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第三章
05.母への愛を父に託して
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レイモンドがアメリアを抱きしめた後、ハミルトン大将に向き直った。
「戦線離脱することをお許しいただきたい。アメリアはビルワーツの兵を、私同様にまとめ上げる事ができます」
「挨拶なんかいらん、すぐに出発しろ。後のことは心配するな」
「お父様、転移直後はすぐに動けないのはご存知ですね。王宮は今でも敵の状況さえ把握できてませんから、十分に気をつけてください」
ハミルトン大将に頭を下げたレイモンドは、着の身着のまま転移した。
「ハミルトン大将、わたくしはこれから国法に背きますので、少し休憩していただけますか? その間に終わらせます」
「⋯⋯いや、責任なら半分引き受けよう。この戦いは胸糞悪すぎてな。奴等に一泡吹かせられたら軍法会議で高笑いしてやる」
ハミルトン大将とアメリアは、ニヤッと笑ってフィストバンプした。
前線の少し後ろに、一定の間隔をあけて並べられた魔導具には、使い方の説明を受けた兵士がそれぞれ並んでいる。
「責任は俺が取る。お前達は思いっきりぶちかましてやれ」
「「はい!」」
諜報に出ていた兵士を呼び戻し、次のクレベルン王国の攻撃を待っている今は、和やかな話し声や笑い声も聞こえ、少し気が緩んだ兵士達もちらほらと見かけられる。
雲ひとつない空には鳥が悠々と飛び、涼しい風が吹き抜ける。
(お母様は、お父様に会えたよね)
「奴らが前に出てきた時を狙う。気を引き締めていけよ」
「「はい!」」
魔導具を使うのが初めての兵士達は、魔導具に慣れているビルワーツの兵と交互に並んでいる。緊張しながらも目を輝かせる兵士達は、新しいおもちゃを前にした子供のように興奮していた。
「俺、すっげえ楽しみなんだけど」
「俺も俺も、攻撃用の魔導具なんて話にしか聞いたことないもん」
「俺達もここまででかい攻撃用の魔導具は初めてなんだよ」
「これ、いくらぐらいするんだろう。怖すぎて聞けねえ」
端から端までずらっと並んだ魔導具の数は49個。ビルワーツ領で思った程使わずに済んだ為、魔力を充填済みのものが大量に残っていた。
「クレベルンは、俺達の足止めしか考えてない。それが分かっていても、身動きが取れん⋯⋯クソ忌々しい」
攻め込むには圧倒的に兵も武器も足りていない。守りに徹すると言っても、敵は存在と武力を見せつけるだけで戦いをやめる。
「でも、これからは違います。奴等に泡を吹かせてやりましょう」
「ああ、吠え面をかかせてやろうぜ。いつも通りなら、後15分くらいで今日最後の攻撃がはじまるはずだ」
吹き抜ける風が、夜の気配を纏いはじめた。
「さて、ぼちぼち這い出てくる頃だな。俺の合図で前線は塹壕に退去、次の合図でぶちかます。順番もタイミングも間違えるな。絶対に自分の仲間に怪我さをせるなよ」
「「はい!」」
夕闇が辺りを染めはじめる頃、ゾロゾロと並びはじめたクレベルン王国兵が大型銃器を構えた時、ハミルトン大尉の合図で短くラッパが鳴らされた。
「前線、移動開始!」
30秒カウントし、次のラッパの音が鳴り終わると同時に魔導具が巨大な火を吹いた。
ドーン⋯⋯ドガーン⋯⋯ドドーン⋯⋯
49発中最初に19発、見事にクレベルン王国兵に命中し、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う姿が見える。
次に間隔を空けて10発が打ち込まれ、その次は5発。間隔をあけてまた5発。
「あと残り20発か。今日はこれで様子を見るか」
「じゃあ、最後にわたくしも、一回だけ⋯⋯」
ドガーン⋯⋯バリバリバリ⋯⋯ドーン⋯⋯ドガーン⋯⋯
「ひやぁぁぁ!」
「雷だ、凄え!」
魔導具ギルドの最新作だが、威力が高すぎてまだ発売されていない広範囲多発型。
