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ハーミット王国、ダンジョン
57.ミスラとアータル
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ミリアが振り返るとローブを纏った白髪の男性と小柄な少年が立っていた。
くるくるとカールした真っ赤な髪に金のエンジェルリングを嵌めた赤い目と白い肌の少年は、白いローブのウエストを革紐で縛り、膝丈のブリーチを履いていた。
白髪の男性はかなり背が高くほっそりした身体を踝まであるローブで覆っている。
やや目尻の垂れた碧眼には厳しさと冷徹さが宿っているように見えた。
「ここは礼拝所だよ。戦いの場にするなんて流石悪魔だね。
考える事が下劣すぎて反吐が出る」
「何だ貴様は・・まっまさか!」
デーウが驚愕に目を見開き一歩後ろに下がった。
「大正解! 今日はミスラも一緒だからね。絶対に逃げられないよ」
「ミスラ・・まさかアータル? だって彼は伝説で、誰も見た事がないって」
「アータル、人がもうすぐここへ来る」
「うん」
アータルが頭に付けていたクワルナフを手に持ちデーウの前に進み出たが、デーウはまるで足を釘付けにされたように一歩も動けずにいた。
アータルがミリアの横でクワルナフを高く掲げると眩い光が辺り一面を埋め尽くし、炎と共にデーウに襲いかかった。
デーウが悲鳴をあげて膝をつき、光と炎に焼かれ消滅した。
アータルがクワルナフを頭に戻し、とてとてとミスラの元に戻って行った。
ミリアはミスラとアータルの前に行き膝をついた。
「司法神ミスラ様、そして勇敢で良き火の戦士アータル様。
ありがとうございました、心より感謝いたします」
「ミリアは不思議な子だね、色んな世界と繋がってる。こんな子は今まで見た事ないよ」
「・・ありがとうございます?」
「災厄の予言の軛から離れたフローズヴィトニル(フェンリル)よ。良き友を持ったな」
『ふん』
(えっ、ヴァン・・「ふん」って。えーっ)
司法神に対してそっぽを向いたヴァンにオロオロするミリア。
「あの、ごめんなさい。ヴァンは多分ちょっと吃驚『しておらぬわ! 余計な事をしおって』」
「はは、フェンリルらしくて良い」
「そうだね、しおらしくありがとうとか言われたら吃驚しちゃいそうだ」
『ミリア、人が来る。行くぞ』
「はい、それではこれで失礼いたします」
ミリアはヴァンと共に転移した・・先は、オローパスの山頂だった。
緑深い山のあちこちにはギザギザの岩肌が見えており、その中に白と金色の大聖堂が光り輝いていた。
少し広まった草地ではアイベックスが優雅に草を食んでいる。
巨大で後ろに反り返ったとても雄々しい角は、神聖で雄大な山を象徴しているかのようだった。
「素敵な場所ね。聖山の全てが一望できてる」
『犯罪者め』
「国越えのこと? そっちなら気にしてないわ。カノンが目覚める前に連れ帰ってもらえたものね」
『カノンは薬を盛られておった』
「大変、早く帰らなくちゃ。デーウの薬なんて信用できない!」
幸せそうに景色を見ながら話していたミリアが慌てて振り返った。
『中和してある』
「・・ヴァン、いつもありがとう。ヴァンがいなかったら何度も立ち往生してた」
『ふん』
ミリアとヴァンがトレントの森に帰ってくると、ミリアが引きっぱなしにしていた毛布の上にカノンが膝を抱えて座っていた。
「おはようカノン」
ミリアが声をかけるとカノンが飛びついてきた。
「ミイちゃんとヴァン、助けてくれてありがとう。にいちゃんから聞いたの」
「どこか痛いとことかない?」
「うん、大丈夫。目が覚めたらここにいてにいちゃんとディーがいたから吃驚しちゃった」
ニコニコと笑うカノンが何も覚えてないようなのでホッとした。
(悪魔に掴まれて空を運ばれたとか、恐怖だもの)
「さて、朝ごはんにしようか」
「ミイちゃんのご飯? やったー」
リンドは料理が得意ではないらしく、味付けはいつも塩ばかりらしい。
もしかしたらと思いこっそり声をかけると、案の定塩以外の調味料が何もないと言っていた。
ミリアは手持ちの中から、胡椒・ハーブ・マスタード・砂糖などを渡した。
リンドがあまりにも恐縮するので、仕事ができるようになったら返してもらうことにした。
火をおこしパンやソーセージを焼いて、チーズや野菜と一緒に乗せたオープンサンドイッチが今朝のメニュー。
料理をしながらリンドに司法神ミスラやアータルが助けに来てくれた事、カノンの飲まされていた薬はヴァンが中和しておいてくれた事、オローパスの山の頂きにヴァンが連れていってくれた事などを話した。
朝食で好評だったのは色々な素材で作られたケ・ツィアプ。
