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第二章 育ったお花から採れた種
14.次は暴馬!? マーチャント宰相の拒否感が半端ない
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「陛下、今お時間よろしいでしょうか? よろしくないですよね。出直してき「え? いや、構わんぞ?」」
毎日何度も顔を合わせているが、今日のマーチャント宰相は極度に緊張しているように見えた。
手の中の羊皮紙を見ては眉を顰め、大きく息を吸い込んでは溜め息を吐き、中々話しはじめない。
「マーチャント、何か問題でも?」
「いえ、その逆⋯⋯かもしれません。いや、問題か? 実はその、ランドルフ殿下の婚約者候「見つかったのか!?」」
マクベスが大声で叫びながら立ち上がると、ガタガタンと音を立てて椅子が倒れた。
呆然と立ち尽くすマクベスの後ろで、そっと椅子を元に戻しながら、マーチャント宰相の顔を見上げたデクスターが首を傾げ⋯⋯。
(ん? あの宰相が困ってる? あ、今度は溜め息)
「人間か!? あれの事を知っていて我慢してくれる人間がいたのか!? 生きてる人間だよな! 性別が女性なら何歳でもいいからな!!」
「その条件よりはかなりマシです。と言うよりも、条件としてはかなり良い方だとは思います」
10日前から侍従長と侍女長が、ランドルフやメアリーとジュリエッタの教育をはじめたが、惨憺たる有様になっていた。
初日、ランドルフはジュリエッタと2人で使われていない客室に鍵を閉めて立て篭もり、メアリーは手元に残っていたアクセサリーを持ち、市井に逃げ出した。
見つけ出した3人をマクベスが叱りつけたが、反省するどころか平気な顔で言い返してくる始末。
『父上、僕のことはほっといてください! 真実の愛を見つけたばかりで、勉強なんてしてる暇ないんですから』
(王太子なら愛の前に勉強ですから。by侍従長)
『陛下、わたくしは体調が⋯⋯お気遣いくださいませ』
(妊婦なら大人しく。ベッド汚して楽しんでいては流産いたします。by侍女長)
『お友達と約束してたんだから、仕方ないじゃん! 勉強なんてつまんないもん』
(14歳だぞ! 市井で酒場は早すぎだ! byマクベス)
翌日から、終日部屋の外に護衛を立てて逃亡を防ぎ、侍従長は入学試験用にラテン語や数学・歴史⋯⋯いろいろな種類の初級の本を渡して、翻訳させたみた。
侍女長は侍女を一人連れて行き、ジュリエッタにマナー教本を読み聞かせ、メアリーには立ち方と座り方を教えた。
その結果⋯⋯ランドルフはテーブルに突っ伏して不貞寝、ジュリエッタは悪阻がはじまったと言ってベッドから出てこなくなり、メアリーは部屋を崩壊させた。
『ランドルフ殿下は、母国語の本と計算を初級からで、ラテン語と歴史は全壊。因みにお部屋も全壊しておりました。計算のやり方をご説明いたしましたが、蓋の開いたインク瓶を投げつけられました』
『ジュリエッタ様は医師の診察を拒否しておられますので、不明としか申し上げられません。
メアリー様は椅子を振りまわす、テーブルに乗って物を投げる。危険なので一時退避いたしました』
日に日に暴力と破壊行為が酷くなり、侍従長も侍女長もお手上げ状態。ジュリエッタは日に日に食欲が増していき、艶々のテカテカになってきた。
『なんでこの僕が、勉強なんてしなきゃいけないんだよおぉぉ! 母上ぇぇ、みんなが僕をいじめるんだ、助けてえ(ガチャン、ガンガン)』
『き、気持ち悪い⋯⋯悪阻で。ホールケーキしか食べてませ⋯⋯あ、え? ショ、ショートケーキですわ! え? 食べすぎ!? んなわけ⋯⋯あーもー、うっさいわね!! ババァのくせに』
『お母様を呼んで! お母様に助けてもらうわ! きぃぃぃ! もう、やだぁぁ! 虐待よぉぉ、誰か助けてぇぇ!』
マクベスの我慢は限界を超えた。