ギルド長のコレクションから強引にもぎ取ってきたが、『絶対に返してくれ』と言っていたギルド長は、涙目だった気がする。
「そいつは凄いな、火より何倍も攻撃力がありそうだ」
「はい、流石に一台しか手に入らなくて。しかも魔力をすっごい使うんで、1日一回限定です」
「お、おう」
クレベルン王国兵が後方へ下がったのを見届けて、アメリア達も今日の攻撃を終わらせた。駐屯地では食事を作る者や防具を磨く者、武器の手入れをする者など様々だが、魔導具の威力を興奮気味に語る者の声が一番大きい。
「魔導具ってのは凄いな。銃器やら剣やらの時代終わってたのかもな」
「そうとも言い切れません。魔導具ギルドは軍事利用されるのを嫌っていますから⋯⋯今回は防衛の為に無理矢理売ってもらったのですが、本来は国の依頼でも首を縦に振らないと明文化していますし」
追加の理由で『魔導具の性能検査』と入れたのはギルド長との秘密。
「それなのによく売ってもらえたな」
「まあ、蛇の道は蛇が知る⋯⋯ですね」
次はないぞと文句を言っていたが、魔導具は魔力を充填すれば何度でも使えるのだから、ほとんど意味のない注意だった。
「これを何日か続ければ、クレベルン王国も諦めるだろうな」
(そんな時間はかけられないわ。まだ、身体中がチリチリして危険を知らせてきてるもの)
「明日の夜明け前に、クレベルン王国兵の駐屯地を叩きましょう。使い切りの魔道具で時限式のものがあります」
「お、そりゃいい。寝てる時に突然爆発すりゃ最高だな」
「はい、それともう一つ⋯⋯向こうの司令官に手紙を届けて欲しいんです。クレベルン王国とディクセン・トリアリア連合王国のハザラスを含む4つの部族と共に、ランドルフがアルムヘイル王国の王位簒奪計画をした証拠を掴んだ。ハントリー侯爵の名前入りの証拠品だと敵に突きつけてやります」
「マジか!?」
「はい、侍従長にもお伝えしました」
「侍従長⋯⋯じゃあ、やっぱり陛「ハミルトン大将、手紙を書いてきます。恐らくですがこの攻撃も手紙も効果は長続きしません。でも、一度撤退させることは可能だと思います」」
侍従長達がモタモタしている間にマクベス逝去が公になれば、間違いなくランドルフ王が誕生してしまう。
(王宮の中に、入り込んでいる敵さえ見つけられていないのに⋯⋯侍従長達のやり方では多分間に合わない。ランドルフ達の目標は既に達成されてるのに、なぜ奴等は勝利の雄叫びを上げないの?)
手紙の準備をしているアメリアは、何か大切なことを忘れているような気がしてならない。
(国内の過激派、王宮の敵、国境の兵士⋯⋯ まだ何かあるって事?)
背筋を新たな恐怖が這い上がってくる。
(あれから何時間も経っているのに何故? いまだに『崩御した』と騒がれないのは絶対におかしい⋯⋯何を間違ってる? わたくしは一体何を忘れてる?)
出来上がった手紙をハミルトン大将に手渡すと、感謝の言葉と一緒に溜め息が漏れてきた。
「ありがとう⋯⋯俺達が帰った頃には王国はどうなっているのか⋯⋯いや、ここにいる奴らには聞かせられんな」
ハミルトン大将と騎士団が王都に帰還できても、昔の王国に戻るのはあっという間だろう。
(お父様が王宮に行かれたのだから、侍従長を説き伏せてくださっているはず。それができるのはお父様だけだもの⋯⋯だから、敵の動きが変わらないのかも)
レイモンドが侍従長達と策を練れば、必ず良い案は出るだろう。タイラーはまだ幼いがデクスター達が支えていけば⋯⋯。
アメリアの心に僅かながら期待が膨らんだが、チリチリとした焦燥感は消えてくれない。
時限式の魔導具を諜報部員に渡して今日の作業は終了した。
「アメリアは王宮に?」
「いえ、魔導具に充填する魔力が残ってなくて転移できないんです⋯⋯それに、まだここを離れられません」
すぐにでも飛んで行きたいが、レイモンドの代わりをすると決めたのだから、自分勝手にここを離れるわけにはいかない。
(どちらかが残らなければいけないなら、わたくしが残るべき。一日も早く終わらせて、お母様に会いに行きたい)
「この後、今日使った魔道具に魔力を充電できる人を探さなくてはなりませんし」
