【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

との

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ポーレット公爵

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十月

ーーーーーー

 ジファール侯爵が、アイラを迎えにやってきたが、その時になってもアイラはこれが正しい事だとは思えずにいた。

「アルフレッド様、やはり今回は止めた方が良いと思うのです」
「大丈夫ですよ。ウィルソンから聞いたと思いますが、貴族の中ではよくある事。ちょっとした余興だと思って、気楽に楽しみましょう」
「・・ですが」
「夜会に行かなかったら、私がポーレット公爵達に怒られてしまう。妖精姫をエスコートすると言ったら、たいそう喜んでおられました。ポーレット公爵はお父上とも親しくしておられたし、公爵夫人とお母上はそれ以上に仲が良かったのですよ」
「お父様達と?」
「ええ、今頃は昔話がしたくてそわそわしている事でしょう」

 アイラはジファール侯爵家の馬車に乗り、ポーレット公爵邸へ向かった。馬車の中で思案に暮れているアイラに、アルフレッドが声をかけた。

「どうされました?」
「今回王都にやって来て初めて気付いたのですが、私はお父様達のことをあまり知らなかったのだと。アルフレッド様やポーレット公爵様の事、ウィルソンの事でさえ」
「それだけお父様達に愛されていたと言う事ですよ。貴族社会なんて綺麗なのは表面だけ、裏では足の引っ張り合いばかりですからね」
「アルフレッド様は、そんな貴族の中で過ごしておられるのですよね」
「そうですね、しかも楽しんでいます」
「ウィルソンも同じ事を言っていました。アルフレッド様はこの状況を、楽しんでおられると」
「その通り、綺麗事だけではつまらない。退屈してしまうんです。今日は久しぶりに楽しめそうです」
 アルフレッドはこれから起こる事を、心から楽しみにしているかの様に微笑んでいた。


「ジョージ、久しぶりですね」
「先日の議会以来だな。あの時は随分つまらなそうにしていたが、今日はご機嫌が良さそうだ」
「勿論ですよ。何しろアイラのエスコートを仰せつかっているので」

「はじめまして、ジョージと呼んでくれるかな? 妻のミリアムだ」
「今晩は、お父様達の事は残念だったわね。とても素晴らしい方達だったのに」
「後でもう1人ゲストをお呼びしているので、楽しみにしているといい」

 ポーレット公爵への挨拶の後は、いつも通りだった。夜会が開催されてもデイビッド達は現れず、このまま何もなく終わってくれればとアイラは願っていた。
 アイラがポーレット公爵夫人との会話を楽しんでいた時、入り口の辺りが騒がしくなった。アルフレッドがアイラの隣にやってきた。

「漸く来たようだね。私か夫人の近くにいなさい。絶対に1人にならないように」

 大勢の人混みの中に、濃い紫のドレスを纏ったシンディと、濃緑のドレスのブリジットが見えた。2人の装いは今年流行のものだが、格式ある公爵家の夜会としては肌の露出が多すぎる。周りにいる夫人や令嬢達は、扇子で口元を覆い眉を顰めている。

 2人の後ろからデイビッドがやってきた。正式な燕尾服を着用し、礼儀正しく周りに挨拶をしている。ウィルソンの読み通り、評判の回復を狙っているのだろう。

「アイラ、私の大切な義娘。会えて嬉しいわ」
「アイラ様、お久しぶりです」
 シンディは大袈裟な仕草でアイラを抱きしめ、ブリジットは品のある仕草で少し足を曲げて挨拶をした。
「やあ、アイラ。今日は一段と美しいね」
 普段殆ど近寄ってこないデイビッドが、アイラの腰に手を回そうとする。

「ジファール侯爵のアルフレッド・ジファールです。こちらのご婦人方とは初めましてかな?」
「ストックトン侯爵夫人シンディと申します。これは私の娘でブリジットですの。どうぞお見知り置きを」

 ブリジットは前に進み出て、美しい所作でカーテシーをした。
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