(ランドルフは廃太子し、ジュリエッタと共に西の宮で暮らさせるしかない。メアリーは東の宮だ。廃嫡してもその後⋯⋯やはり修道院しかないのか)
3人を修道院に入れなかったことを後悔する事件が起きるが、それはまだまだ先のこと⋯⋯。
「そうか⋯⋯人間で⋯⋯条件も悪くない?⋯⋯夢か⋯⋯だってランドルフは知性のカケラもない野獣だぞ? 人間を娶るのは生物学上不可能だもんな」
「へ・い・か! 残念な事に、先方はかなり乗り気です」
「はっ! すまん、幻聴かと思ってた⋯⋯は、話してくれ」
ごくりと唾を飲み込んだマクベスが居住まいを正し、椅子に座って背筋をピンと伸ばした。膝に置いている両手の拳が少し震えている。
(全く関わっていなかったとしても、やはり情がおありになられるのですね)
(俺だったら、とっくに修道院にぶち込んでるのになあ)
「キャロライン・ネルズ。ネルズ公爵夫妻の遅くにできた三女です。18歳で結婚し2年で死別、現在21歳です。子は息子が1人。嫡男なので婚家に残し本人はネルズ家に戻っています。
姑との折り合いが悪く、手放さざるを得なかったようです。
情報については、残念ながら間違いありません」
「凄いじゃないですか! 初婚じゃないくらい別にいいですよね」
「ああ、そんなの可愛いもんだ。確か国法でも問題ない⋯⋯ないよな?」
「はい、ございません。現ネルズ公爵のお婆様は、王家から嫁がれたオリビア王女殿下です。木材の輸出と、高級な家具や楽器の製作で資産も潤沢ですね。で、負の側面は?」
「はぁ、遠い親戚にあたり私自身本人を存じておりますが⋯⋯かなり気が強いです。多分私の知る限り最強かと思うくらい気が強いです。特殊な思考の持ち主ですし。
高位貴族としての教養や品性にも⋯⋯気が強い以外は問題なく、政治経済にも精通し槍の名手です。
本人は公妾を希望していて、子供ができた場合は養子にして欲しいと申しております。
理由は王太子妃や王妃になると何かあっても離婚しにくいが、公妾なら自由だからと言っています。
それから⋯⋯相談役としてセレナ様かアメリア様を望んでおられます」
「⋯⋯」
「⋯⋯大問題じゃないですか!」
「だな、珍しくデクスターと意見が一致して残念だよ」
「宰相⋯⋯余も少し同意見だよ。他に候補はいないよねぇ」
「いえ、国内ではケイソン伯爵令嬢とグレンビル子爵令嬢、ディクセン・トリアリア連合王国の部族長の娘とクレベルン王国の侯爵令嬢がおられます。詳細はこちらに記載してございます」
持っていた羊皮紙を執務机の端に置くと、全員が一斉にそれを覗き込んだ。
「でもネルズ公爵令嬢が一番?」
「私の意見ではそうなります。非常に残念ですが」
ケイソン伯爵令嬢はやや大人しい性格だが真面目で勤勉だと評判は良い。年齢は19歳。本人の資質は高評価だが、伯爵家は麻薬密売の容疑が濃厚で、近々捜査の手が入る予定になっている。
グレンビル子爵家は資産家ではないがそれなりに裕福で、17歳の令嬢は低位貴族ながら高位貴族と比べても遜色ない礼儀作法を覚えている。学園での成績も優秀で見目も良いが、大人しすぎる性格で人見知りが強い。ジュリエッタの対抗馬にすると、心を病みそうな予感がする。
ディクセン・トリアリア連合王国の部族名はマジャハル。穏健派民族で成績・性格・見目・親の財、全て完璧。アルムヘイルで使われているイリアス語が全く話せない為、ランドルフとの会話が成り立たない。アルムヘイル王国にもディクセン・トリアリア連合王国の言葉を理解できる人は少数。
クレベルン王国の侯爵令嬢は13歳。成績優秀で性格も明るく見目も良い。侯爵家は国内でも有数の資産家で主要な特産品は綿織物と言われているが、クレベルン王国の暗部を取り仕切っているのが実態で、王宮に別の危険が舞い込む。
「もう少し時間をいただければ遠方の国も、と思っておりますが現状はこの5名。その中で第二候補はグレンビル子爵令嬢です。大人しすぎてジュリエッタ嬢にボコボコにされそうですが、その他は最適に近いかと思われます。
