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第五章
38.ジェラルド達の脳内改造計画を実行したのは
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「知識だけで知ったつもりになってるって怖いよな。かく言う俺も昔はその一人だった。だから、よく分かるんだけどな」
アメリアほどではなかったかもしれないが、何不自由なく暮らしていたセドリックとジェラルドは、悪戯し放題の我儘ボーイズだった。自分達が快適に暮らしているのは当然で、そのために使用人は雇われていると思っていた気がする。
そんなある日、祖父に首根っこを掴まれて、アルムヘイルのスラムに連れて行かれた。
『魔法と犯罪は禁止、1ヶ月ここで生き抜け。お前達がどんなに甘ったれなのか、よーく考えてみろ』
『魔法を使えなくするとか無茶だ!』
『1ヶ月なら金! 金がないと生きてけない』
祖父がそれぞれの手に握らせたのは銀貨が数枚。2人が呆然としているうちに、祖父は転移で消えた。
『⋯⋯とりあえずお腹が空いたから、何か食べて考えよう』
パン屋に入って値段を見て驚いた。
『パンだけ食べても1週間も持たない⋯⋯』
『俺達、死んじゃうよ』
一度言い出したら決して意見を翻さない祖父なら、1ヶ月後まで本当に迎えに来ないだろう。
『どうする⋯⋯何か考えないと』
『でも⋯⋯お金なんて稼いだ事ないし』
その後は⋯⋯野宿している間に手持ちのわずかな金を盗まれた。寝ている時は無防備になると考えた事がなかったから。
無一文で呆然としていると、職業案内所があると教えられ、張り切って行ってみたが、身元引受人のいない2人には真面な仕事はもらえない。安くて人の嫌がる仕事を、偉そうな職員が『恵んで』くれるだけ。空腹を抱え悪臭を放ちながら、荷運びや下水掃除で日銭を稼いで生き延びた。
仕事で騙されて賃金をもらえなかった時は、騙される方が悪いと言われ、余分な仕事を押し付けられた上に、約束の金をねぎられた時は、抗議してボコボコに殴られた。
売れ残ったパンを安く買えた時はご馳走だと喜んだが、それを羨ましそうに見る痩せこけた孤児が目に入る。
雨が降って仕事ができない時は雑草でさえ美味しそうに見えたが、雨水で雑草の土を落としながら『これなら食べれそう』と言う声が聞こえ、マジで食うのかと唖然とした。
暴力騒ぎを見るのなど日常茶飯事で、その殆どが仕事や食糧の取り合い。殴り倒された男は、翌日足を引き摺りながら仕事を探していた。
1ヶ月が近くなる頃、気がついた事がある。
『なあ、祖父さんがさあ⋯⋯』
『ああ、間違いない。俺達、これでも恵まれてる』
最底辺の仕事だが、ギリギリ食いつなげるくらいには仕事をもらえる。腹が減り過ぎて眠れなかった翌日は、何故か売れ残りのパンにありつける。初めの頃はラッキーだと思っていたが、日が経つうちにスラムがそんなに甘くないことに気がついた。
餓死も病死も目の前にいくらでもあるのに、雨漏りのするあばら屋が簡単に見つかったのは偶然ではないはず。
『どうだ、1ヶ月楽しかったか?』
『『⋯⋯ごめんなさい』』
不自由のない生活で魔法属性も多いセドリックとジェラルドが、小さな世界で天狗になって行くのを見た祖父の厳しすぎる愛情で、2人の目が覚めたのは言うまでもない。
「それまでは俺も飢えは可哀想だ、暴力は良くないとか言ってた。口だけな。そのくせ普段の生活では、あるのが当たり前で、なんでも手に入るのが当然だと思ってたからな~。あのまま成長しても、アメリア様と同じ事はやらないと思いたいが、似たような事をしでかしてた可能性がないとは言い切れないのが辛い」
体調の悪そうな使用人を見ても『休めば良いのに』とは思うが、休めない理由があるとは考えもしないで、呑気に仕事を頼んだ。
パンを盗んだ子供が捕まったのを見た時は、『親は何やってんだ?』『金くらい持たせろよ』としか思わなかった。
