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第四章
33.またもやルーナに助けられた。神降臨!?
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(その時にはわたくしの存在が問題になるわ。あちこちの国にいる王子や令息が、ビルワーツの資産狙いで婚約を押し付けてくるはずだから、誰かが手を上げる前に急いで離籍しなくては。
何一つ権利を持っていないと公になれば、他国の目はわたくしから離れるはずだし、元々親子の情などないのだから人質には使えない。離籍だけでは弱いかもしれないけれど、一歩ずつ進めていかなくてはね)
「メイベルン王国とはビルワーツ領でもかなりの取引があるから、小麦が取引停止になったらかなりヤバいっす」
本気で頭を抱えたジェイクをルーナが心配そうに見ている。
(ルーナ様がジェイクと話す時楽しそうに見えるのが、多分好きだって事なのよね。で、好きな人が悩んでるとこんな辛そうな顔になる。うーん、それって楽しいのかしら? 嫌いは分かるけど好きは分からない。確か好きは嫌いの反対⋯⋯反対は無関心だったかしら)
「エレーナ様、これは連合王国の侵略戦争と、どう関係してくると思われますか?」
ループ前の記憶ではアメリアの準国葬の後もそれ以降も、公国と連合王国の条約は結ばれていなかったはず。それどころかアルムヘイルを含む6カ国が条約を結んだと聞いた覚えもない。
(いつ歴史が変わったのか分からないのは不安だわ。一体何が原因なのかしら)
「私の知る情報の中だけで言えば⋯⋯公国はどの国とも条約は結んでいないの。それが本当になるかと言われれば分からないとしか言えないわ。
でも、6カ国が既に条約を結んでいるのなら、すぐにでも対策を考えなくては大変なことになるのだけは間違いないわ」
「えーっと、連合王国は公国と友好的な関係を作りたいんだぞ~って言う、アピールしてるって聞いてたんす。んでも、腹の底じゃ戦争とか条約で縛りつけようとしてた⋯⋯うわぁ、アイツらマジでうぜえ」
関税の引き下げを狙って通商条約を結びたいと言ってきた国が、侵略戦争を仕掛けようとしているとは考えない⋯⋯そう思わせる為の策。
それとは別に、公国の鼻っ柱をへし折って奴隷のような扱いをしようとしているのなら、国を囲い込んで産業を停滞させるのはかなり有効な手段ではある。
下手に出る連合王国に対し優位に立っていると安心し切っていたら、突然手のひらを返されて窮地に陥っていたと知る⋯⋯今までの恨みを晴らすための方法としては、戦争を仕掛けるよりもっと効果があるだろう。
(モラルとか国としての信用とかを考えたら、こんな手は考えないはずだけど、アルムヘイルやクレベルンにそんな道徳は通用しない。もしかして⋯⋯うん、間違いないわ。この2つは目的も首謀者も違うんじゃないかしら)
戦争を仕掛けても勝てると連合王国は思っているのかもしれないが、ループ前にオーレリアが参戦を表明した時でさえ、クレベルン達は一切手を貸さなかった。しかも連合王国はあっさりと戦争を終結させた事を考えると⋯⋯元々、連合王国の独断で計画・実行され、セルビアスの呪術の有用性をアピールするのが目的だったとも考えられる。
6カ国での囲い込みは明らかに公国を追い詰めるための作戦で、魔法大国オーレリアの力を持ってしても助けられない。
「最初から計画していた可能性もあるし、話し合いの途中で予定や方針が変わった可能性もあるからなんとも言えないわ」
「あれこれと予想ばかりしても仕方がないじゃん。ジェイクはセルビアスの兵が潜入してるかどうかを調べるし、うちの父ちゃんや母ちゃんも情報を調べてる。それが調べ終われば予想もつくんでしょ?」
仕事以外は何かにつけて大雑把なルーナが痺れを切らしたらしい。
「その通りです。情報が少ない中であれこれと気を揉むよりも、宰相や担当大臣に任せるべきだとわたくしも思います」
(ルーナ様、ありがとうございます! 今回もルーナ様の一言で危機から逃げられそうですわ)