第三候補はマジャハルの部族長の娘です。ランドルフ様が言語を覚えれば、パーフェクトと言えます」
「この段階で報告にこられたと言うことは、ネルズ公爵令嬢からの圧力ですか?」
「侍従長⋯⋯その通りです。申し訳ありません。年齢的にランドルフ殿下の事は諦め嫁いだのですが、あの醜聞が起きて自分にもチャンスが巡ってきたと、我が家に居座っております。
王家の血を持つ公爵家として自分なら相応しいと思っているようで、かなり乗り気と言いますか、他に有力な候補が出る前に話を纏めようと考えているようです」
「21歳。6歳年上だと普通は候補にならないからなあ。醜聞をチャンスと捉えるとか、前向きな令嬢とも言える?」
「そう言えるデクスターが前向きだよ」
「気が強いって暴虐魔女タイプだと王宮に嵐が来そう。野猿と托卵疑惑の詐欺師だけでも手を焼いてるのに⋯⋯。どっちにしてもセレナ夫人やアメリア嬢狙いは無理だしなぁ。それがなければ会って話をしてみたい気もするんだけど」
マクベスの言葉遣いがすっかり素に戻ってしまった。
「会ったら即決定になりそうな勢いなのですか?」
「そこは⋯⋯前もって話してあれば多分⋯⋯多分ですけど、大丈夫だと思います。悪質な策を巡らすタイプではないので、はっきりきっぱりと伝えれば問題ないと思います。起動をストップするキーワードがありますから、それさえ覚えておけば怖いものなしかと。
ある意味脳筋と言いますか、気に入ったら一直線の猪突猛進型です。その代わり強気でしっかりと説明して、納得させられれば大人しくなります」
マーチャント宰相の説明が躾のなっていない大型犬の扱い方のようになってきた。『待て』と『お座り』をさせるのはブリーダーの腕次第だと聞こえてくるのは、マクベスだけではない気がする。
「ネルズ公爵夫妻は非常に博学で、特に音楽に造詣が深いと聞いております。穏やかな性格で領民からの信頼も厚い、優秀な領主様でいらっしゃいます」
流石、侍従長。どんな話でも立ち所に情報が出てくる。
「と、取り敢えず会ってみる?」
大型犬に潰される未来しかなさそうなマクベスが、不安そうに呟いた。
毎日何度も顔を合わせているが、今日のマーチャント宰相は極度に緊張しているように見えた。
手の中の羊皮紙を見ては眉を顰め、大きく息を吸い込んでは溜め息を吐き、中々話しはじめない。
「マーチャント、何か問題でも?」
「いえ、その逆⋯⋯かもしれません。いや、問題か? 実はその、ランドルフ殿下の婚約者候「見つかったのか!?」」
マクベスが大声で叫びながら立ち上がると、ガタガタンと音を立てて椅子が倒れた。
呆然と立ち尽くすマクベスの後ろで、そっと椅子を元に戻しながら、マーチャント宰相の顔を見上げたデクスターが首を傾げ⋯⋯。
(ん? あの宰相が困ってる? あ、今度は溜め息)
「人間か!? あれの事を知っていて我慢してくれる人間がいたのか!? 生きてる人間だよな! 性別が女性なら何歳でもいいからな!!」
「その条件よりはかなりマシです。と言うよりも、条件としてはかなり良い方だとは思います」
10日前から侍従長と侍女長が、ランドルフやメアリーとジュリエッタの教育をはじめたが、惨憺たる有様になっていた。
初日、ランドルフはジュリエッタと2人で使われていない客室に鍵を閉めて立て篭もり、メアリーは手元に残っていたアクセサリーを持ち、市井に逃げ出した。
見つけ出した3人をマクベスが叱りつけたが、反省するどころか平気な顔で言い返してくる始末。
『父上、僕のことはほっといてください! 真実の愛を見つけたばかりで、勉強なんてしてる暇ないんですから』
(王太子なら愛の前に勉強ですから。by侍従長)
『陛下、わたくしは体調が⋯⋯お気遣いくださいませ』
(妊婦なら大人しく。ベッド汚して楽しんでいては流産いたします。by侍女長)
『お友達と約束してたんだから、仕方ないじゃん! 勉強なんてつまんないもん』
