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アルスター侯爵家
105.全員が出揃って
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「メンバーは他にもいるんだろ?」
「はい、少し年上の女性とお会いしたことのない女性と男性が一人おられます。年上の女性は時々屋敷にいらっしゃってお父様とお仕事の話をされてるそうですが、もう一人の女性は宿からほとんどお出にならないそうです。男性の方はあちこち出歩かれているそうですが誰ともお話しされないのだそうです」
(エリッソンは一年と三ヶ月前って言ってたと思うから、こっちの方が先だったんだ)
ルカが腕を組んで首を傾げた。
「って事はエレノアの悩みはオヤジの老いらくの恋と乱行パーティーか?」
一人がけの椅子を占領してうたた寝を決め込んでいたヴァンが鼻を鳴らした。
「何だ? ヴァン、他にもあるのなら教えてくれ」
「お兄様、ワンちゃんとお話しされてるのですか?」
「えっ? いやー、助けてくれっていうくらいだしなんか他にもあるんだろ?」
「女性に夢中になっていた村の若い男性が何人か行方不明になっているんです」
エレノアは暗い顔で手にしたハンカチを捩りながら低いトーンで呟いた。
「・・オヤジが消してるんじゃないかって?」
ルカの問いかけにエレノアは俯いて黙り込んだ時ノックの音が響きメイド達がランプを持って入ってきた。窓際やテーブルの近くにランプを置き、新しい紅茶を準備し終えたメイド達が部屋を出たのを確認してルカが話を続けた。
「んー、もしそうだとしたら確かにヤバいが確証がないなら本人に問い正すのがいいと思う。だが、アイツが俺と真面に話すとは思えん」
「あの、横からすみません。村に鳥とかネズミやイタチが増えたなんて事はないですか?」
「えっ? 鳥は昔からよく見かけます。ボスデリア山が近いので色々な種類の鳥が・・そう言えば鼠や狸の被害が増えていると聞きました。後は、ブロンズトキが時々空を飛んでいるのが見られるらしいです」
ブロンズトキは内陸の沼地や湿地の多い草原に生息する全長48~65cmになるやや大型の鳥。繁殖個体は赤褐色の身体に暗緑色の翼を持ち、非繁殖個体と若年個体は暗い体色のままである。
コロニーを形成して繁殖し、水辺の樹上などに巣を作る。
「朱鷺は珍しいんですか?」
ルカとカノンはしつこくエレノアに質問しはじめたミリアを不安気に見やった。
「珍しいと思います。以前は聞いたことがなかったので」
「時々いらっしゃる年配の女性の服装とかアクセサリーなんかはどんな感じですか?」
「いつもとても素敵なドレスやアクセサリーを身につけておられるそうです。わたくしも何度か遠目にお見かけしましたが華やかでとても煌びやかなお姿でした」
青褪めたミリアの顔を見たルカとカノンは顔を見合わせ溜息をついた。
「宿から出ない女性はきっと絶世の美女ですね」
ミリアは肩を落とし、見たことがないほどどんよりとした雰囲気を醸し出している。エレノアはそれに気づかず両手を叩きにっこりと微笑んだ。
「その通りですの、よくお分かりになられましたね。他のお二人も見たことがないほど美しい方なのですが、噂ではお二人が霞んで見えるほどの美しさだとか。
宿の周りには興味を引かれた男性が何人も歩き回っておられるそうです」
「たまに来る男の人って帽子被って珍しい形の杖なんて持ってたりします?」
「はい、広めのつばの付いた帽子を常に被られていて羽のようなものがついた短い杖をお持ちです」
「・・念の為、名前確認しとく? もういいか、ヴァンにのせられた? グレーニアに釣られた私が甘かった。ハーミットでお留守番しとけば良かったかも」
とても小さな声でぶつぶつ呟くミリアの声は隣に座っているカノンにしか聞こえなかったが、意味を理解したカノンが蒼白になり慌ててルカの顔を振り返った。