悪戯で半壊させた小屋を見ても『派手に壊れたなあ』と思うだけで、普段その小屋を使っている人のことなど頭に浮かばない。
街の物乞いを見れば『まともに働けば良いのに』と思うだけ、親に叱られている子供を見ても『路上で躾か?』と不思議に思っただけ。
「まあ、かなりのクソガキだったって事なんだけど、スラムの1ヶ月がなかったら、あのまま育ってた⋯⋯いや~、マジで怖い。『俺様、お花畑様』だったって本気で思うから」
ジェラルド達の祖父とは顔を合わせた事は何度もあるが、それほど過激な事を考える人には見えなかった。
「いや、あの人は鬼だから。祖母ちゃん以外には」
オーレリアでは魔法の使えない当主は殆どいないが、ジェラルド達の祖父は魔導具を有効活用して、キャンベル侯爵家に君臨し、他の貴族達からも一目置かれている。
話しているうちに準国葬が終わったらしく、街に人が帰ってきはじめた。
「そろそろ戻らなくちゃ。ここに人がいるってバレたら、不審者として捕まっちゃうわ」
「アメリア様はご両親の墓と並んで埋葬される事に決まっているんだよな」
「そう、あの丘の上。とても見晴らしがいいところみたい」
(アメリア様の夢がようやく叶うのかな。ダイヤモンドリリーを飾って、アップルパイと紅茶を準備して⋯⋯お天気もいいし、最高のティータイムになりそうね)
エレーナが指差した方から微かな笑い声が聞こえ、笑顔で両親に飛びつくアメリアが見えた気がした。
吹き渡る風が緩やかに木の枝を揺らす丘に、鈴を鳴らすようなアメリアの楽しそうな声がする。アメリアとよく似た女性の声と、安心感を誘うような低い男性の声も⋯⋯。
大きく手を広げた女性がアメリアを抱きしめ、男性がアメリアの頭を撫で⋯⋯涙はなく笑顔だけが広がっている。
ほんの少し物悲しい気持ちになっていると、ジェラルドがまた頭を撫でてくれた。
「ちょっとだけ寂寥感はあるけど、あそこに自分がいない事を寂しいとか悲しいとか思わないの」
「俺達がエレーナの家族だからな。今までも、これからもずーっと」
「そうね。血の繋がりはないけど、わたくしには家族だと言ってくれる方々がいる」
あとどのくらい一緒にいられるのか分からないけれど、エリオット達に家族として愛されていると信じられる。
心が軽いのはジェラルドのお陰だと知っている。一人で弔砲を聞いていたら、落ち込んでいただろう。
「ループ前はね、準国葬の場で『私がここにいる意味あるのかな?』って考えてたの。でも今は、さようならって言えるわ」
エレーナの肩を抱いたジェラルドが、大きく手を振った。
「エレーナはこれからもっともっと幸せになる。俺達が⋯⋯俺が幸せにする。お前らが残念がるくらいに、エレーナの可愛い笑顔をいっぱい、いーっぱい見せつけてやるからなぁぁぁ!」
『終わりがあればはじまりがある』
誰がジェラルドに言ったのか聞いていないが、今日はアメリアにとっても、エレーナにとっても『はじまりの日』
群れをなして空を飛ぶ鳥が小さくなって消えていった。
侯爵家の屋根に転移した時は、色々な思いが頭の中をぐるぐる回って、自分の気持ちさえよくわからなくなっていた。
(ジェラルドは少し能天気で、途轍もなく前向きで、誰よりもマイペース⋯⋯って感じかな? 陰気に考え込むわたくしとは正反対)
ジェラルドはつむじ風のように、エレーナの心からモヤモヤを吹き飛ばしてくれた。
「よし! 奴等への宣戦布告は終了、んじゃ⋯⋯オーレリアに戻って飯でも食おう」
「⋯⋯やめとく。これ以上時間を使わせるのは申し訳ないから」
借りていた毛布を畳んでジェラルドに手渡した。
(話しすぎて疲れちゃった。余計な事までベラベラと喋って、呆れられたかも⋯⋯)
「ええ!? おんなじ場所に帰るのに?」
手渡された毛布をバサリと落としたジェラルドが膝をついた。
「おお、デートを断られた哀れな少年のお帰りか」
「煩え⋯⋯ってか、いつまで居座るんだよ! しかも宙に浮いたままおやつを食うな! 床にボロボロ落ちてんだろうが。
アイザックと愉快な仲間達に告ぐ、ここは休憩室でも集会場でもねえんだ。宿題なら自分の部屋でやれ!