ミセス・メイベルは張り切って宮殿に向かい、ジェイクは恋愛成就のアクセサリーをプレゼントしたと言う女性を探しに出掛けて行った。
「ふう! なんかとんでもない事になってたね~。通信機の向こうで父ちゃんが絶句してた」
「あの⋯⋯ルーナ様。いくつかお聞きしたい事があるのですが⋯⋯」
「ん? なになに? ルーナお姉ちゃんになんでも聞いてごらん。分かる事なら即答だし、分かんなかったら父ちゃんか母ちゃんを引き摺り出すからさ」
ニパッと笑ったルーナがエレーナの肩をガッチリと捕まえた。身体を触られた瞬間ビクッと飛び上がったが、ここ数日見慣れたルーナの優しい目に見つめられていると、緊張が解れていく。
「あの、今でもその、オーレリアに引っ越しても良いと仰って下さいますか?」
「へ? エレーナちゃんの部屋はとっくに準備がはじまってるよ? アタシの部屋の向かいにしたって母ちゃんが言ってた。内装とかは母ちゃんが超張り切ってるんだけど、父ちゃんがせっせといらん家具とかを運んでくるって怒ってた」
5歳の女の子らしい部屋を楽しんで作っているルーナの母と、頓珍漢な家具や備品を運んでくるルーナの父。
『昔のルーナは壊しまくってたよな? だから国で一番丈夫なやつにした』
『年齢の割に小柄だって言ったから、玩具屋でこんなのを見つけてきたんだ』
『剣を入れるのにちょうどいいサイズの⋯⋯』
『迷子になった時用の魔導具を⋯⋯』
「昔は騎士になりたいって言ってたから、部屋で木剣を振り回して家具を粉々にしてたんだよね~。んで、エレーナちゃんは部屋に監禁されてたって知ったら、王宮内で迷子になったら可哀想だとか。嬉しすぎて迷走中って感じだね。で、母ちゃんはコテコテのお姫様の部屋にするって張り切ってるし。
漸く娘ができるって騒いでるのは謎だったけど⋯⋯。
なんかすっごい楽しそうだったから、とんでもない部屋ができてるかも。まあ、あれだよ。好みがあると思うけど、内装なんて魔法でパパッと変更できるから、心配しなくても大丈夫だからね」
情報過多で何を言って良いのか分からないが、取り敢えずオーレリアに引っ越せるようでひと安心。
「あと、できる限り早く離籍したいと思っていますの。その手続きを今日にでもはじめたいのですが⋯⋯」
「書類の準備はできてて弁護士は送り込んだって言ってた! アメリアは寝てるし、ニールはアレだからジョーンズに送りつけたって。
でね、父ちゃん達はうちの子⋯⋯養子になって欲しいって言ってるんだけどどうかな? ビルワーツなんかとは縁を切って、うちの子になって欲しいって。
それが不安なら後見人になるって言ってる。もちろんその時も離籍はセットだって」
ルーナの両親が言っているのは、特別養子縁組の事だろう。これは実親との法的な親子関係を解消させて、養子と養親が実親子と同様の関係を成立させる制度の事。
未成年の後見人には、親権を行う者と同一の権利義務を有する者と、財産に関する権限のみを有する者の2種類があるが、離籍をセットにするなら後見人でも良いのかもしれない。
(ルーナ様のご両親にはお会いした事がないし、オーレリア国王ご夫妻の養子となると、色々ご迷惑をおかけするかも。書類を出してからどのくらい時間がかかるのか分からないから、考えている時間はないわ。身の安全が第一だけど⋯⋯)
「で、では後見「妹になるよね~」」
「いえ、あの⋯⋯まだオーレリア国王ご夫妻に謁見も致しておりませんし、わたくしなどのような者が養子というのは些か問題があるかと」
「⋯⋯やっぱり不安だよね。んじゃ、ちょっと待ってて」
パパッと取り出した通信機を耳に当てながら、部屋の隅に向かうルーナの鼻歌が聞こえてくる。
(養子縁組はハードルが高い気がするわ。お優しい方達のようだから口には出されないかもだけど、後悔されるのが目に見える気がする)
「⋯⋯そうそ⋯⋯な⋯⋯ん、わ⋯⋯」
悶々と悩んでいるエレーナの耳に、ルーナの小さな声が途切れ途切れに聞こえてくる、