『ならば、見捨てるか?』
「・・見捨てられないって知ってるくせに」
『ルカ一人では荷が重かろう』
「私にも重いよ? ディエチミーラにも来て貰えば良かったかも」
『彼奴らは別のものを探しておる』
「・・そう言うこと?」
『そう言うことじゃな』
ヴァンの念話はミリアにしか聞こえていないようでルカとカノンは不安気にミリアの言葉を聞こうと顔を覗き込み、何も知らないエレノアは首を傾げている。
「その方達のお名前ってわかります?」
本名ではないだろうと言いつつエレノアが名前を列挙した。
「お父様と親しくされている方はジュピターと名乗っておられます。年配の女性の方はアデス。パーティーを催される男性はメリクリウスで、もう一人の男性はニクスです。お会いしたことがない女性はパレスと仰るらしいです」
大きく溜息をついたミリアがルカを見上げた。
「ルカさん、2人だけで話したいんだけど」
「・・分かった。つまり、そう言うことか」
「うん、引き寄せ体質は私じゃなくてルカさんだってこと」
ぐっと返事に詰まったルカは膝に両手を突き厳しい表情でエレノアを見つめた。
「どうやらお前が連絡してきたのは正しかったらしい。ちょっとミリアと席を外すからカノンの事を頼めるか?」
不安そうなエレノアは青褪めたミリアと真剣な表情のルカを何度も見比べた。
「お聞きするべき事であればわたくしにもお聞かせ頂けませんでしょうか? どのようなお話でも構いません」
しかしなあと言いながらルカが眉間に皺を寄せた。
『いずれ話さねばなるまい』
ヴァンの声がルカとカノンにも聞こえた。
「エレノア、多分お前が想像も出来ないような恐ろしい話になると思う。途中で気絶したり取り乱したりするくらいなら聞くべきじゃない」
ルカの言葉にエレノアはひゅーっと喉を鳴らしたが首を縦に振った。
「どんな内容であっても取り乱したりしないとお約束します。侯爵領の為にもお父様の為にも」
全員が注目する中虚な目をしたミリアが口を開いた。
「・・ルシファーの副官で『怠惰』と『好色』を司るベルフェゴール」
「バージョンアップしてるぞ。マモンより強くねえか?」
「はい、少し年上の女性とお会いしたことのない女性と男性が一人おられます。年上の女性は時々屋敷にいらっしゃってお父様とお仕事の話をされてるそうですが、もう一人の女性は宿からほとんどお出にならないそうです。男性の方はあちこち出歩かれているそうですが誰ともお話しされないのだそうです」
(エリッソンは一年と三ヶ月前って言ってたと思うから、こっちの方が先だったんだ)
ルカが腕を組んで首を傾げた。
「って事はエレノアの悩みはオヤジの老いらくの恋と乱行パーティーか?」
一人がけの椅子を占領してうたた寝を決め込んでいたヴァンが鼻を鳴らした。
「何だ? ヴァン、他にもあるのなら教えてくれ」
「お兄様、ワンちゃんとお話しされてるのですか?」
「えっ? いやー、助けてくれっていうくらいだしなんか他にもあるんだろ?」
「女性に夢中になっていた村の若い男性が何人か行方不明になっているんです」
エレノアは暗い顔で手にしたハンカチを捩りながら低いトーンで呟いた。
「・・オヤジが消してるんじゃないかって?」
ルカの問いかけにエレノアは俯いて黙り込んだ時ノックの音が響きメイド達がランプを持って入ってきた。窓際やテーブルの近くにランプを置き、新しい紅茶を準備し終えたメイド達が部屋を出たのを確認してルカが話を続けた。
「んー、もしそうだとしたら確かにヤバいが確証がないなら本人に問い正すのがいいと思う。だが、アイツが俺と真面に話すとは思えん」
「あの、横からすみません。村に鳥とかネズミやイタチが増えたなんて事はないですか?」
「えっ? 鳥は昔からよく見かけます。ボスデリア山が近いので色々な種類の鳥が・・そう言えば鼠や狸の被害が増えていると聞きました。後は、ブロンズトキが時々空を飛んでいるのが見られるらしいです」