それから、セドリック⋯⋯てめえ、なに優雅に本読んでんだよ! コイツらを追い出せ、お前も帰れ!」
「魔女しか知らない、魔女だけの本」
「え! マジで!?」
「禁忌の魔法はないから安全さ。人間界から失われた魔法なら乗ってるけど、あんた達じゃ実現は⋯⋯お尻の殻が取れりゃあ、できるかもだけど⋯⋯ぴよぴよ」
「くっそぉ~! 王宮に住む許可取ったのか? 取ってねえなら、不法侵入と不法占拠だからな!」
文句を言いながら、セドリックの手の中の本を覗き見しようとしたジェラルドが、コーヒーテーブルに足をぶつけた。
「うぐっ、いってぇ!」
「あらあら、あたしと同棲中だってあのヒグマに伝えても良いの? 坊やの寝室のクローゼットの秘密とか、うっかり話してしまうかもだし⋯⋯」
「同棲中⋯⋯うん百歳の魔女と? てか、クローゼットって⋯⋯お、お、俺のプライバシーを返せぇぇ」
「レイちゃん、クローゼットに何があったの? エレーナグッズ以外にも何かあるの?」
「セドリック、レイちゃんって誰だ? んで、クローゼットの中身をなんでおまえが知ってるんだよ!」
「レイちゃんは『黎明の魔女』で、クローゼットの中は探し物があったから、たまたま?」
セルビアスから帰ってきた日から、どう言うわけかジェラルドの部屋に『黎明の魔女』が居着いた。目敏くそれを見つけたセドリックが入り浸り、続いてアイザックと側近2人が参入した。
ミリアが遊びに来る時も、この部屋に来るようになるとは思いもしなかった。
(これでローラが来たらカオスじゃん。奴だけは阻止しないと、何を言われるか⋯⋯プリンごときじゃ買収できんだろうし。
唯一来て欲しいエレーナだけはこなさそうなのに⋯⋯)
「よく分かってるじゃないか、エレーナは来ないだろうねえ」
ジェラルドが一番悩んでいるのは、これ。魔女はジェラルドの頭の中を勝手に覗いて、全く悪びれず堂々と返事をしてくる。お陰でセドリックやアイザック達に心の声がバレバレになる。
「堪忍してくれよ~、男には秘密にしたい事がいっぱいあるんだからな~」
アメリアほどではなかったかもしれないが、何不自由なく暮らしていたセドリックとジェラルドは、悪戯し放題の我儘ボーイズだった。自分達が快適に暮らしているのは当然で、そのために使用人は雇われていると思っていた気がする。
そんなある日、祖父に首根っこを掴まれて、アルムヘイルのスラムに連れて行かれた。
『魔法と犯罪は禁止、1ヶ月ここで生き抜け。お前達がどんなに甘ったれなのか、よーく考えてみろ』
『魔法を使えなくするとか無茶だ!』
『1ヶ月なら金! 金がないと生きてけない』
祖父がそれぞれの手に握らせたのは銀貨が数枚。2人が呆然としているうちに、祖父は転移で消えた。
『⋯⋯とりあえずお腹が空いたから、何か食べて考えよう』
パン屋に入って値段を見て驚いた。
『パンだけ食べても1週間も持たない⋯⋯』
『俺達、死んじゃうよ』
一度言い出したら決して意見を翻さない祖父なら、1ヶ月後まで本当に迎えに来ないだろう。
『どうする⋯⋯何か考えないと』
『でも⋯⋯お金なんて稼いだ事ないし』
その後は⋯⋯野宿している間に手持ちのわずかな金を盗まれた。寝ている時は無防備になると考えた事がなかったから。
無一文で呆然としていると、職業案内所があると教えられ、張り切って行ってみたが、身元引受人のいない2人には真面な仕事はもらえない。安くて人の嫌がる仕事を、偉そうな職員が『恵んで』くれるだけ。空腹を抱え悪臭を放ちながら、荷運びや下水掃除で日銭を稼いで生き延びた。
仕事で騙されて賃金をもらえなかった時は、騙される方が悪いと言われ、余分な仕事を押し付けられた上に、約束の金をねぎられた時は、抗議してボコボコに殴られた。
売れ残ったパンを安く買えた時はご馳走だと喜んだが、それを羨ましそうに見る痩せこけた孤児が目に入る。