素材に使ってあるのは、魚・牡蠣・ロブスター・きのこ・フルーツなど。
ヴァンとリンドとカノンはきのこ・ディーはフルーツ・ケットシーは勿論魚。
「おいしー、初めて食べる味ばっかり」
「今はきのこの中でもマッシュルームのケ・ツィアプが流行ってるんですって」
「じゃあ、今度それをみんなで作ってみようか?」
みんな好みがバラバラで、味の品評したり味見をしたりととても楽しく食事を楽しんでいた。
「グルル」
ヴァンが突然唸り声を上げた。
くるくるとカールした真っ赤な髪に金のエンジェルリングを嵌めた赤い目と白い肌の少年は、白いローブのウエストを革紐で縛り、膝丈のブリーチを履いていた。
白髪の男性はかなり背が高くほっそりした身体を踝まであるローブで覆っている。
やや目尻の垂れた碧眼には厳しさと冷徹さが宿っているように見えた。
「ここは礼拝所だよ。戦いの場にするなんて流石悪魔だね。
考える事が下劣すぎて反吐が出る」
「何だ貴様は・・まっまさか!」
デーウが驚愕に目を見開き一歩後ろに下がった。
「大正解! 今日はミスラも一緒だからね。絶対に逃げられないよ」
「ミスラ・・まさかアータル? だって彼は伝説で、誰も見た事がないって」
「アータル、人がもうすぐここへ来る」
「うん」
アータルが頭に付けていたクワルナフを手に持ちデーウの前に進み出たが、デーウはまるで足を釘付けにされたように一歩も動けずにいた。
アータルがミリアの横でクワルナフを高く掲げると眩い光が辺り一面を埋め尽くし、炎と共にデーウに襲いかかった。
デーウが悲鳴をあげて膝をつき、光と炎に焼かれ消滅した。
アータルがクワルナフを頭に戻し、とてとてとミスラの元に戻って行った。
ミリアはミスラとアータルの前に行き膝をついた。
「司法神ミスラ様、そして勇敢で良き火の戦士アータル様。
ありがとうございました、心より感謝いたします」
「ミリアは不思議な子だね、色んな世界と繋がってる。こんな子は今まで見た事ないよ」
「・・ありがとうございます?」
「災厄の予言の軛から離れたフローズヴィトニル(フェンリル)よ。良き友を持ったな」
『ふん』
(えっ、ヴァン・・「ふん」って。えーっ)
司法神に対してそっぽを向いたヴァンにオロオロするミリア。
「あの、ごめんなさい。ヴァンは多分ちょっと吃驚『しておらぬわ! 余計な事をしおって』」
「はは、フェンリルらしくて良い」
「そうだね、しおらしくありがとうとか言われたら吃驚しちゃいそうだ」
『ミリア、人が来る。行くぞ』
「はい、それではこれで失礼いたします」
ミリアはヴァンと共に転移した・・先は、オローパスの山頂だった。
緑深い山のあちこちにはギザギザの岩肌が見えており、その中に白と金色の大聖堂が光り輝いていた。
少し広まった草地ではアイベックスが優雅に草を食んでいる。
巨大で後ろに反り返ったとても雄々しい角は、神聖で雄大な山を象徴しているかのようだった。
「素敵な場所ね。聖山の全てが一望できてる」
『犯罪者め』
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『カノンは薬を盛られておった』
「大変、早く帰らなくちゃ。デーウの薬なんて信用できない!」
幸せそうに景色を見ながら話していたミリアが慌てて振り返った。
『中和してある』
「・・ヴァン、いつもありがとう。ヴァンがいなかったら何度も立ち往生してた」
『ふん』
ミリアとヴァンがトレントの森に帰ってくると、ミリアが引きっぱなしにしていた毛布の上にカノンが膝を抱えて座っていた。
「おはようカノン」
ミリアが声をかけるとカノンが飛びついてきた。
「ミイちゃんとヴァン、助けてくれてありがとう。にいちゃんから聞いたの」
「どこか痛いとことかない?」
「うん、大丈夫。目が覚めたらここにいてにいちゃんとディーがいたから吃驚しちゃった」
ニコニコと笑うカノンが何も覚えてないようなのでホッとした。
(悪魔に掴まれて空を運ばれたとか、恐怖だもの)
「さて、朝ごはんにしようか」
「ミイちゃんのご飯? やったー」
リンドは料理が得意ではないらしく、味付けはいつも塩ばかりらしい。
もしかしたらと思いこっそり声をかけると、案の定塩以外の調味料が何もないと言っていた。
ミリアは手持ちの中から、胡椒・ハーブ・マスタード・砂糖などを渡した。
リンドがあまりにも恐縮するので、仕事ができるようになったら返してもらうことにした。
火をおこしパンやソーセージを焼いて、チーズや野菜と一緒に乗せたオープンサンドイッチが今朝のメニュー。
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