(お会いしてご挨拶させていただいて⋯⋯お部屋をお貸しいただくお願いを⋯⋯お家賃と言うかお部屋代を決めていただいて⋯⋯王宮のお食事は高そうだから、外出できるようにお願い⋯⋯あ、お仕事探しにも出かけるし、やっぱり王宮にお部屋をお借りするのはご迷惑に⋯⋯)
ジェイク達に引き継ぎできるように帳簿やノートを整理しつつ、引っ越し後の問題を羅列していた。
「よっし! これでオッケー」
ルーナの満足そうな声がしたと同時にふわっと部屋に風が起こり、実務机に齧り付いていたエレーナの背後から、大きな手が両脇に差し込まれ⋯⋯。
「きゃあぁぁ!」
「うわぁ! 何やってんのよ、このエロ親父ぃぃ!」
勢いよく持ち上げられたエレーナは失神寸前で、プラプラと手足が揺れている。
「うおぉぉ、エレーナちゃん⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯マジちっこ~い! しかもガッリ⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯ガリじゃねえか。うん、こりゃあうちの子に決定、⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯もう決まり!」
「父ちゃん、良い加減に離せぇぇ! くっそぉ、蹴っても⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯ぜんっぜん効果が。このクマ親父ぃぃ」
興奮気味のおじさんの野太い声の合間に聞こえる怪しげな音は、ルーナが蹴りを入れている音のよう。
「お嫁にもいかんで良いぞ、大きくなったら婿をとって⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯ずーっと一緒に暮らそうな」
耳慣れない低い声の主はルーナの父エリオット・オルシーニ。彼が興奮気味に話すたびに、エレーナの小さな身体がグラングランと揺れてかなり気持ち悪い。
(ふ、船酔いというのがこんな感じなのかしら⋯⋯上下に揺れ⋯⋯うっぷ)
「お、下ろして下さいませ。あ、あの⋯⋯一体どこからおいでになら⋯⋯」
「エレーナちゃんから離れなさいませ! ペドフィリアとして処刑しますわよ!」
何一つ権利を持っていないと公になれば、他国の目はわたくしから離れるはずだし、元々親子の情などないのだから人質には使えない。離籍だけでは弱いかもしれないけれど、一歩ずつ進めていかなくてはね)
「メイベルン王国とはビルワーツ領でもかなりの取引があるから、小麦が取引停止になったらかなりヤバいっす」
本気で頭を抱えたジェイクをルーナが心配そうに見ている。
(ルーナ様がジェイクと話す時楽しそうに見えるのが、多分好きだって事なのよね。で、好きな人が悩んでるとこんな辛そうな顔になる。うーん、それって楽しいのかしら? 嫌いは分かるけど好きは分からない。確か好きは嫌いの反対⋯⋯反対は無関心だったかしら)
「エレーナ様、これは連合王国の侵略戦争と、どう関係してくると思われますか?」
ループ前の記憶ではアメリアの準国葬の後もそれ以降も、公国と連合王国の条約は結ばれていなかったはず。それどころかアルムヘイルを含む6カ国が条約を結んだと聞いた覚えもない。
(いつ歴史が変わったのか分からないのは不安だわ。一体何が原因なのかしら)
「私の知る情報の中だけで言えば⋯⋯公国はどの国とも条約は結んでいないの。それが本当になるかと言われれば分からないとしか言えないわ。
でも、6カ国が既に条約を結んでいるのなら、すぐにでも対策を考えなくては大変なことになるのだけは間違いないわ」
「えーっと、連合王国は公国と友好的な関係を作りたいんだぞ~って言う、アピールしてるって聞いてたんす。んでも、腹の底じゃ戦争とか条約で縛りつけようとしてた⋯⋯うわぁ、アイツらマジでうぜえ」
関税の引き下げを狙って通商条約を結びたいと言ってきた国が、侵略戦争を仕掛けようとしているとは考えない⋯⋯そう思わせる為の策。
