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アスカリオル帝国へ
75.えっ、エスコート?
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「大変心苦しく存じますが、私には連れがおります。その者と共に参りたいと存じます」
まるでミリアの返事を予想していたかのようにルーバン王太子が口元にうっすらと笑みを浮かべた。
帝国が準備した馬車へ向かい、ミリアとセオドラが乗り込んだ。
「おい、くそルカ! お前はこっちだ」
ウォーカーが、後方の馬車にリンドとカノンを連れて乗り込もうとしていたギルマスの腕を掴み無理矢理一台目の馬車に放り込んだ。
ギルマスが窓から顔を出して後ろを覗くとウォーカーがリンド達と一緒に馬車に乗り込むのが見えた。
「ウォーカーは何がしたいんだ?」
セオドラとギルマスが顔を見合わせると、ミリアの足元に蹲っていたヴァンが『グルル』と吠えた。
『ルカ、結界を』
「「マジかよ!」」
ガタゴトと馬車が動きはじめた。
王宮まであと少しのところでドン、ドドン! と大きな音がして馬が暴れ出しミリア達の乗った馬車が大きく傾いた。
ギルマスがミリアを抱え込み床に伏せ、セオドラが窓の端から外を伺う。
「火矢だ! まだ来る」
ドン、バリン! 馬車や窓に突き当たった火矢が結界にはじかれ石畳に落ちていく。
「方向は?」
「左、後ろはやられてない」
「くそ!」
御者が必死で馬を宥めている間に突然火矢の攻撃が止まった。
「終わった・・みてえだな。ちびすけ、大丈夫か?」
「ん、大丈夫。みんなは?」
「狙いはこの馬車だけ。アイツら狂皇の目の前でよくやるぜ」
「狂皇?」
椅子に座り直しながらミリアが尋ねた。
「おう、戦闘狂の皇帝。略して狂皇って呼ばれてる。
ヴァン、捕まえたか?」
『六人、退屈しておったでな』
王宮前に馬車が着くと既に馬車から降りたルーバン王太子達がミリア達の馬車を待っていた。
セオドラとギルマスの後から傷一つなく馬車から降りて来たミリアを見たルーバン王太子達が顔を引き攣らせた。
「お待ち頂いていたとは存じませんでした」
冷たい目をしたセオドラが先頭に立ち、ギルマスはミリアの手を腕にかけ自然にエスコートをする。
(えっ? ギルマス・・)
ギルマスの自然なエスコートと普段の言動の違いにミリアが戸惑っていると、セオドラが振り向いてニヤリと笑った。
「ルカ・アルスター侯爵子息、ミリア嬢をよろしく頼む」
「煩え、セオドラ・ミルタウン伯爵」
「二人とも貴族って事?」
「そう」「ちげえよ」
シャンデリアの輝く高い天井と壁際に飾られた大理石の彫刻の並ぶ長い廊下を延々と歩き、衛兵の守る両開きの扉の前にやって来た。
扉が開かれルーバン王太子達の後に続いてミリア達は広い謁見の間に入って行った。
少し俯き床に敷かれた絨毯を見ながら部屋の中程まで進み、カーテシーをして待つと正面の玉座から大きな声が聞こえて来た。
「なんと、其の方が噂のミリア・フォルスか! まるで幼き子のようではないか」
「恐れながら申し上げます。私は冒険者ミリア、爵位は持っておりません」
「皇帝陛下、其の事に関しましては我がローデリアとこの者の間に些か誤解が生じておりますゆえ」
「そうか、余はまあどちらでも構わぬ。それよりも黄金の林檎は持って参ったのか? ラードーンを単独討伐したと言うのは誠か?