(14歳だぞ! 市井で酒場は早すぎだ! byマクベス)
翌日から、終日部屋の外に護衛を立てて逃亡を防ぎ、侍従長は入学試験用にラテン語や数学・歴史⋯⋯いろいろな種類の初級の本を渡して、翻訳させたみた。
侍女長は侍女を一人連れて行き、ジュリエッタにマナー教本を読み聞かせ、メアリーには立ち方と座り方を教えた。
その結果⋯⋯ランドルフはテーブルに突っ伏して不貞寝、ジュリエッタは悪阻がはじまったと言ってベッドから出てこなくなり、メアリーは部屋を崩壊させた。
『ランドルフ殿下は、母国語の本と計算を初級からで、ラテン語と歴史は全壊。因みにお部屋も全壊しておりました。計算のやり方をご説明いたしましたが、蓋の開いたインク瓶を投げつけられました』
『ジュリエッタ様は医師の診察を拒否しておられますので、不明としか申し上げられません。
メアリー様は椅子を振りまわす、テーブルに乗って物を投げる。危険なので一時退避いたしました』
日に日に暴力と破壊行為が酷くなり、侍従長も侍女長もお手上げ状態。ジュリエッタは日に日に食欲が増していき、艶々のテカテカになってきた。
『なんでこの僕が、勉強なんてしなきゃいけないんだよおぉぉ! 母上ぇぇ、みんなが僕をいじめるんだ、助けてえ(ガチャン、ガンガン)』
『き、気持ち悪い⋯⋯悪阻で。ホールケーキしか食べてませ⋯⋯あ、え? ショ、ショートケーキですわ! え? 食べすぎ!? んなわけ⋯⋯あーもー、うっさいわね!! ババァのくせに』
『お母様を呼んで! お母様に助けてもらうわ! きぃぃぃ! もう、やだぁぁ! 虐待よぉぉ、誰か助けてぇぇ!』
マクベスの我慢は限界を超えた。
(ランドルフは廃太子し、ジュリエッタと共に西の宮で暮らさせるしかない。メアリーは東の宮だ。廃嫡してもその後⋯⋯やはり修道院しかないのか)
3人を修道院に入れなかったことを後悔する事件が起きるが、それはまだまだ先のこと⋯⋯。
「そうか⋯⋯人間で⋯⋯条件も悪くない?⋯⋯夢か⋯⋯だってランドルフは知性のカケラもない野獣だぞ? 人間を娶るのは生物学上不可能だもんな」
「へ・い・か! 残念な事に、先方はかなり乗り気です」
「はっ! すまん、幻聴かと思ってた⋯⋯は、話してくれ」
ごくりと唾を飲み込んだマクベスが居住まいを正し、椅子に座って背筋をピンと伸ばした。膝に置いている両手の拳が少し震えている。
(全く関わっていなかったとしても、やはり情がおありになられるのですね)
(俺だったら、とっくに修道院にぶち込んでるのになあ)
「キャロライン・ネルズ。ネルズ公爵夫妻の遅くにできた三女です。18歳で結婚し2年で死別、現在21歳です。子は息子が1人。嫡男なので婚家に残し本人はネルズ家に戻っています。
姑との折り合いが悪く、手放さざるを得なかったようです。
情報については、残念ながら間違いありません」
「凄いじゃないですか! 初婚じゃないくらい別にいいですよね」
「ああ、そんなの可愛いもんだ。確か国法でも問題ない⋯⋯ないよな?」
「はい、ございません。現ネルズ公爵のお婆様は、王家から嫁がれたオリビア王女殿下です。木材の輸出と、高級な家具や楽器の製作で資産も潤沢ですね。で、負の側面は?」
「はぁ、遠い親戚にあたり私自身本人を存じておりますが⋯⋯かなり気が強いです。多分私の知る限り最強かと思うくらい気が強いです。特殊な思考の持ち主ですし。
高位貴族としての教養や品性にも⋯⋯気が強い以外は問題なく、政治経済にも精通し槍の名手です。
本人は公妾を希望していて、子供ができた場合は養子にして欲しいと申しております。
理由は王太子妃や王妃になると何かあっても離婚しにくいが、公妾なら自由だからと言っています。
それから⋯⋯相談役としてセレナ様かアメリア様を望んでおられます」
「⋯⋯」
「⋯⋯大問題じゃないですか!」
「だな、珍しくデクスターと意見が一致して残念だよ」
「宰相⋯⋯余も少し同意見だよ。他に候補はいないよねぇ」