この国では生活に関係する魔導具⋯⋯点火したり水を出す程度の魔導具しか使われていない。
「この国では魔力のあるなしを気にする人は殆どいませんが、魔法は使えなくてもみんな大なり小なり魔力は持っていますから、兵の方々に試してもらって魔力の多い人を見つけましょう」
食事を済ませたアメリアは、レイモンドが使っていたテントに潜り込んだ。
(魔法郵便が届かなかったのは、なんでだろう)
レイモンドなら状況を知らせてくれるはずだが、王宮からも領からも連絡がない。不安ばかり募る夜が更けていった。
朝の3時10分前、真っ暗なテントを抜け出したアメリアは、クレベルン王国が見える高台にやってきた。
「お、来てくれたのか」
「はい、気になりますし」
眠れないままテントでモヤモヤするよりも、作戦の様子を見に行った方が建設的だと気合を入れてやって来た。
「順調ですか?」
「ああ、手紙は大将のテントに放り込んだ。魔導具は奴らの食糧が運び込まれてるテントと他6箇所、一番でかいやつは広場の中央で爆発する⋯⋯あと、5分だな」
空を見上げると満天の星が輝き、 繊月と呼ばれる細い三日月が星の陰に隠れるようにひっそりと輝いていた。
「そろそろだ」
ドドーン⋯⋯ドーン⋯⋯バリバリバリ
「やっぱ、派手だな~。ここ最近のストレスが消えてくみたいだ。けど、これに慣れたら兵士達は訓練をサボりそうで心配になるな」
魔導具は邪道だという人は大勢いて、ズルをするための物だという人もいる。魔導士の事も『魔女・悪魔の使い』だと言って迫害する国もある。
アメリアは不便を減らし、有益な時間を増やすための物だと思っている。
「使い方次第ですね。宝石と一緒でプラスにもマイナスにもなる」
「だな。結局、最後は人⋯⋯何を考えどう動くか。これからどうするか⋯⋯」
マクベスの死で、これからの王国がどうなっていくのか全く分からなくなった。残された人達は何を考え何をするべきなのか⋯⋯。
(わたしは何を忘れてるの?)
「戦線離脱することをお許しいただきたい。アメリアはビルワーツの兵を、私同様にまとめ上げる事ができます」
「挨拶なんかいらん、すぐに出発しろ。後のことは心配するな」
「お父様、転移直後はすぐに動けないのはご存知ですね。王宮は今でも敵の状況さえ把握できてませんから、十分に気をつけてください」
ハミルトン大将に頭を下げたレイモンドは、着の身着のまま転移した。
「ハミルトン大将、わたくしはこれから国法に背きますので、少し休憩していただけますか? その間に終わらせます」
「⋯⋯いや、責任なら半分引き受けよう。この戦いは胸糞悪すぎてな。奴等に一泡吹かせられたら軍法会議で高笑いしてやる」
ハミルトン大将とアメリアは、ニヤッと笑ってフィストバンプした。
前線の少し後ろに、一定の間隔をあけて並べられた魔導具には、使い方の説明を受けた兵士がそれぞれ並んでいる。
「責任は俺が取る。お前達は思いっきりぶちかましてやれ」
「「はい!」」
諜報に出ていた兵士を呼び戻し、次のクレベルン王国の攻撃を待っている今は、和やかな話し声や笑い声も聞こえ、少し気が緩んだ兵士達もちらほらと見かけられる。
雲ひとつない空には鳥が悠々と飛び、涼しい風が吹き抜ける。
(お母様は、お父様に会えたよね)
「奴らが前に出てきた時を狙う。気を引き締めていけよ」
「「はい!」」
魔導具を使うのが初めての兵士達は、魔導具に慣れているビルワーツの兵と交互に並んでいる。緊張しながらも目を輝かせる兵士達は、新しいおもちゃを前にした子供のように興奮していた。
「俺、すっげえ楽しみなんだけど」
「俺も俺も、攻撃用の魔導具なんて話にしか聞いたことないもん」
「俺達もここまででかい攻撃用の魔導具は初めてなんだよ」
「これ、いくらぐらいするんだろう。怖すぎて聞けねえ」
端から端までずらっと並んだ魔導具の数は49個。ビルワーツ領で思った程使わずに済んだ為、魔力を充填済みのものが大量に残っていた。