もそっとこちらへ参れ、詳しく話が聞きたい」
テスタロッサが手に捧げ持っていた箱を侍従に手渡し、オーガスタス宰相が走り出て来て箱の中を検分しようとすると、
「良いからこちらへ、グズグズするでない!」
待ちきれなくなった皇帝が立ち上がり玉座を降りて来た。
「なんと見事な! ミリア、触れても構わぬか?」
皇帝は目を林檎に釘付けにしたまま聞いて来た。
「はい、勿論でございます」
セオドラが黄金の林檎は既に鑑定済みである事や、ラードーンの単独攻略によりミリアはSランク昇格となった事などを話した。
「うむ、当然のことであるな。ミリア見事であった」
「ありが「お待ちください、皇帝陛下! それには疑義が御座います」」
ルーバン王太子が一歩前に出て話をはじめた。
「この者は我がローデリア王国民でございますが、些か問題のある行動が多くこれより国に連れ戻り事実確認致す所存でございます。
何よりこの者はただの薬師でして、ラードーン単独攻略など不可能でございます。
Sランク認定は待たれた方が賢明かと具申いたします」
「陛下、私もこの女は毒薬好きの異常者だと聞き及んでおりますればお側近くに参られるのはお控え頂きたいと存じます」
「噂は余も聞き及んでおるが、そのような異常者には見えんが?」
「異常者とは一見真面に見えるものなのでございます」
「ルーバン王太子よ、ミリアがローデリアの第二王子を毒殺しようとしたと言うのは誠か?」
「はい、真実でございます。その場に私はおりませんでしたがこの者が調合するのを見ていた薬師がはっきりと申しておりました。
直ちに国に連れ戻りますことを「まあ、慌てるでない」」
ルーバン王太子の言葉を皇帝が遮った。
「ミリアよ、其の方毒薬を盛ろうとしたのか?」
「皇帝陛下! それは今ご説明をし「黙れ! 余はミリアに聞いておる」」
ルーバン王太子とエスメラルダが青褪めた。
「毒薬を盛ろうとした覚えはございませんが調合した薬にサルファーを使用したのは事実でございます」
「サルファー・・毒性はあるが、大したことはできまい」
「王子に毒を処方した事自体に問題があります。ですからこの者は「ルーバン、黙れと言ったのが聞こえなんだか?」」
「私の口から説明をさせて頂いても宜しいでしょうか」
まるでミリアの返事を予想していたかのようにルーバン王太子が口元にうっすらと笑みを浮かべた。
帝国が準備した馬車へ向かい、ミリアとセオドラが乗り込んだ。
「おい、くそルカ! お前はこっちだ」
ウォーカーが、後方の馬車にリンドとカノンを連れて乗り込もうとしていたギルマスの腕を掴み無理矢理一台目の馬車に放り込んだ。
ギルマスが窓から顔を出して後ろを覗くとウォーカーがリンド達と一緒に馬車に乗り込むのが見えた。
「ウォーカーは何がしたいんだ?」
セオドラとギルマスが顔を見合わせると、ミリアの足元に蹲っていたヴァンが『グルル』と吠えた。
『ルカ、結界を』
「「マジかよ!」」
ガタゴトと馬車が動きはじめた。
王宮まであと少しのところでドン、ドドン! と大きな音がして馬が暴れ出しミリア達の乗った馬車が大きく傾いた。
ギルマスがミリアを抱え込み床に伏せ、セオドラが窓の端から外を伺う。
「火矢だ! まだ来る」
ドン、バリン! 馬車や窓に突き当たった火矢が結界にはじかれ石畳に落ちていく。
「方向は?」
「左、後ろはやられてない」
「くそ!」
御者が必死で馬を宥めている間に突然火矢の攻撃が止まった。
「終わった・・みてえだな。ちびすけ、大丈夫か?」
「ん、大丈夫。みんなは?」
「狙いはこの馬車だけ。アイツら狂皇の目の前でよくやるぜ」
「狂皇?」
椅子に座り直しながらミリアが尋ねた。
「おう、戦闘狂の皇帝。略して狂皇って呼ばれてる。
ヴァン、捕まえたか?」