「いえ、国内ではケイソン伯爵令嬢とグレンビル子爵令嬢、ディクセン・トリアリア連合王国の部族長の娘とクレベルン王国の侯爵令嬢がおられます。詳細はこちらに記載してございます」
持っていた羊皮紙を執務机の端に置くと、全員が一斉にそれを覗き込んだ。
「でもネルズ公爵令嬢が一番?」
「私の意見ではそうなります。非常に残念ですが」
ケイソン伯爵令嬢はやや大人しい性格だが真面目で勤勉だと評判は良い。年齢は19歳。本人の資質は高評価だが、伯爵家は麻薬密売の容疑が濃厚で、近々捜査の手が入る予定になっている。
グレンビル子爵家は資産家ではないがそれなりに裕福で、17歳の令嬢は低位貴族ながら高位貴族と比べても遜色ない礼儀作法を覚えている。学園での成績も優秀で見目も良いが、大人しすぎる性格で人見知りが強い。ジュリエッタの対抗馬にすると、心を病みそうな予感がする。
ディクセン・トリアリア連合王国の部族名はマジャハル。穏健派民族で成績・性格・見目・親の財、全て完璧。アルムヘイルで使われているイリアス語が全く話せない為、ランドルフとの会話が成り立たない。アルムヘイル王国にもディクセン・トリアリア連合王国の言葉を理解できる人は少数。
クレベルン王国の侯爵令嬢は13歳。成績優秀で性格も明るく見目も良い。侯爵家は国内でも有数の資産家で主要な特産品は綿織物と言われているが、クレベルン王国の暗部を取り仕切っているのが実態で、王宮に別の危険が舞い込む。
「もう少し時間をいただければ遠方の国も、と思っておりますが現状はこの5名。その中で第二候補はグレンビル子爵令嬢です。大人しすぎてジュリエッタ嬢にボコボコにされそうですが、その他は最適に近いかと思われます。
第三候補はマジャハルの部族長の娘です。ランドルフ様が言語を覚えれば、パーフェクトと言えます」
「この段階で報告にこられたと言うことは、ネルズ公爵令嬢からの圧力ですか?」
「侍従長⋯⋯その通りです。申し訳ありません。年齢的にランドルフ殿下の事は諦め嫁いだのですが、あの醜聞が起きて自分にもチャンスが巡ってきたと、我が家に居座っております。
王家の血を持つ公爵家として自分なら相応しいと思っているようで、かなり乗り気と言いますか、他に有力な候補が出る前に話を纏めようと考えているようです」
「21歳。6歳年上だと普通は候補にならないからなあ。醜聞をチャンスと捉えるとか、前向きな令嬢とも言える?」
「そう言えるデクスターが前向きだよ」
「気が強いって暴虐魔女タイプだと王宮に嵐が来そう。野猿と托卵疑惑の詐欺師だけでも手を焼いてるのに⋯⋯。どっちにしてもセレナ夫人やアメリア嬢狙いは無理だしなぁ。それがなければ会って話をしてみたい気もするんだけど」
マクベスの言葉遣いがすっかり素に戻ってしまった。
「会ったら即決定になりそうな勢いなのですか?」
「そこは⋯⋯前もって話してあれば多分⋯⋯多分ですけど、大丈夫だと思います。悪質な策を巡らすタイプではないので、はっきりきっぱりと伝えれば問題ないと思います。起動をストップするキーワードがありますから、それさえ覚えておけば怖いものなしかと。
ある意味脳筋と言いますか、気に入ったら一直線の猪突猛進型です。その代わり強気でしっかりと説明して、納得させられれば大人しくなります」
マーチャント宰相の説明が躾のなっていない大型犬の扱い方のようになってきた。『待て』と『お座り』をさせるのはブリーダーの腕次第だと聞こえてくるのは、マクベスだけではない気がする。
「ネルズ公爵夫妻は非常に博学で、特に音楽に造詣が深いと聞いております。穏やかな性格で領民からの信頼も厚い、優秀な領主様でいらっしゃいます」
流石、侍従長。どんな話でも立ち所に情報が出てくる。
「と、取り敢えず会ってみる?」
大型犬に潰される未来しかなさそうなマクベスが、不安そうに呟いた。
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