それとは別に、公国の鼻っ柱をへし折って奴隷のような扱いをしようとしているのなら、国を囲い込んで産業を停滞させるのはかなり有効な手段ではある。
下手に出る連合王国に対し優位に立っていると安心し切っていたら、突然手のひらを返されて窮地に陥っていたと知る⋯⋯今までの恨みを晴らすための方法としては、戦争を仕掛けるよりもっと効果があるだろう。
(モラルとか国としての信用とかを考えたら、こんな手は考えないはずだけど、アルムヘイルやクレベルンにそんな道徳は通用しない。もしかして⋯⋯うん、間違いないわ。この2つは目的も首謀者も違うんじゃないかしら)
戦争を仕掛けても勝てると連合王国は思っているのかもしれないが、ループ前にオーレリアが参戦を表明した時でさえ、クレベルン達は一切手を貸さなかった。しかも連合王国はあっさりと戦争を終結させた事を考えると⋯⋯元々、連合王国の独断で計画・実行され、セルビアスの呪術の有用性をアピールするのが目的だったとも考えられる。
6カ国での囲い込みは明らかに公国を追い詰めるための作戦で、魔法大国オーレリアの力を持ってしても助けられない。
「最初から計画していた可能性もあるし、話し合いの途中で予定や方針が変わった可能性もあるからなんとも言えないわ」
「あれこれと予想ばかりしても仕方がないじゃん。ジェイクはセルビアスの兵が潜入してるかどうかを調べるし、うちの父ちゃんや母ちゃんも情報を調べてる。それが調べ終われば予想もつくんでしょ?」
仕事以外は何かにつけて大雑把なルーナが痺れを切らしたらしい。
「その通りです。情報が少ない中であれこれと気を揉むよりも、宰相や担当大臣に任せるべきだとわたくしも思います」
(ルーナ様、ありがとうございます! 今回もルーナ様の一言で危機から逃げられそうですわ)
ミセス・メイベルは張り切って宮殿に向かい、ジェイクは恋愛成就のアクセサリーをプレゼントしたと言う女性を探しに出掛けて行った。
「ふう! なんかとんでもない事になってたね~。通信機の向こうで父ちゃんが絶句してた」
「あの⋯⋯ルーナ様。いくつかお聞きしたい事があるのですが⋯⋯」
「ん? なになに? ルーナお姉ちゃんになんでも聞いてごらん。分かる事なら即答だし、分かんなかったら父ちゃんか母ちゃんを引き摺り出すからさ」
ニパッと笑ったルーナがエレーナの肩をガッチリと捕まえた。身体を触られた瞬間ビクッと飛び上がったが、ここ数日見慣れたルーナの優しい目に見つめられていると、緊張が解れていく。
「あの、今でもその、オーレリアに引っ越しても良いと仰って下さいますか?」
「へ? エレーナちゃんの部屋はとっくに準備がはじまってるよ? アタシの部屋の向かいにしたって母ちゃんが言ってた。内装とかは母ちゃんが超張り切ってるんだけど、父ちゃんがせっせといらん家具とかを運んでくるって怒ってた」
5歳の女の子らしい部屋を楽しんで作っているルーナの母と、頓珍漢な家具や備品を運んでくるルーナの父。
『昔のルーナは壊しまくってたよな? だから国で一番丈夫なやつにした』
『年齢の割に小柄だって言ったから、玩具屋でこんなのを見つけてきたんだ』
『剣を入れるのにちょうどいいサイズの⋯⋯』
『迷子になった時用の魔導具を⋯⋯』
「昔は騎士になりたいって言ってたから、部屋で木剣を振り回して家具を粉々にしてたんだよね~。んで、エレーナちゃんは部屋に監禁されてたって知ったら、王宮内で迷子になったら可哀想だとか。嬉しすぎて迷走中って感じだね。で、母ちゃんはコテコテのお姫様の部屋にするって張り切ってるし。
漸く娘ができるって騒いでるのは謎だったけど⋯⋯。
なんかすっごい楽しそうだったから、とんでもない部屋ができてるかも。まあ、あれだよ。好みがあると思うけど、内装なんて魔法でパパッと変更できるから、心配しなくても大丈夫だからね」
情報過多で何を言って良いのか分からないが、取り敢えずオーレリアに引っ越せるようでひと安心。
「あと、できる限り早く離籍したいと思っていますの。その手続きを今日にでもはじめたいのですが⋯⋯」