ブロンズトキは内陸の沼地や湿地の多い草原に生息する全長48~65cmになるやや大型の鳥。繁殖個体は赤褐色の身体に暗緑色の翼を持ち、非繁殖個体と若年個体は暗い体色のままである。
コロニーを形成して繁殖し、水辺の樹上などに巣を作る。
「朱鷺は珍しいんですか?」
ルカとカノンはしつこくエレノアに質問しはじめたミリアを不安気に見やった。
「珍しいと思います。以前は聞いたことがなかったので」
「時々いらっしゃる年配の女性の服装とかアクセサリーなんかはどんな感じですか?」
「いつもとても素敵なドレスやアクセサリーを身につけておられるそうです。わたくしも何度か遠目にお見かけしましたが華やかでとても煌びやかなお姿でした」
青褪めたミリアの顔を見たルカとカノンは顔を見合わせ溜息をついた。
「宿から出ない女性はきっと絶世の美女ですね」
ミリアは肩を落とし、見たことがないほどどんよりとした雰囲気を醸し出している。エレノアはそれに気づかず両手を叩きにっこりと微笑んだ。
「その通りですの、よくお分かりになられましたね。他のお二人も見たことがないほど美しい方なのですが、噂ではお二人が霞んで見えるほどの美しさだとか。
宿の周りには興味を引かれた男性が何人も歩き回っておられるそうです」
「たまに来る男の人って帽子被って珍しい形の杖なんて持ってたりします?」
「はい、広めのつばの付いた帽子を常に被られていて羽のようなものがついた短い杖をお持ちです」
「・・念の為、名前確認しとく? もういいか、ヴァンにのせられた? グレーニアに釣られた私が甘かった。ハーミットでお留守番しとけば良かったかも」
とても小さな声でぶつぶつ呟くミリアの声は隣に座っているカノンにしか聞こえなかったが、意味を理解したカノンが蒼白になり慌ててルカの顔を振り返った。
『ならば、見捨てるか?』
「・・見捨てられないって知ってるくせに」
『ルカ一人では荷が重かろう』
「私にも重いよ? ディエチミーラにも来て貰えば良かったかも」
『彼奴らは別のものを探しておる』
「・・そう言うこと?」
『そう言うことじゃな』
ヴァンの念話はミリアにしか聞こえていないようでルカとカノンは不安気にミリアの言葉を聞こうと顔を覗き込み、何も知らないエレノアは首を傾げている。
「その方達のお名前ってわかります?」
本名ではないだろうと言いつつエレノアが名前を列挙した。
「お父様と親しくされている方はジュピターと名乗っておられます。年配の女性の方はアデス。パーティーを催される男性はメリクリウスで、もう一人の男性はニクスです。お会いしたことがない女性はパレスと仰るらしいです」
大きく溜息をついたミリアがルカを見上げた。
「ルカさん、2人だけで話したいんだけど」
「・・分かった。つまり、そう言うことか」
「うん、引き寄せ体質は私じゃなくてルカさんだってこと」
ぐっと返事に詰まったルカは膝に両手を突き厳しい表情でエレノアを見つめた。
「どうやらお前が連絡してきたのは正しかったらしい。ちょっとミリアと席を外すからカノンの事を頼めるか?」
不安そうなエレノアは青褪めたミリアと真剣な表情のルカを何度も見比べた。
「お聞きするべき事であればわたくしにもお聞かせ頂けませんでしょうか? どのようなお話でも構いません」
しかしなあと言いながらルカが眉間に皺を寄せた。
『いずれ話さねばなるまい』
ヴァンの声がルカとカノンにも聞こえた。
「エレノア、多分お前が想像も出来ないような恐ろしい話になると思う。途中で気絶したり取り乱したりするくらいなら聞くべきじゃない」
ルカの言葉にエレノアはひゅーっと喉を鳴らしたが首を縦に振った。
「どんな内容であっても取り乱したりしないとお約束します。侯爵領の為にもお父様の為にも」
全員が注目する中虚な目をしたミリアが口を開いた。
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