『六人、退屈しておったでな』
王宮前に馬車が着くと既に馬車から降りたルーバン王太子達がミリア達の馬車を待っていた。
セオドラとギルマスの後から傷一つなく馬車から降りて来たミリアを見たルーバン王太子達が顔を引き攣らせた。
「お待ち頂いていたとは存じませんでした」
冷たい目をしたセオドラが先頭に立ち、ギルマスはミリアの手を腕にかけ自然にエスコートをする。
(えっ? ギルマス・・)
ギルマスの自然なエスコートと普段の言動の違いにミリアが戸惑っていると、セオドラが振り向いてニヤリと笑った。
「ルカ・アルスター侯爵子息、ミリア嬢をよろしく頼む」
「煩え、セオドラ・ミルタウン伯爵」
「二人とも貴族って事?」
「そう」「ちげえよ」
シャンデリアの輝く高い天井と壁際に飾られた大理石の彫刻の並ぶ長い廊下を延々と歩き、衛兵の守る両開きの扉の前にやって来た。
扉が開かれルーバン王太子達の後に続いてミリア達は広い謁見の間に入って行った。
少し俯き床に敷かれた絨毯を見ながら部屋の中程まで進み、カーテシーをして待つと正面の玉座から大きな声が聞こえて来た。
「なんと、其の方が噂のミリア・フォルスか! まるで幼き子のようではないか」
「恐れながら申し上げます。私は冒険者ミリア、爵位は持っておりません」
「皇帝陛下、其の事に関しましては我がローデリアとこの者の間に些か誤解が生じておりますゆえ」
「そうか、余はまあどちらでも構わぬ。それよりも黄金の林檎は持って参ったのか? ラードーンを単独討伐したと言うのは誠か?
もそっとこちらへ参れ、詳しく話が聞きたい」
テスタロッサが手に捧げ持っていた箱を侍従に手渡し、オーガスタス宰相が走り出て来て箱の中を検分しようとすると、
「良いからこちらへ、グズグズするでない!」
待ちきれなくなった皇帝が立ち上がり玉座を降りて来た。
「なんと見事な! ミリア、触れても構わぬか?」
皇帝は目を林檎に釘付けにしたまま聞いて来た。
「はい、勿論でございます」
セオドラが黄金の林檎は既に鑑定済みである事や、ラードーンの単独攻略によりミリアはSランク昇格となった事などを話した。
「うむ、当然のことであるな。ミリア見事であった」
「ありが「お待ちください、皇帝陛下! それには疑義が御座います」」
ルーバン王太子が一歩前に出て話をはじめた。
「この者は我がローデリア王国民でございますが、些か問題のある行動が多くこれより国に連れ戻り事実確認致す所存でございます。
何よりこの者はただの薬師でして、ラードーン単独攻略など不可能でございます。
Sランク認定は待たれた方が賢明かと具申いたします」
「陛下、私もこの女は毒薬好きの異常者だと聞き及んでおりますればお側近くに参られるのはお控え頂きたいと存じます」
「噂は余も聞き及んでおるが、そのような異常者には見えんが?」
「異常者とは一見真面に見えるものなのでございます」
「ルーバン王太子よ、ミリアがローデリアの第二王子を毒殺しようとしたと言うのは誠か?」
「はい、真実でございます。その場に私はおりませんでしたがこの者が調合するのを見ていた薬師がはっきりと申しておりました。
直ちに国に連れ戻りますことを「まあ、慌てるでない」」
ルーバン王太子の言葉を皇帝が遮った。
「ミリアよ、其の方毒薬を盛ろうとしたのか?」
「皇帝陛下! それは今ご説明をし「黙れ! 余はミリアに聞いておる」」
ルーバン王太子とエスメラルダが青褪めた。
「毒薬を盛ろうとした覚えはございませんが調合した薬にサルファーを使用したのは事実でございます」
「サルファー・・毒性はあるが、大したことはできまい」
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