「書類の準備はできてて弁護士は送り込んだって言ってた! アメリアは寝てるし、ニールはアレだからジョーンズに送りつけたって。
でね、父ちゃん達はうちの子⋯⋯養子になって欲しいって言ってるんだけどどうかな? ビルワーツなんかとは縁を切って、うちの子になって欲しいって。
それが不安なら後見人になるって言ってる。もちろんその時も離籍はセットだって」
ルーナの両親が言っているのは、特別養子縁組の事だろう。これは実親との法的な親子関係を解消させて、養子と養親が実親子と同様の関係を成立させる制度の事。
未成年の後見人には、親権を行う者と同一の権利義務を有する者と、財産に関する権限のみを有する者の2種類があるが、離籍をセットにするなら後見人でも良いのかもしれない。
(ルーナ様のご両親にはお会いした事がないし、オーレリア国王ご夫妻の養子となると、色々ご迷惑をおかけするかも。書類を出してからどのくらい時間がかかるのか分からないから、考えている時間はないわ。身の安全が第一だけど⋯⋯)
「で、では後見「妹になるよね~」」
「いえ、あの⋯⋯まだオーレリア国王ご夫妻に謁見も致しておりませんし、わたくしなどのような者が養子というのは些か問題があるかと」
「⋯⋯やっぱり不安だよね。んじゃ、ちょっと待ってて」
パパッと取り出した通信機を耳に当てながら、部屋の隅に向かうルーナの鼻歌が聞こえてくる。
(養子縁組はハードルが高い気がするわ。お優しい方達のようだから口には出されないかもだけど、後悔されるのが目に見える気がする)
「⋯⋯そうそ⋯⋯な⋯⋯ん、わ⋯⋯」
悶々と悩んでいるエレーナの耳に、ルーナの小さな声が途切れ途切れに聞こえてくる、
(お会いしてご挨拶させていただいて⋯⋯お部屋をお貸しいただくお願いを⋯⋯お家賃と言うかお部屋代を決めていただいて⋯⋯王宮のお食事は高そうだから、外出できるようにお願い⋯⋯あ、お仕事探しにも出かけるし、やっぱり王宮にお部屋をお借りするのはご迷惑に⋯⋯)
ジェイク達に引き継ぎできるように帳簿やノートを整理しつつ、引っ越し後の問題を羅列していた。
「よっし! これでオッケー」
ルーナの満足そうな声がしたと同時にふわっと部屋に風が起こり、実務机に齧り付いていたエレーナの背後から、大きな手が両脇に差し込まれ⋯⋯。
「きゃあぁぁ!」
「うわぁ! 何やってんのよ、このエロ親父ぃぃ!」
勢いよく持ち上げられたエレーナは失神寸前で、プラプラと手足が揺れている。
「うおぉぉ、エレーナちゃん⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯マジちっこ~い! しかもガッリ⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯ガリじゃねえか。うん、こりゃあうちの子に決定、⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯もう決まり!」
「父ちゃん、良い加減に離せぇぇ! くっそぉ、蹴っても⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯ぜんっぜん効果が。このクマ親父ぃぃ」
興奮気味のおじさんの野太い声の合間に聞こえる怪しげな音は、ルーナが蹴りを入れている音のよう。
「お嫁にもいかんで良いぞ、大きくなったら婿をとって⋯⋯ゲシゲシ⋯⋯ずーっと一緒に暮らそうな」
耳慣れない低い声の主はルーナの父エリオット・オルシーニ。彼が興奮気味に話すたびに、エレーナの小さな身体がグラングランと揺れてかなり気持ち悪い。
(ふ、船酔いというのがこんな感じなのかしら⋯⋯上下に揺れ⋯⋯うっぷ)
「お、下ろして下さいませ。あ、あの⋯⋯一体どこからおいでになら⋯⋯」
「エレーナちゃんから離れなさいませ! ペドフィリアとして処刑しますわよ!」
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