雨が降って仕事ができない時は雑草でさえ美味しそうに見えたが、雨水で雑草の土を落としながら『これなら食べれそう』と言う声が聞こえ、マジで食うのかと唖然とした。
暴力騒ぎを見るのなど日常茶飯事で、その殆どが仕事や食糧の取り合い。殴り倒された男は、翌日足を引き摺りながら仕事を探していた。
1ヶ月が近くなる頃、気がついた事がある。
『なあ、祖父さんがさあ⋯⋯』
『ああ、間違いない。俺達、これでも恵まれてる』
最底辺の仕事だが、ギリギリ食いつなげるくらいには仕事をもらえる。腹が減り過ぎて眠れなかった翌日は、何故か売れ残りのパンにありつける。初めの頃はラッキーだと思っていたが、日が経つうちにスラムがそんなに甘くないことに気がついた。
餓死も病死も目の前にいくらでもあるのに、雨漏りのするあばら屋が簡単に見つかったのは偶然ではないはず。
『どうだ、1ヶ月楽しかったか?』
『『⋯⋯ごめんなさい』』
不自由のない生活で魔法属性も多いセドリックとジェラルドが、小さな世界で天狗になって行くのを見た祖父の厳しすぎる愛情で、2人の目が覚めたのは言うまでもない。
「それまでは俺も飢えは可哀想だ、暴力は良くないとか言ってた。口だけな。そのくせ普段の生活では、あるのが当たり前で、なんでも手に入るのが当然だと思ってたからな~。あのまま成長しても、アメリア様と同じ事はやらないと思いたいが、似たような事をしでかしてた可能性がないとは言い切れないのが辛い」
体調の悪そうな使用人を見ても『休めば良いのに』とは思うが、休めない理由があるとは考えもしないで、呑気に仕事を頼んだ。
パンを盗んだ子供が捕まったのを見た時は、『親は何やってんだ?』『金くらい持たせろよ』としか思わなかった。
悪戯で半壊させた小屋を見ても『派手に壊れたなあ』と思うだけで、普段その小屋を使っている人のことなど頭に浮かばない。
街の物乞いを見れば『まともに働けば良いのに』と思うだけ、親に叱られている子供を見ても『路上で躾か?』と不思議に思っただけ。
「まあ、かなりのクソガキだったって事なんだけど、スラムの1ヶ月がなかったら、あのまま育ってた⋯⋯いや~、マジで怖い。『俺様、お花畑様』だったって本気で思うから」
ジェラルド達の祖父とは顔を合わせた事は何度もあるが、それほど過激な事を考える人には見えなかった。
「いや、あの人は鬼だから。祖母ちゃん以外には」
オーレリアでは魔法の使えない当主は殆どいないが、ジェラルド達の祖父は魔導具を有効活用して、キャンベル侯爵家に君臨し、他の貴族達からも一目置かれている。
話しているうちに準国葬が終わったらしく、街に人が帰ってきはじめた。
「そろそろ戻らなくちゃ。ここに人がいるってバレたら、不審者として捕まっちゃうわ」
「アメリア様はご両親の墓と並んで埋葬される事に決まっているんだよな」
「そう、あの丘の上。とても見晴らしがいいところみたい」
(アメリア様の夢がようやく叶うのかな。ダイヤモンドリリーを飾って、アップルパイと紅茶を準備して⋯⋯お天気もいいし、最高のティータイムになりそうね)
エレーナが指差した方から微かな笑い声が聞こえ、笑顔で両親に飛びつくアメリアが見えた気がした。
吹き渡る風が緩やかに木の枝を揺らす丘に、鈴を鳴らすようなアメリアの楽しそうな声がする。アメリアとよく似た女性の声と、安心感を誘うような低い男性の声も⋯⋯。
大きく手を広げた女性がアメリアを抱きしめ、男性がアメリアの頭を撫で⋯⋯涙はなく笑顔だけが広がっている。
ほんの少し物悲しい気持ちになっていると、ジェラルドがまた頭を撫でてくれた。
「ちょっとだけ寂寥感はあるけど、あそこに自分がいない事を寂しいとか悲しいとか思わないの」
「俺達がエレーナの家族だからな。今までも、これからもずーっと」
「そうね。血の繋がりはないけど、わたくしには家族だと言ってくれる方々がいる」
あとどのくらい一緒にいられるのか分からないけれど、エリオット達に家族として愛されていると信じられる。
