か?」
「いえ、アイテムバックがあるので。このリックも入れちゃって良いですか?」
「マジか! そりゃ助かる。あんたの武器もバックの中か?」
「武器・・は持ってないんで。でも大丈夫ですから」
ガンツが青筋を立て怒鳴り始めた。
「はあ? お前巫山戯てんのか? 武器なしでどうやって戦うんだよ!
そういやあ、あんたの職業聞いてなかったな」
「薬師です」
「・・使えねえな。ただのお荷物じゃねえか」
「あっ、戦えます。一応魔法使えるんで足手纏いにはなりませんから」
「貧乏で武器が買えなかったって事か? ちょっと待ってな」
ガンツは奥の部屋にドタドタと走って行った。
「ミリア、魔法使いなんだ」
「そんな立派なもんじゃないわ。ただの薬師なだけ」
(だからいつまで経っても兄さん達のパーティーには参加できないの)
奥からガタガタと金属の触れ合う音がして、
「おっかしいなあ、どこやったんだ? くそ!」
と、苛立ったガンツの声が聞こえてきた。
「おやっさんはあれが通常運転だから」
マックスが苦笑いを浮かべている。
「大丈夫、もうだいぶ慣れたかも」
「おー!」と言う叫び声が聞こえてきたかと思うと、ガンツが一本の杖を持って走り出してきた。
「ちびっこ用の杖を探してた。ちっこいが俺っちの作った武器だからな」
ガンツは自慢げな顔でミリアに杖を渡してくれた。
「お借りします」
ガンツとマックス、ミリア(とこっそりついて来たディー)はドワーフの里へ向けて出発した。
駅馬車に乗り森を抜け、最初の二日は宿に泊まることができた。
「あのおっちゃん、ミリアの事ちびっこって言うからなんか笑っちゃった」
「ドワーフって初めて会ったの。みんなあんな感じなのか、里に着くのがすっごく楽しみ」
夜は女子トークに花を咲かせ、着々と里に近づいている・・と、思っていた。
「こっからはずっと野宿が続くからよ。足りないもんがあったらここで買っとけよ。
マックスは食料買ってきな」
「何日くらいかかるか分からないのでアレなんですけど、食料結構準備してきたんで」
「? もしかしてあんたのアイテムバックなら腐らねえ? よっしゃあ、なら飯の心配はねえな。買うもん買ったらとっとと出発するぜ」
「なあ、これがメシか?」
「お口にあいませんか?」
「いや、焼きたての串焼きだよな。こっちは鍋ごと出てきたスープだな。
パンもホカホカで」
「おやっさん、細かい事はいいじゃないですか。ラッキーって事で」
「なんか納得いかねえ。こういう時は干し肉齧ってだな・・男のロマンが」
ガンツが一人でぶつぶつと呟いている。慣れっこになっている二人は呑気に話をはじめた。
「いつハーミットに来たの?」
「一週間くらい前かな。マックスは?」
「は?」「ミイ?」
マックスが顔色を変えた。
「いやー、すまねえなぁ。てっきりこいつが女の子連れ込んだのかと」
「こちらこそ挨拶もせず座り込んでしまって」
「しっかし、こんなちびっこいねーちゃんがねぇ」
(ドワーフにちびっこいって言われると、なんかすっごいモヤモヤする)
「あんたがノッカーを見つけられるってか?」
「出来るかどうか分からないのですが試してみたいんです。
お話をお伺いできますか?」
「はあ、だよな。精霊使いなんてSランクのアレンしか聞いことねえもんなあ。
俺っちが武器やるっつうたら来ねえかなあ」
「おやっさん」
「まあええ、試してみる分には損はねえしよ」
ノッカーは鉱山に棲み鉱夫と同じ服装をしている悪戯好きな妖精。
ドワーフ達が穴を掘っている時、「コンコン」と岩肌を叩き、ドワーフ達に良質の鉱脈や危険を知らせてくれるのでノッカーと名前がついた。
採掘した鉱石の「10分の1」を分け前として渡し、機嫌のいい時や気前の良い者の前には顔を見せてくれることもある。
ノッカーとの約束は、
・家を探さない
・坑道の中では怒鳴り声を上げない
・口笛を吹かない