「クレベルンは、俺達の足止めしか考えてない。それが分かっていても、身動きが取れん⋯⋯クソ忌々しい」
攻め込むには圧倒的に兵も武器も足りていない。守りに徹すると言っても、敵は存在と武力を見せつけるだけで戦いをやめる。
「でも、これからは違います。奴等に泡を吹かせてやりましょう」
「ああ、吠え面をかかせてやろうぜ。いつも通りなら、後15分くらいで今日最後の攻撃がはじまるはずだ」
吹き抜ける風が、夜の気配を纏いはじめた。
「さて、ぼちぼち這い出てくる頃だな。俺の合図で前線は塹壕に退去、次の合図でぶちかます。順番もタイミングも間違えるな。絶対に自分の仲間に怪我さをせるなよ」
「「はい!」」
夕闇が辺りを染めはじめる頃、ゾロゾロと並びはじめたクレベルン王国兵が大型銃器を構えた時、ハミルトン大尉の合図で短くラッパが鳴らされた。
「前線、移動開始!」
30秒カウントし、次のラッパの音が鳴り終わると同時に魔導具が巨大な火を吹いた。
ドーン⋯⋯ドガーン⋯⋯ドドーン⋯⋯
49発中最初に19発、見事にクレベルン王国兵に命中し、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う姿が見える。
次に間隔を空けて10発が打ち込まれ、その次は5発。間隔をあけてまた5発。
「あと残り20発か。今日はこれで様子を見るか」
「じゃあ、最後にわたくしも、一回だけ⋯⋯」
ドガーン⋯⋯バリバリバリ⋯⋯ドーン⋯⋯ドガーン⋯⋯
「ひやぁぁぁ!」
「雷だ、凄え!」
魔導具ギルドの最新作だが、威力が高すぎてまだ発売されていない広範囲多発型。
ギルド長のコレクションから強引にもぎ取ってきたが、『絶対に返してくれ』と言っていたギルド長は、涙目だった気がする。
「そいつは凄いな、火より何倍も攻撃力がありそうだ」
「はい、流石に一台しか手に入らなくて。しかも魔力をすっごい使うんで、1日一回限定です」
「お、おう」
クレベルン王国兵が後方へ下がったのを見届けて、アメリア達も今日の攻撃を終わらせた。駐屯地では食事を作る者や防具を磨く者、武器の手入れをする者など様々だが、魔導具の威力を興奮気味に語る者の声が一番大きい。
「魔導具ってのは凄いな。銃器やら剣やらの時代終わってたのかもな」
「そうとも言い切れません。魔導具ギルドは軍事利用されるのを嫌っていますから⋯⋯今回は防衛の為に無理矢理売ってもらったのですが、本来は国の依頼でも首を縦に振らないと明文化していますし」
追加の理由で『魔導具の性能検査』と入れたのはギルド長との秘密。
「それなのによく売ってもらえたな」
「まあ、蛇の道は蛇が知る⋯⋯ですね」
次はないぞと文句を言っていたが、魔導具は魔力を充填すれば何度でも使えるのだから、ほとんど意味のない注意だった。
「これを何日か続ければ、クレベルン王国も諦めるだろうな」
(そんな時間はかけられないわ。まだ、身体中がチリチリして危険を知らせてきてるもの)
「明日の夜明け前に、クレベルン王国兵の駐屯地を叩きましょう。使い切りの魔道具で時限式のものがあります」
「お、そりゃいい。寝てる時に突然爆発すりゃ最高だな」
「はい、それともう一つ⋯⋯向こうの司令官に手紙を届けて欲しいんです。クレベルン王国とディクセン・トリアリア連合王国のハザラスを含む4つの部族と共に、ランドルフがアルムヘイル王国の王位簒奪計画をした証拠を掴んだ。ハントリー侯爵の名前入りの証拠品だと敵に突きつけてやります」
「マジか!?」
「はい、侍従長にもお伝えしました」
「侍従長⋯⋯じゃあ、やっぱり陛「ハミルトン大将、手紙を書いてきます。恐らくですがこの攻撃も手紙も効果は長続きしません。でも、一度撤退させることは可能だと思います」」
侍従長達がモタモタしている間にマクベス逝去が公になれば、間違いなくランドルフ王が誕生してしまう。
(王宮の中に、入り込んでいる敵さえ見つけられていないのに⋯⋯侍従長達のやり方では多分間に合わない。ランドルフ達の目標は既に達成されてるのに、なぜ奴等は勝利の雄叫びを上げないの?)