心が軽いのはジェラルドのお陰だと知っている。一人で弔砲を聞いていたら、落ち込んでいただろう。
「ループ前はね、準国葬の場で『私がここにいる意味あるのかな?』って考えてたの。でも今は、さようならって言えるわ」
エレーナの肩を抱いたジェラルドが、大きく手を振った。
「エレーナはこれからもっともっと幸せになる。俺達が⋯⋯俺が幸せにする。お前らが残念がるくらいに、エレーナの可愛い笑顔をいっぱい、いーっぱい見せつけてやるからなぁぁぁ!」
『終わりがあればはじまりがある』
誰がジェラルドに言ったのか聞いていないが、今日はアメリアにとっても、エレーナにとっても『はじまりの日』
群れをなして空を飛ぶ鳥が小さくなって消えていった。
侯爵家の屋根に転移した時は、色々な思いが頭の中をぐるぐる回って、自分の気持ちさえよくわからなくなっていた。
(ジェラルドは少し能天気で、途轍もなく前向きで、誰よりもマイペース⋯⋯って感じかな? 陰気に考え込むわたくしとは正反対)
ジェラルドはつむじ風のように、エレーナの心からモヤモヤを吹き飛ばしてくれた。
「よし! 奴等への宣戦布告は終了、んじゃ⋯⋯オーレリアに戻って飯でも食おう」
「⋯⋯やめとく。これ以上時間を使わせるのは申し訳ないから」
借りていた毛布を畳んでジェラルドに手渡した。
(話しすぎて疲れちゃった。余計な事までベラベラと喋って、呆れられたかも⋯⋯)
「ええ!? おんなじ場所に帰るのに?」
手渡された毛布をバサリと落としたジェラルドが膝をついた。
「おお、デートを断られた哀れな少年のお帰りか」
「煩え⋯⋯ってか、いつまで居座るんだよ! しかも宙に浮いたままおやつを食うな! 床にボロボロ落ちてんだろうが。
アイザックと愉快な仲間達に告ぐ、ここは休憩室でも集会場でもねえんだ。宿題なら自分の部屋でやれ!
それから、セドリック⋯⋯てめえ、なに優雅に本読んでんだよ! コイツらを追い出せ、お前も帰れ!」
「魔女しか知らない、魔女だけの本」
「え! マジで!?」
「禁忌の魔法はないから安全さ。人間界から失われた魔法なら乗ってるけど、あんた達じゃ実現は⋯⋯お尻の殻が取れりゃあ、できるかもだけど⋯⋯ぴよぴよ」
「くっそぉ~! 王宮に住む許可取ったのか? 取ってねえなら、不法侵入と不法占拠だからな!」
文句を言いながら、セドリックの手の中の本を覗き見しようとしたジェラルドが、コーヒーテーブルに足をぶつけた。
「うぐっ、いってぇ!」
「あらあら、あたしと同棲中だってあのヒグマに伝えても良いの? 坊やの寝室のクローゼットの秘密とか、うっかり話してしまうかもだし⋯⋯」
「同棲中⋯⋯うん百歳の魔女と? てか、クローゼットって⋯⋯お、お、俺のプライバシーを返せぇぇ」
「レイちゃん、クローゼットに何があったの? エレーナグッズ以外にも何かあるの?」
「セドリック、レイちゃんって誰だ? んで、クローゼットの中身をなんでおまえが知ってるんだよ!」
「レイちゃんは『黎明の魔女』で、クローゼットの中は探し物があったから、たまたま?」
セルビアスから帰ってきた日から、どう言うわけかジェラルドの部屋に『黎明の魔女』が居着いた。目敏くそれを見つけたセドリックが入り浸り、続いてアイザックと側近2人が参入した。
ミリアが遊びに来る時も、この部屋に来るようになるとは思いもしなかった。
(これでローラが来たらカオスじゃん。奴だけは阻止しないと、何を言われるか⋯⋯プリンごときじゃ買収できんだろうし。
唯一来て欲しいエレーナだけはこなさそうなのに⋯⋯)
「よく分かってるじゃないか、エレーナは来ないだろうねえ」
ジェラルドが一番悩んでいるのは、これ。魔女はジェラルドの頭の中を勝手に覗いて、全く悪びれず堂々と返事をしてくる。お陰でセドリックやアイザック達に心の声がバレバレになる。
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