・十字を切らない
質の良い鉱脈を教えてくれる彼らに対し敬意を表して、ドワーフは小休止の際には彼らのために席を開けていた。
「ところがこのルールを破った馬鹿野郎がいてよ、鉱山の中で喧嘩をおっぱじめやがった。
それ以来ノッカーの気配がしなくなっちまった。
お陰でクズ鉱石しか見つけられやしねえ。
ドワーフが石を手に入れられなきゃ生きてけねえ」
「その鉱山ってここから近いんですか?」
「いや、ドワーフの里だから結構距離がある。ドワーフ以外の奴には行き着けねえしな」
「ではガンツさんも同行して下さるのですか?」
「おう、それしかねえな」
それから準備をはじめた。ミリアは殆どの荷物(野営の道具)を持っていたが、足りない食料や防寒着の準備を行った。
何でも途中雪山を通過するらしい。
二日後、約束の時間にガンツの工房を訪ねると玄関に巨大なリュックが置いてあり、斧を持ったガンツと剣を下げたマックスが待っていた。
「荷物はこれだけですか?」
「おう、あんたの荷物は外か?」
「いえ、アイテムバックがあるので。このリックも入れちゃって良いですか?」
「マジか! そりゃ助かる。あんたの武器もバックの中か?」
「武器・・は持ってないんで。でも大丈夫ですから」
ガンツが青筋を立て怒鳴り始めた。
「はあ? お前巫山戯てんのか? 武器なしでどうやって戦うんだよ!
そういやあ、あんたの職業聞いてなかったな」
「薬師です」
「・・使えねえな。ただのお荷物じゃねえか」
「あっ、戦えます。一応魔法使えるんで足手纏いにはなりませんから」
「貧乏で武器が買えなかったって事か? ちょっと待ってな」
ガンツは奥の部屋にドタドタと走って行った。
「ミリア、魔法使いなんだ」
「そんな立派なもんじゃないわ。ただの薬師なだけ」
(だからいつまで経っても兄さん達のパーティーには参加できないの)
奥からガタガタと金属の触れ合う音がして、
「おっかしいなあ、どこやったんだ? くそ!」
と、苛立ったガンツの声が聞こえてきた。
「おやっさんはあれが通常運転だから」
マックスが苦笑いを浮かべている。
「大丈夫、もうだいぶ慣れたかも」
「おー!」と言う叫び声が聞こえてきたかと思うと、ガンツが一本の杖を持って走り出してきた。
「ちびっこ用の杖を探してた。ちっこいが俺っちの作った武器だからな」
ガンツは自慢げな顔でミリアに杖を渡してくれた。
「お借りします」
ガンツとマックス、ミリア(とこっそりついて来たディー)はドワーフの里へ向けて出発した。
駅馬車に乗り森を抜け、最初の二日は宿に泊まることができた。
「あのおっちゃん、ミリアの事ちびっこって言うからなんか笑っちゃった」
「ドワーフって初めて会ったの。みんなあんな感じなのか、里に着くのがすっごく楽しみ」
夜は女子トークに花を咲かせ、着々と里に近づいている・・と、思っていた。
「こっからはずっと野宿が続くからよ。足りないもんがあったらここで買っとけよ。
マックスは食料買ってきな」
「何日くらいかかるか分からないのでアレなんですけど、食料結構準備してきたんで」
「? もしかしてあんたのアイテムバックなら腐らねえ? よっしゃあ、なら飯の心配はねえな。買うもん買ったらとっとと出発するぜ」
「なあ、これがメシか?」
「お口にあいませんか?」
「いや、焼きたての串焼きだよな。こっちは鍋ごと出てきたスープだな。
パンもホカホカで」
「おやっさん、細かい事はいいじゃないですか。ラッキーって事で」
「なんか納得いかねえ。こういう時は干し肉齧ってだな・・男のロマンが」
ガンツが一人でぶつぶつと呟いている。慣れっこになっている二人は呑気に話をはじめた。
「いつハーミットに来たの?」
「一週間くらい前かな。マックスは?」
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