手紙の準備をしているアメリアは、何か大切なことを忘れているような気がしてならない。
(国内の過激派、王宮の敵、国境の兵士⋯⋯ まだ何かあるって事?)
背筋を新たな恐怖が這い上がってくる。
(あれから何時間も経っているのに何故? いまだに『崩御した』と騒がれないのは絶対におかしい⋯⋯何を間違ってる? わたくしは一体何を忘れてる?)
出来上がった手紙をハミルトン大将に手渡すと、感謝の言葉と一緒に溜め息が漏れてきた。
「ありがとう⋯⋯俺達が帰った頃には王国はどうなっているのか⋯⋯いや、ここにいる奴らには聞かせられんな」
ハミルトン大将と騎士団が王都に帰還できても、昔の王国に戻るのはあっという間だろう。
(お父様が王宮に行かれたのだから、侍従長を説き伏せてくださっているはず。それができるのはお父様だけだもの⋯⋯だから、敵の動きが変わらないのかも)
レイモンドが侍従長達と策を練れば、必ず良い案は出るだろう。タイラーはまだ幼いがデクスター達が支えていけば⋯⋯。
アメリアの心に僅かながら期待が膨らんだが、チリチリとした焦燥感は消えてくれない。
時限式の魔導具を諜報部員に渡して今日の作業は終了した。
「アメリアは王宮に?」
「いえ、魔導具に充填する魔力が残ってなくて転移できないんです⋯⋯それに、まだここを離れられません」
すぐにでも飛んで行きたいが、レイモンドの代わりをすると決めたのだから、自分勝手にここを離れるわけにはいかない。
(どちらかが残らなければいけないなら、わたくしが残るべき。一日も早く終わらせて、お母様に会いに行きたい)
「この後、今日使った魔道具に魔力を充電できる人を探さなくてはなりませんし」
この国では生活に関係する魔導具⋯⋯点火したり水を出す程度の魔導具しか使われていない。
「この国では魔力のあるなしを気にする人は殆どいませんが、魔法は使えなくてもみんな大なり小なり魔力は持っていますから、兵の方々に試してもらって魔力の多い人を見つけましょう」
食事を済ませたアメリアは、レイモンドが使っていたテントに潜り込んだ。
(魔法郵便が届かなかったのは、なんでだろう)
レイモンドなら状況を知らせてくれるはずだが、王宮からも領からも連絡がない。不安ばかり募る夜が更けていった。
朝の3時10分前、真っ暗なテントを抜け出したアメリアは、クレベルン王国が見える高台にやってきた。
「お、来てくれたのか」
「はい、気になりますし」
眠れないままテントでモヤモヤするよりも、作戦の様子を見に行った方が建設的だと気合を入れてやって来た。
「順調ですか?」
「ああ、手紙は大将のテントに放り込んだ。魔導具は奴らの食糧が運び込まれてるテントと他6箇所、一番でかいやつは広場の中央で爆発する⋯⋯あと、5分だな」
空を見上げると満天の星が輝き、 繊月と呼ばれる細い三日月が星の陰に隠れるようにひっそりと輝いていた。
「そろそろだ」
ドドーン⋯⋯ドーン⋯⋯バリバリバリ
「やっぱ、派手だな~。ここ最近のストレスが消えてくみたいだ。けど、これに慣れたら兵士達は訓練をサボりそうで心配になるな」
魔導具は邪道だという人は大勢いて、ズルをするための物だという人もいる。魔導士の事も『魔女・悪魔の使い』だと言って迫害する国もある。
アメリアは不便を減らし、有益な時間を増やすための物だと思っている。
「使い方次第ですね。宝石と一緒でプラスにもマイナスにもなる」
「だな。結局、最後は人⋯⋯何を考えどう動くか。これからどうするか⋯⋯」
マクベスの死で、これからの王国がどうなっていくのか全く分からなくなった。残された人達は何を考え何をするべきなのか⋯⋯。
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